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文豪ナビ 夏目漱石:「簡単に手に取れるけど案外深い。漱石世界をすいすい渡り歩けそうな、わかりやすくて重宝するガイドブック」

出先で時間を持て余しているとき、私の専らの娯楽は、読書。
いつも鞄のポケット部分には、2冊くらいの文庫本を入れていて、
その時の気分次第で読み分けるのですが、この頃はもっぱら夏目漱石
というか、去年頃まで振り返ると、もう1年以上ずっとダラダラと
漱石片手に歩いていることになります。
もちろん合間合間に他の本も読みながら。
最近は「隙間時間」がなんだかなくなってきたり、疲れていてウトウトしたかったりして
読書の暇がないままということも多かったので、漱石を読むのはいつもゆっくりです。
集中したい本は家で一人じっくり対峙して読むんですが、漱石の本は私にとって
「ながら読み」「待ち時間潰し読み」にうってつけ。程よく面白く、程よく薄味で。
物語が大きく動いている時以外は、まったりとそのテンポや洒落を楽しみながら読めます。
つぶさに一字一句目を光らせながら読んでいる熱心な方には申し訳ないのですが。

さて、多作な作家の虜となったとき難しいのが、「何から読むのか、次は何を読めばいいか」。
好きなものから読めばいいのだと分かりつつ、子どもの時分に「吾輩は猫である」を読んだり
高校生で「こころ」を読んだりしても、その滋味が分かるはずもなくて。
連作(漱石でいえば、三四郎→それから→門、といった)のようなパターンもあるし。
文庫本巻末についている、題名と簡単なあらすじでは、どうも十分に分からないし、
かといっていま全ての漱石本を揃えるのも・・・
三四郎」→「それから」(今ここ)→「」までは買ったものの、その後を案じているとき
その本は颯爽と、私の前に現れたのです。


文豪ナビ 夏目漱石 (新潮文庫)文豪ナビ 夏目漱石 (新潮文庫)
(2004/10)
新潮文庫

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「文豪ナビ」シリーズ、他の文豪もとりあげて全7冊あります。
そのなかの一つが漱石先生。「先生ったら、超弩級のロマンティストなのね。」という
かなり印象的なフレーズの下にいる、模写しているんだけどゆるい漱石先生のイラスト。
「はじめて漱石を読むわけではないんだけどなぁ・・・」うっすらと抵抗感を覚えながら
それでも、藁にもすがりたい迷える羊(stray sheep)の私は、頑張ってレジまでこの本を
運んでいきました。

開いてみると、まずカラー写真を織り交ぜながらキャッチーに、
こころ」「三四郎」「夢十夜」のイントロダクション「こんなとき読みたい漱石」。
次にスマホの操作画面ボタンにありそうなマークを冠したポップな目次は例の似顔絵つき。
そうして、「超早わかり!漱石作品ナビ」の表紙にはルンルン歩く蛙さんと、
読書慣れしていない人でも親しみを持てそうな親切設計。
ディープな読書好きにはイラッとくるかもしれませんが、もう少し待って。

さてさて「次に何を読めばいいのか」に悩む私にとって最大の読みどころ「作品ナビ」、
漱石おすすめコース」なるものがまず提示され、それに準じた紹介文が続きます。
紹介文はそこそこネタバレで、読む前には良いけれどいま読んでいるとキツイ(笑)。
そして「どうしよう!この順序で読んでこなかったよう!」「40歳を過ぎた大人の読み物の
吾輩は猫である』は、40くらいまで読めないの?読み返そうと思ってたのに!」
「『三四郎』三連作の前に『こころ』や『草枕』を読んじゃった!」とちょっと動揺が!
困ったぞ!どうしよう?
・・・まぁ勿論あくまでひとつの例であって、本文最後にも「順を追って門をくぐるもよし。
興味深い門に真っ先に駆けていくのもよし
」とあるので、大丈夫大丈夫。
参考にしながら、気になる門はちょっと強引にくぐって、後でまた読み返せばよいでしょう。
ナビはあくまで、ナビなんだから。

続いては「10分で読む『要約』夏目漱石」。あらすじではなく、もののみごとに、10分程度
時間があれば読めそうなくらい、きちっと要約されていてこれは本当にびっくり。
吾輩は猫である」「坊っちゃん」「草枕」の3つが登場するんですが、読んだことがない人は
「要約」ということはつまるところ結論まで示されているということ=ネタバレなので注意を。
あのシーンもあの言い回しもきちんと入って10分で要約。
「漱石ナビ?バカにしてんのか?」とご立腹のフリークの方にも、せめてこの章だけは、
いやこの章こそ、ぜひ読んでいただきたいです。

次は、「声に出して読みたい日本語」ほか数え切れないほどの著書がある齋藤孝さんによる
声に出して読みたい夏目漱石」が登場。まんまじゃないですか!
ここで味わえるのは、私が漱石を常備する正にその理由、「テンポのよい文体の小気味よさ」。
私は文体で好きな小説家が決まるタイプで、その人の文体にハマったらどこまでも追いかけ、
逆に文体にピンとこなかったら話が魅力的でもどこか居心地が悪く、その作家とはサヨナラ。
ユーモア、くちぐせ(「頗る」「甚だ」など)、流暢さ、偏屈さ。
これが癖になってしまうと漱石先生から抜けられなくなるのです。とても良い気分になれる。
そして齋藤さんも文体だけピックアップだけではなく作品やエピソードにも言及しており、
漱石文学への愛情がよく伝わってきます。

