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Salyu:その2 TERMINAL「この歌声はどこまで飛翔していくの?柔らかさとオーガニックな風合いを湛えた、極上の声が詰まったアルバム」

リリィ・シュシュ~1stまでは、ややアングラ寄りな人気を博していたSalyuですが、
彼女が一躍メジャーな存在として注目される出来事が起こります。
それは、小林武史氏&桜井和寿氏による「ap Bank」プロジェクトの一環
「Bank Band」への参加。ご存じ、桜井さんとのデュエット曲「to U」です。
それまで、TVに出ることはあまり多くなかったSalyuですが、
これをきっかけに一気にメディア露出が増え、当時、めざましテレビで軽部アナが
「僕のイチ押しのアーティスト」として紹介してくれたりして、
結構嬉しかったのを覚えています。(当時、朝はめざまし派だったもので)
フジはかなり、Salyuを推してくれてますよね。「コルテオ」のテーマソングとか、
最近ではめざましテレビのテーマソングに抜擢したりとか。

先日「僕らの音楽」で当時のことを、Salyuが加藤綾子アナと楽しそうに喋っていましたが
実は「毎日、野菜ばかり食べて」必死にダイエットに励んでいたとのこと・・・
確かに、今、当時の映像を振り返ってみると、結構・・・大分・・・ぽっちゃりしているかも。
でも、この頃のパワフルな歌声は、何気に、そのしっかりした体格がもたらした所も
大きかったのではないか、と感じるエピソードでもありました。


梅酒のCMのテーマソングになった「Tower」、映画の主題歌となった「プラットホーム
など、2006年のSalyuは正に、飛ぶ鳥を落とす勢いでした。
そうして翌年、満を持してリリースされたのが、2ndアルバム「TERMINAL」。

TERMINALTERMINAL
(2007/01/17)
Salyu

商品詳細を見る


これまでのジャケや歌詞カードでは、あまりはっきりと写されなかった、顔。
(シングルのジャケでは最初から結構あったようですが、基本アルバム派なので)
前作とは違い、今作では、歌い手Salyuの姿が、はっきりと大写しになっています。
初めて見た時「へぇ、Salyuってこんな顔してるんだ」って思ったのを覚えています(笑)。
このジャケを見るだけでは、「ぽっちゃりしている」のはよくわからないのですが・・・


アルバム全体が長く、曲調も多岐にわたっているため、最後まで聴くと少々冗長さがあり
楽曲の充実度も(シングル曲などは別格ですが)1stと比べるとやや劣るのですが
このアルバムで何より耳を惹かれ、胸を衝かれるのは、Salyuの圧倒的な歌声
例え曲に「物足りないかな」という印象があっても、詞に違和感があっても(後述)、
彼女の、脂が乗りきった、力強く伸びのいい声が、半ば強引に全部引っ張ってくれる
ほどの威力です。その意味で、2ndは「歌い手Salyuのベストワーク」と呼びたい。
前作は「コンセプトの勝利」で、今作は「歌い手の勝利」とでもいいましょうか。
1stから比べて飛躍的な進化を遂げ、強靱なバネのようなしなやかさと高みを
手にした一方で、近年ほど「隙がなくて完璧」というふうでもまだなくて、
柔らかさとオーガニックな風合いのある、丁度いい「すごい歌声」具合
(その意味で、今回のジャケもまた、うまいなぁ・・・)
Salyuのキャラクターイメージが1stなら、歌声のイメージは本作が、未だに強いです。

少女性を残しながらもロックな「風に乗る船」、躍動感に溢れる「Tower」など
曲の良さと歌声の良さがうまくかみあったシングル群は、例外なく会心の出来ですが、
アルバム曲の「夜の海 遠い出会いに」は、もはや凄まじいまでの迫力!
まるで、自分の声がどこまで飛距離を伸ばせるか試して、声と戯れているような、
全身全霊で自らの声の可能性の限界を引きだそうとしているかのような・・・。

鬼気迫るほどのその世界に、聴いていると思わず息を呑んでしまいます。
彼女自身で作詞にチャレンジした「I BELIEVE」の、後半の盛り上がりも素晴らしい。
また、あの「to U」のSalyu ver.もあって、10分近くある本格的なバラードですが
長尺にもかかわらず、じっと聴き入るだけの説得力があります。

