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Ramones:その6 プレザント・ドリームス「keep rock & roll music alive~言うほど悪くないけど、推すには押しが弱くって・・・」

前年に、フィル・スペクターとの偏執狂な長い長い作業に耐えて世に出した渾身の5thが
セールスはバンド史上最高でも、評価がどうも芳しくないRamonesラモーンズ)。
でも、ビルボードのチャート上位にランクインしたい、ラジオで曲をかけてほしいという念は
やはり根強くあり、翌年、売れ線路線第二弾ともいえる6th、Pleasant Dreams
プレザント・ドリームス)をリリースしました。

プレザント・ドリームス+7プレザント・ドリームス+7
(2005/06/22)
ラモーンズ

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プロデューサーのグレアム・グールドマンは、ラモーンズが出てくる少し前、70年代前半に
登場しブレイクしたイギリスのバンド・10ccの中心メンバーで、60年代から他アーティストへの
曲提供(ヤードバーズなど)も盛んに行ってきた実力者。
彼の手腕によって、ポップかつ前作よりもラモーンズの従来のサウンドと馴染みがよい
「ヒットしそうな」作品が出来上がりました。
「~しそうな」というのがミソで、実際は前作よりてんで振るわなかったのですが・・・
でも聴きやすくて楽しいアルバム、もう少し詳しくいつものように追ってみましょう。


ラジオ・ヒットへの執念
なにせ、#1から「We want the airwaves」というタイトルなのである。
しかもその曲調にも、悲壮感や非常に切羽詰まったものがヒシヒシ、はっきり言って重い。
「これがラモーンズ?これがパンク・バンドのアティテュード?!」
しかしそもそも初期の段階で彼らは売れたがっていたことを思い出して欲しい。
あの、ギラギラした、愉快で滑稽なバブルガム・ポップをやっていた頃から、
ラジオ・ヒットはずっとずっと変わらない悲願だった。
だから売れ線の音楽とプロデューサーに身を投じることを受け入れた。
それが彼らをもっと苦しめることになるとは、皮肉なのだが・・・

作詞・作曲者のクレジット明示~個の成長、エゴの増長
本作のブックレットを開くや否や、途端に強い違和感を覚えた。
曲目の下に括弧書きされている、Joey RamoneやDee Dee Ramoneの名前。
今まではこんなものは明示されていなかった。ラモーンズ全員で作詞作曲だとクレジット、
インタビュー等で「この曲はジョーイが」「この曲はディー・ディーが」と明かされて
初めてわかる程度だった。
このクレジット表記から感じ取れるのは「この曲は俺が作ったんだぞ」「あんなチンケな曲を
俺は作ったりしないぞ」「俺はこんないい曲を作れるんだ」といった競争意識、エゴの増長。
ただ、彼らをこうやってほじくり返して理解に勤しんでいる者としては、二人の路線の違いが
はっきり見えて、ありがたくもある。そして、この二人だけでここまで曲作りを担っていた事実に
驚愕し、感銘を覚える。だから後にディー・ディーが脱退した時のダメージが大きかったわけだ。

ポップで聴きやすいけど、ちょっと押しが弱い
本作からのヒット・チューンは件の(後述)KKKということになろう。しかし、それも含めて
ポップで聴きやすく、耳あたりが良いけれど、「これは!」と引っかかるような曲がない。
前作の、ウォール・オブ・サウンドとバンド・サウンドとの乖離といった残念な現象はなく
かなり自然に「ポップ」をサウンドの中に組み込んでいる手腕は巧みで流石だと唸らされるし、
聴いていて理屈抜きに単純に楽しい。人工的なバブルガム・ポップとでもいおうか、
あの頃のキッチュなノリが80年代ヴァージョンにアップデートされて、ノリノリだ。
でもここにはアクがない。売れ線ポップに不可欠なのは「アクのなさ」。売れ線ポップ路線に
転向するために、ラモーンズは「らしさ」ともいえる毒っぽさや濃さを放り出してしまった。
聴いていて楽しいけれど、ポップ音楽のファンが他の音楽を差し置いて、わざわざ本作を
手に取るような必然性もなかなか見当たらない。
昔からのラモーンズ・ファンが期待しているのはハードでシンプルで無骨なあのバンド・サウンド
だから、残念ながらまさに「誰得」といった評価になるのは致し方ないだろう。

