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村上龍:「わたしは甘えているのでしょうか?」(27歳・OL)

いつもの副題じゃないです、これが今回レビューする本のタイトル。しかも「」や()込みで。
村上龍さんの本「わたしは甘えているのでしょうか?」(27歳・OL)

「わたしは甘えているのでしょうか?」(27歳・OL) (幻冬舎文庫)「わたしは甘えているのでしょうか?」(27歳・OL) (幻冬舎文庫)
(2009/04)
村上 龍

商品詳細を見る

ほぼタイトルのインパクト買いでしたね、中古なのをいいことに、内容もほとんど見ないで。
で、実際読んでいくと、これがまた問題作。
賛否ばっくり分かれると思います。

村上龍さんが、主に20代~30代の若い「女子」から寄せられた相談に答えるという主旨。
しかし具体的に「雑誌○○に寄せられた」といったくだりがないので、質問の出自は不明。
龍さんのサイトですかね?それとも、龍さんが自身で質問や年齢や職業を拵えたのか?
でも、質問者の表現にしばしば「いまいち意味がわからない」と言っているあたり、やはり
どこか経由で龍さんに寄せられた質問のように思えたり。
いや、「今の若い子ってこんなことよく言ってるよな」と自作している可能性もあるのですが。

質問の内容は、「はじめに」で龍さんが語るところに拠ると「バカバカしくも切実な悩み」。
具体的には、毎月の生活費や職場での人間関係や就職・転職や恋愛・結婚などの日常の悩み。
「マスコミに登場する識者がおもに語るのは政治・外交・経済などいわゆる天下国家についてで
多くの個人が抱える「バカバカしくも切実な悩み」は無視されているように見える」という
問題意識に端を発して挑んだ、相談・回答集です。


質問を見ていると、一定の傾向があることに気づきます。
・世の中や問題それ自体に関して、曖昧なイメージ、印象でものを判断している(周囲の人も)
・マスメディアが創り出したイメージや報道に踊らされている
・他人と自分とを比べて、イライラしていたり、落ち込んだり、焦ったりしている
龍さんはそこをすかさず指摘します。それなりに「そう思う気持ちはわかります」などと
同情を示すこともありますが、基本的にはお茶を濁すような慰めのクッション言葉は一切かけず、
質問者に問題の本質を明るみにして、現実を直視させるよう促す回答。
悩みやトラブルへの対処は、まず現実を直視することから始まる」との信念に拠る態度です。

問題意識の発端が「マスコミに登場する識者」への反感ですから、マスメディアの創り出した
固定観念や、おもしろおかしい報道や、それらに騙されているとの告発が最も冴えているのでは。

経済評論家が「年収300万円でも楽しい暮らしができる」という本を書いたり、テレビで識者と言われる人が「昔の日本人はもっと身の丈に合った暮らしをしていた」と言ったりしてる。でも彼らの年収は300万円ではない。(中略)そんな人たちから「金がなくても幸福になれる」なんて言われても頭にくるだけです。
(自分の年収300万円生活と団塊世代との格差への怒りを訴える女性に対して)


テレビドラマや漫画では「あ、この人だ」という感じで出会いが描かれているけど、大衆文化というのは、そうしないと観る側がそこに夢を持てないから、そういう描き方をするものです。現実にそんな恋愛や結婚が成立する時代があったかというと疑問です。(中略)「これぞ私の理想の人」なんていう出会いは、ほとんどないんじゃないですか。
(本当に好きな男性に出会って結婚したいが、そういう人が見つからない、という女性に対して)


あまりテレビや雑誌にヒョコヒョコでてくる人は信用しないほうがいい。本当にハッピーで充実していたら、べつにでる必要はないですから。(中略)ある意味で自分のプライバシーを売っているわけだから、基本的に寂しい人なんです。そういう人に影響を受けるのはよくないと思う。
(テレビや雑誌に登場するカリスマ主婦などを羨んでしまう女性に対して)


ほかにも、龍さんがこれまで出逢ってきた人たち、「13歳のハローワーク」などの著作のための
取材で知った業界の実際、調べたデータなど、具体例を紹介して、質問者の抱える問題に対する
曖昧な印象をはっきり可視化します。
強烈なのはやはり「13歳のハローワーク」に関する講演会などでもよせられた
努力すれば報われるというけれど、実際には努力しても報われない社会なのではないか
という問いに対するエピソード。
「あなたの言う「努力」というのは、具体的にはどういうことを指すのか」と聞き返しても、
「「報われる」というのはどういう意味か」と聞いても、答えが返ってこないのだそう。
現代では、会社によっても雇用形態によっても、その人が何を選ぶかによっても、
「努力」や「報われる」の中身が変わり、曖昧な言葉、概念になっているので、
まずは自分にとってのそれぞれの中身を、正確に把握しないといけない」と龍さん。


