2014-11

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【CDレビュー・感想】LUNA SEA:LUNACY

また、このブログらしくもなく、90年代の邦楽バンドの作品です。
時々取り出して聴いてしまう、LUNA SEAのアルバム「LUNACY」。
2000年に彼らは「終幕」して、2007年のライヴ、2010年の「REBOOT」宣言まで
長い沈黙を続けるのですが、その「終幕」前最後の作品がこれ。
昨年リリースされた新作よりもやっぱり好きなこのアルバムを
今回は感想/レビューしちゃいます。


まずジャケットが好みどストライク。

LUNACYLUNACY
(2000/07/12)
LUNA SEA、DJ KRUSH 他

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こういうシンプルで先鋭的なデザインが個人的に大好きなのである。
私は基本的に、ヴィジュアル系の様式美などにはまるで興味のない人間なので、
それまでの彼らの音源にはあまり親しみを持てなかった。
けれど本作は、ヴィジュアル系という枠組みをほぼすっかり外れたロックアルバムだ。
洋楽志向でガッツリ攻めて、私のツボを今でも突きまくる。
前作「SHINE」からその傾向が増していたが、本作はそれを更に突き進めた。
「LUNA SEA」というバンドの作品としては「らしくない」作品のさいはてなのだが、
それゆえに今に至るまで「このアルバムがいい」という根強いファンを生んでいるように思う。

以下、各曲ごとにみていく。

1.Be Awake
疾走感溢れる、爽やかでダイナミックな曲、爽やかすぎてLUNA SEAらしくないし、
なんかベタ。ぶっちゃけ苦手で、よく飛ばしてしまう。
「宇宙的に感じようよ」とは何ぞや(苦笑)
SUGIZOはあまり歌詞を手がけない方がいいような・・・・・・
宇宙的なギターソロは素晴らしいし、ギタリストとしては大好きなんだけど。

2.Sweetest Coma Again feat. DJ KRUSH
カッコ良すぎて、この曲だけどれだけリピートしたかわからない。
なぜシングルカットされなかったのか? feat.DJ KRUSHだから?
映画「007」の日本版エンディングテーマで、話題にもなったのに、もったいない。
徹底的にクール。前作で強すぎた「河村隆一」色がほどよく封じられ、
各パートが火花を散らすようにやりあっているのがあまりにスリリング。
Youtubeで終幕時のライヴ(FINAL ACT)を観ると、SUGIZOが腰を振りまくって煽っていて
盛り上がるところなのか笑うところなのかいい意味で迷ってしまう。

3.gravity
ドラマ・映画「アナザヘヴン」主題歌。オリコンで1位も獲っているシングル曲。
最近になってようやく魅力に開眼した曲。
やるせなくしどけない、鬱蒼とした曲を書かせたらINORANは随一だった。
今のINORANはもうこんな曲、書かないし書けないんだろうな。
INORANのアルペジオを主役にしたことで、SUGIZOのギターやJのベースがむしろ際立つ、
アンサンブルの妙を堪能できる曲でもある。

4.KISS feat. DJ KRUSH
直球でエロく、華やかで、都会の香りもする。
どくどく溢れ出してくるようなベースラインが淫ら。
SUGIZOとRYUICHIの組み合わせは#1も含め、どうも「あま~く」なる。
随所にサンプリングされた喘ぎ声はあのビビアン・スー(SUGIZOの当時の彼女)って本当?
DJ KRUSHはいい仕事しかしない。ベストマッチ。もっと色々やってみてもよかった。

5.4:00AM
乾いた午前4時のTOKYOのマンションの一室をミニマルなタッチで描き出した曲。
短編小説のような「ふぜいのある」上品な佳曲。
INORANの流れるようなアコースティックギターが美しい。
でも他のメンバーは持て余してる?と思っていると、ラストで一気に混沌に突入、
面目躍如となり、これまた、よくできた小説のオチのようである。

6.VIRGIN MARY
LUNA SEAのアルバムにはいつも中盤でプログレっぽい長尺の曲が入るようだが
それがここ、まさにど真ん中に鎮座する。
本作は「らしくない」作品と言ったけれど、唯一「らしさ」を残したのがこの曲かも。
幽玄の境地、耽美の世界。
シューゲイザーなギターのアプローチのおかげで退屈しない。

7.white out
ズブズブな#6から一転して、甘く温かくあっさりとした曲。
INORANの曲なんだけど、とても河村隆一的なのはなぜか。
曲が淡いあまりヴォーカルに呑まれたか?
クセのあるギターソロがユニーク。

8.a Vision
ストレートで豪胆な、Jらしい曲。のちのJソロ曲まんまともいえる。
Jの曲ではRYUICHIはタイトに歌ってくれるので、
華美になりすぎず聴きやすい。
大きな点でひとつひとつ刻み込んでいくようなベースソロがキく。

9.FEEL
#4「KISS」の延長線上にあるような妖しく悩ましい曲。そういえばタイトルの
文字数も同じで、間奏でもサンプリングされているし、意図的に繋がっているかも。
悩ましい曲を書かせるとSUGIZOがうまい。
サビの転調が妖しさを一層アップ。
ヨコノリのグルーヴィーな曲に、イントロ~Aメロのタテノリでゴリゴリなリフ、
間奏のヴァイオリンや#4のサンプリングなど、いい具合に詰め込まれている。

10.TONIGHT
LUNA SEAがある意味、アイデンティティを全部投げちゃった曲。
これはこれでよいが、昔からのファンの絶望する姿が目に浮かんでしまう。
シングル曲だがセールスが振るわなかったのはこのせいか。
よくまとまっており、バンドものの王道の曲・アレンジなのだが、だからこそ
変化球が売りのこのバンドが演るという、違和感が半端ないわけだ。
こういう曲をシングルカットした時点で「終幕」の始まりだったのかも。

11.Crazy About You
ラストはスケール感のあるJの曲。
いい曲なんだけど、これがアルバムを締めているので後味がよくない。
J曲を最初に、SUGIZO曲をラストにもってくれば、
冒頭の違和感も、ラストの違和感もなかったと思うのだが。
この時期からのJ曲はどうもアメリカン・ロック色が強くて、
LUNA SEAらしさから乖離している感が強いので。


本作を発表してからほどなく、LUNA SEAは「終幕」を発表。
それも納得できるような、個を突き詰めた、全体のまとまりを欠いた1枚は、
しかし曲単体では最高水準にあり、
また、そのまとまらなさ、歪さが、本作独特の魅力となっている。
そして本作のリリースがほかならぬ2000年というのも重要だ。
これが1997年とか2002年なんかの作品だったなら、ただの駄作である。
「2000年」というカオスな時代の空気を、本作は巧みに切り取ったようにも感じられる。
REBOOT前、SUGIZOはLUNA SEAを振り返り「偉大なる失敗バンド」なんて
言っていたというけれど、それゆえに愛おしくなるのかもしれない。
歪で、過剰で、カオティックな、なんて素敵なバンド、素敵なアルバム。
メンバーが最高密度で力を出し、ぶつかり合ったからこそできた最高傑作。



さて、その後の、というか、現在のLUNA SEAですが、
多くの人がご存じのように、2013年、最新作「A WILL」をリリース。

A WILLA WILL
(2013/12/11)
LUNA SEA

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レビューを書こうとも思ったけれど、「何か違う」の連呼になりそうなのでやめました。
歳を重ねた重厚さもあるんですが、どうもあまり好きにはなれなかったし。
だいいち全員、顔をちょっとずつ(某メンバーは「だいぶ」)いじっている気がするし・・・・・・
それにやはり「LUNACY」が一番好きだと、嫌と言う程わかってしまったので。
あくまでも好みです。時間は逆戻りしないし、私もあの頃に戻ってと言う気はないです。
でも、この作品の不思議な魅力を、どうしても多くの人に知ってほしかった。
そんな熱情に突き動かされて、綴った記事でした。

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【漫画】安倍夜郎「深夜食堂」感想

しみじみ染みるドラマ「深夜食堂」を観ていて、
あとは、雑誌で「グルメ漫画特集」を読んでいて、
手に取りたくなった大判サイズのコミックス全13巻(現時点)の
安倍夜郎さんの漫画、深夜食堂
今回は、一連の既刊を2週間かけて全部読んだ感想です。
ふあーお腹いっぱい。



