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はっぴいえんど:はっぴいえんど&風街ろまん「日本語ロックの先駆者。洋楽と日本語詞が融合する瞬間に立ち会い、抒情に胸を打たれて」

「日本語ロック」というジャンルを確立させた立役者のひとつが、
はっぴいえんどという伝説のバンド。
なにせメンバーがあまりに豪華。
細野晴臣さん、大瀧詠一さん、松本隆さん、鈴木茂さんと
今でも邦楽界で多大な影響力を誇り、活躍している面々ばかり。
といってもオリジナルアルバムがたった3枚で、2枚目の「風街ろまん」でバンドとしては
やり尽くしたという評価が一般的のようなのですが。
映画「ロスト・イン・トランスレーション」のサントラで「風をあつめて」を聴いたことを
きっかけに、1枚目「はっぴいえんど」と2枚目「風街ろまん」を聴いてみました。

まずはデビューアルバム「はっぴいえんど」。

はっぴいえんどはっぴいえんど
(2009/02/18)
はっぴいえんど

商品詳細を見る

はっぴいえんどのアルバムで特徴的なのは、ドラマーで作詞担当の松本隆さんによる
イントロダクションの文章が冒頭に掲載されること。
本作ではこのように始まります。

先だって、新宿の「青蛾」で玉露茶を飲んでいると、林 静一氏がふらりと入って来て、ふと「はっぴいえんどの音って云うのは、原色の絵の具を、指で紙にこすりつけたような、かすれた感じだね。」と語っていたのが、妙に耳に残っている。古びた少年雑誌の着色挿絵のように、色褪せた『音の絵本』が、あってもいいと思う。このアルバムは、そんなぼくらの夢を、音のペンキで描いた絵本である。
だが、その絵を、レコードの溝から引き摺り出すのは、ステレオ装置のレコード針でも、アンプリファイヤでもない。それは、君の持っているイメージの波長を、ぼくらの夢に同調させることなのだ。


松本さんは、本作では未だ、洋楽と日本語詞との融合は
完全には達成できなかったと述べています。
モロに洋楽ロック、しかもかなりハードなロックに、日本語を無理矢理乗っけて
不気味にドロドロしたただならぬ妖気が漂ってきます。
だから寧ろこの「ちぐはぐ」具合こそが魅力で、妙にクセになってしまいます。

邦楽バンドでいうとゆらゆら帝国などが思い出される感じ。
歌のちぐはぐ感でいうとダモ鈴木が居た頃のCANもちょっと似た印象がなくもなかったり。
ドラマーが作詞を多く担当し、文学的な雰囲気が漂い、音に泥臭さもあるあたりは
GRAPEVINEなども遠縁の後継者にあたるのでしょうか。
本作の舞台は冬。最初の曲「春よ来い」を筆頭に、冬の悶々とした心境や情景が
想起されます。

そしてびっくりしたのがブックレット巻末の「Thanks」欄。
普通ここにはメンバーがお世話になったスタッフや友人や身内の名が書かれるはずですが
彼らが本作でここに綴ったのは、所々に自身の名前、そして大量の、彼らがリスペクトする
国内外のミュージシャン、小説家、漫画化、映画監督などの名前。書ききれませんが例えば
John and Paul,黒澤明、江戸川乱歩、Edgar Allan Poe(乱歩の次に)、
Neil Young,楳図かずお、Joni Mitchel,Bob Dylan,Frank Zappa,茨木のり子、明智小五郎、
宮沢賢治、Phil Spector,美空ひばり、千利休・・・
メンバーは特に宮沢賢治に影響を受けていて、その世界観が音楽性にも影響しているという
ことで、しばしば寓話調になる歌詞を読んでいると特にそれを感じます。
また、アメリカのバッファロー・スプリングフィールドや、モビー・グレープに影響された
先進的な音だともいわれます。

この頃、ちょっとしたいざこざが起こります。
はっぴいえんどなどのバンドが登場するまで、日本のロックバンドの主流は英語詞。
漫画「僕はビートルズ」でも、ビートルズの模倣で英語詞で歌うバンドが、日本語で歌う
GSサウンドのバンドを目撃するシーンがあり、そこでも「歌謡曲や日本語といった、
日本人のアイデンティティをもったロック」の誕生が描かれていました。
はっぴいえんどと既存の英語詞ロックバンドとの間にはもちろん確執があり、それは
日本語ロック論争」と呼ばれています。どちらかというと、英語詞バンド側が一方的に
難癖をつけて、はっぴいえんど側は右から左へ聞き流した印象がありますが。
こんな論争が発生するほど、はっぴいえんどの音楽は画期的な発明品だったということ。
前述した松本さんの発言はこの論争に関するインタビューを受けてのもので、
「洋楽と日本語詞との融合」をついに果たすのは、次作を待つことになります。


