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居酒屋もへじ「"杉下右京"から大きくかけ離れた水谷豊さんがここに。ちょっと渋いけど、ほっこりする下町人情ドラマ、是非シリーズ化を!」

昨年の秋ごろに放送していたTBSスペシャルドラマ「居酒屋もへじ」を
先日再放送していたので、満を持して観てみました。
私は「相棒」でしか水谷豊さんを知らない世代というか視聴者なので、
"杉下右京"でない水谷さんを一度観てみたいと前から思っていたところでした。
なんだかコミカルそうで、人情味ありそうで、番宣CMで気になっていたけれど
随分迷いながらも本放送で観なかったのは、躊躇う所がありまして・・・
やっぱ、なんといっても、このキャストが。

水谷 豊 松坂慶子 桂 文珍 角野卓造 川﨑麻世 松村雄基 六平直政
佐藤 輝 緒形幹太 北川弘美 高田 翔 諸星すみれ 土師野隆之介
奈良岡朋子 石坂浩二


・・・渋すぎ!「自分にはまだ・・・早いような気がする」と思って、
あともしかしたら重複する番組なんかがあってのことだったかもしれませんが、
結局本放送は観ず。しかし名残惜しさを感じていたころ、今回の再放送!
もうこれは何かの運命だと思って迷わず録画し、後から観てみました。
そしたら、期待を裏切らず、ちゃんとおもしろく、心にしみるいいドラマでした。
但し、プロデューサーが「渡鬼」の人(石井ふく子さん)だと観る前に知っていたら
再放送でもやっぱり観なかったかも・・・偏見で。
偏見や食わず嫌いはよくない、と改めて実感させられる出来事でもありました。


水谷豊さん演じる主人公「もへじ」は、本名を「米本平次」というのですが、
「ガキの頃から、へのへのもへじの絵描き歌の顔にそっくり!」という由来で
みんなから「もへじ」と呼ばれています。(水谷さんの顔立ちの悪口じゃないんだよね?)
口癖は「アイター!」。何か驚くような呆れるような出来事が起こった時に
思わずおでこを叩いて言ってしまう台詞です。ちょっと古臭い(笑)
困った人がいたら放っておけず、元常連客で老人ホームに入りたくなくて
もへじ宅に逃げ込んできた「じっちゃん」や、親のいない子どもたちと共に
端からみると血の繋がった家族のような、不思議な共同生活を送っています。

もへじが営む「居酒屋もへじ」は、常連さんだけの溜まり場で、一見さんお断り。
東京の下町の仲間たちが、毎日のように集まって、お酒片手におしゃべり。
もへじを含め、みんなが言いたいことを遠慮なく言い合う、気心知れた仲間です。
代金も「あるときでいい」と、千円くらいもらっただけで済ませちゃう。

実に、杉下右京さんからは想像もできない役柄や世界です。
プロデューサーの石井さんは、本作の脚本を書いて長いこと、
「犯人を捕まえるのに忙しくて」スケジュールが空けられない水谷さんを待って
いたそうです。石井さんと水谷さんは私的には長い交友関係を続けながら、
お仕事としては23年ぶりのタッグとなったのだそう。そこで、あえて、
水谷さんがこれまであまりやったことのない役柄」を用意したのだとか。
しかし、犯人を捕まえるのに忙しすぎたせいか、時々右京さんが顔を出したり、
「あれ?水谷さんってこんな棒演技だったっけ・・・?」と感じられる部分が多少。
ギアチェンジがあまりに大変だったのでしょうか。
実力派ベテラン俳優さん揃い踏みの布陣なので、尚更、アラが少しでもあると
目立ちやすいのかも。
でも、おひとよしで生活感たっぷりな水谷さんを観るのはなかなか楽しく、
かすかな表情の演技などは絶妙だったので、話し方の面でしょうか、気になったのは。
それ以上に、この記事を書くために公式HPを見て初めて気づいたのですが
もへじは何と「44歳」で、川﨑麻世さんたちと同期という設定!
実際の水谷さんはもう還暦間近。い、いろいろチャレンジャーな・・・
そして、水谷さんと同じくらい、川﨑さんの「下町ののんきなあんちゃん」振りにも
びっくりしました。えっこんな役もやるの?!って。サプライズが多いですね。