深夜食堂 13 (ビッグコミックススペシャル)深夜食堂 13 (ビッグコミックススペシャル)
(2014/09/30)
安倍 夜郎

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まずは、ドラマを先に観ていた作品なので、どうしてもドラマとの比較がしたい。
ドラマと原作の比較
原作は、1回の連載につきわずか10頁の短い漫画である。
ドラマの30分も短いけれど、原作の尺は更に短い。
そんなことも手伝って、ドラマ化は相当、大変だったのだろうと思われる。
・ある話がドラマ化されるとき、原作の話にかなりエピソードや設定が
付け足されて、ときにほとんど別の話になっている。
複数の話をひとつの話にまとめてドラマの一話になっていることすらある。
原作では漫画という表現だから許される「言葉足らず」「余韻」が多くあり、
それではドラマとして成り立たないためだろう。
・初期の話が、現在放送中のSeason3に出てきたりして、
連載順はほとんど関係ない。ドラマオリジナルの話がかなり多いぐらいだ。
・原作では、ドラマ以上に、特定の常連さんが何度も登場していて、
いつもモブとして出ているような常連さんに、急に事件が起こり、主人公になったり。
ドラマでは新しく出てくるゲストが基本、主人公(原作も原則そうだが)。
・原作は月1~2回連載しているので、春夏秋冬の深夜食堂が存在する。
ドラマだと秋冬のクールを狙って放送しているので、深夜食堂はいつも冬だ。
それにしても、かき氷はセルフサービスって、面倒くさすぎじゃないか?
・原作では店の外に出て普段着で過ごすマスターの姿が登場する。
ドラマでは絶対にそんな場面がないので(今度公開される映画ではあるらしい)
ちょっとわくわくする。
原作のマスターの容姿は「元やくざ・・・?」というような雰囲気。(実際どうなのかは
まったく明らかにされない)
そして、あのめしやは、とある人物から譲り受けたものだということが判明する。
逆に、ドラマでは、マスターの目元の傷について、ドラマオリジナルキャラクターとの
関連が示唆されていた。それぞれの違いを見比べるのも楽しい。
ドラマで、漫画で、これから謎が明らかにされるかもしれないしね。

コミックスで気付いたこと ―「漫画」としての特徴―
・凝った装丁
毎回毎回、モノクロの「めしや」遠景の絵の上に、トレーシングペーパーがのって、
そこに白で、雲、雪、雨、枯れ葉、花びら、星、霧、火の玉(ユーレイ)などが
印刷されて、仄かで美しい。高い金を払っただけの質感ってものだ。
・独自の造形
安倍夜郎さんの描く絵はとても変わっている。
デッサンとかちゃんと整っているのか?というような危ういタッチなのだが
絵の個性で独自の世界にもっていって、成り立たせてしまう。
卵みたいな卵形の顔。メークインみたいな面長の顔。
ぼたりと零れ落ちそうなおデブ顔。
ユーモラスでチャーミング、記号のようでもある。
漫画でしかできない風合いを醸し出している。
・モチベーションを高めてイノベーションを起こさなきゃ
今のは、実際に客の会話で登場した台詞である。
どうにもリアリティのない台詞回し、新聞や雑誌の見出しなどが
コミックス前半~中盤にかけて散見される。
本当にこれが小学館漫画賞を受賞する超人気漫画なのか?
驚いてしまう(中盤以降になると少しずつ改善されたように思う)。
でも、そういう場面があっても、頁を繰ってしまうのが、この漫画の魔力。
・ふりがなの多用
店(うち)、旦那(あのひと)、ユウキとゲンキ(ふたり)などなどなど、
たびたび、ちょっと無理ないか?というようなふりがなが登場する。
ビーイング系列アーティストの歌詞のようでもある。ちょっとくどいかも。
・後半からの展開の豊かさ
コミックスの巻数が進むにつれ、料理の幅が広がっていく。
たまに、作り方説明が詳しく入ったり、簡易レシピまでついたりする回も表れる。
しかも実際のお店による協力までクレジットされていたりする。
凝ってる。面白くて、思わず作ってみたくなる。
登場人物の出身や食べ物の内容も全国津々浦々に展開されていく。
もちろん職業も多彩だ。毎回、話考えるの大変だろうな。

深夜食堂あるある
13巻も読んでいると、「あるある」が出来てしまう。そりゃあね。
・(脳梗塞で)倒れがち
「だれかれが倒れた!」という展開が3回に1回は出てきているような。
倒れた、入院した、実家に帰る、人生見直す、のセットも多い。
具体的な病気名としてはなぜか脳梗塞が4回はある。なぜに?
他にはがん、骨折、アルコール中毒など。あまり種類は多くない。
・実家や故郷に帰りがち
うまくいかない人生の最後に、「実家に帰ってお店継いだ」みたいなオチが
多いのも気になる。
せっかく東京に出てきたのに、みんな簡単に実家に帰りすぎ。
地方だと職や医療機関がなくて、帰りたくても帰れないケースだって多いのに。
もちろん、帰れない悲劇を描いた物語だってあるけれど。
思い出の味を実家や故郷に求めすぎている感もある。
リアルな田舎出身者としては、そこはどうしても目に付く。
・恋愛の展開が早すぎがち
10頁で始まって終わる話だからそうしないと間に合わないのだろうが
めしやで出会ったり再会したりして、あっという間に
付き合い始めたり、関係を持ったり、同棲したり、結婚したりしがちである。
時々笑いながら読んでいた。
この漫画は不条理世界のギャグ漫画だと思って付き合ったほうがいいかも。
漫画にリアリティを(絵・物語とも)求める人には恐らく向かない。

深夜食堂の世界観と魅力
・居場所
一ヶ月半行かないだけで「もう一ヶ月半来てない」というマスターのモノローグになる。
常連さんは、週に何回も、めしやに通っているふうである。
まるで家、定期的に通うのが当たり前の場所。
・喜怒哀楽
おいしい顔、困った顔、泣いた顔、笑顔・・・
喜怒哀楽、客のありのままがさらけ出され、受け止めてもらえる場所がめしや。
マスターや常連さんが、ある程度の距離感を保ちながら、時には背中を押したり諫めたり。
「おいしい!」と笑う女性がみんなかわいいのがとても印象的。
かわいい女性探しをする漫画としても案外いいかもしれない。味のある系だけど。
・全ての職業に貴賎なし
めしやの客には、水商売や風俗の業界で働いていたり、それらを利用していたり
といった場面が多く登場する。完全に大人向けコミックスなのである。
ストリップ嬢と舞台俳優を比べて前者がひけめを感じる必要のない場所。
かえって、えらい人が浮く(たまに常連客になるケースもあるが)。
働いて、おしゃれじゃないけど安心するめしを喰っていれば、それでよし。
逆に言うと、働いていない人は基本的に登場しない。
働けなくて苦しんでいる人も見てみたい気がするが、それじゃめしやに行けないか。
・まるで小咄
とんちの利いた漫談みたいな話から、後味切ない人情噺まで。
笑えてしんみりする、うまくまとまった小咄をノンストップでお届け。
もっともっとと、頁を繰ってしまうのだ。

読んでいると思わず食べたくなる、やってみたくなる
めしを作ったり食べたりする場面はこの漫画の優れた「脇役」であって
主役は人情噺なのだが、絵や「おいしい!」と喜んでいる登場人物を見ていると
つられてしまう。以下、私がつられた食品や作り方をリストアップする。
たらこを焼く・生で食べる/ポテトサラダ/バターライス/猫まんま/
さんま蒲焼き丼/ツナマヨ丼/コンビーフ炒め/春キャベツ/
カップ焼きそば(巻末の宣伝漫画にて)/塩鮭/(湯)豆腐/リンゴ/梅干し/
焼きうどん/まいたけの天ぷら/ロールキャベツ/ブリの照り焼き/ワンタン/
コロッケ(からあげ、エビフライも)そば/レタスチャーハン/
わかめとキュウリの酢の物/フライドポテト/アボカド/ホーレン草のソテー/
他にもいっぱい。
この漫画に影響されて粗食に妙な憧れを持つようになった。
我ながら呆れてしまうが、やっぱ、グルメ漫画だな、この漫画は。
ああ、次から次へとおいしそうだ。


