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大貫妙子&坂本龍一:UTAU「国宝もののコンビによる極上のひととき」

独特の佇まいが、強烈に耳にやきつく、歌声。
幼少期に聴いた「メトロポリタン美術館(ミュージアム)」、
小中学生の頃に耳にした「Shall we dance?」のテーマソング・・・
ほかに多くのCMソングなど、多種多様のシチュエーションでその声を
誰もがきっと耳にしているであろう歌うたい、大貫妙子さん。
そして、彼女の活動を、ソロ・デビュー時から何かとサポートしてきた
世界の「教授」こと坂本龍一さん。
ふたりが13年振りに再会し、2010年、歌とピアノ、ふたりだけの
究極のアルバムをリリースしました。
その名も「UTAU」。

UTAU(2枚組)UTAU(2枚組)
(2010/11/10)
大貫妙子 &坂本龍一

商品詳細を見る

今回のレビューは、この作品。disc1は普通に二人の歌と演奏で
disc2は教授によるインストゥルメンタル+α。
disc1のみのものも売っているようです。
2枚組のこのヴァージョンは、B6サイズの冊子のようで、触感も独特。
2013年の今、ふと考えると、・・・これってタブレット端末を模したのかな?
教授の環境へのこだわりはもちろん健在です。カーボンオフセットCD。



極上のひとときを堪能できる、最小単位の編成と熟練の演奏。
それぞれに色とりどりなので、今作も全曲簡単レビューをしてみたい。

#1 「美貌の青空」
聞き覚えがあるような気がするのは、オリジナル曲である教授のソロ曲が
CMソングだったから。
キャッチーでありながら、謎めいていて、エキセントリックで、孤高。
教授とよくタッグを組んでいる作詞家、売野雅勇氏の詞にも舌を巻く。
いったいどこからこんな発想、こんな語彙が出てくるのだろう?
ユニークでありながら、ナルシシズムが匂い立ち、耽美な世界が広がる。

#2 「Tango」
#1と同じアルバムに収録された教授の曲を、2年後には大貫さんもカヴァー、
そして09年の教授のツアーのゲストに大貫さんが招かれ、この曲で共演と、
このアルバムが誕生するきっかけになった曲。
「タンゴ」らしく、中南米のテイストを漂わせながら、打ちひしがれるような
哀しみを深く織り込む。しかしながら展開は徐々にあちこち飛んでいく。
歌詞のなかに「マテ茶」が登場!

#3 「3びきのくま」
さっきまでとはがらりと変わり、あたたかみを前に出した優しいナンバー。
小田和正氏あたりがリリースしていそうな(笑)。
大貫さんといえば中低音のイメージが強いが、この曲ではかなり高いキーも
披露している。中低音に全くひけをとらない、力強く確かな高音。
硬質なイメージの強い、教授のピアノも、ふんわり優しげ。

#4 「赤とんぼ」
おなじみの唱歌を、大人が大人のために演奏してみた。
流石の品格、贅沢な時間。
ピアノはシンプルに、歌は素朴に、それでも滲み出るアーバンな香り。

#5 「夏色の服」
幾つになっても、大人になっても、女性のなかには、
膝を抱えて孤独に耽る少女が棲んでいる、とよく云うけれど
それをとても感じさせる、憂鬱な女のすがた。
クラシカルで、美しいピアノが、女のメランコリーに寄り添う。
最後のメジャーコードが、彼女の辛抱強さと芯の強さを暗示し、幕を閉じる。

#6 「Antinomy」
米映画「ファム・ファタール」のサントラ・アルバムを手がけた教授が
映画のために作ったインスト曲のひとつに、大貫さんが詞をつけた。
寂寞感に満ちた空間を想起させる。
この曲もとても音域が広く、高音から中音へ、低音から高音へ、一気に
滑るようにのぼったりおりたり。その滑らかさに、大貫さんの確かな
テクニックを魅せつけられて、息を呑む。

#7 「Flower」
ダウナーな曲が続いた後は、ちょっとカラッとした明るさのある曲。
歌詞に「ネムノキ」が登場。
1番で自然(花=ネムノキ)を描写し、2番ではその花を擬人化して
「おんな」の想いを歌いあげる、ユニークな歌詞。

#8 「鉄道員 poppoya」
坂本美雨嬢が歌っていた、同名の映画の主題歌をカヴァー。
冷たく静かに雨が降り注ぎ、締め付けられるような胸の痛みを
堪えながら、凛々しく立っている「君」の情景が浮かぶ。
原曲でも危うかったが、このヴァージョンは本当に泣きそうだ・・・
歌詞を見る分には、奥田民生氏の詞が合っていないように感じるが
歌われるのを聴いていると案外マッチしているのは、大貫さんの手腕か?
そして、曲の構成は、マイナーコードとメジャーコードが行き交う。
哀しいだけの曲ではないのだ。

