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The Mars Volta:その5 八面体「荒涼とした世界で、漆黒の空を彩る星々のように儚く煌めく、哀しいほど綺麗なモニュメント」

これまでずっと、既存の枠にはまる音楽とはおよそ遠い作品を発表し続けてきた
The Mars Voltaマーズ・ヴォルタ)でしたが、
セドリックとオマー曰く、5thアルバムのテーマは「ポップ」「メロウ」そして「アコースティック」!
CD収録時間ギリギリいっぱいまで詰め込まれていた前作に比して、8曲50分と、
このバンドらしくないコンパクトな仕上がりになりました。まぁ、やっぱり一癖あるけどね。
そんなアルバム「Octahedron八面体)」の登場です。

八面体八面体
(2009/06/17)
マーズ・ヴォルタ

商品詳細を見る

何とAメロ→Bメロ→サビという、ポップ・ソングの基本枠で大半の曲が作られている!
あのマーズ・ヴォルタが?!
今までにはほぼ絶対にあり得なかったことで、これだけでもかなりの驚きです。
実際には他のアルバムの曲もある程度そういう枠にはめられるような気もしますが、
なにせ展開がめまぐるしくて鳴っている音も突飛で、メロがメインになるはずがなく(笑)
そして二人の意図通り、美しい歌メロが光り、他のパートは基本的に歌伴に徹し
セドリックの繊細なヴォーカルを引き立たせるという、ポップでメロウな作風に着地。
音数も今までなかったほど少なく、アコギも一応2曲でフィーチャーされるなど
確かに「マーズ・ヴォルタ流」アコースティック・アルバムと呼んでも
間違いはなさそうです。一般リスナーがどう解釈するかは置いておいて(苦笑)
音数だけでなくメンバー数も削減を始め、サックス担当のエイドリアンと
「Scabdates」から参加したギター・サウンドマニュピレーション担当で
かつてAt The Drive-In(アット・ザ・ドライヴイン)でベースを担当していた
ポールに、リストラを宣告するなど、なかなかに手厳しい人事も敢行しました。

本作から、レコード会社とマネージメント会社を移籍し、レッチリと同じ会社へ。
(アルバム日本版は以前の会社のままで、新作から移籍先ワーナーに)
そしてたまげたのが、日本版で参加アーティストのクレジットを見ると、
オマー、セドリック、そしてその次にジョン・フルシアンテが!
このダブルの流れで、「ええっ遂にあなた、レッチリのみならず、マーズ・ヴォルタまで
乗っ取っちゃったんですか」と驚くやら呆れるやら。
本作リリース年の年末に、あの「1年前から脱退してました」宣言があったので、
当時は「これは遂に、マーズ・ヴォルタに正式加入か」とぬか喜びしたものでした。
でもそれどころか、本作が最後の参加で、メジャー音楽シーン自体から隠遁しちゃうとは・・・
やけにメロディアスで泣きな作風になったものだから、この人の支配下に
いよいよ置かれちゃったアルバムなのか?と訝っていたので、
英文Wikiにて、アフロコンビの明確な意図が反映された方向性であることがわかって
かなりホッとしたのでした。
まぁオマーとジョンって、方向性が相互リンクしちゃう傾向がかなり強いので
(詳細は今後書くオマーのソロのレビュー記事にて)影響や貢献度が高かったために
名義をフィーチャーしたのかな、とも。

