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NICO:その2 Chelsea Girl「代表作が異色作の異端な『ICON』・・・肌寒い日の陽と陰の情景、けだるく神秘的な魅力、甘い魔力」

ジャケ写効果も相まって、冬に聴きたくなる一枚、
NICO(ニコ)のソロ1stアルバム「Chelsea Girlチェルシー・ガール)」。

チェルシー・ガールチェルシー・ガール
(1990/08/01)
ニコ

商品詳細を見る

物憂げな表情にブロンドというのがいいですね。髪はストレートで、黒セーターを羽織った
シンプルな佇まい。
毎月、CD棚のCDを一枚飾っているのですが(今月はWarpaintの「The Fool」のエミリー写真)
冬になるとやっぱり一度はこれを使いたい!
ふいんき(わざと)がありますからね。


彼女は、多くの人に知られているように、1stアルバムだけですがThe Velvet Underground
(ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、以下V.U)の一員としてその存在を知られ、
V.U脱退後ソロになった後もメンバーのジョン・ケイルや、ブライアン・イーノなどとともに
意欲的な作品を寡作ながらリリースしていきます。
驚いたことに、モデルだった彼女が歌手デビューをしたのは、当時恋仲にあった
ブライアン・ジョーンズの紹介で、そのシングルのB面をジミー・ペイジ
作曲・プロデュースしていたのだとか。(但し全く売れなかったようですが)
また、ジム・モリソンとも恋仲にあったり(ドアーズの「The End」をアルバム中でカヴァー、
タイトルにも冠している)、アラン・ドロンとの認知されない子を育て、オムツも替えずに
麻薬三昧をしていたり、最期は50歳の若さでの自転車事故だったり・・・
話題性に欠かない「アイコン」「ドラッグ・クイーン」ですが、
彼女のけだるく神秘的な魅力、甘い魔力を巧みに真空パックしたアルバムがあります。
それが本作「Chelsea Girl」。

ボブ・ディランルー・リードジョン・ケイルジャクソン・ブラウンティム・ハーディン
ソングライター陣に錚々たる顔ぶれが揃った一枚です。
最近の邦楽でいうと木村カエラみたいなものでしょうか、オシャレっぽくて、音楽界の偉い人が
なぜか沢山集まってくる。

こっくりとした声の深み、伸びは、このころから80'sまで変わらないままです。
外見は残念なほど劣化してしまったニコですが(詳細は前回記事のDVDをご覧ください)、
歌声はそんなに変わらなかったように感じます。
彼女の歌声(話し声含め?)を揶揄して「排水溝に水が流れる音」と呼ぶ向きも
あるようですが、まぁそれも分からなくもない(苦笑)。
でも本作ではストリングスをふんだんに散りばめて、包み込むように華やかに仕上げ、
秋から冬頃にかけての寒さや温もり、少しの切なさ漂う、元モデル~「アイコン」には
相応しい一枚に。
名実共にニコの代表作になっています。

しかし皮肉にもニコのほうでは本作が気に入らず、ルー・リードなども本作のアレンジを
クソミソにけなし「俺がアレンジしたほうがよかったかな」などと言っていたとか。
要は「ストリングス多用」「装飾過多」ということのようです。

アンディ・ウォーホルとの出会いやV.Uへの参加をきっかけにニコ自身ものちに作曲を始め
次作以降から本格的にアーティストへと羽ばたいていくので(前回記事のDVD収録の楽曲は
殆どが次作以降のアルバムからの曲、所々にV.U時代のニコ曲)、アイドルを脱していない
「誰かに作ってもらった曲を歌うだけの歌手」である本作が不服だったとみられます。
更に、ニコが今後志向する方向性は「ハーモニウム多用の本格サイケ」なので、#5を除いて
アルバムの方向性に納得いかなかったことも考えられます。
まぁ言われてみればあの曲もこの曲もストリングスでちょっとしつこいかもしれません。
曲そのものに漂う空気感が伝わりにくくなっている印象もところどころ受けました。

だけど残念で皮肉なことです。なにせ「ニコ=Chelsea Girl」だと思ってきたし、
ストリングスやその他装飾音は冬のセーターみたいな温もりのように感じられるし、
その後の作品にふれるのはあまり簡単にできることではないし・・・
ニコの意には沿わないかもしれないけれど、やはりこれはこれで好きです。
微妙に同じ曲ばかり揃っているような気がしなくもないけれど、アルバム全体がそんなに
長くないせいか、さほど気にならないし。


#1~#3にかけての、秋~冬の愉しむ少女達、一転し#4や#6の憂鬱でミステリアスな少女、
あきらかに異彩を放つも今後の方向性を鮮やかに照らす#5のサイケデリック、
そしてまた#7から始まる、肌寒い日の陽と陰の情景、あっさりと事切れてしまう最後の#10。
同じモチーフをひたすらひたすら繰り返す、童話のような展開。
牧歌的で優しくあたたか、ほっこり深みがあり少しもの悲しい、アレンジや歌声の質感。
うっとりするほどなめらかな、美しく丁寧なメロディに甘美なアレンジ。
ニコという謎めいた女性の魅力を多角的に表現した一枚ではないでしょうか。

次作以降の「本来やりたかったこと」=サイケとは随分違うかもしれないけれど、
POPでしっとり名曲揃いの本作は、やっぱり名盤じゃないかなと思います。
80年代のライヴを観て次作以降の音源がとっても気になっているけれど、
(だから連番が「その2」で、前後編ではないのです)
最初にニコと出逢った一枚「Chelsea Girl」を冬のお供として愛聴するひとときは
これからも変わらない恒例の習慣となるでしょう。




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