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Ramones:その5 エンド・オブ・ザ・センチュリー「It's the end,the end of the '70s~まさかのスペクターとのタッグ、栄光と失墜」
誰がこんな組み合わせを予想できたでしょうか。
しかし、これは史実で実現した組み合わせ。
運命の悪戯で実現したタッグによる、「運命」と「悪戯」の賛否両論にばっくり割れる
バンド最大のヒット作にして問題作の5thアルバム、
「End Of The Century(エンド・オブ・ザ・センチュリー)」を語るときがやってきました。
![]() | エンド・オブ・ザ・センチュリー+6 (2005/06/22) ラモーンズ 商品詳細を見る |
これが、これが、パンクバンドのアルバムのジャケット写真だなんて。まるでアイドル。
「ごめん生理的に無理」と思って躊躇したのは私だけではないでしょう。
普段も、別のページの写真をカラーコピーしてジャケット扱いして保存しています・・・
バンド名の由来はビートルズのポールが一時期名乗っていた名前だというのもあるし、
ビーチ・ボーイズや、スペクターがかつて手がけていた女性コーラス・グループなど
60年代の音楽からの影響やリスペクトがとても強いメンバー達でもあるので、
ラモーンズ側が「そのうちスペクターにプロデュースしてもらえたらなあ」と
ジョーク混じりに夢として語っていても、実は不思議はそんなにありません。
問題は、スペクターの方が、ラモーンズを見つけ出したという奇跡がなぜ起こったのか?
LAで結構鳴らしていて、沢山のキッズが彼らを追随していたほどのラモーンズ。
LAの音楽シーンの多くの面々は、それを見逃さず、バトンリレーのように
ラモーンズの存在をスペクターに知らせ、デモ音源を聴かせたのでした。
するとスペクターは、ラモーンズ・・・というより、ジョーイの声をいたく気に入り、
「君を新しいバディ・ホリーにしてやろう」と言ってジョーイを口説き落とそうとし、
ジョーイのソロ・アルバムをスペクタープロデュースで作ろうとしていました。
他のメンバーは、当然いい顔をしているはずはなかったわけですが・・・
とはいえ、ラモーンズはまだこれから5枚目のアルバムを作ろうかという時期で、
ジョーイは「ソロアルバムを作るには少し早い」と断り、かくしてスペクターは
ラモーンズのアルバムをプロデュースすることになったといういきさつでした。
このアルバムは、バンド史上最高のチャート成績を収めた(ビルボード44位)と同時に
ファンの間での評価はばっくり賛否両論に割れ、徹底的に嫌う人も根強くいます。
ラモーンズは、頑固なパンクバンドだったはず。それが裏切って、メインストリームに媚び
ヒット・レコードを作ってしまうなんて、許されざることだ、というわけです。
個人的にも、前作「ロード・トゥ・ルーイン」の硬質な音作り・曲作りが大好きだっただけに
その理想的な流れがすっかり断ち切られてしまい、残念だというのが本音です。
これはこれで、ラモーンズ・パンク&スペクターのポップな味付けの化学反応が面白い1枚と
いえるのですが、せめて前々作の後に出てきたならまだ解ったかも。
緊張感や悟り、タイトさがひしひしと漂う前作の後だから納得できないところもあります。
愚痴はともかく、作品の感想~レビューにさっさと取りかかりましょう。
・スペクター無双にみんなうんざり~拳銃が登場した逸話は本当だったらしい
フィル・スペクターといえば多くのロック・ファンが思い出すのは、奇行の数々。
ジョン・レノンの「ロックンロール」を手がけた際は、マスターテープを持って
トンズラしてしまうし。酒癖が極めて悪かったり、極端なコントロールフリークだったり、
「気まぐれな行動・芝居がかったバカげた行動」(byジョーイ)で周囲を振り回したり、
ダラダラとレコーディングをしてミュージシャンをくたくたに「わざと」して、
それによってミュージシャンの彼ららしい演奏を削いで、自分色に染めやすくしたり。
極めつけは、ディー・ディーに殴られた時、彼に銃口を向けた一件、
そして近年の逮捕や裁判に至ったあの事件。
(ディー・ディーに関しては、どういう流れか知らないが、ぶん殴るのもどうかというのも
あるが。スペクターは強盗に遭って以来、護身用として持っていた銃だったというし)
スペクターお気に入りのジョーイですら「果てしない長さ」と言うほどのレコーディング、
スピーディーな作業が身上のジョニーやディー・ディーはイライラしっぱなしだったという。
・「ウォール・オブ・サウンド」の"もや"が邪魔だよ、取ってくれ!