はっぴいえんどのキャリア・ハイとなった2nd「風街ろまん」。

風街ろまん風街ろまん
(2009/02/18)
はっぴいえんど

商品詳細を見る

ジャケットに描かれているのは、左上から時計回りに
松本さん、鈴木さん、細野さん、大瀧さん。
こうやって小さな画像で見ると何とも思わないですが、実物を見ると結構生々しい(笑)。
特に唇あたりが。

イントロダクションからしてとても詩的。

もはや
愛することさえ難しい
この都市の
風景の中で
素適な風に変身した
はっぴいえんどの
抒情が
限りなく痛む君の
傷口を貫く


ところで、「この都市」とは?
時は1971年、東京オリンピックを経て日本は急速な復興~近代化へと突き進んでいた時代。
東京オリンピック以降の開発・近代化で急激に失われゆく「古きよき日本・東京の姿」を
「風街」という架空の街にみる、といったテーマでつくられたコンセプト・アルバム
なのだそう。
「ロスト・イン・トランスレーション」や「4TEEN」などの映画に採用された「風をあつめて」が
入っていることもあり、はっぴいえんどの代表作といわれています。

前作に比べて穏やかな音になり、音と日本語がぴったり嵌るようになっています。
本作の成功で「日本語ロック論争」も無事終結。
前作から本作まで僅か1年。恐るべき進化です。
冬の光景が浮かぶ前作とうってかわり、本作の舞台は夏。
「はいからはくち」なんて過激なタイトルの曲もありますが、詞も曲も叙情的。
物はないけれど人の心は豊かな昔ながらの街並みに、さんさんと陽が照りつけて、
そこに風がふわりと吹いてくるような、情景と空気感が伝わってきます。


3曲目に「風をあつめて」が登場。
ロスト・イン・トランスレーションのサントラの記事で歌詞を全文紹介したので
ここでは割愛しますが、本作のテーマ「風街」の様子が詳しく歌い込まれていて
アルバム中でも圧倒的な存在感を放ち、曲のまとまりも何だか神がかっています。

そしてもう一つの聴き所というか見どころが、歌詞。
豊かで変幻自在な日本語の世界。宮沢賢治の作品を彷彿させる素朴な情景や語り口に、
独特の仮名遣い、そして擬音。「ゴオ ゴオ ゴオ」(冬の機関車が走る音)、
「ホーシーツクツクの蝉の声」「モンモンモコモコの入道雲」、
「とっておきの微笑 ぽつん」「いっちょうらの涙を ぽつり」、
「台風 台風 どどどどどっどー どどどどどっどー みんな吹きとばす」
はっぴいえんどの音楽の魅力は、半分は音、そして残り半分くらいを、
この「ことば」達が受け持っている
ように感じます。

「風街ろまん」で全てをやり尽くし、大瀧さんのソロ歌手転向もあり、
レコード会社を移籍した次作3rdではっぴいえんどは解散。
ぼちぼち再結成もありましたが長くは続かず、以後、メンバーはそれぞれの道へと進み
現在へと至ります。しかし細野さんがその後YMOを結成するとは、当時も驚かれたそうだけど
今考えても信じがたい・・・
たくさんのフォロワーが生まれ、カヴァーアルバム企画が現代でも行われるなど
ミュージシャンや音楽ファンから根強い支持を得ています。

ゴリゴリの輸入ロックから日本語詞や歌謡曲との融合へ、
ポピュラリティを内包した粋な音楽へ。
「日本語ロック」が誕生する過程に立ち会えるようなバンドです。

私が大学生の頃、音楽通の人は決まってはっぴいえんどを聴いていました。
当時は「何でそんな大昔の音楽を聴くの?」と思っていたのですが
今になって彼らの気持ちが分かりました。
はっぴいえんどの音楽は、なんとなく、これからも長く聴き続けていくような気がしています。
寒い季節と、暑い季節などに、思い出したように何年も何十年も。
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テーマ:ロック - ジャンル:音楽

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