頼めば何でも作ってくれる食堂なんてどこかにあるのでしょうか?
週に何度も通って、居場所として機能するめしやはよくある話?
深夜から早朝「だけ」営業している食堂ってよくあるのでしょうか?
お店でここまで常連同士の距離が近いのはなかなかないのでは?
不思議なお店。お店というより福祉関係のセンターに似ています。
でも福祉くさくなく、あくまで中心はめしをおいしくいただくこと。
そして人と人とが自然に繋がり合う。
ああ、こんなめしやがあったらなぁ・・・・・・
今日もまた、そんな「桃源郷のような場所」を切望してやまないのです。

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【CDレビュー・感想】BUGY CRAXONE:ナポリタン・レモネード・ウィー アー ハッピー【ライヴレポ】

今回の記事の主人公は、札幌出身で90年代末にデビューして今もしぶとく活動している
BUGY CRAXONEブージークラクション)というバンドです。
私は2002年頃に彼らの存在を音源で知り、翌年、ライヴに参戦、
以来、このバンドを10年以上にわたり応援しています。
最近は少し距離を置いていたのですが、先日、久しぶりにライヴに行ってきて、
それが素晴らしかったので、初めて記事にしてみます。


<ライヴレポ>
ブージーのライヴは、要所要所で音源以上のものを語っている部分があるので、
あえて今回の記事はライヴレポから始めたい。

現在のDr、ヤマダヨウイチ氏が加入する前、前任のドラマーが脱退してからの
作品から、急に音も歌詞もスカスカになり、「空っぽ?思考停止?」と戸惑った。
「もう、私の好きだったあの『魂に突き刺さる詞と音』を鳴らすブージーはいないのかも」
と幻滅。しばらく音源は集めず、ライヴにも行かず、静観していた。

2014年11月21日、私は気が変わって、久しぶりに
ブージーのライヴに行ってみようと思い立った。
会場は札幌COLONY。ここは、10年近く前、私が初めて彼らのライヴに足を運び、
鮮烈な洗礼を受けた場所である。
その日は冬で、Vo/Gtの鈴木由紀子氏(以下由紀子さん)が酸欠でぶっ倒れるという
とんでもないアクシデントが起きるという、インパクトのありすぎる出会いだった。
激情の演奏、叫びながらも正確で巧い歌、Gt/Choの笈川司氏のグレッチが鳴らす
豊かな響きのギター・・・・・・私は一発で虜になってしまった。
由紀子さん――あの頃は「ゆっこちゃん」――は、一種の聖域というか、女神というか、
我々の一段上に立っている存在だった。
彼女はそういうカリスマ性を備えたヴォーカリストなのだ。

あれから10年余りが経った。期待外れになる覚悟をかなりしながら、
この倦んだ日々のなかに何か刺激が得られないかと、「賭け」にも近い気持ちで
チケットを買い、何年かぶりにライヴハウス「COLONY」に足を運んだ。

そこには、あの頃と変わらない熱気があった。
10年前の曲を2曲演ったとき、あの尖っていた頃と寸分違わぬ激情と真摯さとが
剥き出しになって表れてきて、私は心底ほっとした。
でも、聞き慣れないポップで楽しい曲調の新譜たちをメインにした演奏にも、
違和感は不思議となかった。寧ろ、「丁度良いな」と感じた。
観る側(聴く側)も、演る側も、歳をとったということなのだろう。
そして、ブージーというバンドは、無理なく自然に歳を重ねて、音を奏で続けている。
10年が経ち、私も歳を取ったし、周りの観客は若い子からシニア層までいた。
ステージ上のメンバーも歳を重ね、変わらないようで、少し落ち着いた感があった。
Ba/Choの旭司氏は、相変わらず黒ずくめで、ニコニコで、「変わってないなぁ」と
可笑しくなってしまったけれども。(ちょっと体型が豊かになったかな?)
でも、それが、「自然に楽しく、でも熱量は変わらない」時間を過ごせた理由だと思う。
楽しかった。メンバー4人と一緒に私(たち)もたくさん笑い、頭を振って踊った。

ただ、少し淋しいのは、私も含め長年のファンは、どこかで昔の面影を求め、期待して
今の彼らを受け入れている、受け入れようとしているということだ。
昔の曲のイントロが流れると、会場の雰囲気が一気に変わる。
待ち望んでいたというように。
「あの頃のブージー」がやっと表れた。そんな本音が、率直な身体の反応で露わになる。
だから、以前なら絶対になかった、由紀子さん自ら物販でグッズを捌く姿は、
ありがたさと同時に、何かやるせなかった。
大袈裟に言うなら、女神が地上に降りて同じ人間として息を吸って、目の前にいるのだ。
普段はバイトでもして生計を立ててるんだろうな、何してるんだろうな、
そんなかつてはタブーだった想像を、容易にしてしまう自分に戸惑った。
身近なのはいいけど、幻想が壊れるようで少し興ざめ、というやつなのだ。
今でもファンの多くは、由紀子さんに対して、一種の夢を見続けているのだと思う。
その夢や幻想ゆえに足を運んでいるファンは決して少なくないはずだ。
そして、それが、今でも変わらず、ブージーの大きな魅力のひとつなのである。


<CDレビュー・感想>
さて、やっと音源の話をする。

ナポリタン・レモネード・ウィーアーハッピーナポリタン・レモネード・ウィーアーハッピー
(2014/06/18)
BUGY CRAXONE

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6月にリリースされた音源だが、対バンのMCによると、今回参戦したライヴは
本作のレコ発ライヴだというので、ライヴ後に思わずその場で買ってしまった1枚。
タワレコででも買えばポイントも貯まるのに、ライヴの勢いで、今すぐ買わずにいられず、
つい衝動買いをしたのだ。
けれど今は11月・・・・・・レコ発って本当なのか?勘違いして買っちゃったんだろうか?
家でリリース日を確かめて以来、ずっとモヤモヤしている。
でも、2,700円はたくだけの価値はある良作だったから、モトは取れたので、よしとする。

軽快だけど思考停止じゃない
近作に対して「ユルすぎない?」と感じていたとは序盤にも書いたが、
本作「ナポリタン・レモネード・ウィー アー ハッピー」は、
軽快なタッチな中にも、ほどよい重厚感、密度が戻っているように感じられた。
80sのガールポップを思わせる、ちょっと懐かしいテイストを纏いながら、
子どもか頭の足りない人(失礼)が書いたかのように見せかけた歌詞を綴りながら、
決してそれは思考停止にはなっていないと。
以前の彼らは、「世知辛い」「生きにくい」と正面から歌い、奏でていて、
我々ファンはその姿に、信仰に近い愛情を抱いていたのだけれど、
時間が経ってメンバー4人(メンバーチェンジ含め)が大人になったことで、
「そこまで根を詰めて考えたってしょうがないでしょ」
「生きにくいけど、世知辛いけど、楽しくやっていこう?」と
シンプルな生き方に辿り着いたように感じられる。
また新しいかたちで、自分の今いる大地を見据えて、
そのうえで軽快にダンスしていることがわかる音楽になった。

音楽的アプローチも変えていく
音も詞も客観的になり、ゆとりが生まれた。
魂がどうとか、なぜ生きる・どう生きるとか、そういった感情の追求ばかりでなく、
音自体を「楽しむ」要素が増えている。
シリアスな曲調のパンクロックから、メジャーコードを多用したロック/ポップスへ。
以前にはなかった、80sシティ派ポップスみたいなジャジーな#4
「のー ふらすとれーしょん」といった楽曲もみられて、耳でも楽しい。
また、由紀子さんの歌に対するアプローチも変わった。
以前は刺すような少年性で勝負していて、多くの曲の一人称は「僕」「ボク」だった。
それが何年か前から少しずつ変わっていって、ロックをがっしり歌い上げるよりも
コケティッシュな少女性を前面に出し、結果、角砂糖みたいに甘くサラサラ透き通る、
ヴォーカリストとしての新しい魅力を引き出すことに成功している。

