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ルー・リード 後編 ベルリン+ロックの幻想「悲しくて美しい愛のものがたり、予告は既に最初から」

遅くなりましたが、ルー・リードの記事、後編です。
前編で書いた大ヒット作「トランスフォーマー」の次にリリースされた、
実験的といってよいほどまるで毛色も狙いも違う意欲作にして、こちらも名盤、
3rdアルバム「ベルリン」と、おまけ(?)で1stアルバム「ロックの幻想」を
ちょろっとレビューします。


ベルリンベルリン
(2013/03/06)
ルー・リード

商品詳細を見る

前作「トランスフォーマー」のあの華やかでポップなジャケの面影をまるで残さず
荒涼とした(それでも、二色刷りでいろいろと試してはいる)この画はいかに?
しかしこれこそが、3rdアルバム「ベルリン(Berlin)」から
浮かび上がってくる景色そのものだ。
ルーは、ボウイと同じような、ロック/ポップ・スターの出世街道の道を選ばなかった。
昔からずっと創ってみたいと考えていた、「ただそこに存在している人たちを巡る、
いつでも誰にでも起こり得ることばかりの、70年代に生きる人間の現実的なストーリー」
それを実現させることを選んだ。
物語性や、芸術的であることを重視しつつも、商業的な側面にも目を配った作品。
「陰鬱」という先入観を持って聴くと、思いの外聴きやすくて「あれっ」と肩すかしを
喰らうのはそのせいである。このへんのバランス感覚ゆえに「名盤」なのだろう。

プロデューサーのボブ・エズリンは、本作を作り終えて、ルーにこう言ったという。
これは箱に入れて、箱ごとタンスにしまって、そのまま二度と聴かないのが
一番だと思う
」・・・有名な台詞である。
彼がそう言うのもよくわかる。中盤まではある程度聴きやすいアルバムなのだが、
後半からラストにかけて、本作の物語はただただ哀しい顛末を迎える。
そこには救いがない。
制作に携わった者たちは皆、ひどく苦悩し、暗闇に堕ち、そして疲弊した。
かくして本作は「トランスフォーマー」とは違った意味で「渾身の作品」となった。

全10曲の「いつも誰にでも起こり得る、現実的なストーリー」と曲とを辿ってみる。

#1 プロローグ、二人の光景。どこかで見覚えのある気がするが・・・?
イントロが怖い。「ハッピーバースデー」の歌、泣き声のように歪んだ声。

#2 彼女のこと。バーで歌を歌い、それから・・・退廃的な暮らし、彼女の「定め」。
サビの「No,no,no」部分が印象に残る、ちょっとポップで、シュールな曲。

#3 彼のこと。富豪の息子と生い立ちの貧しい息子について持論を展開するが、
当の彼自身は至って無関心で無気力。ベースが効いている、悲しめだが力強さもある曲。

#4 彼女=キャロラインと彼=僕の関係。「彼女は僕を馬鹿扱い」「ほんの遊び」だが
「そうさ僕の女王なのさ」という主従関係。華やかなアレンジ、曲調、どこかやけくそ。

#5 「僕」はクスリでもやっているのだろうか?彼女との関係に傷つき、苦しむ。
「暗い感覚」というタイトルとは裏腹な「明るげ」な曲調が皮肉。
 
#6 妙に陽気になって、キャロライン(と思しき女)に暴力を振るい始める「僕」。
第三者である「ジム」との関係が不可解。ここでも詞と曲は絶妙にマッチ。

#7 キャロラインを殴ることで、「僕」は彼女より優位に立つ。ドラッグ狂いになり
人生にも失望するキャロライン。哀しそうに、寂しそうに、呟くように歌われる。

#8 キャロラインの乱れた暮らしぶりが災いし、彼女の子どもたちが連れられていく。
「落ちぶれた街の女」の悲劇。しみったれているが、どこかあたたかくやさしい。
赤ん坊と思われる子どもの泣き声がかなり怖い。この辺からどんどん悲壮になる。

