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【漫画】安倍夜郎「深夜食堂」感想

しみじみ染みるドラマ「深夜食堂」を観ていて、
あとは、雑誌で「グルメ漫画特集」を読んでいて、
手に取りたくなった大判サイズのコミックス全13巻(現時点)の
安倍夜郎さんの漫画、深夜食堂
今回は、一連の既刊を2週間かけて全部読んだ感想です。
ふあーお腹いっぱい。



深夜食堂 13 (ビッグコミックススペシャル)深夜食堂 13 (ビッグコミックススペシャル)
(2014/09/30)
安倍 夜郎

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まずは、ドラマを先に観ていた作品なので、どうしてもドラマとの比較がしたい。
ドラマと原作の比較
原作は、1回の連載につきわずか10頁の短い漫画である。
ドラマの30分も短いけれど、原作の尺は更に短い。
そんなことも手伝って、ドラマ化は相当、大変だったのだろうと思われる。
・ある話がドラマ化されるとき、原作の話にかなりエピソードや設定が
付け足されて、ときにほとんど別の話になっている。
複数の話をひとつの話にまとめてドラマの一話になっていることすらある。
原作では漫画という表現だから許される「言葉足らず」「余韻」が多くあり、
それではドラマとして成り立たないためだろう。
・初期の話が、現在放送中のSeason3に出てきたりして、
連載順はほとんど関係ない。ドラマオリジナルの話がかなり多いぐらいだ。
・原作では、ドラマ以上に、特定の常連さんが何度も登場していて、
いつもモブとして出ているような常連さんに、急に事件が起こり、主人公になったり。
ドラマでは新しく出てくるゲストが基本、主人公(原作も原則そうだが)。
・原作は月1~2回連載しているので、春夏秋冬の深夜食堂が存在する。
ドラマだと秋冬のクールを狙って放送しているので、深夜食堂はいつも冬だ。
それにしても、かき氷はセルフサービスって、面倒くさすぎじゃないか?
・原作では店の外に出て普段着で過ごすマスターの姿が登場する。
ドラマでは絶対にそんな場面がないので(今度公開される映画ではあるらしい)
ちょっとわくわくする。
原作のマスターの容姿は「元やくざ・・・?」というような雰囲気。(実際どうなのかは
まったく明らかにされない)
そして、あのめしやは、とある人物から譲り受けたものだということが判明する。
逆に、ドラマでは、マスターの目元の傷について、ドラマオリジナルキャラクターとの
関連が示唆されていた。それぞれの違いを見比べるのも楽しい。
ドラマで、漫画で、これから謎が明らかにされるかもしれないしね。

コミックスで気付いたこと ―「漫画」としての特徴―
・凝った装丁
毎回毎回、モノクロの「めしや」遠景の絵の上に、トレーシングペーパーがのって、
そこに白で、雲、雪、雨、枯れ葉、花びら、星、霧、火の玉(ユーレイ)などが
印刷されて、仄かで美しい。高い金を払っただけの質感ってものだ。
・独自の造形
安倍夜郎さんの描く絵はとても変わっている。
デッサンとかちゃんと整っているのか?というような危ういタッチなのだが
絵の個性で独自の世界にもっていって、成り立たせてしまう。
卵みたいな卵形の顔。メークインみたいな面長の顔。
ぼたりと零れ落ちそうなおデブ顔。
ユーモラスでチャーミング、記号のようでもある。
漫画でしかできない風合いを醸し出している。
・モチベーションを高めてイノベーションを起こさなきゃ
今のは、実際に客の会話で登場した台詞である。
どうにもリアリティのない台詞回し、新聞や雑誌の見出しなどが
コミックス前半~中盤にかけて散見される。
本当にこれが小学館漫画賞を受賞する超人気漫画なのか?
驚いてしまう(中盤以降になると少しずつ改善されたように思う)。
でも、そういう場面があっても、頁を繰ってしまうのが、この漫画の魔力。
・ふりがなの多用
店(うち)、旦那(あのひと)、ユウキとゲンキ(ふたり)などなどなど、
たびたび、ちょっと無理ないか?というようなふりがなが登場する。
ビーイング系列アーティストの歌詞のようでもある。ちょっとくどいかも。
・後半からの展開の豊かさ
コミックスの巻数が進むにつれ、料理の幅が広がっていく。
たまに、作り方説明が詳しく入ったり、簡易レシピまでついたりする回も表れる。
しかも実際のお店による協力までクレジットされていたりする。
凝ってる。面白くて、思わず作ってみたくなる。
登場人物の出身や食べ物の内容も全国津々浦々に展開されていく。
もちろん職業も多彩だ。毎回、話考えるの大変だろうな。

