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F1:その6 リカルド・パトレーゼ(前編)「30代半ばからのサクセスストーリー!セカンドドライバー界のカリスマ」

今回の連載記事、初めの内はあまり何も考えずドライバーを次々に書いてきましたが
(流石にセナ→プロストは考えた。連載中盤で、パトレーゼをトリにすることに決めた)
想定外の奇蹟が起きました。
カーナンバー「6」が目印のリカルド・パトレーゼに、6回目をあてがうことができた!!!
やったーーーーーー!

このドライバーは連続出走記録を長いこと持っていて(現在は歴代3位)
鉄人」のあだ名でおなじみ。
つまりそれだけ、歴史が長く、エピソードも多いわけで
熟考したあげく、前後編にすることにしました。

前半は「史上最強のセカンドドライバー」と呼ばれてきた時期を中心に
印象的なエピソードを挙げていきます。

最近思うのですが、よく「パトさん」「パト様」って呼ばれていますが
日本以外でもこのような扱いってされているんでしょうか?
優勝経験6回の、セカンドドライバーとして有名な人がですよ?
「いぶし銀」「イケメンオヤジ」などは海外ものを訳した本でも見ましたが
日本じゃ、ある意味、セナみたいな神格化をされてません?
想像するに、パトレーゼ(以下パトさん)の、黙々と自分の役割を全うする姿勢が
日本人の感性にピタリとはまるんじゃないかなと。

私もパトさんがリアルタイム以来大好きですが、なぜかというと、
ファーストの皆さんの「俺が俺が!」イズムがちょっと苦手だったんです。
マンセルの回で、弟のマンちゃん好きを書きましたが、マンちゃんも当時は
「このわがままめ!」って印象だったな・・・今は面白いけどw
それで当時はパトさん、ベルガー、アレジ辺りを応援していました。
子どもの頃からひねくれてるのだろうか・・・それとも、上のきょうだいの性質?


【episode one:イタリア人には母国GPは・・・あった!】

セナの回で、91年母国ブラジルGPで優勝して大号泣する動画がありましたね。
そこでの表彰台のシーン、2位のパトさんがセナに何か話しかけています。
どんなやりとりがあったか定かではないですが、想像するに、これから書く
「前年の、自身のなかなか勝てなかった母国GPでの勝利」の経験が
眼前のセナと被って、祝福の言葉をかけてあげたのかな?という気がするのです。
セナはあんまり聞いていませんが(苦笑)

パトレーゼは(ユダヤ系)イタリア人。従ってイタリアが母国で、
モンツァやイモラ(「サンマリノ」GPと言いつつ、実はイタリアにある)は
母国GPにあたります。
しかし、イタリア人のF1ファン=ティフォシ達の優先順位は
母国ドライバーよりも、母国チーム、つまりフェラーリ。
日本で「マクラーレンホンダ(エンジン)」や「レイトンハウス(チーム)」が
結構応援されながら、同時に中嶋や亜久里や右京もしっかり応援されていたのとは
だいぶ事情が違うようです。

悲劇は83年、イモラでのファイナルラップで起こりました。
トップを走っていたパトさん、痛恨のスピン、リタイア。
そうしてフェラーリのマシンがトップになり、ティフォシはやんややんや、
パトさんには罵声が浴びせかけられたと・・・
失意のパトさん、「イタリア人には母国GPは無い」との悲しい名言を残し
その後はトップを走れるようなチームにはなかなか在籍できず、
「パトレーゼのキャリアはもう終わりか?」というような、冷や飯の日々が続きました。

転機の訪れは88年(正確には87年末)、ウィリアムズへの移籍。
移籍初年度はイマイチでしたが、翌89年からは、それまでが嘘のような活躍を
みせはじめます。
セナプロ鉄壁マクラーレン時代に、フロントローをもぎ取ったり、
優勝こそしないもののコンスタントにポイントを重ねて、
セナプロに次ぐ、年間ランキング3位につけたり!
気がつけば、相棒「振り向けばブーツェン」を戦績で上回ってしまいました。
コンストラクターズでもマクラーレンに次ぐ2位。
持ち前の開発能力を発揮して、マシンもじわじわと良くなっていきます。

そして迎えた90年イモラ。
いろいろあって、フェラーリが2台ともリタイア。応援する対象を失ったティフォシは
トップを走るパトさんに、やんややんやの大声援!
優勝するのも久しぶりだけど、まさかあのティフォシに大声援で迎えられるなんて!
ファイナルラップ、職人肌の36歳は、バイザー越しに涙を流していたそうです。

一度ツキを逃し、下り坂に踏み込んでしまうと、殆どのドライバーはそこでおしまい。
下って、下って、下り続け、気がつけばもうF1には乗れるシートがない・・・
「史上最強のセカンドドライバー」という実績も素晴らしいですが、この
「30代半ばにして、まさかの再浮上」は、もっと評価されていいと思うんです。


