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Cocco×塚本晋也:KOTOKO「個性派同士のガチンコ勝負!生々しい生き様はCocco自身の体験?」

シンガーソングライターのCoccoが映画に主演、監督が塚本晋也さんという
かなり期待の高まるタッグによって作られた映画「KOTOKO」。
昨年公開され、ヴェネツィア国際映画祭でオリゾンティ賞を受賞。
DVD化されたので、それを観てみました。
雑誌の広告では、星野源さんやリリー・フランキーさんの絶賛コメントも載っていたし
「愛のむきだし」を超えるハードなインパクトと後味を!と、超期待していましたが・・・

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(2012/09/05)
Cocco、塚本晋也 他

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まず注意!グロです。この監督にはよくあることのようですが、結構キツイ。
繰り返されるリストカット、それによる血まみれ、殴打され血の塊みたいになった男(恋人)、
他さまざま。しかし「繰り返されるリストカット」はCoccoの事実だからなぁ・・・
画像も大河どころでなく揺れる(小型カメラによるものか、手ぶれがひどい)ため画面酔い注意。
うーん、結構注釈が必要な映画ですね。
これに耐えられて、興味がある人は、感想~レビューを読んでみてください。
感想~レビューには血や手ぶれはありませんので(苦笑)


理性でできている現代の日本社会の中に、感情だけで生きている人間をぶち込む
現代、個人的な感情や心、身体の感覚は軽視され、集団主義的な理性が社会を統治している。
しかし本作の主人公・琴子(Cocco)は激しい感情、子どものようなあけすけの感情表現、
「世界が二つに見える」=自分や息子に関わろうとする人間の善と悪、虚構と現実の双方が
同時に見えてしまう(幻覚?)現象などの鋭敏な感覚に支配されて生きている。
彼女に理性はない。過剰に喜びはしゃぎ、近所の迷惑を忘れ泣き叫び、不安に翻弄される。
「感情はどこにいった?感覚はどこにいくのか?」そんな問題提起に感じられるふしがある。
社会不適応状態の琴子を通して、共存し得ないこのふたつの要素の齟齬をも描いているが。

愛が琴子を苦しめるが、愛を自ら捨てることはできない
琴子は、自分や愛する一人息子に関わろう(ここに彼女の被害妄想が加わり「危害を加えようと」
という一節が混じる)とする人間が二人見える。現実の興味本位で親切な他人と、妄想の危害を
加える他人の二人。これに怯えるあまり、琴子は人に危害を加え、町にいられなくなってしまい
引っ越しを繰り返している。
息子を片時も手放したくないと思うあまり、赤子である息子を抱いたまま炒め物を作り、
泣き叫ぶ息子をベッドに置いてくると料理を焦がし、料理を盛りつける際にフライパンごと
落として「熱い!!」と叫び、癇癪を起こして大暴れするという痛々しい場面も登場する。
琴子はシングルマザーで「結婚したことはない」という。友人もいない様子で(引っ越しして
ばかりだし、人は皆怖いし)誰にも手伝いや援助を求められない。
すがりつくように息子を「守ろう」とする、その姿は母性に似ているがやはり少し違う。
しかし、どれだけひとりぼっちの子育てに絶望しても、愛しい息子を離すことなどできない。

琴子を救うのは「歌」であって「息子」や「恋人」ではないのか?
「世界が二つに見える」琴子だが、ただひとつ、歌を歌っているときだけは、世界は
琴子を脅かさない。(ほかに、塚本監督演ずる恋人と同居している時期も、安定していた)
琴子にとって、歌=本当に好きなもの・安心できるもの、息子=すがっているもの、
守らないとならないという強迫観念のために守っているもの、なのかもしれない。
偶然琴子の歌を耳にして以来、琴子をストーキングしてきた男がやがて恋人になるが
琴子のリストカット癖、S癖といった、いきすぎた感情と感覚、愛情表現についていけなくなり
気付けば姿を消してしまう。
結局のところ「歌いちず」「アーティスト」のような琴子。「それなら歌手になればいいじゃん」
「場末のバーでもクラブでもいいから、歌うことを生業にすればいいじゃないか」と思えてくる。
「息子への愛情」というのも、とても脆いもの、悪くいうと恋人と似たような「縋りつく対象」、
「とってつけた義務感」、「息子そのものでなく、息子に尽くす自分を愛している」のように
感じられてしまう。自分をコントロールしない・できない女性は、子どもをもつべきではないと
思わざるを得ない。アーティストに専念するか、大人になるか、どっちか選ぶ必要があった。