そんな「暴れ馬のごとく、感性と技術を全開でぶちまけるSalyu」を象徴するかのように、
アルバム曲は、全体的にちょっとロック寄り、バンドサウンドが多くなっています。
1stのふわふわした浮遊感が消え、代わりに地に足の付いた質感があります。
メジャーシーンでのヒットを意識したポップ~ロックといった具合でしょうか。
バンドサウンドにキーボード少々で、冒頭の「トビラ」とか「ミスチルか?」なんて。
いまにも桜井さんが歌い出しそうな曲がちらほらあります。
桜井さん、このアルバム内の曲をカヴァーしてくれないかなぁ。
結構、ミスチルと通じるノリの曲が多いんです。

「バンドサウンド」「ちょい音響な音」のほか、新たに加わった要素があって、
それは歌詞に新しい要素を加えた人と同一人物からのインスパイアと思われるのですが
誰か・・・まぁ言うまでもないでしょう、当時コバタケさんと不倫関係にあった
一青窈さんでありまして。
彼女が詞を手がけた曲は、「純和風テイスト」というような色づけがされているものが
多いのです(シングル曲の「name」もそう)。
そして「歌詞の新しい要素」というと、歌詞カードを見るともうひと目でわかるほどの
一青窈ワールド。あの独特の個性的な言葉選び、女らしさアピール全開の世界観。
これがSalyu像と大きく乖離しているように感じられ、歌詞でも「Tower」なんて
「我慢してたら良いことがあるって 誰かの迷信ね」だの
「だって 好きなことしていいのよ」だのと、完全にお二人のお花畑の再現と化していて
「自分の曲でやれ!Salyuを巻き込むな、代弁させんな!」
と、当時少なからず怒りを禁じ得なかったのですが、
今聴き直すと(特に、3rdでSalyuが自ら書いている歌詞を見て思うに)
案外彼女が持ち込んだ「女らしさ」のテイストが、Salyuの今までなかった
新たな魅力を引き出した
結果に繋がり、同時にSalyu自身にも、少女から女への脱皮や、
コバタケさんが望むような「いつまでも子どもみたいでいい子なさりゅちゃん」を超えて
自分の欲しいものを自ら取りにいく、したたかな強さをもった自己イメージの構築などを
促したのじゃないのかな、なんて思ったりもしました。
というか、一青さんが促すまでもなく、Salyu嬢ってもともと恋愛体質なのかもね。

・・・とはいえ、当時、友人とのカラオケで「Tower」を入れると、
作詞作曲クレジット(作詞:一青窈 作曲:小林武史)が出た時点で大爆笑が起こり、
「それ、おめーらのことじゃねーか!」って皆が揶揄してた
のもまた事実でして。
コバタケさん、私情はもうちょっとほどほどにして欲しかった。
正直、この後でSalyuが生き急ぐかのようにコバタケさん離れに走り、迷走していく姿を
見ていると、2ndで二人の私情に巻き込まれるかたちになった体験で、嫌気や危機感を
覚えたんじゃないだろうか・・・と危惧してしまったので。
実際の心情はもっと複雑でしょうが(3rdアルバムの話になるので、ここでは割愛します)。


と、まぁ、色々思う所もある一枚ではありますが、雑音を除いて聴くなら
「Salyuってすげー!!!」と、その歌声に度肝を抜かれること間違いなしの
(個人的に)一番いい声をぎゅう詰めにした、美味しいアルバム
なんじゃないかと。
こんなに歌えたら気持ちいいだろうなぁ、って思わずにはいられません。
このアルバムでSalyuは、全身で「歌う喜び」を表現しているようで、
聴いているこっちが「歌うのが本当に大好きなんだね」と、何だか嬉しくなってきます。



さて、この後は、自らが選んだ道とはいえ、茨の道が待っています。
大きな変容の季節。
そのさなかで迎えた、デビュー10周年。
次回は、ベストアルバムの簡単な紹介と、それを引っさげたライヴツアーを
観に行った時の記憶を引っ張り出したライヴレポをしてみようと考えています。



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