少年少女の感受性をもったまま大人になるということ
哲学的ですらあった初期~中期から変化して、近年の歌詞は「あえて軽快」だ。
考えていないわけじゃない。
例えば#5「わかってきたよ」では、こう歌っている。

ひとりひとりちがうってことを
やっとわかってきたとおもうの
どんなこともやるってきめて
ジャンプしたらむげんのせかい

Live いきてるってこと
Life たのしむってこと


若いバンドがこんなことを歌っていたら、「世間知らずのスカスカなバンド」だと
苦笑混じりで通り過ぎられてしまうだろう。
これは、それまで気を張った表現をしてきた、真っ正面から対峙しすぎてきた
ベテランのバンドが今ようやくこう歌うから説得力があるのだ。
ひらがな、というのも、これまた肝要だと、音源で聴くとわかる仕掛けである。
「Live 生きてるってこと」じゃ、この声やこの曲には重たすぎるし、説教くさくなってしまう。

彼らの現在のスタンスがよりわかるのが、#7「GO GO シリアス」という緩やかな曲。

なんかおかしいし なんかくるっている
そんなことくらい さぁ こえてすすめ

GO GO シリアス
これがせかいさ

花のようにじぶんのように
せかいをみてられたら
あとは上出来だと笑っちゃうの


世界はおかしいとも狂っているともよくわかっていて、
そのうえで奏でる「ウィー アー ハッピー」な音楽なのだ。
これは新たなる立ち向かい方、少年少女の感受性を持った大人のやり方。
心地よく、でもずっと、転がり続けていく。ライク ア ローリング ストーンってやつだ。
このバンドらしい、新たな地平が広がっている。

実は今が一番売れてる
Wikipediaを見ると、驚くことに、近年~現在の方向性が、過去のどの時期よりも
オリコンチャートの順位が良いのである。
メジャーレーベルに属していた90年代後半~00年代前半、
北海道の大規模なロックフェス「ライジングサン・ロックフェスティバル」の出場を果たしたり
怒髪天主催のレーベル「「Northern Blossom Records」に所属になった00年代中盤よりも。
このバンドは本当に山あり谷ありだと思う。
メンバーチェンジも多いし、音楽性もよく変わるし、安定するということがない。
そんな彼らが、15年近くやり続けた今、セールス的に最盛期にあるなんて。
思えば先日のライヴで観客の層が広かったのはそういうことかもしれない。
観客も60人くらいびっしりと埋まっていて、「もしかして客、増えてない?」と驚いた。
こんなことがあるものなのか。
てっきり斜陽の道を辿っているものとばかり思っていたから(自分のアンテナに
引っかからない、変化を受け入れられないという理由だけで)、未だに信じられない。
確かに、より、万人が入っていける音楽になった。
10年前くらいの時期の作風に思い入れが強い私はまだ戸惑いを隠せないけれども、
これが彼らの現在なのである。
長くやっていくというのはそういうこと。
柔軟で、変わり続けていきながら、
変わらずもあり続けるということなのであろう。



こんなに長く活動していられて、愛され続けていられるなんて凄いなぁと、
あの日出会った場所で、私は感無量になっていました。
その理由こそ、「空っぽ」だと思っていた近年の作品に、
めっきり足が遠のいていたライヴにあったのは、
まさに「百聞は一見にしかず」でした。
たった一夜のライヴ、たった1枚のCDに、
私はあまりにも多くのことを教わったのです。
一人でも多くの人に、彼らの音源やライヴに触れてほしいと
今でも、今こそ、強く願ってやみません。

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【CDレビュー・感想】FLiP:LOVE TOXICITY

私が1stアルバムから動向をチェックしているガールズバンド、FLiPの3rdアルバムが
昨年の6月に発表されました。
作品は当然昨年のうちにチェックしていたのですが、諸般の事情で
記事化はお流れになっていました。
それを今回、満を持して書いてみたいと思います。



LOVE TOXiCiTY(初回生産限定盤)(DVD付)LOVE TOXiCiTY(初回生産限定盤)(DVD付)
(2013/06/26)
FLiP

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ジャケットでまず語る
1stや2ndのジャケットとは違い、ヴォーカル/ギターのサチコが一人で映るジャケット。
背中ヌードに近い、SMを連想させる過激なファッションが目を引く。
1stや2ndは「かわいくてかっこよくて親しみやすい4人のメンバー」を売りにしていたのに
本作は一転してハードに。
このアルバムを象徴しているようなビジュアル、ジャケットだ。

個々の個性よりも完成度重視
1stや2ndでは、ギターのユウコやベースのサヤカもちょくちょく作詞していたが、
本作ではサチコが一貫して全ての詞を手がけている。
作曲と編曲はFLiP全員で。
それまでは、シングル曲などはサチコと、プロデューサーのいしわたり淳治氏が
多くの作詞作曲を手がけて、アルバムではユウコやサヤカも加わるというふうだったが
いしわたり氏が離れた本作ではセルフプロデュースに挑戦。
もともと安定した作詞作曲ができていたサチコ中心になった。
そもそものメディアなどでの取り上げられ方もサチコがメインだったので、
世間からの見られ方と実態がリンクする出来といっていいのかもしれない。
その結果、アルバム全体が一貫した完成度、雰囲気を保っている。

「いしわたり淳治プロデュース」のコーティングを剥がして
実際には「剥がされて」「捨てられて」と言った方が正しいのかもしれない。
なにせ手をかけたのに売れなかったのだから・・・・・・
でも、彼女達自ら「セルフプロデュースをしてみたい」と願い出たのかもしれない。
元々FLiPは全部自らでやっていたのだから。
チャットモンチー、9mm Parabellum Bullet、ねごと、NICO Touches the Wallsを手がけた
ヒット請負人のいしわたり氏による「伝わるため、売れるため」のポップなコーティングが
それまでのFLiPの作品をある程度世の中に知らしめてきたけれど、
本来の彼女達の表現したいもの、素の姿との乖離が生じてきたということもありそうだ。
なにせ、キャッチコピーは
「影と光の間に潜むのは未熟ながらも今を生きるもう一人の人格たち」なのだ。
1stや2nd、特に2ndは「光」の側面を強調したアルバムだったので、その反動として
「影」の側面が前に出てきても不思議はない。
そうして、詞・曲・アレンジ共にダークでハードなアルバムが出来上がった。

絶望のほとりから空を見上げて
甘いコーティングを剥がして、剥き出しになったのは、悲痛な叫び、痛み、闇。
ほぼ一貫して主人公は飢えているといっても過言ではない。
例えば、#2「カミングアウト」のサビでは、こう歌い上げる。

その手のばしてよ あたしの首まで
口約束はいらないの 今に夢を見ていたいの
そうでしょう? 空っぽな心であなたを感じたい
何度も狂わせて


Aメロでは「いじめてよもっと」なんて、ジャケット写真にも繋がる
更に過激なフレーズが出てくる。
アルバム全編にわたり、音も刺すように鋭角的で、ささくれ立っている。
その絶望がさいはてに達するのが#6「a will」の遺書風の歌詞で、ちょっと怖い。

どれくらいの愛があればいいのでしょうか。
どれくらいの愛を知れば愛せますか。
君と触れあう時間だけ微かな鼓動感じてたの。
たぶん愛を知らないまま愛していたから。


Coccoの歌詞のように重くて、山田詠美の小説のように淫らでもある。
「今日が終わる頃には世界は綺麗よ。
だって私の醜い身体が消えるの。」という直接的なくだりも出てきて
それまでのFLiPを知っているファンは戸惑ったことだろう。
売れない、プロデューサーに捨てられた、が実態であったなら、
そのくらい病んでしまっても無理もない。
しかしこれはなかなかに堕ちているな。

開き直れ!
これだけハードで病んでいる作品が、それでも聴けるのは、
根底にある、彼女達自らが持っているポップさ、そして地力であろう。
最後の#11「Bat Boy! Bar Girl!」ではこう宣言している。

Bat Boy! Bat Girl! 太陽より
Sing a song! Sing a song! 眩しいもの
Bat Boy! Bat Girl! 闇に光る
Sing a song! Sing a song! タカラモノを
飛びたて翼ひろげて 逆さまのこの世界
Bat Boy! Bat Girl! たとえそれが
Sing a song! Sing a song! ニセモノでも