精神科もよしあし?!入院して「もぬけの殻」になった琴子
繰り返されるリストカット、悪化する幻覚・妄想、度重なる大騒ぎ。「琴子が息子にDVを働いて
いる」と近隣住民から通報され、保健所の職員がやってくるも「死ね」「黙れ」などの暴言。
琴子を見かねた姉が、息子を引き取って育て、そこに琴子がたびたび通うという時期を経て、
「安定してきた」とのことで息子と琴子は再び一緒に暮らせるようになる。
奇しくも、息子との二人暮らしと、恋人との二人暮らしは丁度行き違いになるのだが。
そしてついには、息子に手をかけようとしてしまう(幻覚では「手をかけてしまった」)。
はっきり言って観ながらずっとイライラしていた。とっとと精神科に行きなさいと。
近隣住民の迷惑になっている辺りの描写はリアルで、だからこそ「早く病院行け」と憤った。
「ピュアな魂」じゃ済まないだろ、みんなの迷惑になってるだろ、それ虐待だろ、と。
息子を殺したと思いこんだ瞬間、琴子の世界は一転、「まっしろで、なにもない世界」と化す。
精神病院に長期入院している様子で、外に出られるのは一日に一度、煙草を一服する時のみ。
豪雨の中で煙草を吸って、傘にも入らずに薄着でバレエダンサーのように踊る(DVDジャケ)。
10年近くの月日が経っており、成長した息子が琴子のもとに時々面会にやって来て近況を話して
くれるのだが、琴子には目の前の少年が息子なのかもわからず喜びも、会えない不安もない。
こころは、やすらかなのか、それともからっぽなのか。やりきれない気持ちになる。
彼女は一生このまま廃人のままなのか?色彩を取り戻し、暴れ、入院・・・を繰り返しているのか?

琴子=Cocco? だとしたら壮絶なうえに、空白の年月と出来事が符合する
Coccoは2010年に「ポロメリア」という小説を書いているが、インタビューなどで本に関する話を
聞く限り、これは限りなく私小説に近いもののようだ。
これまでのCoccoの表現(たとえば、歌の歌詞)は、自身の人生と分かちがたく結びついており、
寓話タイプの楽曲も多くみられるが、そこには彼女の内的世界・妄想が著しく反映されている。
本作は、原案=Cocco、脚本=塚本監督とのこと。そうするとこのストーリーがCoccoの実際で
ある可能性はかなり高いのではないか。少なくともリストカットは本人が語っているし。
リストカットや拒食の治療のためにイギリスの専門の病院に入院していた時期があったというが
その時期、息子さんはどうしていたのか?息子さんが生まれた時期は音楽活動休止の時期で
明らかに情緒不安定だっただろうに、自力でひとりで育てることができたのか?
こういった疑問に、本作のストーリーをあてはめると見事に符合してしまう(流石に「あちこち
引っ越しを繰り返す」などまではないだろうが)。なんと壮絶な年月か。
演技にそんなに慣れていないであろうCoccoが琴子自身を生きるかのように、あまりに自然に
笑い、泣き叫ぶ姿(これが映画祭の審査員には「凄い演技」と映ったのだろう)も合点がいく。

・そのほか
Cocco、ちょっとイメチェン。眉を太く描き、髪にレイヤーを入れ、篠原涼子っぽくなっている。
歳相応の色気と清潔感が出て、綺麗。
塚本監督は映画「猛獣VS一寸法師」でリリーさんと共に推理をする探偵役で観たことがあるが
(10年強前)、当時の姿と比べて・・・老けすぎた。頭髪だってもっと・・・これじゃ監督自身が
グロじゃないか、失礼ながらそう感じる場面がちらほら。
劇中歌なのでストーリーの展開上どうしても痛々しいが、Coccoの囁くような歌、力強い歌、
エンディングテーマ含め何曲か歌を聴ける。どれも安定して、見事な歌唱。

「Coccoの世界観を忠実に表現」したいのなら、「大丈夫であるように」の是枝監督のように
自己主張より、Coccoの世界観を全面的に尊重する人がメガホンをとるべきだった。
逆に、「塚本監督の世界観で刺激的な人物を撮る」のなら、外見にはインパクトがあるけれど
自己主張は余り強くないとか、監督の色に染まる、といったタイプを題材にすべきだった。
ハマりのコンビかと思ったが、どうも互いの良さを殺し合ってしまったフシがある。
自己主張の強い個性派同士が、悪いかたちでぶつかり合ってしまった映画という
残念な後味が残った。

Coccoの生々しい演技(自身の再現?)、赤を効果的に用いた監督のセンスは見ものだが。


ん~これは好みが大きく分かれるでしょうな。自分は塚本監督の作風がきっとあまり
好みじゃなかったんでしょう。その逆に、塚本監督は好きだけどCoccoが有り得んと感じる
長年のファンの方もいるでしょう。
でも、二人の本作にかける並々ならぬ情熱が、映画祭で高く評価されたのはわかります。
火花の散るようなエネルギー、強烈なインパクトが、観る者を圧倒し、魅きつけるから・・・



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