曖昧な不安や怒りをそのままにしている「女子」達に対して、龍さんは容赦しません。

本当はわかっているんです。彼女が何をしたいのか、僕にはわからないけれど、本人にはわかっている。でもそれを自覚するのが怖かったり、面倒だったりするから、おっくうになっている。
やりたいことがはっきりしたら、そのためにすべきことは決まってしまいます。行動を起こさなければならないわけです。それよりも曖昧な不安の中にいるほうが、ずっと居心地がいい。(中略)
「自分は何がしたいのか」がわからない限り、何のアドバイスもできないんです。
(このまま今の仕事を続けていくことに何となく不安がある女性に対して)


この人は現状に不満があるのでしょうが、結局、何が嫌で、何を改善したいのかがわからないみたいですね。
自分自身や自分がいまいる環境を向上させようと思っても、どこが嫌なのか、どこを変えたいのかをはっきりさせない限り、無理だと思いますよ。
(派遣社員としてルーティンワークをしていると不安になる女性に対して)


だから、大変で面倒くさいですけど、
個人的に戦略を持って立ち向かうしかないんです。
(前述した、自分の年収300万円生活と団塊世代との格差への怒りを訴える女性に対して)


本のタイトル「わたしは甘えているのでしょうか?」は、それすなわち龍さんからの
「君たちは甘えていると思うよ」という回答なのかなぁと感じます。

ところで、質問者たちの不安や怒りの具合は様々。
「若いうちは楽しく遊んで何が悪い」という、相談というより挑発や提唱に近い人から、
「周囲にお金持ちの友人がいると、不安になってくる」という、ムカつく気力もない人まで。
何となく質問を投稿してみた人と、深刻に悩んで弱っている人と、二分化している印象です。


龍さんの「君たちは甘えていると思うよ」という直球型のアドバイスに対し、文庫本の解説を務めた
年間1,000人近くの悩める「女子」に生対面したり、悩み相談を受け付けている蝶々さんは
女性の立場から、やわらかに苦言を呈しています。

「ディープに悩んでる人ほど、現実(自分)を直視したくないみたいなんですが。頑張ったり問題に向き合う前に、とりあえず傷ついたり弱っちゃってるので、優しくしたり励ましてほしいんだと思うんですが・・・」
「女の子の悩みって、いくつであっても世間でいうキャリアであっても、たとえ立派な医師であっても新聞記者であっても、(ただ聞いて、うんうんっていってほしいだけ)ってところ、本当にあると思うんです。だから、どうしても、「村上さーん。そんなバサッといかずに、もうちょっとこう、優しくしてよ?」と思ってしまう。」
「今度、女性にアドバイスするときは、もうちょっとだけ、同調したり、それもわかるよ、と愛の合いの手も挟んであげてくださいね(ハートマーク)」


はじめは、よく一般に言われる「女性はただ悩みを聞いてほしい。聞いてもらえればそれで
解消する。男性がよかれと思って正攻法の回答をすると、かえって反発される」とか
「男性は問題を解決したいと考える生物。悩みを人に相談しない場合も多い。そこで女性が
悩みを打ち明けてくれず、何を考えているのかわからないと不満を抱くこともある」といった
男性と女性の違い」からくるのかなぁと考えました。

しかし、先日ふたつのTV番組を観ていたら、男女双方の固定観念が揺らぎました。
まず、「テレビ寺子屋」という、フジテレビ系列で早朝に放映している番組に
心理カウンセラーの先生(男性)が出演し、講演をしていたのですが
「悩みがある人に対して、ひたすら同調する(うんうんっていう)と、それだけで解決する
こともある。逆に、良かれと思って回答を急ぐと「分かってくれない!」と不信感を招く」
と語っていたのです。そして具体例として挙げていたのが男性の相談者だったのです。
ここで、「男性でも、悩んでいる人に対しては、同調するほうがよい」との転換。
次に、「グラン・ジュテ」という、Eテレで放映している様々な女性の半生を紹介する番組に
テキスタイル・デザイナーとして世界規模で活躍している女性が出演していたのですが
彼女は不安にぶつかるたびに新たな道を切り開き、そのためならお金も貯めるし
英語の勉強を1年間ずっとしたりもする、大変なハングリー精神を貫いていました。
ここで、「女性でも、問題解決と行動に真っ正面から取りかかることはできる」と。