#9 二人の部屋の、始まりと終わり。キャロラインと「僕」が愛し合った日々と、
彼女が手首を切った夜。アコギ弾き語りで侘しく囁かれる孤独な心。怖い。

#10 エピローグ。どうやら男は再婚して子もおり、アルバムを開いて「あの頃」を
回想しているようだ。「Sad song」・・・ストリングスも交えた壮大な幕引き。


私は70年代に生まれていないので、本作が実際のところどれだけリアルなのか、
あるいは退廃的が過ぎるのか、詳しく述べることはできない。
しかし、オルタナ系列の音楽好きとして90年代米の酷い有様についてはそれなりに
知識を基にしてだが、ある程度の想像ができる。
70年代と90年代はそうした意味でも似ているのかもしれない。そういえば、90年代の
ロックは、少なからず70年代の音楽―ルー・リードを含む―へのリスペクトがある。
そこから、本作で描かれているらしい、「70年代のリアル」を想像する。
あるいは、時代とは切り離して、ひとつの物語の世界として、「僕」とキャロラインの
陰鬱で出口の見えない、悲劇的な恋人同士の情景を想像してみる。

1曲あたり5~6分もある曲がぼちぼちあって、そういう意味でもキャッチーさからは少し
遠ざかっているのだが、本作の「シャレにならないけだるさ」の演出には効果的だろう。
重い。侘しい。しかしほのかな優しさと、ドライで客観的な眼差しが、質感を調整する。
哀しいけれど美しい、愛のものがたり。
ルー・リードの本当の姿はここにあるのかも。


本作の予告編ともいえそうな楽曲が1stアルバム「ロックの幻想(Lou Reed)」にある。

ロックの幻想ロックの幻想
(2009/06/10)
ルー・リード

商品詳細を見る

スティーヴ・ハウとリック・ウェイクマンが参加しているので、イエスヲタは歓喜だろうが
VU(ヴェルヴェット・アンダーグラウンド)の未発表曲集アルバムをチェックしてしまった
というなら、目新しい曲はたった3曲しかない。
というか自分は正に今書いた両方にあてはまる(苦笑)。
聴き慣れたVUの曲のリアレンジ(売れ線狙いの、明るく力強いものが殆ど)を楽しむ位しか
聴き所はないかも・・・華やかに、別物のように生まれ変わったアレンジも楽しいけれど・・・
そう思っていた所に、#5「ベルリン」、これは新曲3曲のうちの1曲である。
まさに先ほどレビューした「ベルリン」の#1で描かれているそのままの光景がある。
この曲は2つのモチーフによって構成され、後半のモチーフがちょっと#4「リサ・セッド」からの
流れに呑まれている感もあるが(#4がVUきっての名曲という要因も)
前半には、まるきり同じような質感をもったモチーフがある。
そう、ルーはキャリアの始めに、これから自分が向かう道を予告していたのだ。
未発表曲がどうこうと言わないで聴くならば、ロックンロールで爽快なアルバム。



ルー・リードの作品は膨大にあり、キャリアもそれこそ「ついさっきまで」で、
メタリカとコラボするほど、自由な発想で意欲的な活動を続けていた人です。
それらをある程度網羅し、耳に馴染ませた頃、この連載記事の続きが
ある日突然書かれるかもしれません(笑)。
とても魅力的で才能豊かなカリスマ、その死が改めて惜しまれます。
R.I.P.


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コメント

こんにちは^^
ルー・リードの死、携帯ニュースで見ました。
彼の曲、リンク先から試聴してみました。
悲しいけれども、美しいメロディですね。
燃える朝やけさんの物語風の紹介も楽しませていただきました(笑)
ご冥福をお祈りします。

朝やけ劇場へようこそ(笑)

sayaさん、こんばんは~。
10日にいっぺんペースの更新になってしまった辺境のblogまで、わざわざお越しいただき
ありがとうございます。
う~んそろそろblog中心の時期も作ろうかな・・・記事を書きたい音源ばかりが溜まる・・・

>朝やけさんの物語風の紹介も楽しませていただきました(笑)
え、私の文章、物語風ですか(汗)
CDを聞き取った感想と、CD付属のライナーノーツにある情報やインタビューを基に
このところの記事は書いているのですが。
いいですかね、物語風でも(笑)
こういうふうにしか書けませんのでご了承願います。。

> ご冥福をお祈りします。
ですね。改めて、R.I.P.

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