決定的な対立~「KKK」が俺の女を奪っていった
何となく聴いていれば普通にポップチューンで、人気曲だというのも頷ける#3「The KKK took
my baby away
」。しかしながら、比較的有名なエピソードだが、この曲はジョーイが
愛していた女性・リンダをジョニーに奪われたという「あてつけ」として書かれたという。
映画「エンド・オブ・ザ・センチュリー」で、バンドのローディーとして公私ともにジョーイに
尽くしていた弟・ミッキーが語るところによると、「ジョニーとリンダが恋に落ちたのは、
恋愛としては自然な流れ」「兄貴には恋愛は無理だったんだと思う」(弟なのに随分な言いようを
するものだと驚いたが、それだけ兄に苦労をさせられ、兄の不適応な性格も見てきたからだろう)。
だから奪ったも何も、片想いしていた女が別の男と付き合い始めたという、よくある話でしかなく
実際には「俺の女を奪っていった」というのはジョーイの被害妄想だと思われる。
リンダがジョーイの「俺の女」であるという前提自体が、申し訳ないがちょっと考えにくい。
なにせ、ジョーイの被害妄想は、それはそれは酷かったというから・・・・・・
しかし、この件を境に、ジョーイとジョニーの仲は決裂。和解は一生叶わなかった。
「なんだかんだ言って、ジョニーのほうが気にしていた」と言っていたのはリンダだったか。
ジョーイの気持ちは知っていたけど、互いに自然に惹かれ合っていただけあって気持ちに抗えず、
一方で罪悪感を抱え込み、ジョーイに合わせる顔がないと考えてしまったフシもあった模様。
ラモーンズは96年まで活動を続けるのだが、最初から最後まで在籍したメンバーは因果にも
ジョーイとジョニーのふたりきり。あからさまな自分へのあてつけの曲でも、私情を一切交えず
「ファンに人気の曲は積極的に演奏する」という姿勢を最後まで崩さなかったジョニーは偉い。

そして皆の心は離れていった
本作から次作までの時期「俺たちは全く言葉を交わしていなかった」とジョニー。
ジョーイとジョニーの決定的な対立については上述の通り。
ジョーイとディー・ディーについては音楽性の対立があったから、前述したクレジットの問題が
表出したのだろう。前作はあからさまなジョーイびいき、本作でもジョーイ優位の方向性。
(クレジットで数えてみると、ジョーイ7曲:ディー・ディー5曲で拮抗しているが、
ディー・ディーの曲はもはや彼の曲らしさを破壊されてしまっているものが少なくない)
次作でこの問題は本格的に表出するが、マーキーは次第に酒浸りになっていく。
バラバラになったバンド。この状態でがっぷり4つに組んだバンド・サウンドは難しかっただろう。
寧ろ本作のような、しっかりプロデュースされ、コーラスやキーボードでさんざん加工された
殆どニューウェーブに近い「人工的なポップ・ロック」という方向性は妥当だったかもしれない。


メンバー間の最悪の関係だとか、イマイチ良くない評価だとか・・・を知っているとどうしても
前向きに聴くことが難しくなる作品にはなってしまうのですが、
例えばボーナス・トラックに収められた、スペシャル・ゲストをコーラスに大勢迎えた
賑やかで活気のある#15「Chop suey」なんかは楽しくて痛快だし、
ジョーイらしいラブソングの#7「She's a sensation」はよくまとまった軽快なポップ・チューン、
#9「You didn't mean anything to me」はハードでインパクトあるリフが効いている。
ラジオ・ヒットには力不足でも、「隠れたお気に入り」になりうる曲はぼちぼち潜んでいる
言うほど悪くない「隠れ佳作」アルバム
で、繰り返し聴いているうちに、個人的にはわりかし
お気に入りの作品になりました。

さて、次作の7thは、すっかり行き詰まってしまったラモーンズのターニング・ポイントとなる
苦しい中でも重要な作品になります。こちらもまたの機会に、腰を据えて見てみましょう。


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