ポップ・ソングの枠を意識して作られただけあって、曲単位でのまとまりは完璧
アルバム単位でももちろん・・・と中盤まで思っていたら、
唐突に従来タイプの曲「Cotopaxi」(シングル曲)が#5にねじ込まれ、
次曲#6まで流れ回収に巻き込まれる為に、せっかくのまとまりが台無し。
#7からまた前半部に引き続く流れに戻るので、アルバム単位での統一感は
「Cotopaxiさえなければ・・・」の一言に尽きるというしかなく。
確かに格好良い曲だし、前半までを「どうしたの?物足りないよ~」と感じるライト層リスナーは
「オッ!やっとノリのいい曲が来た」と引っ張れるんでしょうが、
そうやって大衆を「釣ろう」という意図がまるわかりなのは
このバンドのCDを買ったり、ライヴに足を運んだりするコアなファンにとっては
かえってマイナスに働いたのでは。
大衆受けメジャーバンドならともかく、彼らのようなこだわり系のバンドだからこそ。
「マーズ・ヴォルタは大衆向け、ソロはコアなファン向け」という区別が
一層あからさまに出たかたちに。ここまで足元をモロに見られて、ファンはどう思うか?
それが昨今の、とりわけ本国の、人気低迷に繋がった小さくない一因だと思います。
逆に言うと、ちょっと世渡り下手なバンドなのかも。

マーズ・ヴォルタはよく、キング・クリムゾンピンク・フロイドを引き合いに出して
語られますが、本作はそういった「王道プログレバンド」が作りそうな曲の多い
いわば正統派プログレ。それまでが「プログレッシヴなプログレ」「個性派プログレ」
だったのに対し、プログレという音楽的な一つのルーツに回帰した格好でもあります。
ここで、ただオールド路線に回帰するだけでなく、オマーの持ち味、近未来テイスト
ギターやシンセサイザーなどによるアレンジで加えるのが、現代でも古臭くなく聴ける所以で
相変わらず解釈が素晴らしいなぁと感服する限りです。

今まで聴いたことがほとんどなかった、セドリックの儚く透明で情感豊かな歌声
真っ暗な夜の闇に包まれて、星空を見上げる情景が想起される曲調やタイトル(#4,#7)。
冷え切った質感、静寂の中でそっと紡がれる哀しい歌、虚空を見つめるような無力感は
マーズ・ヴォルタ流「Wish You Were Here炎~あなたがここにいてほしい~)」。
しかし、「Wish You Were Here」が具体的に葬る対象(シド・バレット)に向けて
歌われていたのに対し、彼らが葬ろうとしていたのは何だったのか?
英文Wikiを読んでいると、本作制作直後に、オマーは何とマーズ・ヴォルタを
これでお開きにしようと考えていたのだそうです。
そしてセドリックは本作の方向性をこのようなものにした理由を、「今まで自分たちが
作ってきた作品と、全く違うことをしたい」
と語っていました。

今までの自分たちと、さよなら。
それはセドリックの中では「新しい方向性へ」のためのものでしたが、オマーの中では
「マーズ・ヴォルタを畳んで、ソロへ」と、いつしか二人の考えが大きくズレて、
まさかの十数年ぶりの大喧嘩へと発展し、なぜかセドリックの方が「やめてやる!」と
言い出したり。

また、静かで哀しい曲調は、どうにも、バンドの衰退をイメージさせてしまいます。
日本ではある程度まだ人気がある彼らですが、向こうではいわゆる「オワコン」バンドだと
みなされているそうで、そんなこともあってのATDI再結成という見方を
する向きもあるようです。

それでも、美しいものはやっぱり掛け値なしに美しい。
普段乱暴で不器用な彼らが丁寧に丁寧に拵えた、哀しいほど綺麗なモニュメント。
色々難癖をつけてしまったとはいえ、なんだかんだでお気に入り度合いの高いアルバムです。
セドリックの素晴らしいヴォーカルに思わず胸を掴まれる一枚
メジャーな音楽をいつも聴いている人は、本作が一番馴染みやすいと思います。


さて、その後の彼らは?
ドラムのトーマスはクビ、そしてまたしてもドラマー・ジプシーを経た後に、
以前セオドア→トーマスに決まる合間にもサポート参加をした
ディーントニ・パークスが加入。キーボーディストもこれまでのアイキーから
ラーズ・スタルフォースに入れ替わり。
ホアンとマルセルは残留で、現在は6人編成に。
そして、最近こんな新譜が出ています。

