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BOOM BOOM SATELLITES:その8 EMBRACE「力強くしなやかに、希望のダンス・ビートを鳴らせ」

7thとそれに続くツアー、幕張での大規模なライヴを経て、やりたいことをやりきってしまい、
真っ白になってしまったBoom Boom Satellitesブンブンサテライツ)。
「このまま、解散するか」そういうムードもやぶさかではなかったようです。
同じようにやり尽くした、同じように長いキャリアの、ゆらゆら帝国は解散を選びました。
彼らの音楽に一目置いていたブンブンの二人は、ファンとして寂しさを感じると同時に、
自分達が同じ選択をすると、周囲に同じような寂しさや喪失感を体験させることに気づき、
なんとか解散は思いとどまり、まっさらなところから音楽を産みだしていく決心をします。
スタジオも引っ越して心機一転。イヴェントに出演しようと準備していると、大きな揺れが!
2011.3.11、東日本大震災です。
二人は東北出身で、親や親戚が被災してしまいました。また、他の多くのミュージシャン同様に
音楽に出来る事や、音楽の意義など、「なんのためにやっているんだ」と悩みにも駆られます。
しかし二人を救ったのもまた音楽、とりわけライヴでした。
何本かライヴをすることを通して、観客の喜ぶ顔を通して、音楽の力や意義をもう一度実感し、
そこで得た想いが新しいアルバムへと繋がっていきました。
現時点での最新作「EMBRACE」。

EMBRACEEMBRACE
(2013/01/09)
ブンブンサテライツ

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初回限定盤はCD+DVD+「USB」って・・・。そろそろ、音楽を持ち運ぶ形態も変わっていますから。

EMBRACE(初回生産限定盤)(CD+DVD+USB)EMBRACE(初回生産限定盤)(CD+DVD+USB)
(2013/01/09)
ブンブンサテライツ

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最近のブンブンは、ニコニコ動画と手を組んだ企画も多くなっています。
ニコニコ生放送に出演したり、先日の東京ドーム公演は360°ぐるりと回るカメラによる
生中継をしたり。地上波のTVに出演してキャラの安売りをするといったベクトルでないのが
いかにも彼ららしいし、彼らのファン層~ファン層候補をよく理解しています。

2012年に発表された「BROKEN MIRROR」の段階では、アルバムの構想は全くの白紙。
しかし、ある楽曲を作ったことがきっかけで、一気に全体の構想が出来上がっていきます。
そうして、前作の流れを汲みながら、これまでには無かった作品が完成しました。
以下、さっと感想~レビューをしてみます。


攻撃性が減り、ゆったり、優しさ、温かさ、ついには楽しさまでも
今作で最も著しく感じられる変化。
半分は前作の進化系といえるクールで所々ハードな楽曲だが、残る半分にこういった傾向が
はっきりとみられる。中野さん曰く「やっと青春が終わった」と(苦笑)。
いままでは世の中に中指を立てて、ここが悪いあそこが間違ってる、だから世界は忌々しい、と
噛みつくばかりだったが、今作では、受容し、許し、包みこむ彼らの姿がある。
「許し」は今作の大きなテーマとなっており、今やアラフォーの二人が、大人として
若い世代にアピール、メッセージを伝える作品となった。

近年の作品の中では、ダンスビートの要素が強い
4thから「ロック化」「キャッチー化」が始まり、アルバムを追う毎にその傾向は強まって
いって、6thや7thからはひしひしと、激しい「怒り」が伝わってきて、7thはとても踊れる
アルバムではなかった。アレンジもNine Inch NailsやMy Bloody Valentineなどのロックを
彷彿させ(インダストリアルだったりシューゲイザーだったりして、エレクトロニックな
傾向の強いロックではあるものの)、例えば初期から比べてまるで別のバンドの音楽だった。
そこを少し原点回帰したかもしれない。相変わらず退廃的なロックを下地にはしているが
ビートは1stの頃の、音を出すのが楽しくてたまらないといった軽快さを思い出させる。
「ワクワク」「ドキドキ」するビート、楽曲が増えている。