さて、常連だらけの気兼ねない「居酒屋もへじ」も20周年。祝い酒を始めるところで
突然、松坂慶子さん演じる酔っぱらいの女性、陽子が乱入。
(「たいようの陽子」と言っていました。どこかで聞いたことがありますね。笑)
もへじは「一見さんお断り」のルールを説明しますが、陽子は聞く耳を持ちません。
笑い上戸に泣き上戸、絡み酒、歌って踊って、トイレに駆け込んで、しまいには
もへじの部屋で酔いつぶれて眠りこけてしまいます。酔っぱらいのフルコースです。
美しい女性の出現で鼻の下を伸ばしてちやほやしていた仲間たちも、これには顰蹙。
しかも翌日、陽子がお詫びの品を持って居酒屋もへじに来店、もへじが贈り物を
断ると、「ここで働かせてほしい、ただでもいい」と・・・!
陽子の出現で、もへじとその仲間たちには波紋が広がり、話が進んでいきます。
松坂さんが上手いんだなぁ。歌い踊る姿と、苦悶する姿とで、180度違って、
まさにヒロインです。
そのうえなんと、水谷さんとは歳も生まれた月も同じだったりするそうです!

以降は、公式HPに掲載されていないネタバレなので、知りたくない方はブラウザバックで。









陽子にどうやら哀しい過去があるようだと知った、もへじと仲間たち。
もへじは、陽子とどう接したらよいのかわからず、いつもの喫茶店で
店主の「ねえちゃん」(実の姉ではない)こと由亀さんに相談。
その過程で、もへじにも陽子とよく似た哀しい過去が10年前にあって、
当時のもへじは、今の陽子のような振る舞いだったことが明らかになります。

もへじには18歳の「息子」明がいるのですが、陽子は明を見るなり
部屋を飛び出して、泣き出してしまいます。
陽子は旦那と息子を不慮の事故で亡くしていて、その息子さんが
明と同じ18歳だったからです。
一方のもへじは、10年前、愛する妻を突然の病気で亡くしてしまいました。
二人には子どもができず、当時から明を育てていたので、もへじと明は
父子家庭に。喪失感と苦労の絶えないもへじを支えたのは、明の存在でした。
だから、ねえちゃんは、陽子と「一緒にいてあげる」ことを助言します。

陽子は物憂げな顔でもへじに「何もかもどうでもいい、死んでしまいたい、と
思ったことはあるか」
と尋ねます。
そこで、もへじは自らの体験を陽子に話します。
もへじも、妻を亡くしたとき、毎日のように酔いつぶれて、
ねえちゃんの前でやたらと明るく振る舞いながら、死を考えていました。
そんなときラジオで「自分の為には生きられないけど、他人の為になら生きられる
という言葉を耳にして、以来、その言葉を救いにしてきたのです。
だから、じっちゃんや、下の子ども達も引き取ったのです。
似たもの同士の二人。淡い恋心を抱き始める、もへじと陽子・・・。


その一方で、じっちゃんや明にも、それぞれ問題が起こります。
というか、じっちゃんの場合は、恐るべきやんちゃ振りなのですが。

桂文珍さん演じるじっちゃんが倒れた!という報せを受けて
ある家に向かうもへじと陽子。
じっちゃんは前の年、心臓発作を起こしているので、不安が募ります。
しかし行ってみると、娘か孫かというような若い「ガールフレンド」の家で、
ハッスルしすぎてしまったとのこと。しかも彼女は、じっちゃんが
心臓発作で入院したときの担当看護師さんといういわくつき。
じっちゃんの性欲はとどまることを知らず、居候先のもへじの家にまで
ガールフレンドを連れ込むほど。痛快すぎて笑えます。
しかも、じっちゃんはもへじにしょっちゅう、こづかいをねだるのです。
「居酒屋もへじ」の経営を考えると、明らかに厳しすぎる、多額のこづかいを!
もへじにとってじっちゃんは「目の上のたんこぶ」で、もへじ、しょっちゅうため息。