#9 「a life」
このアルバムのために二人で書き下ろした曲。
他の曲とは一線を画した曲調、歌詞。軽やかでリズミカルなピアノに、
ありふれた日々の行動のありがたみを、いきいきと具体的に提示する詞。
「無くしたくないと 思うものだけを 守ってゆこう 守ってゆこう」
じわじわと前向きなエネルギーが湧いてくる。
ネクラ(?)な二人による、希望のメッセージが感じられる。

#10 「四季」
日本人で良かった~というような、情緒あふれる、歌詞、メロディ。
原曲はフェビアン・レザ・パネ氏がアレンジした大貫さんのアルバム曲で
化粧品のCMの曲になったとか。そういえば聞き覚えのあるサビだ。
う~ん、まさに花鳥風月。うっとり、しっとりと。
最後のサビでキー上げして転調するのが、唐突ではあるがグッとくる。
小室哲哉氏ちっくな気もするが・・・。教授のアレンジでは珍しいのでは?

#11 「風の道」
うららかで美しい旋律を奏でるピアノに、想像力をかき立てる、写真のような詞。
「今では他人と呼ばれるふたり」の間に、穏やかで柔らかい風が流れてゆく。
未来へ向けて・・・・・・。
普段は俯きがちな二人の視線が、揃って上向いて、アルバムは幕を閉じる。


メランコリックさやノスタルジアを期待したら、確かにそれらは裏切られなかったが
それ以上に、そういったイメージより遙かに、大貫妙子という女性の底にある
希望や母性は逞しい。
思っていたよりは曲調が幅広かった。

女性らしい柔らかさと、頑固なほどの凛々しさを併せ持ち、風のように行き交う
(当時)還暦間近とは思えない、大貫さんの唯一無二の歌声を、
より引き立てながらも、よけいな味は一切加えない、教授の鉄壁のサポート。
また、無機質で硬質な教授のピアノの、モノクロームの世界に、
色調の僅かな違いだったり、絵の具箱をひっくり返すようだったりと
彩りを与えながら、そのクラシカルな品格は少しも損なわせない、大貫さんの歌。

国宝もののコンビではあるまいか。
それは少し大袈裟だろうか。


disc 2の、教授のピアノインストも、うっとりものです。
同じ曲名や、disc 1の曲の原曲でも、ちょっと違うし(曲の長さも違う)
聞き比べてみてもおもしろいかも。
それにしても保存に困るCDだなこりゃ・・・(苦笑)
買ったり、レンタルしたりする人は、そこにちょっと気をつけてください。
普通のCDとは全然サイズが合わず、一緒に収納できないので。。


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コメント

柔らかな歌声

こんにちは。
全曲レビュー読みました。そして、試聴してきました。
全体的にゆったりとした印象を持ちました。
レビューにも書かれていますが、「a life」は僕も
一線を画した楽曲だなぁと思いましたよ。

ええ声ですよね

かげとらさん、こんばんは。
今回もわざわざ試聴していただきありがとうございます!
たまにはこんな穏やかなものが聴きたくなります。
というか、ゆっくりとまた、音楽の好みが変わっているんですよね。

> レビューにも書かれていますが、「a life」は僕も
> 一線を画した楽曲だなぁと思いましたよ。
内容から、震災後の作品なのかなと思ったくらいでした。
そのくらいメッセージ性と生命力がある曲ですよね。
あの低血圧っぽいふたりなのに(笑)

嬉しいなぁ~

メトロポリタン(NHKみんなの歌)ですよね。その頃が幼少なら私よりもかなり
若い方ですね。教授は別としても、大貫妙子をこのように評価する方がおら
れるのは嬉しい。嬉しすぎてコメントしちゃいました。

私にとっては山下達郎流れで知ってから、教授との名作は「黒のクレール」っ
て世代です。2010「UTAU」ツアーは本気で行きたかった、、、。

未だに大貫妙子は聴いています。不思議な魅力の方ですよね。
作詞家としての大貫さんも大好きです。

ロッシーさん、はじめまして!

お越しいただき、コメントまで頂き、ありがとうございます!
なのにコメントがこんなに遅くなって・・・すみませんでした。。
日頃の不摂生がたたり、熱でぼうっとしています・・・

思いっきり「フォーク・ニューミュージック」の欄で見つけたアーティストでしたが
昔から大貫さんの歌声って、頭に焼き付いていたんですよね。
なんか気になる歌声だな、謎めいてるなって(笑)。
丁度、某朝ドラの影響で、YMOのことも気になっているのもあって、
「UTAU」は正に、いま聴くべきアルバムでした。
後追いの私は、大貫さんが山下達郎さん流れの人だというのに驚いたクチです。

>「黒のクレール」
ちょっと探してみたくなりました。今度CD店に行くときは
頭の片隅にメモしてから出かけます。

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