ビートルズ解散後、歴史的名盤「All Things Must Pass」をリリースし、スペクターに
プロデュースしてもらったジョージ・ハリスン。
彼が00年代に入り、自ら「All Things~」をデジタルリマスターした際、真っ先にしたのは
スペクターによる「ウォール・オブ・サウンド」を除去したこと。
曰く「もやが晴れたようだ」。ビートルズ時代、「Let It Be」の仕上げを
率先してスペクターに頼んだ人間の言葉とは思えないが、実際ジョージはそうしたのだ。
「Let It Be」~「Let It Be...Naked」に関しては以前記事を書いたが
スペクターのアレンジを排することで、ポールの面目が随分上がったように感じられた。
あの洗練された後期ビートルズですらこの様相なのだから、荒っぽさが売りのラモーンズに
もやをかけたら、どうなるか・・・
「エコーとリヴァーヴのせいで、分離していないんだ。ギターとベースとドラムスが
はっきりと聴こえて欲しいんだよ。べったりしているから、聴き分けられないんだ」
サウンドに関してこう説明したのはジョニー、私も全く同じ感想を持った。
もやのせいで、スピード感やキレが損なわれ、ギターはエコーとリヴァーヴのお陰でまるでNW。
アルバムの最後に、数曲のデモ音源が収録されているが、こちらのほうがいっそ良いと
感じてしまうほど。高名な「ウォール・オブ・サウンド」、仇になったかもしれない。
・ジョーイの声とロマンティシズムが引き出される
さきに書いた通り、元々ジョーイのソロアルバムを作ろうとしていたスペクター、
そしてポップ指向が強く、ロマンティストで繊細な感性を持っているジョーイ。
流石スペクターが惚れ込んだだけあり、ジョーイの歌声はどの楽曲でも良さが引き出されて
いるように感じる。相性が良いのだろう。あるいは、ちょっと似ているのか?
ジョーイは本作以前からもメロウでロマンティックなミディアム・テンポのラブ・ソングを
アルバムで歌ってきたが、本作の曲とプロダクションは、彼の性向を一層引き出した。
バンドとして聴くと信じられない、ストリングスまで入った(!)あま~いカヴァー曲
#7「Baby,I Love You(ベイビー・アイ・ラヴ・ユー)」は非難ごうごうだったが
ジョーイのソロアルバムの収録曲なのだと頭を切り換えて聴くと一転、名曲に変わる。
#3「Danny Says(ダニー・セッズ)」は、ロマンティックに加えて、
ラモーンズのツアー暮らしの日常ネタ(よくする行動、よく観るTV番組など)が混じり
最後にはなぜかライヴが中止になり、ラジオで「シーナはパンクロッカー」がかかる。
おもしろくてロマンティックで、魅力的な詞。ジョーイってこんな人なんだろうな。
ジョーイのポップ~ヒット指向と、ジョニー&ディー・ディーのハード~パンク指向は
アルバムを重ねる毎に、次第に溝を大きくしていくが、本作はそのきっかけになったか?