深夜食堂あるある
13巻も読んでいると、「あるある」が出来てしまう。そりゃあね。
・(脳梗塞で)倒れがち
「だれかれが倒れた!」という展開が3回に1回は出てきているような。
倒れた、入院した、実家に帰る、人生見直す、のセットも多い。
具体的な病気名としてはなぜか脳梗塞が4回はある。なぜに?
他にはがん、骨折、アルコール中毒など。あまり種類は多くない。
・実家や故郷に帰りがち
うまくいかない人生の最後に、「実家に帰ってお店継いだ」みたいなオチが
多いのも気になる。
せっかく東京に出てきたのに、みんな簡単に実家に帰りすぎ。
地方だと職や医療機関がなくて、帰りたくても帰れないケースだって多いのに。
もちろん、帰れない悲劇を描いた物語だってあるけれど。
思い出の味を実家や故郷に求めすぎている感もある。
リアルな田舎出身者としては、そこはどうしても目に付く。
・恋愛の展開が早すぎがち
10頁で始まって終わる話だからそうしないと間に合わないのだろうが
めしやで出会ったり再会したりして、あっという間に
付き合い始めたり、関係を持ったり、同棲したり、結婚したりしがちである。
時々笑いながら読んでいた。
この漫画は不条理世界のギャグ漫画だと思って付き合ったほうがいいかも。
漫画にリアリティを(絵・物語とも)求める人には恐らく向かない。

深夜食堂の世界観と魅力
・居場所
一ヶ月半行かないだけで「もう一ヶ月半来てない」というマスターのモノローグになる。
常連さんは、週に何回も、めしやに通っているふうである。
まるで家、定期的に通うのが当たり前の場所。
・喜怒哀楽
おいしい顔、困った顔、泣いた顔、笑顔・・・
喜怒哀楽、客のありのままがさらけ出され、受け止めてもらえる場所がめしや。
マスターや常連さんが、ある程度の距離感を保ちながら、時には背中を押したり諫めたり。
「おいしい!」と笑う女性がみんなかわいいのがとても印象的。
かわいい女性探しをする漫画としても案外いいかもしれない。味のある系だけど。
・全ての職業に貴賎なし
めしやの客には、水商売や風俗の業界で働いていたり、それらを利用していたり
といった場面が多く登場する。完全に大人向けコミックスなのである。
ストリップ嬢と舞台俳優を比べて前者がひけめを感じる必要のない場所。
かえって、えらい人が浮く(たまに常連客になるケースもあるが)。
働いて、おしゃれじゃないけど安心するめしを喰っていれば、それでよし。
逆に言うと、働いていない人は基本的に登場しない。
働けなくて苦しんでいる人も見てみたい気がするが、それじゃめしやに行けないか。
・まるで小咄
とんちの利いた漫談みたいな話から、後味切ない人情噺まで。
笑えてしんみりする、うまくまとまった小咄をノンストップでお届け。
もっともっとと、頁を繰ってしまうのだ。

読んでいると思わず食べたくなる、やってみたくなる
めしを作ったり食べたりする場面はこの漫画の優れた「脇役」であって
主役は人情噺なのだが、絵や「おいしい!」と喜んでいる登場人物を見ていると
つられてしまう。以下、私がつられた食品や作り方をリストアップする。
たらこを焼く・生で食べる/ポテトサラダ/バターライス/猫まんま/
さんま蒲焼き丼/ツナマヨ丼/コンビーフ炒め/春キャベツ/
カップ焼きそば(巻末の宣伝漫画にて)/塩鮭/(湯)豆腐/リンゴ/梅干し/
焼きうどん/まいたけの天ぷら/ロールキャベツ/ブリの照り焼き/ワンタン/
コロッケ(からあげ、エビフライも)そば/レタスチャーハン/
わかめとキュウリの酢の物/フライドポテト/アボカド/ホーレン草のソテー/
他にもいっぱい。
この漫画に影響されて粗食に妙な憧れを持つようになった。
我ながら呆れてしまうが、やっぱ、グルメ漫画だな、この漫画は。
ああ、次から次へとおいしそうだ。


頼めば何でも作ってくれる食堂なんてどこかにあるのでしょうか?
週に何度も通って、居場所として機能するめしやはよくある話?
深夜から早朝「だけ」営業している食堂ってよくあるのでしょうか?
お店でここまで常連同士の距離が近いのはなかなかないのでは?
不思議なお店。お店というより福祉関係のセンターに似ています。
でも福祉くさくなく、あくまで中心はめしをおいしくいただくこと。
そして人と人とが自然に繋がり合う。
ああ、こんなめしやがあったらなぁ・・・・・・
今日もまた、そんな「桃源郷のような場所」を切望してやまないのです。

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コメント

ユートピア

桃源郷のような場所、あったら良いですよね。
「深夜食堂」は、このブログで初めて知りました。
そういえば、最近、漫画読んでいないですね…。

ネットが便利になる一方で、
人と人との心温まるつながり・付き合いが
見直されていますよね。

少しの思いやりがあれば、もしかしたら、
桃源郷に近い場所は、作れるかもしれませんね。

Re: ユートピア

こんばんは。
ネットでも一定のつながり感を得ることはできるし、世間からの完全孤立は防げると思います。
私も何度、絶望と孤独の淵から掬い上げられてきたか。
だから今こうしてブログに向き合っているわけで。
でも、目の前の人がパソコンやスマホにべったりになっている姿を見ていると、
少し複雑な気持ちになりますね。
目の前に人がいるのに、どうしてネットやゲームから離れないのだろうと。
それって失礼じゃないのって。
直接つながって初めてわかることも、多いですもんね。
ネットもリアルも両方活用するのが現代の賢いサバイバル法ですね。
つかず離れず。

理想の桃源郷がないから俺がつくる、という究極のクリエイトを
安部夜郎さんはしているかもしれません。
そう、欲しいものがなければ、自分で作っちゃえばいいかも!
まぁ、それが難しいからこの漫画が売れるわけで。。

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