ヤケクソ感が漂うともいえるが、響きは力強い。
カーンとホームランを放ったような聴き応えだ。
FLiPらしいダイナミックな歌声や演奏は、本作においても一貫しているので
繰り返し聴けば、今までの世界と地続きであることがわかる。
そもそも#1「タランチュラ」のBメロで既にこう言っているのである。

それでも死なない あたしは死なない


病みかかっていようと彼女達は死なない。
本作は、どんなになっても負けない、という、明確な意思表明なのだ。
結局、本作も「らしさ」は何一つ失われていない。
「らしくないけどらしい」アルバムだといえそうだ。

明るいものばかりもてはやされる世相へのカウンター
いつからか、重たい表現で勝負するバンドやソロアーティストを
あまり見なくなった。
重たい表現でやってきた面々が、いつの間にか方向転換していたり。
誕生日パーティーみたいに明るくて脳天気なバンド、
ほわんふわんととりとめのない綿菓子のようなソロシンガー。
重苦しい表現が排除され、「あかるい」「やさしい」ものばかりが重宝されるような
風潮はないだろうか?
FLiPは、そんな世相にもの申そう、一矢報いようとしたのではないか、とも感じた。
いつでも誰にでも出来ることではない、売れなくなるというリスクがあるから。
でも4人はその茨の道をあえて選んだ。
最後にひと花咲かせようと言わんばかりに・・・・・・。
その思い切りこそ、ロック。
売上を落とす結果になったかもしれないが、私が本作のことを忘れられなかったのは
彼女達のそんな根性が胸に響いていたからだろう。


2014年10月、FLiPは事務所を移籍し、新作シングル「GIRL」をリリース。
オフィシャルサイトのトップ画像にもあるように、
今ではすっかり、売れ線というか守備路線の「ガーリー」にイメチェンしています。
垢抜けてかわいいけれど、これは彼女達の本音か? 今更感も・・・・・・。うーん。
FLiPが3rdアルバムで過激で暗い路線を試みたのは、リスキーな挑戦ができる
最後のチャンスだと分かっていたから、
「遺書(a wlii)」は、本音で勝負できる表舞台に向けて発されたものなのかもしれません。
個人的にはちょっと残念ですが、生き残っていくため。
これからが彼女達の本当の勝負どころだから、まだ見守っていようと思います。
ライヴ行きたいなぁ。もっと幅広く全国を回ってくれたらと願うのですが、厳しいでしょうか。
ああ、行けるうちに行っておけば良かった。


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【お笑い】バカリズム THE MOVIE【映画】

今クール、TVドラマ「素敵な選TAXI」の脚本を手がけている
あまりに多彩すぎる、あちこちでその姿を見かけるバカリズム
その彼が、私の知らないところで、映画を撮っていたのです!
レンタルビデオ店で「久しぶりに、ばかばかしくて笑えるものを観たい」と思って
「お笑い」の棚で借りてきた作品なんですが、これがなかなかに映画してました。
日本映画大学を出ているぐらいだから素養はそもそもあるんですよね。
でもスゴいなぁ、ということで感想です。



バカリズム THE MOVIE [DVD]バカリズム THE MOVIE [DVD]
(2012/11/21)
升野英知(バカリズム)

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コントの延長といってもいい5つの短編をひとまとめに。
シリアスものの映画みたいな作品からフルアニメーションまで幅広い。
早速、各話それぞれを振り返ってみたい。

『(株)ROCK』
本作、もしかして一貫してシリアスな映画なんだろうかと思ってしまった作品。
最後の最後にならないと不条理世界のシリアス映画だと思ってしまう。
「笑っていいの?悪いの?」と相当迷いながら観ていた。
普通の会社のはずが、中身は完全にヤクザな社員たち、
喧嘩が強い奴が社長になるというヤクザな世界。
そこでのし上がっていく主人公が、最後にお偉いさん「升野」によって
全ての世界観の前提を全否定されてしまって、ようやく笑いが出る。
笑いまでがなかなか長い。
冒頭からの長いイジメ描写はちといただけない。

『メンコバトラーM』
何とフルアニメーション!
バカリズムは1シーンごとに全部、絵を描いたってことでいいんだろうか。
すごすぎる。だってそれなりに長さがある。
ストーリーは、「巨人の星」みたいな父と息子から始まり、
息子である主人公の少年が、メンコで世界一を目指すという荒唐無稽なもの。
でも劇画調で昭和風の本格的な絵がいちいち笑いを誘い、同時に見入る。
すげ、すげえ。
最後に父と息子のベタな邂逅があるのがなかなかカタルシス。

『トップアイドルと交際する事への考察』
私が一番気に入った作品。升野さんこじらせすぎw
主人公の「俺」が、カフェでコーヒーを飲みながら、向かいのカップルを眺めて
「もし俺がトップアイドルに告白されたら」と考えはじめ、
その妄想がどんどん具体的になり、現実との境目までわからないほどになる。
本当にこんな式があるの?というような数学式だとか、図形なんかが出て、
「甲」「乙」といった契約書みたいな様式で、恋愛の法則が分析される。
おいおい頭で考えている暇があったら早く行動しろ対応しろ。
しかもこれだけ具体的な想像が全て「俺」の妄想なんだからどんだけ暇だよ。
てっきり、実際に目の前にトップアイドルが来て付き合って別れたのかと思いきや、
実は普っ通ーーの彼女が来て、真実の愛に目覚めましたなんてうまいオチがつく。
いやはや、参りました。

『魔スノが来たりて口笛を吹く』
とある高校に転入してきた魔スノは孤独な少年だが、
嫌なことをされたりするたびに、特殊能力を使って、
相手を骨に変えてしまうことができる。
何かあるたびに特殊能力を使ってムカつく奴を退治していると、
いつの間にか卒業している。
そして、最後まで特殊能力を発揮する(ちょっと変化球だけど)。
ここまでの3作の展開から、最後に魔スノに何かしっぺ返しがあるのかと
予想していたが、特に何もなかった。
痛快ではあったが、最後にはちょっと変化がほしかった。

『帰ってきたバカリズムマン』
バカリズム主演のアクションヒーロー番組があったらしく、それがこういったかたちで
復活したとのこと。だから「帰ってきた」と冠されている。
内容は至ってストレートに王道の昭和アクションヒーローもの。
「コッテコテの昭和のアクションヒーローだ」「升野さん昭和もの好きなんだなあ」
「古いテロップ(笑)」「一味唐辛子のナビ(笑)」「奥村愛子が作曲に参加してるんだ!」
などの感慨はあったが、あんまり見所や笑いどころはなかったように感じた。
よくできているなあと感心していて笑い損ねたというか。

エンディングテーマ『バカリズム THE MOVIE 音頭』
バカリズム作詞。エキストラを沢山呼んで、お祭りの音頭みたいな盛り上がり。
自虐がだいぶ入っているが、昨今の芸人の映画監督化の著しさを皮肉った
愉快なカウンターだと思った。
「映画を撮ったら文化人」(笑)
何だかんだいって本当はこの作品が大ヒットして欲しかったんだろうな。
私がまるで知らないということは、一部のバカリズム信者を除いて
要は滑ってしまったんだろうけど・・・・・・


笑ったり感心したりと忙しい映画でした。
コント集にしては余りあるほど本格的、短編集としてはうーん、それなり。
でも本作があったから「素敵な選TAXI」みたいな仕事に繋がったのだろうし。
何より、バカリズム、多才すぎ!
それに一番驚かされた映画(コント集)でした。
いやはや、天は人に二物以上を与えることがありますね。


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【フィギュアスケート】高橋大輔:D1SK【DVD】

この頃、毎週のように、フィギュアスケートのグランプリシリーズを観ています。
地上波しか観られない環境なので、第1戦のアメリカと昨日の中国戦以外、
日曜深夜のスポーツ番組での中継にかけるしかないのですが。
毎週フィギュア漬けのなかで、映画のDVDなんかも観ているうち、
「フィギュアスケートのDVDってないのかな」と思い、近所と市街地のレンタル店を2店はしご。
その結果、見つけたのが、近所だと浅田真央ちゃんのもの、そして市街地では真央ちゃんに加え
先日引退表明したばかりの高橋大輔さんのものがありました。
真央ちゃんは近所でも借りられるので、今回は高橋さんのDVDを観てみることに。
ノウハウもないなか、手探りで感想を書いてみます。



