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古明地洋哉 前編:孤独の音楽&untitled #1「孤独、それは愚直な人が大切な誰かと繋がるために必要なプロセス」

最近Eテレで「ザ・ソングライターズ」をやっている、大御所・佐野元春さんをして
「君の唄を待っているたくさんの人たちがいる。僕もその一人だ」
と言わしめた孤高のシンガーソングライター、古明地洋哉さん。
2000年のデビュー以来、今回紹介する3作目までずっと一貫して「孤独」をテーマに
歌い続け、「ロンリー・ビートニク→シンガーソングライター」というキャッチフレーズで
00年代前半をメインに売り出されていました。
個人的に、季節が冬へと傾きつつある今の時期こそ聴きたくなる声、音なので
今回、00年代前半の音楽の思い出として、引っ張り出してきました。


ラジオでパワープレイ曲として流れていた「想いが言葉に変わるとき」と
これもよく同局で流れていた、カップリングの「untitled #1」。
特に私の耳を、それを通り越して胸を頭を釘付けにし、何度も再生されたのが後者。

想いが言葉に変わるとき想いが言葉に変わるとき
(2004/04/21)
古明地洋哉

商品詳細を見る

「untitled #1」は、03年に急逝した孤高にして波乱の人生を送ったシンガーソングライター
エリオット・スミスによせた曲です。
当時はラブソングだと思っていたので、歌詞に幾つか腑に落ちない部分がありましたが
リスペクトするアーティストの死を悼む曲だと知って納得。
この記事を書くにあたって「ちょっとググって」みたところ、その人生が壮絶すぎる。
熱心なファンサイトさんなども未だにあるようで、今少し興味をそそられています。

ねぇ エリオット 君の声がもう聴けないなんて
ねぇ エリオット こんなにも哀しいことはないよ


この歌い出しが頭にやきつき、7分近くの長尺がまるで気にならず
最後のサビまで一気に聴けてしまいます。
最小限の音のみの歌い出しから、オーケストラ・アレンジへと展開。
大きな存在を失った途方もない喪失感と悲しみが胸を深く貫く名曲です。
アルバムには入っていない曲なのが信じられないくらい。
もし自分が、リスペクトするあのアーティストを突然失ったら・・・?
うまく振る舞えるかな 上手に 降り注ぐ悲しみをよけきれるかな
きっと本当にそんな心情で、何日も何日もうちのめされてしまうことでしょう。


さて、前者の「想いが言葉に変わるとき」を収録した3rdアルバムが
孤独の音楽」。
この曲は本来、シングル曲ではなかったのですが、ラジオでのオンエアで火が点いて
新録の同曲が発売されたとのこと。

孤独の音楽孤独の音楽
(2003/12/03)
古明地洋哉

商品詳細を見る

アルバムタイトルで避けそうになる作品ですが(ジャケも真っ黒だし)
聴いてみるとそんなに真っ暗なわけではありません。
冷え切って退廃的だけど決して孤独に耽溺せず、美しいメロディとサウンドは
その奥に不器用だけど確かな熱をはらみ、本当は人の温もりを希求しているために
楽曲は、マニアックなように見えてポピュラリティもあります。

当時スタッフから「oasisのwhateverを超えてるよ!」と絶賛されたという名曲
(比較する楽曲がおかしいけど、この曲に関してはoasis辺りを彷彿するのは確か)
「想いが言葉に変わるとき」の1番の歌詞を紹介。

想いが言葉に変わるまで
その胸でしっかり抱いてやればいい
さなぎが蝶々に変わるまで
静かに見守ってあげればいい

言葉にならない 
それは多分
本当のことを言おうとしているせい
言葉にならない 
それは多分
本当のことに近付いてるせいだよ


いま胸にある想いをしっかり抱いて、言葉にならないといって焦らないで。
本当のことを言うために、近づくために、想いを見つめて。
漠然とした感情を言葉にすること、常識的な感覚に囚われず自分の感じたままに
忠実に表現することはあまりに難しいけれど、
繊細な人、正直な人にとって、これ以上の救いはなく。
この唄の最後、主人公は「想いが言葉に変わるときにはやっと君に会いに行けるよ
と言っていて、ずっと独りでいたいのではなく、結局は「君」に会いたいのです。
「孤独の音楽」のラストは「君を見つけたよ」という曲で締めくくられ、そこでは
結び目を見つけたよ それは君だった」と歌われてもいます。
今までは誰かと関わる準備として、あえて孤独な状態に
身を置いていたのかもしれません。
それがやっと、「言葉」や「結び目」を見つけて、外へ出て行く準備が整った。
この曲は、そんな静かな喜びの唄なのではないかと思います。

アルバムは全11曲、バラエティ豊かな楽曲が収録されています。
少し線が細いけれど綺麗な流線を描く、無骨さがアコギにベストマッチな歌声を
アコギを基本に、エレキギター、生~打ち込みドラム、ストリングスなどの
幅広い楽器が彩ります。
耽美さと力強さ、メジャーコードとマイナーコード、希望と絶望とを行き来して、
時に荒ぶり、時に夢想して、時に孤独を正面から見つめ、時に繋がりを求め、
音楽としては一本芯が通りながらも、主人公は繊細で脆く、どこか悟りきれない
部分を内包したまま。その感情の揺らぎに大いに共感できる作品です。


驚いたことに、本作以前のインディーズに近いアルバムのプロデューサーは
椎名林檎さんのex.旦那様、弥吉淳二さんだとか!(本作はセルフプロデュース)
本作でも聴けるジリジリ焼き付くようなギターは弥吉さんによるもの。
「なるほど、本当に音楽の仕事で偉い人なんだなあ」と当時えらく
ガッテンしたものです、大変失礼ながら。だってよそでそんな見たことなかったから。
古明地さん曰く、良く駄洒落を言うそうです。
本作以前の作品は、やや耽美色が強めなサウンド、楽曲という印象があります。

mind gamemind game
(2003/06/18)
古明地洋哉

商品詳細を見る


daydreamdaydream
(2003/04/23)
古明地洋哉

商品詳細を見る


さて、冒頭で紹介した佐野元春さんとの繋がりは一体どこで出来たのかというと、
03年10月、佐野さんプロデュースのイベント
in the city SPCIAL PROGRAM「SSW-そして僕は歌を書いた-」に出演。
ここでの演奏が各方面から注目を集めたそうです。
「想いが~」のシングルリリースもそうですが、古明地さんはタイアップなどではなく
とことん「口コミ」「リスナーからの評判」で認知されていった人で、
こういった経緯がもしかすると、次作以降の変遷の経緯に繋がっているかもしれません。
因みに、古明地さんの公式HPによると、イベントの最後で佐野さんに
「こめいじひろ!」と間違った名前で呼び込まれたのだそう(笑)。

こめいじひろしさん、もといひろ「や」さんの作風は次作で大きく変わります。
そしてこの頃、前座でのものですがチラッとライヴも鑑賞しています。
そんなことを盛り込みながら、次回は後編の記事をお届けする予定です。



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