高田翔くん演じるは高校3年生と、難しい年頃で
もへじとあまり口をきかず、予備校もサボりがち。
そしてある日、顔にひどく殴られたようなアザを作って帰ってきます。
「いじめられてるのか?相手は一人二人じゃないんだろう?」と憤るもへじに対し、
明はクールに「自分の問題だから、自分で何とかする」と突っぱねます。
しかし、警察からもへじに連絡が入って、もへじと陽子が向かいます。
ボロボロの傷を負った明。なにやら大喧嘩をしてしまったそうです。
もへじは、いじめられた相手達にやり返した結果だと見抜き、なぜ喧嘩をしたのか
明に尋ねます。すると明は「おとうの悪口は絶対に許せなかった」と・・・
悄然とするもへじ。
実は、明のお父さんともへじは友達だったのですが、明のお父さんの家が
経済的に困窮していたため、お金を得る手っ取り早い手段として、お父さんは
暴力団方面に手を出して、道を踏み外し、現在服役中の身なのです。
明は母親の顔を知りません。明を産んですぐに浮気し、行方をくらませたからです。
亡くした息子は18歳。話を聞いて、陽子の中で、息子と明の存在がリンクします。
母親のように明を抱きしめる陽子。その胸の中で、今まで封じ込めていた苦しみが
溢れ出してしまった明は、思わず号泣。だけど、こらえるように泣く
のです。
とても胸を打たれる演技、そしてエピソードでした。
膿を出して心機一転した明は、次の日から晴れやかな表情で、家を出るように。


このままずっと「居酒屋もへじ」で働き続け、いずれはもへじと・・・と
みんなが思っていた矢先、陽子がみんなとの別れを宣言します。
前々から田舎の母親に「帰ってこないか」と言われていたのに、長いこと帰らずに
いたので、この際だから母親の顔を見てくると決心した、と。
陽子には理由があるのですが、みんなからすると、出会いも突然、別れも突然。
特にもへじには・・・。
旅立ちを明日に控え、店の片付けを終えた、帰り際の陽子は、
不意に後ろからもへじをギュッと抱きしめちゃいました。
戸惑いながら、もへじもその両手をそっとつかまえて。
だけどそれ以上進展することはなく、逃げ帰るように去る陽子と、
陽子の感触の余韻を、一人引きずるもへじ。
本当、似たもの同士。いい歳して、ちょっと不器用な二人です。

別れの日。手作りのおいしそうなお弁当を土産に、もへじは陽子をお見送り。
不器用な二人は、後腐れのないようにあっさり別れようとします。
「いちにのさん、で、振り返らずに歩こう」と。
しかし!いつからいたのか、じっちゃん登場。いいおせっかいを焼いてくれます。
「戻ってきたら俺と一緒に、みたいなことを言えないのか」なんて言って。
当然、意地っ張りで恥ずかしがり屋なもへじは大否定して、じたばたじたばた。
陽子もクスッと笑ってしまった所で、お話はおしまいです。



笑いあり、人情あり、いきいきした下町の日常あり、恋のロマンスあり。
水谷さん曰く、以前はこんなドラマや、こんな人々が沢山あった・いたんだとか。
他のキャストの方々も、「居酒屋もへじ」みたいな行きつけのお店の想い出や、
3.11で「人と人との繋がりの重要性」を改めて実感させられた今こそ
求められるドラマであると、インタビューで語っています。
石井プロデューサーにしてもその想いは同じ。
名役者が揃い、かつ、ドラマに懸ける想いもみんなひとつだったから
こんな素敵な作品が出来上がったに違いありません。



続きが気になりますね。もへじと陽子はあれからどうなった?あれっきり?
また新しい、訳ありなお客さんが来たり去ったりしているのかな?
もへじと陽子の続きものでもいいし、一話完結で色んな人が来るのでもいいので
(個人的には、もへじと陽子がくっついて欲しいなぁ)
ぜひとも続編を観てみたいところです。
水谷さん、犯人を捕まえる合間に、また居酒屋開いてくれないですかねぇ?

最後に蛇足ながら。ハリセンボン春菜の「~じゃねーよ!」でしか知らなかった
角野卓造さんを初めてちゃんと観まして、こんなに上品な役者さんだということも
初めて知りました。春菜の延長みたいなキャラを予想していて、ごめんなさい(笑)
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・音楽、映画、漫画・・・雑多な題材をとりあげ、レビューのような感想のような、「好きなものの話」をしています。音楽寄りの題材が多めかも。
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