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松崎ナオ:Flower Source「淋しくて、あたたかくて、胸にささる・・・路傍にひっそりと咲く無垢の花」
温かいけれどどこか淋しげな曲、なにげないようでグサリと刺さる歌詞。
松崎ナオの作品に一度触れたら、何だか忘れがたく頭に焼き付いてしまうはず。
しかし、「松崎ナオ」と言っても「誰それ?」とピンとこない人のほうが多いのでは。
それなら、こう言ったらわかるでしょうか。
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椎名林檎のカヴァーアルバム「唄ひ手冥利~其の壱~」に収録されている
太田裕美「木綿のハンカチーフ」で「女性役」として共演していた、あの声の人。
あのちょっと拙いような、純朴な歌声の持ち主・・・それが彼女です。
ヴォーカリストとしては決して上手ではないのですが、感性や雰囲気でもっていくタイプ。
松崎ナオははじめから作詞作曲を手がける歌うたいとして世に出てきて、
注目されたのは曲作りをはじめとする独自の世界観やセンス。
そんな辺りが、椎名林檎と意気投合した要因かと思われます。デビューもほぼ同時期だし。
1998年にデビューして、エピックレコードジャパンから3枚のアルバムをリリース。
私が彼女を知り、ハマったのはこの頃でした。
しかし現在ではこれら3枚は既に廃盤になり、いつのまにか彼女の動向を見失い、
「彼女は今、どうしているのだろう?まだ音楽を続けているのか?」
それすらわからないまま月日が過ぎました。
ある日、ドキュメンタリー好きな私はいつものように、録画しておいたNHK総合の
「ドキュメント72hours」という番組を観ていました。
するとエンディングで聞き覚えのある歌声が・・・!
今回紹介するアルバムに収録されている曲「川べりの家」が、その番組のテーマソングに
なっていたんです。
懐かしい気持ちになっていたところで、レンタルショップで彼女のアルバム
「Flower Source」を発見!
レンタルされているってことは多くの人に気軽に手にとってもらうチャンスが
あるってことで、今回、記事にしてプッシュしようと決意しました。
![]() | Flower Source (2006/08/18) 松崎ナオ 商品詳細を見る |
CDの帯には山崎まさよしさんのリコメンドコメントが書いてあって、
「あなたが何気なく放った言葉はかなり胸に刺さる」という旨の内容を、
実にまさやんらしい文章で表現してありました。
松崎ナオの特徴である「胸に刺さる」言葉と曲。
ピークは1st~3rdのエピック期だったと思いますが(若さ特有の、不安や焦燥感が
じりじり、ちくちくした痛みとなって体中を駆けめぐるような音楽だった)、
本作でも言葉と曲の「じりじり、ちくちく」は健在。
しかし、エピック期では若さからくる陰鬱さ、深刻さがやや前面に出ていたのに対し
年齢を少し重ねたことで、もう少し気楽な世界観、気楽な歌や演奏になっています。
気の合う仲間達が集まってワイワイ楽しみながら制作されたような雰囲気で、
繊細ながらも、リラックスした心地良い空気が流れます。
例えるなら、木漏れ日の中で風を受けながら、過去や現在や未来、人や動植物について
想いを馳せるような・・・。
小さい頃から共にあった庭とそこに生えていた木々との別れを歌った#3「木のうた」、
曲も詞もとても心地良く、そしてとても胸に刺さります。
小さい頃に歌ったうたと 木々のざわめきが
重なる所 それになりたい
広がり続けてく
心の中の木々はいつでも ボクに語りかけ
はじめてできたボクの友だち
ずっと さようなら
忘れたりしない
フレーズで強烈だったのは#6「愛のキャベツ」で、楽観的な楽曲とは裏腹に
忘れない 忘れない 死んだら 忘れる
という言葉はなかなかのカウンターパンチ。
彼女、淡々とした調子で、こういう残酷な真実をスパッと言ってしまうんです。
まるで見たままをそのまま口にしてしまい、それがやけに的を射ている子どものように。
エピック期で私が魅了された「混沌、陰鬱さ、痛み」は今でも残っていると言わんばかりの
アルバム最終ナンバー#12「混沌」は、淡々と展開していたのに最後に急に転調し、
タイトル通り、混沌と不安と心許なさを一瞬だけのぞかせ、たまらない気持ちになります。
じりじりと締め付けられるような痛み、あぁ、この感じだ、と。
そうして、タイアップの話でも取りあげた#2「川べりの家」は、
番組の内容とうまくマッチして、番組のエンディングで流れたときに溢れ出す
やるせなさ、淋しさ、人のたしかな営み、温もり・・・といったら。
「ドキュメント72hours」は、文字通り72時間、ある場所にカメラをほぼ定点観測して密着、
そこに集う人々の営み・・・ホンネ、哀愁、夢や頑張り、明日へと向かう背中などが
とてもよく浮かび上がってくる番組。日々のリアルから、痛みと温かい感触とが交錯します。
この番組を、彼女の歌は、こんなふうに彩ります。
大人になってゆくほど 涙がよく出てしまうのは
1人で生きて行けるからだと信じて止まない
それでも淋しいのも知ってるから
あたたかい場所へ行こうよ
川のせせらぎが聞こえる家を借りて耳をすまし
その静けさや激しさを覚えてゆく
歌は木に溶けてゆき そこだけ水色
幸せを守るのではなく 分けてあげる
松崎ナオは登場当時よく雑誌などで「天才」と称されていました。
こうやって歌詞、とりわけサビ部分を見ていると、その由縁が何だか分かりすぎるほど分かり、
いたく納得してしまいます。
「ちょっと歌の歌詞書いてみて」と言われて、誰にでも書けるような発想や言葉選びでは
到底ないのでは?
慎ましくではありますが、彼女は今も現在進行形で活動を続けているようです。
数年前、あるバンドのライヴを観にいったとき、対バンで、本作にも参加している
ドブロクというバンドのメンバーとコラボして、物凄く陽気で楽しげな演奏を披露していました。
タガが外れたかのようにあけっぴろげで、大きな笑顔で伸び伸びと歌う彼女の姿を見て、
これまでの音楽とのギャップに驚くと同時に、音楽をやることが心から楽しいのだな、
健やかな魂でいまを生きているのだな、と、安堵する気持ちも起こってきました。
このところこうしたセミプロのライヴにめっきり足を運ばなくなってしまいましたが、
また久しぶりに足を運んだら、ひょっこり会えたりするのかもしれません。
そんな日が来たら、つま先から頭までどっぷりと、その歌声に浸ってみたいと思っています。
コメント
風のように流れるなかで微かにチクッと刺さる
書ききれなかったんですけど、ほかにも胸にささる言葉、味わいのある描写が
たくさんあります。
Amazonの中古あたりにしかもうないかもしれないですが(あとブックオフとか)
初期の3枚「風の唄」「正直な人」「虹盤」はウルトラ名盤で、愛聴してました。
たっつんFさんの音楽にも通じるノリがあると思います。
機会があれば、ぜひ、どうぞ。
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おぉ、すごい言葉ですね。。
残ります。。言葉選びのセンスがすごいいいですね!
曲も聞いてみようと思います(^-^)