柔らかく、冷たい、スペイシーな質感でロックする
それを一番顕著に示しているのは川島さんの歌声とその処理であろう。
例えば#1では、Aメロは低音で囁くように歌い出し、Bメロで徐々にテンションを上げ
サビで清々しく飛翔するように盛り上がり、しかし熱くはならない。
爽やかで少しエスニックなコード使いが印象的なこの曲は、今作のシンボリックな楽曲の1つ。
また、まさかのビートルズカヴァー、#2「Helter Skelter」は正直不安しかなかったが(笑)
先行でYoutubeで公開されたPVを観て「こんなにクールな解釈があるなんて」と驚き、痺れた。
今までのしゃくり上げ、がなり立て一辺倒なスタイルのアプローチとはかなり違っている。
1年前にリリースされた#3「BROKEN MIRROR」も、この新しいアプローチと自然に繋がる。
近年特有のねちっこさやしつこさが無くなってとても聴きやすく、入り込みやすくなった。
歌を取り囲む色とりどりのクールな、ダイナミックな、メタリックな音もたまらない。

絶望を乗り越えて辿り着いた、儚く強くしなやかな境地
#4「SNOW」の、一度終わってまた始まる展開が出来てから、この展開が今作のアレンジの
テーマとなった。実は#2でも登場するが、特に#4、#9といった、バラード調の曲で目立つ。
#4「SNOW」は絶望や死から再生し生へと向かっていくような、壮大な楽曲。
そして#9「EMBRACE」の歌詞は、どうも死者の立場から描かれているようだ。新境地。
「自分自身のカケラをすべて拾い集めてる」主人公はこのように歌う。

誰だってどこかが必要だ
誰だって泣けばいい
誰にでも どこかが必要だ
誰にでも どこかが必要なんだ
誰だって傷つけばいい
誰にだってどこかが必要なんだ

僕は世界を受け入れるように自分自身に言いきかせて
遠くへと漕ぎだして 自分の夢を終らせるんだ

このくだりを読んで私は思わず涙を禁じ得なかった。前半のあたたかさといったら、
そして後半のやるせなさといったら。
この曲にすぐ続き、アルバムのラストを飾る#10「NINE」は、#9を受けるような内容や
曲調で、今までに全く聴いたことのない、軽やかで跳ねるようなメジャーコード。
再生とその先の希望を描いている。あるいは来世かもしれない。

来いよ
オレはまたやってみるよ
高く引き上げるんだ
オマエの心を高く引き上げるんだ
(略)
オレは答えを探し続けるだろう
まるで暗闇から鳴り響く稲妻のように
今もう一度火を起こそう
もうすぐ新しい1日がふたりに巡ってくるから

「ふと目が覚めたらダンスフロアで横たわってた」男が「オレは今またゆっくりと
呼吸をし始め」、「オマエ」と共に新しい日々を始めようとする。
震災であったり、また別の個人的な危機であったり・・・さまざまな絶望や苦難を超えて
未来へと踏み出そう、かならず出来る、という二人からの力強いメッセージが感じられる。


今になって気になるのは「もしかしてこのアルバムを作った時点で、歌詞を書いた時点で
川島さんの3回目の脳腫瘍が判明していたのではないか?」という疑問です。
分かっていても、いなくても、今作が表現した温かく逞しいメッセージは不動なのですが
もし分かっていてこの世界観の楽曲を作ったのだとしたら、この詞を書いたのだとしたら
なんという残酷さと覚悟なのだろうと、身を切られるような思いで一杯になって。
あるいは、今作を作り上げて、意気揚々のところへやってきた容赦ない不意打ちだったのか。
どちらにせよ、川島さんの(そして中野さんの)脳腫瘍との闘病の事実が明らかにしたのは
彼らの打たれ強さと反骨精神、希望に向かって繰り出す力の、あまりの逞しさでした。
今後のふたりの表現形態は、これまでのようにはいかないかもしれませんが
今作を改めて聴いて、いくらでも新しい表現をみつけていくのだろうな、と確信できました。

かつて、溢れんばかりの才気で世界中を圧倒した彼ら(というか中野さん)でしたが
いま私達を惹きつけているのは、感性、頑固さ、そしてしなやかで揺らがない意志の強さ。
許されるかぎり長く、「ふたり」に希望が照りつづけることを願って、この記事を終わります。


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