ノクターニキットノクターニキット
(2012/03/28)
ザ・マーズ・ヴォルタ

商品詳細を見る

もんのすごく好みのジャケ!(笑)
ジャケット担当者も代わって、オマーのソロアルバムのジャケを
いつも手がけている、サニー・ケイに。
・・・と、何だかんだで新譜は作ったとはいえ、この作品をもって、マーズ・ヴォルタは
活動休止することに。セドリックとオマーは前述した通りATDI再結成へ、
残りのメンバーも各々のソロ活動等へと進むそうです。

The Mars Voltaの連載記事はひとまずこれにて一区切り。
次回かその次あたりに、オマーのワーカホリック過ぎるソロワークスをひとつにまとめた
日本限定発売ソロ・ベスト・アルバムのレビューをします。



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テーマ:洋楽CDレビュー - ジャンル:音楽

コメント

今度は来れましたね。

(記事と関係なくてごめんなさい。)

燃える朝やけさんのブログに、今朝は来れなかったのです。

ワタシのブログがなぜか変で。(ログインできない!)

燃える朝やけさんのブログは、
携帯でブックマーク登録しているので、
fc2にログインしなくても、見ることができるようになっているのですが、
それも、今朝はできませんでした。

403エラー以外にも、また厄介なエラーが…
なんて思ったのですが、

こうやって来ることができたので、

安心しました。

ホッ。

今日も来ていただいてありがとうございます。

エラー解消、何よりです。
快適に越したことはないですもんね。

こんばんわ

いつもコメントありがとう^^

朝やけさんは、何か楽器などの演奏もされるのかな?とか思いながら、
マーズ・ヴォルタ。。視聴してみました。

私はルートとして、この道を通らなかったのですが。。
朝やけさんは、いわゆるハードロック系というのでしょうか?
そういったジャンルが、お好みのようですね?

ジャンルで括るのは、少々難しいところですが、

こんばんは!
doggyさんの路線でマーズ・ヴォルタは、もしかしてちょっと
しんどかったのでは?寧ろありがとうございますと言いたいような。

大学時代に軽音楽サークルでバンドのヴォーカリストをしていたことがあり、
ちょっぴりギター(Vo/Gt)にも挑戦してみた時期がありましたが
ギターは断念、ヴォーカルもサークル内にも通用しない腕前。
「好きこそものの~」とは、残念ながらいかず。
歌うのは今でも好きですが、今はこうやって文章を書いている方が楽しいかも。
ちなみに当時、費用の都合+デザイン惚れ+曰く知らずのために
リッケンバッカーのパチもの、「Rock'n roller」というギターを持っていました(笑)
もちろん皆に笑われていました。でも、何も知らなかったし・・・

doggyさんとは、確かにとことん真逆のルートを辿っていますね。
90年代の邦楽ロック~ポップス→90年代~00年代の邦・洋ロックなど→
上記のミュージシャンが影響を受けた音楽(60~80年代の洋ロック)など、と
きていて、ストーンズみたいなブルースはようやっと最近来たばかりなんです。
ロックの中身も、Wikipediaで「オルタナティブ・ロック」とか「ポスト・ロック」とか
「ミクスチャー・ロック」なんて呼ばれ方をするものが根本です。
(ちなみに、HR/HMの括りに入るロックは、Zepくらいしか聴かないかも)
そこから派生して、ここ数年は幅広い分野にチャレンジしているところですが、
やっぱりハードなロック寄りの傾向は残っていると思います。

そんな今、聴いているのは最近のジャズだったりして、
歳をとって、欲しい音楽がちょっとずつ変容している気もしています。
音楽以外のジャンルも容赦なく書きまくるコンセプトのblogなので
びっくり箱状態になっているのは割といつものことで。
doggyさん、皆さん、今後、何が飛び出してくるか楽しみにしていてください(笑)

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・音楽、映画、漫画・・・雑多な題材をとりあげ、レビューのような感想のような、「好きなものの話」をしています。音楽寄りの題材が多めかも。
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