・「リメンバー・ロックンロール・レイディオ?」の奇跡
#1に収録され威勢よく始まるスーパー・ポップ・チューンで、スペクターとラモーンズの
双方の持ち味が奇跡的にがっつり噛み合った瞬間、
「Do You Remember Rock 'N' Roll Radio?(リメンバー・ロックンロール・レイディオ)」。
ラモーンズらしく楽しく痛快で、スペクターらしくドリーミーで画期的なアレンジ。
他の曲は何かと「ウォール・オブ・サウンドが・・・もやが・・・」と零したくなるが、
この曲に関しては一切の文句なし。
大リーグの試合で今でもよくかかるから、ロックに疎くても野球にそこそこ詳しかったら
聞き覚えがある楽曲かもしれない。本作の他の楽曲も試合でよくかかるという。
そういう理由で本作は、アメリカ人には馴染み深い作品になっている。
70年代の終わりを歌うこの曲、60年代~70年代にかけての音楽シーンを回顧し
それらからのさよならと新時代の到来を陽気に歌っているのだが、
60年代の音楽をルーツに持ち、70年代にデビューしたラモーンズにとっては
一種の自虐と自殺の歌ともとれるのが苦々しく、何とも彼ららしい。
皮肉にも、彼らがこれから辿る道を少しだけ予見してしまっている気がする。
・微妙に冴えなくなった「ロックンロール・ハイスクール」の再録音
あれ?前作に入っていたでしょう?と思うが、それはどうやらボーナス・トラックのようで、
アルバム収録曲として#10「Rock 'N' Roll High School(ロックンロール・ハイスクール)」
が正式に入っているのは本作になるようだ。
「Rock,rock,rock,rock,rock 'n' roll high school」「Fun fun」といった楽しいフレーズと
ワクワクするあのムードはそのままに、初めはキー下げ、途中から転調してキー上げ、
イントロとアウトロに妙に凝ったSEと、せっかくの名曲がどことなく台無し。
名曲なのは違いない、はずなのだが。
・案外、ストレートなロック・チューンも楽しめる~ゆえに中途半端?
後半に行くほど、ラモーンズ節がウォール・オブ・サウンドにかき消されず、
いつもの調子の彼らの姿を垣間見ることができるようになる。
「Ba-ba-banana,this ain't Havana Do you like bananas,ba-ba-bananas」
というふざけきった洒落が相変わらずの調子でおもしろおかしい
#9「This Ain't Havana(ディス・エイント・ハヴァナ)」
(1stの「ハヴァナ・アフェアー」にも掛かっている洒落なのか?)、
ラスト2曲、#11「All The Way(オール・ザ・ウェイ)」、
#12「High Risk Insurance(ハイ・リスク・インシュランス)」などは
#9と#11の間にある「ロックンロール・ハイスクール」も加勢して、一気に追い上げて
アルバムは無事、有終の美を飾る。
コントロール・フリークのスペクター、さぞかしジョニー達にもあれこれ注文をつけて
いたんだろうと思っていたら、基本的なギター/ベース/ドラムのサウンドに対しては
それほど口出しをしていないらしい。
しかし、しかしだ。もやに塞がれた前半のロック曲を含めてパンク・ロックな曲と
サポート・ミュージシャン達が参加しているような豪華プロダクションのポップな曲とが
ごちゃごちゃに混在していて、スペクターやラモーンズがどちらをやりたいのかが
いまいち判然としない。
そういう「中途半端さ」なども、本作が賛否両論である理由のひとつではないだろうか。
滅茶苦茶な指揮官=フィル・スペクターの元で、バンドの和はすっかり乱されたと思いきや
案外、メンバー達の関係に支障はさほどなかったようです。
問題は次作、遂にあの決定打が出てくる・・・(「あの女」とも言う)
「6thが見つからない」と言って先に7thを手に取ると、色々と不穏になっていて(例えば
いつの間にか、楽曲毎に作詞者のクレジットが入るようになった)驚くやら、がっかりやら。
次作に比べると、本作の狼狽はおおごとではなかったのかも?
本作はある意味、最初で最後のメイン・ストリームでの煌めきの瞬間だったかもしれません。
それが皆に大手を振って歓迎されないのが何とも彼ららしいとも言えるのですが・・・
6th鋭意捜索中です。続きはそれから。
その間は、溜まりに溜まった他のネタをコツコツ書いていきます。
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