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相棒:その5 Season ten 最終回感想「有終の美へと着地することのないTVドラマ、救われずに去っていく"相棒"・・・大胆不敵な問題提起」

いやぁ、どす黒い幕引きでしたねぇ。相棒ten
コンビものの「相棒」の去り方としては、国内外を見渡しても史上最悪レベルというか、
ある意味画期的ですらあったというか・・・。
事実上の、相棒「失格」って。
後味は最悪だけど、度肝を抜かれたし、相棒らしいっちゃらしくもあって
TVドラマの一種マナーである「終わりよければ全てよし」に一石を投じるようで
大胆不敵ですらあって、私の中では忘れがたいドラマ(Season)になりそうです。


前回の相棒の記事で、「神戸は綺麗に去れない」と予想したんですが、
予想の斜め上のかたちで当たってしまいました。
流石に死にオチはなかったけど、警察官としては「死んだ」ようなものですよね。
ラスト少し前で、海辺に車を停めて、空高く飛び去る風船を見つめて
物思いに耽るシーンがあり、「え・・・まさか本当に死にオチいっちゃうの・・・?」と
ガクブルでしたが、すぐ例のバーが出てきて「なぁんだ」と。
大河内は占い師かカウンセラーか、はたまたオカンか!
初回から全く進展のない泣きつきはいただけませんねぇ。

このところ「神戸は何の為にいるの」という、空気のような合いの手役でおさまっていて
最終回でも事件そのものはいつもありそうな話、お偉いさんが都合が悪いと言って
揉み消そうとするのもよくある話で、「この流れでどうやって卒業するの?」という
前半部でしたが、長谷川と雛子が神戸を呼び出したくだりで流れが一変しましたね。
いっそ小気味よいぐらいの「転」でした。「起」「承」がなだらかだっただけに。
あの右京さんが本気で他人に動揺しているとは。
そして、ハンマーで頭を殴られるような、「結」。

右京さんのスパイとして相棒になって、右京さんを裏切って相棒を去る。
やっとツーカーで通じ合える仲になってきた矢先の、決定的な裏切り。

(視聴者目線では)同じように「卒業」した亀山の記憶もコントラストをなして、
一層、この「限りなく漆黒に近いグレー」色が引き立ちます。
新しい夢をみつけ、自分の意志で特命を出ていって、皆から惜しまれたヒーロー、亀山。
涙ぐみながら去りたいと申し出ても去れず、突然偉い人に引き抜かれて
まるでPCが強制終了するかのように、プツリと物語を断ち切られた神戸。
亀山を思い出して神戸に立ち返ると、そのあまりの業の深さに、恐ろしくなってすらきます。
神戸、恐ろしい子・・・!この帰結は神戸というキャラが誕生した当初からあった構想なのか?
もしそうだったとしたら、及川さんはよく引き受けたなぁと。
でも、演じてみるのはやり甲斐がありそうですね。

「大概のドラマは亀山のような終わり方をするし、神戸もまた何か新しい夢や目標を与えられ
新たな道へ?」という無難な結末も想像していましたが、もしそうなっていたら
もう相棒というドラマに興味を持てなくなっていたでしょう。
その点では満足のいく結末でした。
リアルよりも生々しいリアルのえぐみを、主役によって「TVドラマ」にぶち込まれる
なんて、全く予想だにしていませんでしたから。

しかしまぁ、自分が右京さんだったら、相棒を招き入れるのがトラウマになりそうです。
でも人事は右京さんには選べないわけで。
次の相棒は、神戸の登場時とは違った意味で、すんなりとは迎え入れてもらえなさそうで、
そこに次Seasonの幕を開ける「どうなる?」の種がひとつ蒔かれましたね。


さて、神戸特命卒業以外で大きな変化といえば、
「小野田官房長官に代わる人物は?」のピースが遂に埋まりましたね。
長谷川「警察庁長官官房付」とな。すっかり忘れていましたよ。
しかし、干されていたこのSeason tenの期間で、雛子を手伝いながら虎視眈々と準備して
今回の一件でまんまと官房長官ポストをゲット!とおぼしきオチは「なるほどね」でした。
道理で上の方の事情をSeason中、一貫して秘め続けてきたわけだ。

そうすると、今後は右京さんVS長谷川「新・官房長」か?
けれどもしそうなったら、官房長付になった神戸が出てきそうなものでは?
でも神戸は相棒を卒業したわけだから、出すわけにはもういかないだろうし
新官房長は、右京さんの敵には特にならないのか?
でももう一つ解釈ができますね。
右京さんと再会した時には、神戸が「長官官房付」を断って、警察庁を去った、という見方。
長官官房付は一時的な場所らしいので、あるいは新しく、全く違う部署へ異動になった、とも。
VS官房長がぼちぼち起こるようなら、そう経たない内に顔を合わせそうなものだから
「またいつか、どこかで」なんて言い方、しないような気もして。
たまきさんの後釜に幸子が来たように、小野田さんの後釜に長谷川さんが来たと
捉えるほうが妥当だろうし。
「相棒卒業」は、「神戸は特命係の右京さんの相棒を卒業して違う立場でまた出ます」
じゃなくて、中の人=及川さん自体が卒業ですもんね、順当に考えると。

色々謎を残したまま、神戸は相棒世界から姿を消していきましたね。
謎の人物として現れて、重大な謎をひとつ視聴者に委ねて去る。
今回の最終回があってこそ、神戸も亀山と同格に、視聴者にインパクトを残す「相棒」と
なれたように思います。


償う術のない罪」が、今Seasonを貫徹するテーマとなりました。
過去の「償う術のない罪」に苦しみながら、現在形でまた新たな、しかもより罪深い
「償う術のない罪」を犯し、何事もなかったかのように元の「エリート」に
戻っていくことになった神戸。
亀山のような、絵に描いたような爽やかな主人公、まっすぐな物語は、
少年漫画のように、観る人に夢や憧れを抱かせ、強く心を惹きつけます。
しかし哀しいかな、亀山のようにまっすぐに考えられたり物事が進んだりする人物は
現実にはそういません。
現実は神戸のように、昔の過ちやさっきの失敗を、ときに正しいと思って突き進んだり
ときに悔いて慟哭したりしながら、ときに右についたりときに左についたりしながら、
絵にならないリアルを、その人なりに必死に生きているはずです。
「こんな時代だから、ドラマには夢が欲しい」と言う視聴者、作る制作陣が多いのを
否定はしませんし、夢のあるドラマも楽しく観ました。
でも、寧ろこんな時代だからこそ、現実から目をそらさず、しっかり向き合って
いかなくてはならないし、それをしないからいつまでも「こんな時代」なのではないか

時々考えます。
神戸という「絵にならないリアル」を通して、目先の視聴率を落としてでも
相棒制作陣が伝えようとしたのは、もしかするとそんなメッセージだったのかもしれません。
例え、そのリアルが、今まで見たことがないほど過酷なものだったとしても。
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