性別を要因に出来なくなった時、じゃあ、ふたつの差はどこで分かれるのかと
改めて考え直すことになりました。そうして私が辿り着いた結論は、
「その人が必要としているのは産業カウンセラーか、心理カウンセラーか」
言い換えれば「今、その人はどれだけ強いのか、あるいはどれだけ弱っているのか」。
産業カウンセラーであれば龍さんのように、相談者にダイレクトに現状を突きつけ、
行動へと駆り立てるのは極めてまっとう。
龍さんは、いわば優秀な産業カウンセラーなのだろうな、と思うのです。
逆に心理カウンセラーであれば、蝶々さんや男性カウンセラーのように
「ただ聞いて、うんうんっていってあげる」べきで、龍さんの対応では不適任。


この本が役に立つのは、甘えずに問題の本質を見て行動に移れる強さがある人。
そして、甘えずに問題の本質を見て行動に移ることを強さだと思う人。
「弱音を吐きながらも何とかそれなりに生きていてはいけないのか?甘えや弱さがあって
それを互いに支え合ってこそ人間なのではないか?」と疑いをもつ人も居ると思うから。
とくに現代の時勢では・・・
肉食系サバイバル派と草食系サバイバル派とでも形容できそうな派閥があるのを感じますが、
その溝はあまりにも深く、ちょっとの言葉やエピソードの羅列では揺らぎそうもありません。
でも、私のように、ふたつの派閥の中間で彷徨って、または両方の面を併せ持っている人は
いい意味で、価値観の揺らぎを楽しみ、そこから学ぶ格好のきっかけになると思います。
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コメント

バッサリですか…。

ワタシは、水商売も5~6年(多分)していたので、

お客様、お店の女の子、黒服の男の子(ボーイさん)の相談に乗るコトが
多かったのですが、

女性に限らず男性に対しても、

とりあえず相談者の話すコトに頷いてあげる方が良いようです。


例えば、

「…そうなの…アナタの気持ちはよくわかるよ。でもね~。」

といった感じで
頷いておいて、

回答をした方が良い感じです。



著述業の方で(この方は有名です。)、知り合いがおりますが、

とても学者肌なんですね。
そういう方は、悪気はないのですが、

ズバッといきます。


ワタシは、色々な相談事はその方にするようにしていますが…。

その方の場合
言葉は柔らかいです。(基本)

でも、ヒトとは違う発想でズバッと回答なさいます。

話し方って大事だなぁって、つくづく思いました

ミカさん、まさに「体験者は語る」ですね。
実際に男女から相談を受けたから分かる生身のコメント。
水商売をしていた知人がいますが、彼女にこの本を読ませても、
同様の感想が返ってくる気がします。

学者肌の友人知人(特に男性に多い)って、相談事をするとこういう答え方を
する人が多いですね、確かに。
助言自体は的を射ていたり、ユニークだったりするけれど、
悩んだり不安になったりしている気持ちを「それは甘えだ」とバッサリ言い切っちゃって、
煙たがられたり、対人面で会社に馴染めなくて大学に戻ったりする人などもいました。

「相手の気持ちになって」とよく言いますけど、そういう人達(多分、龍さんも)って
自分の気持ちに「揺れ動く不安や迷い」がなかったり、理屈でねじ伏せられるんでしょう。
だから相手にとって今何が必要で、どう言ったら効果的か考えられない。弱さがわからない。
中には「そう分かっているが、愛の鞭が必要」との意図込みの「バッサリ」もあるのでしょうが。
龍さんはこっちのパターンかも分かりませんが、普段の小説を読む限り、前者のイメージですかね。

すごく頭が良いのは偉大なことですが、話し方を工夫するといった、思いやりというかマナーが
もうちょっとあったら、「悩める女子」に馴染みやすい本になったような。
ある意味、男性向けかもしれませんね、本書。女性観察という使い方で。

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このコメントは管理人のみ閲覧できます

気づけなくってすみませんでした!

わああ・・・その方の内容でしたか!
確かに言われてみれば曲目が。
そちらの記事へコメントした時点ではそれを知らず、後になって知ったんですが
あの記事の内容とリンクしていたとは夢にも思わず。
2連チャンで出会いがくるとは予想だにせず(笑)

いやしかし、私も吃驚&喜びでございます。
昨日は自分の記事を書くだけでタイムオーバーだったので、
これから観にいかなくては。

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まとめtyaiました【村上龍:「わたしは甘えているのでしょうか?」(27歳・OL)】

いつもの副題じゃないです、これが今回レビューする本のタイトル。しかも「」や()込みで。村上龍さんの本「わたしは甘えているのでしょうか?」(27歳・OL)。「わたしは甘えてい

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