高橋大輔 D1SK [DVD]高橋大輔 D1SK [DVD]
(2014/01/29)
高橋大輔

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粋なタイトル
高橋さんのディープなファンが、「D1SK」のロゴマーク入りのタオルを手に熱烈な声援を
会場で送っているというのは、スケート好きなら有名な話。
「大輔が一番」という意味合いがあるのだとか。
これ、ロゴマークと、DVDのタイトル、どっちから来たのか気になる。
DVD発だと「DISC」にも引っかけられるから、とても納得なのだが。

過去から現在までのステップをセルフリメイク
トリノオリンピック頃から2013年までのプログラムから、
「世界一」と謳われるステップを総さらい。
2013年の高橋さんが、過去の衣装を着て、全部滑っている。
「なるほど~」と思いつつも、ここは過去の映像が見たかった。
過去の高橋さんに興味があったから。
でも、本作以前にもたくさんDVDが出ているようなので、
過去の姿はそちらでチェックしてねということなのだろう。
熱心なファンなら買い揃えているだろうし、ね。

2011年~2013年の名演技も収録
銅メダルを獲った2010年のバンクーバーオリンピックからの3年間。
その、テレビではあまり取り上げられない期間中、アイスショーなどで披露した
プログラムもいくつか収められている。
これが良かった。
伸びやかで、曲を生きているかのようなスケーティングの美しさは
ステップ集より、ショーや試合の臨場感のなかで観たほうが断然輝いていた。
色気たっぷり、存在感抜群。
「世界一」と謳われるわけがよくわかった。すっかり魅せられた。
スケーティングもいいし、ジャンプもいい、スピンもいい。
マンボやタンゴが難なく似合ってしまう、日本人らしくない曲ほどハマってしまう。
「白鳥の湖」ヒップホップバージョンまで!
これがもう現役の選手としては見られないなんて残念でならない。

あるフィギュアスケーターの一年を切り取って
時系列順に(イントロダクションとしてソチ直前のインタビューがあったが)
2013年の高橋さんを追いかけたドキュメンタリーが、ステップ集と併せて
本作の軸になっている。
特典映像のなかで荒川静香さんも言っていたが、リンク上とリンクを離れたときの
ギャップがすごい。
普段の姿は、オシャレで明るくて気さくで優しい、普通の兄ちゃんなのである。
衣装の製作の打ち合わせ。
北海道清水町のリンクに小学生たちから高橋さんまでみんなで夏合宿。
アイスショー、試合。
合間に本作の撮影スタッフさんとご飯を食べて。
フィギュアスケートをやる男性の一年弱を垣間見ることができる。
雅な世界、我々とは遠く離れたところにいるようなフィギュアスケート選手を
ちょっとだけ身近に感じられる。

勝利よりも、楽しく今を生きること
高橋さんがこう言っている場面があったわけではない。
私が本作での高橋さんを見て感じたことである。
バンクーバーオリンピックで3位を獲ったことに満足していると、
新しいコーチに「おまえはバカか、そんなもので満足するな」と
せっつかれたというエピソードがインタビューで披露されていた。
そして、たくさんの笑顔、発言から伺えるのんびりした性格。
子ども達を目にして、アイスショーで、本当に楽しそうにしている様子。
「ああ、この人にとって、スケートは勝つためじゃないんだな、
楽しむためなんだな」
「世界一になることよりも、楽しく生きることに、重きを置いているのかな」

そういう印象を持った。
だから3位止まりなんだよ、と言う向きもあるかもしれない。
でも、高橋さんは、生きることを楽しむ価値を知っていて、実践している。
3位だってとんでもないことだが。
自分が楽しむこと、人に喜んでもらうことが一番の価値。
それの何が悪い。
アスリートとしてのメンタリティでは少し弱くなるのかもしれないが、
人としては、至極真っ当だと思う。
だからこれからのプロスケーターの長い道のほうが、高橋さんは
きっと楽しく長くやっていける。
私はそう感じた。

まさかの地元の話題
極個人的な話で申し訳ないが、言わずにいられないことを。
高橋さんが夏合宿に励んだ北海道・十勝の地は、私の地元なので
黙って見てはいられなかった。
私は清水町出身ではないのだが、帯広から清水の道のりは列車で通っているし
幼少期などに親戚の家を訪れた際にクルマで通ったりしている。
だから見覚えのある景色につい興奮してしまった。
帯広名物「インデアンカレー」を巡ってああだこうだと一同が話題にしているのも胸アツ。
清水町で、高橋さん達一行がとても生き生きしていた姿もあって、
夏合宿のシーンで勝手に思い入れが強くなった(笑)。

作曲:佐村河内守
エンドロールで流れてきた残念なクレジット。
ソチオリンピックでは「作曲:Unknown」になったが、結局この曲を使い続けた。
だから演技中に曲が流れてきたのを観ていて違和感はなかったが、
実際に文字でその名前を見ちゃうと・・・・・・
高橋さんは何も悪くないのだが、つい、見てはならないものを見ちゃった気になる。
そういうオチがつくなんて。



昨日の中国戦といい、羽生結弦選手の勝利や「負けない」ことへの執念は
凄まじいもので、「これが金メダリストの振るまい」というようなプライド、
アスリートとしての強いメンタルが、町田選手や無良選手も含めた、
いま活躍している世代に漲っています。
織田信成さん、小塚崇彦選手も含めたバンクーバー世代は、
その辺がちょっと弱いというか、良くも悪くも人が好いという感じがします。
でも、高橋さんをはじめとした不器用で優しい選手たちは、
競技だけでなく、自分の人生を楽しむ術をよく知っているように思われるのです。
どちらが正しい、どちらがあるべき姿、というのはないと思います。
アスリートとしては現在の世代が好き、でも人としては前世代のほうが共感できる。
そういうことだってあってもいいような気がしてなりません。


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【映画】夏の終り【DVD】

秋も終わりに近づいた今「何を言っているんだ」って感じかもわからないですが
映画館に足を運ぼうと結構大真面目に考えていた作品を、なんだかんだで
映画館で観られず、結局、先日DVDで観ました。
意図せずに小林薫さんスペシャルウィークみたいになったのですが
ともかくも感想、いってみます。



夏の終り [DVD]夏の終り [DVD]
(2014/03/19)
満島ひかり、綾野剛 他

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「私の男」で大いに話題になった熊切和嘉監督の作品。
満島ひかり綾野剛小林薫と、役者もいいところが揃った。
さらに音楽は日本とも縁が深いミュージシャンのジム・オルーク
こんな顔ぶれを見るだけで、期待をせずにはいられないというもの。

夏の終り (新潮文庫)夏の終り (新潮文庫)
(1966/11/14)
瀬戸内 寂聴

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原作は瀬戸内寂聴が1962年に発表した自伝的短編小説で
この年、寂聴さん(当時の筆名は瀬戸内晴美)は女流文学賞を受賞している。
何度か映画化、TVドラマ化されているようだが
寂聴さんからは「もっとも生々しい」「肌に粟を生じて見た」との賛辞を贈られている。

文学的映画
音楽がほとんどなく、空間を台詞で埋めたりもしない。
小説の行間に画面を近づけようという試みか。
舞台となっている1950年代にタイムスリップしたかのような空気感もすばらしい。
衣装や町並み、家の中などのこだわりを引き立たせている。

説明不足
余白の多さは、そのまま、説明不足にも繋がっている。
あらすじを知らないと、何が何だかわけがわからない映画になっている
気がしてならない。
あらすじを知っていて観るのが前提みたいな作品である。
更に、時系列がしょっちゅう飛ぶので、あらすじを知っていて観た私ですら、
しばしば「話はどうなっているんだ?」と訳が分からなくなってしまった。
最近の説明過多なバラエティに慣れている人は見向きもしないだろうな。