「漱石文学への愛情」ということで、続いては漱石ファンの作家2名によるエッセイ。

ひとりめは表紙のインパクトあるフレーズ「先生ったら、超弩級のロマンティストなのね。」
が文中から抜粋されている三浦しをんさん。最近書店でその名をよく見るようになりました。
「漱石作品って何か変だぞ」という話から始まって、件の「超弩級のロマンティスト」、
そして「そんな先生は実生活では、女性とどんな会話を交わしていたのか?」という流れで
随想と短編の「硝子戸の中」「文鳥・夢十夜」でその謎を紐解くのですが、
うーん何だか良くも悪くも女臭いというか、「『こころ』は男同士の恋愛では?」と騒ぐ
そのノリがどうにも、最近言うところの「腐女子」みたいでちょっと(苦笑)。
でも、「硝子戸の中」や「文鳥」は一般的にはややマニアックな作品なので、
「漱石の素の姿が垣間見られる本」として、チェックリストに入れたくなります。

ふたりめは「スキップ」「ターン」「リセット」シリーズなどで有名な北村薫さん。
こちらは硬派に、「こころ」一冊で展開。漱石というか読書ライト層を一喝するタッチです。
古書店で見かけた女子高生と店員のやりとりをモチーフに、「愛書家にとっての本とは、
新しい衣服に優先するのは勿論、食事代も切り詰め、デートの数を減らしても買うべきもの」
という「愛書家」と、その極端な主張に納得できない我々「普通の人」との溝をあぶり出し、
そこから展開して「『こころ』とは、どのように読ませるべきか、どのように学ばせるべきか」
という論に入っていきます。「文豪ナビ」という書籍の趣旨が分かっていないようにも
とれますが、「こころ」ひいては漱石文学の奥深さを伝えると共に、この「文豪ナビ」という本を
単にビギナー向けのライトな読み捨て型の読み物に留まらず、玄人層の読書にも耐えうる重みを
与える役割を果たしているように感じられます。

東京に住んでいたならこの章片手に一度は街歩きをしてみたくなる、地図イラスト付きの
漱石文学散歩」がそれに続きます。
早稲田から神楽坂までのエリアに、漱石文学のあの場面もこの場面も、漱石が人生を送った
あの場所もこの場所も集約されているようです。
硝子戸の中」「道草」「それから」「坊っちゃん」、とりわけ「硝子戸の中」から
引用や紹介があって、作品・人物、両面から漱石に興味が沸いてきます。

そして最後に「評伝 夏目漱石」。
産まれて死ぬまでの漱石の一生を辿り、そこから生まれた作品群を辿っていきます。
孤独な生い立ち、若い頃よりの多彩な才能、挫折、神経衰弱や胃炎との闘い、不器用さ、
気晴らしに楽しく書いていたはずの小説がいつの間にか自分を追い詰める苦しみ・・・
どの作家でもそうですが、漱石もまた、その生きざまが作品やそれを制作する過程に
よく反映される作家。漱石という人を知ることによって、漱石の作品も、一層良く
心に沁みて、どんな心情で作品群を産みだしていったかと、思い入れも深まります。
同時代を生きたのにタイプはまるで正反対の文豪、森鴎外との比較も印象的。
二人の人生は対照的で、なのに不思議とある部分ではリンクしていて、興味深いです。
どちらのタイプの生き方が好きか、ちょっと考えてみてもいいかも。


あっさりと始まるけれどやがて深い読み物と化していく。
簡単に手に取れる割に、色々な読み方・使い方が出来る。

軽い気持ちで買った本だけど、案外重宝して、長く手元に置いておきそうな気がします。
おぬし、なかなかやるなぁと。


それを振り返りつつ明日も隙間時間に「それから」。威風堂々とニートをしている代助は
ムカつくけれど清々しくもあり。そろそろ例の三角関係のライトが、黄色信号に変わってきた
頃合いです。ワクワクしながら、時間をじょうずに潰そうという日々はしばらく続きそうです。
続編「門」もスタンバイしているし。
というか、他の本だってまだ10冊近く置きっぱなしだし!
「本を読む」と「音楽を聴く」と「映画などのTVを観る」と「ブログを書く」と「交際」と
「一人暮らしの家のことをする」と「デイタイム」と、華麗に全部両立する方法は
どこかに落ちてないものですかねえ。
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コメント

あれは良い本です。

(漱石さんのコトでなくてごめんなさい。)



声に出して読みたい日本語…あれは良い本です。

子どもでも、大人でも楽しめますね。


子どもには
暗唱用に。

大人は結構忘れていたコトが確認できたり…。
(七草とか)


ワタシは好きですよ。

寧ろそちらを読んだことがなかったりします

「声に出して読みたい日本語」、あんだけベストセラーになって
騒がれたというのに、私はノータッチで情けない・・・
「ええ声」ならぬ「ええ文」に触れられそうで良いですね。
脳内ストレッチみたいな気分で。

因みに「声に出して読みたい夏目漱石」でも、優れた文章を音読することで
学習効果をあげることができる、と、その本に通ずるものはあると思われます。
エッセンス・オブ・「声に出して読みたい日本語」かも。

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