【episode two:アクティブサス開発の功績と悲劇】

91年までは、セナ/マクラーレンが辛うじて優勢でしたが
翌92年から、「ウィリアムズ黄金時代」とも呼ばれるほど
ウィリアムズのマシンは「退屈なほど」圧倒的な速さを誇るようになりました。
この時代に、マシン開発の中核を担ったのが、パトさんと、
当時テストドライバーだったデイモン・ヒル、そして
現在も活躍中の天才デザイナー、エイドリアン・ニューウェイでした。
91年末には出来上がっていたFW14Bは、他を寄せつけない激速マシン。
プロストの回で書いたように、セナもプロストもこぞって乗りたがり
ストーブリーグが大荒れになるほど。

しかし、同じくプロストの回にも書いたように、このハイテクマシンは
とっても速いかわりに、とっても扱いづらいという欠点がありました。
「アクティブサス」という、パトさん達が開発したハイテク兵器は、
マシンの速さを限界まで引き出すことができるのですが、
独特の挙動があって、ドライブする側としては限界が掴みづらい。
更に、強靱な腕力、体力がドライバーに要求されました。

92年のマンちゃん、いやこの年なら「マンセル」は、いつになく本気。
体重を絞り、厳しいトレーニングをし、いつもは乗り気でないテストにも
積極的に参加していました。
マンセルは大柄で、剛胆なドライビングが持ち味、細かいことは気にしない。
加えて、実は大学で航空力学を専攻していたりして、技術的な面にも明るく、
「限界が掴みづらい」アクティブサスを、独自の解釈で攻略。

全てが、マンセルの為にあるような年でした。
最強のマシンに乗って、悲願のチャンピオン、いつものポカも殆どなし、
チャンプのまま惜しまれて引退・・・と、寧ろマンセルらしからぬシーズン?
表彰台はほぼいつも、マンセルとパトさんのウィリアムズコンビで、
コンストラクターズもぶっちぎりのチャンピオン。

「史上最強のセカンドドライバー」の称号は、この年に付いたといえるでしょう。
パトさんは徹底的に後続をブロックし、マンセルの優勝に「献身的な貢献」。
・・・しかし、マンセルがシーズン最多勝記録を樹立する傍ら、パトさんは鈴鹿の1勝のみ。
91年は序盤からマンちゃんに予選7連勝したり、メキシコとポルトガルで2勝を挙げたのに。
大きく水を空けられ、ジャーナリスト達に「マンセルが勝てるのになぜ勝てないのか」と
言われ続ける羽目に。

自分で開発したアクティブサス。パトさんは、皮肉にもそれに馴染めませんでした。
翌93年にはプロストやヒルがそれなりに乗りこなし、一定の勝利数を挙げたために
余計に「なぜパトレーゼだけダメだったのか」と、残念な評価に繋がって・・・。
ほんとは91年のFW14(アクティブサスがないマシン)が合っていた、と
自分でも言っているパトさん。
でも、自分のスタイルには合わなくても、良いタイムが出る以上、開発に加わるしかなかった。
91年の活躍があまりに眩しく、ベストシーズンといえるようなものでしたが
チームのベストシーズンとはズレてしまった・・・

こんな辺りが「セカンド」たる所以なのでしょう。哀しいけど。

そして最近、更に残念な事実を知りました。
パトリック・ヘッド曰く、92年ウィリアムズは、マンセル&担当メカニックがグルになって、
パトさんをマークして、嘘の情報を教えたりしていたって・・・。
チームオーダーが露骨になっていった、というのは何となく知っていましたが
そこまで偏った環境にあったなんて・・・。
差がついた原因は、「アクティブサスが合わない」だけではなさそうですね。
ここまで知ったときは「哀しい」じゃなく「悲しい」になっていました。
シューマッハがベネトンやフェラーリでやってきたことと変わらないじゃないですか!

まぁ、チームがこうしたのは、パトさんが来る前、マンセルとネルソン・ピケが
ウィリアムズで、激しいチームメイト間争いを繰り広げ、そのせいでチャンプを逃した
(プロスト教授がしっかりかっさらった)苦い経験があるからでしょうが。
それにしたって・・・
マンセルの回を書いている時は、このエピソードを知らず、「チームワーク感が好き」なんて
書いていましたけど、今となってはその気持ちも微妙なものになってしまいましたね。

けど、この「ほろ苦さ」こそ、パトレーゼ。
「いぶし銀」といわれる渋いかっこよさは、こういった苦境の中で培われた賜物でしょう。


そうして、92年でウィリアムズを去って、93年からはベネトンへ移籍し
ウィリアムズで「何とか御してきた」シューマッハとチームメイトに。
似合わない黄色のレーシングスーツを見た時、何だか嫌な予感がしたのを
今でも覚えています・・・
まるで、セナの似合わないロスマンズカラーに違和感を覚えたのと
似たような感覚で。
まさか「死ぬよりつらい」思いをすることになるとは・・・・・・


この続きは次回、後編で!
今回の前編で書いた「表の顔」とはちょっと違った「裏の顔」、
そして、過去と現在とが不思議に繋がる物語をお送りします。
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