空気映画?
決して大衆映画ではないだろう、この説明不足感からして。
アングラ寄りなんだろうが、居心地は決して悪くない。
精緻に再現された時代性、それに寄り添った映像美、
次第に漂う鬱々とした雰囲気や閉塞感。
さしずめ「空気映画」とでも名付けたいような印象だ。
それが最後、空が晴れるように一気に解放され、
物語はカタルシスを生む。

出演者総うつ状態
主人公の女、年上の男、年下の男。
この三人が主な登場人物だが、皆、もれなく病んでいる感じだ。
「どうしたらいいのかわからない」と家庭すら投げて恋に生きてしまう女。
普段は穏やかで狡猾なところもあるが、実は死にたがっている年上の男。
女への愛情、嫉妬、孤独に怯え、荒々しく愛を求める年下の男。
いつもというわけでもないが、要所要所でヒステリック、ノイローゼ的なのだ。
ちょっと「うわぁ・・・・・・」と引いてしまう場面もいくつかあった。
最後にはこの暗雲が一気に晴れるので、すごくすっきりするのだが。

愛のない愛
女はふたりの男の愛に引き裂かれてしまうのだが、その愛の内実が問題だ。
年上の男との関係は愛情というより、父と娘のような「愛着」、あるいは「習慣」。
年下の男との関係は愛情というより、女からすれば淋しさを紛らわせる「慰みもの」、
男からすれば孤独を埋めて、人の女ばかり欲しくなるという「依存」。
どちらにも本当の愛、女への愛がなく、結局は自己愛が勝る「愛」だった。
そのために女は袋小路に迷い込んでしまったのだろう。
そして、やがて、その事実に自分で気付き、自分を立て直していく、と。

逃げたがりの女が自立を手にするまで
「絵を描きたい」「好きな人ができた」と言って、夫と娘から逃げ出してしまう女。
年下の男とすってんてんで駆け落ちするけれど別れ、夜の女として暮らすも
行き詰まって「どうしたらいいのかわからない」と泣き崩れ、年上の男に救ってもらう。
それから、女は染色家として自立し、年上の男との中途半端な同棲生活を八年も
送るのだが、男には妻子があり、女の家と妻子の実家を往き来している。
年下の男の登場をきっかけに、その曖昧な関係が苦しくなってしまい、
再び「どうしたらいいのかわからない」と言って泣き、混乱することになる。
観ていてイライラしたり、「重たい」と感じたりする場面が続くが、
最後に女はリセットを図る。 夢見た染色家の仕事を選び、男たちからは距離を置く。
仕事を頑張り、男に頼らなくなることによって、女は本当の心の平安を得る。
そこまでの長い長い闘いの物語、自立の物語といえるだろう。

「息苦しいのよ、この部屋」
せっかく描き上げた大作を、女自ら、こう叫びながら、朱で塗りつぶしてしまう
場面が出てくる。
物語の佳境といえる場面、ここでの満島ひかりは狂気に満ちていて、怖くなるほど。
結婚したのに夫と子を捨てて駆け落ち、その男とも別れて妻子ある男の愛人に、
でもそれもうまくいかない、という、かなり奔放というか不器用な、業の深い女を、
序盤はふんわり、中盤からずっしりと、最後には力強く、演じきっている。
神経衰弱に陥る綾野剛とか、「一緒に死のう」なんて言う小林薫とか、
普段のイメージからは信じがたい姿を、役者たちは次々と、剥き出しに晒していく。
演技の見応えにこちらも思わず見入り、気が引き締まる。

女の本当が詰まっている
本作の宣伝文句でこんなフレーズがあった。
この作品の女は、心細くて、満たされなくて、年上の男曰く「わがまま」で、
最後には強い芯を持っていることが明らかになる。
本当は弱くて、本当は強くて。いつも不安で、あれもこれもと欲しくなったり、
時に自分を見失ったり、だけど最後には自分を貫く力を持っていて。

そんなところだろうか。
女の私が自分と本作の女を付き合わせてみると、こんなにわがままになんか
なれないとも、こんなに強くは生きられないとも感じた。
当てはまるような当てはまらないような。でも、こういう女いるよね。
少なくとも寂聴さんの思い切った本当を垣間見られたのはいい体験だった。


「もっとわがままになれ。自分の本当の欲望に素直になれ。
そうじゃないと、本当の強さも育っていかないままだぞ」
本作に、そんなふうに言われたような気がしました。
常に自分をかばって生きている私には難しいように思うのですが、
一歩先に踏み出すためには、これこそ最上の処方箋かもしれません。
観た直後より、こうやって振り返っている今の方が、
多くを考えさせられ、多くを教えられているようです。
映画館で観てもよかったよなぁ。


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【TVドラマ】深夜食堂 シーズン1&2とこれから【DVD】

今クール放映していて、更に来年には映画化されるという深夜のTVドラマ
深夜食堂」。
今やっているのはシーズン3ですが、どうせなら1や2も観てみたいと思い
レンタルして一気に観てしまいました。
一連の感想を。


小林薫さん演ずる、顔に傷のあるマスターが一人でやっている店「めしや」。
深夜0時から朝の7時まで営業している、通称「深夜食堂」。
豚肉定食とビールと日本酒と焼酎しかないメニュー。お酒は三杯まで。
頼めば、作れる範囲で何でも作ってくれる、庶民派の食堂。
そこで繰り広げられる常連客の悲喜こもごもが、優しい眼差しで描かれる
基本的に1話完結のドラマだ。

深夜食堂【ディレクターズカット版】 [DVD]深夜食堂【ディレクターズカット版】 [DVD]
(2010/04/23)
小林薫

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<シーズン1を観て>
・なかなかにベタ、それを通り越して「ベタベタ」な人情劇場である。
少々時代錯誤なんじゃないのって感じの、胡散臭いくらいのやりとりも目立つ。
三十代未婚の女性三人組、通称お茶漬けシスターズが互いの顔を見合わせながら言う
「ねー!」なんかが象徴的だが、物語そのものがじめじめっと湿っている。
めしを食べながら泣く常連客、続出。ちょっと泣きすぎなんじゃないのって思うくらい。
DVDでまとめて観ると少々一本調子な印象を受けなくもない。
店に来る、悩んでいる、他の常連客やマスターとの出会いややりとりに励まされる、泣く。
このあたりワンセットな話が多いかな。
でも、このウェットさ、率直な人恋しさの発露、人と人とのうざったくも温かい繋がりに
なぜかハマって、心の隙間を埋めてくれるような気になってしまう。
そしてまた次が観たくなってしまう。そんな中毒性。
・普段、よく喰う側の(孤独のグルメがどうしても浮かぶ)松重豊さんが
原作にも出てくるという、コワモテだけど心根は至って素直なヤクザ。
強烈なインパクトがある。これで赤いタコ足ウインナーが好きなんだから。
田中圭くんの新聞奨学生があまりに切なかった。あまりに過酷な学生生活、
卑屈になって恋も自分から諦めてしまう。なんのための大学生活なんだろう。
生活が苦しくて、さまざまな困難な境遇にある人が、たくさん出てくる。
彼らを拾い上げる、ある種のセーフティネットも「めしや」の役目。
安藤玉恵さんのストリップ嬢マリリンがいい。いつも明るく「ご開帳」している人気者、
でも時には自分の職業が恥ずかしくなったり、ちぎれてしまったダンサーの夢に
胸を痛める夜もある。
常連さんは皆、何かしらワケアリだったり、貧乏だったりして、
心の底を打ち明けたり、深入りしないように気をつけたり、ほどよい距離を保っている。
・「うめ!」「たらこ!」「鮭!」と言ってやってくるお茶漬けシスターズが微笑ましい。
純愛を夢見ながらなかなか男運のない、恋バナに花を咲かせる、いい歳した女三人。
でも恋愛で引き裂かれてしまうんだなぁ。女の友情はむずかしや。
・弱っている人、社会的弱者、普段明るい人がちょっと困ってしまったとき、
そんな人たちに寄り添う「めしや」は、まるで福祉施設みたいだな。
「めしや」みたいな食堂があちこちにあったら、福祉施設なんかいらないのかもしれない。
・レンタルDVDではフードスタイリストの飯島奈美さんが出した本のCMがしつこく感じられる(笑)。
あと、なぜかシーズン1でも2でも、第3巻に最新映画やDVDの宣伝が入るのはなぜなんだ。
第1巻や第2巻には入らないのに。


