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シガー・ロス:その4 Hvarf/Heim&残響「もう防御壁はいらない。カラフルでたおやかできもちいい、日常に寄り添う音楽の理想郷を求めて」

憂いの音楽から、歓びの発露を経て、
シガー・ロス (Sigur Rós)の音楽は、更に新たな段階に入っていきます。

まずは、未発表曲、シングルのカップリング曲、既発曲の再録から成る
スタジオレコーディング&アコースティックライヴレコーディングの2枚組アルバム
Hvarf/Heim(消えた都) 」の紹介。

HVARF-HEIM~消えた都HVARF-HEIM~消えた都
(2007/11/07)
シガー・ロス

商品詳細を見る

このジャケもいい!2枚組ということで、表側と裏側で画が違うんですが
そのどっちも幻想的で、とっても綺麗。中を開いても、いい!
紙ジャケだから、余計ナチュラル感が出ますね。
表側にしたり、裏側にしたりして、よく飾っていました。

内容は既出曲が主なので、揃えるなら後回しにしてもいいかもしれませんが
前作「Takk・・・」と次作の間を繋ぐ作風となっていて、興味深い作品です。
スタジオレコーディングの未発表曲は、基本的に前作の流れを汲みながら
どこか郷愁が漂う、美しい曲ばかりです。
そして次作の予告のようになった新機軸、アコースティックライヴレコーディング。
「アコースティック」と言うほど、アコースティックな印象を持たないかも。
アコギが中心というよりは、普段お馴染みの音、例えばディストーションギターや
たゆたう幻想的な加工音などのエレクトリックサウンドを省いて、
その合間にある、もう少しナチュラルでクラシカルな音たちが、主役になった感じ。
トレードマークの「幻想的」という色合いは少し薄れて、もっと地に足が付いた場所で
心安らかに、穏やかな旋律に耳を澄ます、といった趣。
幻想的で郷愁がほんのり漂う1枚目、ナチュラルでクラシカルなアレンジに出会う2枚目と
違った彩りながら、どちらもゆったり癒されます。



それに続いてリリースされた、現時点での最新作
Með Suð Í Eyrum Við Spilum Endalaust(残響)」。
日本含め、シガー・ロス史上最高の世界セールスを記録しています。

残響残響
(2008/07/02)
シガー・ロス

商品詳細を見る

もはやあの「轟音の壁」は影を潜め、代わりに幅広い音世界が広がっています。
「Hvarf/Heim」2枚目の「アコースティックライヴレコーディング」に通じる
シガー・ロス流アコースティック。アコギが出てこないわけでもないのですが。

古代の祭祀を想起させる、変則的リズムが耳を惹く#1。行進のような胸躍る#2。
野生の生きものを思い起こさせる、躍動感溢れる#6。
本格的なオーケストラテイストに圧巻の#7。幾層にも重ねられた繊細なアコギが絶品の#8。
凪の海のような静謐さで幕を閉じる#11(日本版にはボーナストラック#12があり)。
・・・と、枚挙にいとまがない、幅広さです。
心なしか、全体的に少しクラシック音楽を匂わせる曲構成になっています。

とりわけ、大きく趣を変えてきたな、と感じるのは、ヨンシーの歌声
ファルセットは健在ながら、地声を用いて中低音で歌う場面が圧倒的に増えています。
以前から地声で歌う場面はありましたが、従来はファルセットの「儚い歌声」が主流かつ
バンドのトレードマークでした。
それが本作では、寧ろ地声歌唱がメインで、高音部の処理としてファルセット「も」使う
というほどの転換ぶり。
しかもその地声の中低音が力強く、これまでの「中性的なイメージ」の枠を超え、
芯の通った逞しい男性らしささえ漂わせる
ようになっています。

アルバムを経るごとに、少しずつバンドの音が骨太に、かつキャッチーになってきたのは
ロックフェスやワールドツアーを沢山経験してきたことが大きいのではないかと思います。
初めは「オルタナティヴ枠」として出ていたのでしょうが
他のアーティストや、フェスの空気などにも影響され、
ロック的な力強さや普遍性に目覚めていったのかも。


本作も「Takk・・・」に引き続き多幸感があるのですが、「Takk・・・」と明らかに違うのは
奔流のように唐突に沸き上がり、自分にはコントロールできないようなものではなく、
もっと地に足がついた幸せであるということ。
今日がいい日であるように、とか、いいことがあって良かったな、とか、
明日いいことがあるといいな、といった、「今が楽しくて幸せ」という身近なもの。
特に後半にかけて、幻想的で静謐な曲が増えていきますが、それも
儚く消えていきそうな幻想ではなく、淡くも確かにここにある風景を描いたという感じ。

ジャケが象徴するように、「この世の楽園」のような理想郷が描かれていますが、
もう、この世ではないところ、即ち幻想と自閉の壁に護られた夢の世界に逃げ込むことは
ないのだろうなぁ、あくまでこの世のこの世界と対峙していくことに決めたんだろうなぁ、

そんな宣言ともとれる音世界です。
メンバーたちも、もうみんな30代。
胎児のように自分の中の理想郷に引きこもっていた少年が、葛藤や発見を経て
大人になって社会に根を張りはじめた、とでも表現できそうな、10年の過程。
彼らと一緒に、音楽も成熟したのでしょうね。
賑やかに始まって、静けさで終幕するという構成のアルバム。
穏やかな日々の何気ない幸せが、彼らの精神に根付いていることを窺わせます。

轟音の壁という防御壁や、ポストロック、前衛音楽といった理論武装はもはや意味を成さず、
今は、どんな人にもきっと感じられる、きもちいい音、きもちいい空気感を伝えるために、
一つ一つの音や曲があるように感じられました。
「つまらなくなった」「刺激が足りなくなった」と不満を訴える層もいるようですが
刺激が欲しいのなら余所に行けばたんまりと味わえます。

カラフルかつたおやかな、きもちいい音楽
現在のシガー・ロスは、私達の平凡な毎日に彩りをくれたり、安らぎをくれたりして
ひとりひとりの日常に寄り添う音楽になりました。

朝、このアルバムの前半部をかけながら支度をして、出かけた日がありました。
「今日はきっといい日になるだろう」なぜだか、そんな気分になれました。
逆に夜、後半部をかけて過ごすと、気分が安らかになって、いい気分で眠れました。
残響」は、こんな付き合い方がよく似合うアルバムだと思っています。



「シガー・ロスって今頃何してんだろ」と思っていたら、実は既にひょっこりお目覚めで、
今年はサマー・ソニックの出演が決まり、世界各地でのツアーもある模様。
そして、夏頃には、新作がリリースされる予定なんだとか・・・!
今度はどんな音楽に出逢えるんでしょうね。
楽しみでなりません。


さて、次回は、新作を読み解く鍵になるか?全くの別物か?
バンドのシンボル且つキーマンのヴォーカリスト・ギタリスト、ヨンシーのソロ作
「go」をレビューします。



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コメント

シガーロス

シガーロスいいですよね。
ついこのあいだまでシガーロス観にサマソニ行く予定やったんですけど行けなくなりました。朝焼けさんは行かれるんですか?

それにしても今年のサマソニ、ラインナップ悪すぎです。
でも夜のマウンテンで見るシガーロス、夜風の中で、気持ちいいでしょうね~~。

一度でいいから、フェスというものに行ってみたいのです

呑まれてる蔵さん、こんばんは。
フェス沢山行かれていて羨ましい限りです。
音楽ネタをよく書いているブロガーとしては「失格」の烙印を押されても仕方ないですが、
サマソニ、フジロックを皮切りに、フェスと名が付くライヴに一度も行ったことがないという・・・
恥ずかしい。どうも、慣れない環境に出ていくと気分が悪くなって体調を崩してしまうんですよ、
そのうえ金もなければ住んでいる場所もフェスとは遙か遠くだし。
いつか行ってみたいです、死ぬまでにせめて。
その前に、丈夫になるか裕福にならなくては。

生で観てみたいバンドたくさんありますね。きっと何を見ても感動するのでは。
シガーロスを生で観たら・・・その場で泣き崩れてしまうかも(笑)
夜風の中で聴くなんて素晴らしすぎるシチュエーションですね。

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