深夜食堂 第二部【ディレクターズカット版】 [DVD]深夜食堂 第二部【ディレクターズカット版】 [DVD]
(2012/04/27)
小林薫

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<シーズン2を観て>
・初回のオープニング、「第66回文化庁芸術祭参加作品」のクレジットに
俄に緊張感と期待感が高まる。
・オープニングでいつも作られる豚汁はシーズン毎に少しずつ変わっていて
シーズン1では一種類だった味噌が、2では赤味噌と白味噌の二種類になった。
具もちょっと種類が増えた。こんなところを観察するのも面白い。
・エンディングで毎回、その回のゲストが出て来て、タイトルの料理の作り方の
ポイントを教えてくれる。これがなかなか良い味出しているのだが、
シーズン2では挿入歌を歌っていた女性シンガーソングライターに乗っ取られた。
確かに味がある曲(食べ物の作り方ダイジェストな歌詞)なんだが、そこはいつも通り
作り方レクチャーにしましょうよ・・・・・・
・1からちょこちょこ出ていたオダギリジョーさんが最後にまるっと持っていく。
即席短歌を詠んだ後「人生なめんなよ」と言い捨て、柿ピーでそろばんを作ったり、
卵の殻をむいて絵を描いたりする、ドラマオリジナルのインパクト強烈なキャラ。
ドラマでは、マスターの顔の傷を作った原因だと示唆されてはいるが、
はっきりどんな出来事によってマスターが傷を負ったかは明らかにならないまま。
あることがきっかけで、もう出なくなってしまう。残念。
・マスター、普段は飄々としていて、常連客の言うことに賛成も反対もしないけれど、
言うべきところではかなりガツンと言う。
「ここはめしやだ」と、飲み過ぎを諫め、警察が捜査拠点として入店するのを断る。
自殺を考えていたり、家庭を捨てようと揺らいでいる客には、「もう、ばかなことは
考えちゃいけないよ」「あんたの人生、あんただけのものじゃないんだよ」と
はっきり正したり。
「飄々」と「ビシッ」のメリハリで店を守り、切り盛りしているのがよくわかるシーズンだった。
・ストーリーはシーズン1より少し複雑になった。短い時間で二転三転する話も。
常連客が実は悪者でしたなど、ひねりの加わった展開や結末が増えてきた。

<1、2を全て観て>
・こんなめしやがあるといいな、と思う。
でも、ラーメンがインスタントだったり、ギョーザが他店への注文だったり、
食堂としてはどうなのそれ?という部分もあるから、どうかなあ。
大事なのは「人と人とを繋ぐ場所」としての機能、
そして、誰もが安心して「めし」を味わう場所(飲み屋ではなく)という機能。
「小腹も心も満たします」というキャッチコピー。うん、そんな桃源郷のような場所。
東京の繁華街の狭い路地によくある光景を切り取ったようでもあり、
一種のファンタジーでもある。
ありそうでない場所。いそうでいないマスター。絶妙な配分。
・こんなドラマが人気が出たり、高評価を得たりしているあたり、みんな淋しいんだろうな。
私もそうだけど。
現代人、特に都会で暮らす底辺寄りの人間は、淋しさと離れて生きることはできない。
かといってそう簡単に今の人生や暮らしから逃げ出すこともできない。
「めしや」で露わになる淋しさや苦しみの底、そして慰め合って寄り添って少しだけ楽になる。
人と人との繋がりは大事だよ(過干渉にはならないように)と言っているように見える作品。
福祉施設やシェアハウスなんかも増えているけれど、現代はとかく淋しい時代なのだな。
淋しさの受け皿が強烈に深刻に必要とされている。そんな現実も垣間見える。
最近ではカフェがよく「めしや」のような取り組みをしているけれど、
カフェのめしは高い、敷居も料金も。
安いめしを求めると食券を買うようなチェーン店になって、人の繋がりは生まれない。
あるいは、外食なんかせずに一人引きこもっているしかない。
そんな現代の都会の問題点を、さりげなく抉っているようにも感じられる。

<そしていま、シーズン3を観ていて>
・あれっ、お茶漬けシスターズから須藤理彩さんがいち抜けて奥さんに?
その過程がシーズン2で全く描かれなかったので、どうした?と、ちょっとモヤモヤ。
・「深夜食堂のテーマ」といってもよいこの曲がエンディングのクレジットで出なくなった。

ぜいごぜいご
(2010/12/26)
鈴木常吉

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この曲あっての「深夜食堂」だとも思っているから、せっかくオープニングで今でも
流れているのに、「音楽:鈴木常吉」でまとめられてはちょっと切ない。
湿った声に湿ったギター。豚汁定食並みに、これっきゃないのに。
エンディングテーマのほうが扱いがいいのはなぜ?
・もう作り方レクチャーはしなくなったのかとここ2回でがっかりしていたのだが、
第3回ではレクチャーが復活!嬉しい。
ドラマの感想そのものは、最終回まで観ないと何ともいえないだろうから
今期のドラマ感想まとめをやることになったら、そのときまた改めて書いてみよう。


人恋しい季節、個人的にも何かと孤独を感じることの多いいまこのとき、
エアポケットのような心の冷え冷えした部分にすんなり収まったこのドラマ。
こんな物語、こんな場所を求めているんだなと分かりました。
自分は淋しいんだなとも。
でもいまの生活から逃げ出すこともできないから、めしやのような軽い居場所や癒しを
どこかや何かに見つけて、
孤独と共存しながら何とか頑張っていくしかないのでしょう。
書きながら、そんな決意を新たにするのでした。
漫画も読んでみたいなぁ。

テーマ:テレビドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ

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【CDレビュー/感想】TM NETWORK:BEST TRACKS~A MESSAGE TO THE NEXT GENERATION~

前回、前身的バンド「SPEEDWAY」のアルバムを紹介した続きとして、
今回はTM NETWORKのベストアルバムを。
以前、シングル・ベストの「TIME CAPSULE」を入手して、ずっと聴いていたのですが
再始動前の音源をシングルからアルバムまで網羅して15曲選んだこのベストも
興味深いセレクションなので。
実はベストアルバムの感想・レビューって初めてなので
試行錯誤のつもりでやってみます。


BEST TRACKS 〜A message to the next generation〜という
入力に骨が折れる長いタイトル、まあ凝り性の彼ららしいっちゃらしい。

BEST TRACKS~A message to the next generation~BEST TRACKS~A message to the next generation~
(2000/03/23)
TM NETWORK:TMN、TM NETWORK 他

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活動の一時期には「TMN」名義だったこともあり、ジャケットには「TMN」の三文字が
まず冠されている。
2000年、レコード会社移籍に伴い、旧レコード会社がメンバーの意向に関係なく
リリースしたものだが、このセレクションからかえって
メンバーの外側から見たTMが見えてくるかと考えた。
全曲感想・レビューをしながら、このユニットを概観してみたい。

1.LOVE TRAIN
一番売れたシングルが最初に入っているといういやらしい作り(笑)
活動休止前最後のアルバム「EXPO」の時期の曲。
90年代の音楽が青春という世代の私は、この曲がTMの曲のなかで最も好きで、
最も耳馴染みがある。幼少期、F1中継のCMで、カメリアダイアモンドのテーマソングに
なっていたこの曲をぼちぼち耳にした記憶があるのだ。
今聴いても古びない泣きのギターと、対照的に時代を感じる機械的なドラムビートの
イントロだけでもうロマンティックで、心をぐっと掴まれる。
そのまま切なく駆け抜けて、最後の転調がたまらなく盛り上がる!
夏が舞台なのに冬が妙に似合う気がするのはなぜだろう。

2.BE TOGETHER
2000年にTMを初めて聴く世代に向けて作られたとおぼしきこのアルバムらしく
前年にリリースされて大ヒットした鈴木あみ(現・鈴木亜美)のカヴァーの
原曲はここにござれとばかりに持って来た感じ。
アルバム「humansystem」収録曲で、シングルではないけれど
ファンの間では名曲と名高かった曲。
あみーゴのヴァージョンで初めてこの曲を知った世代なので、
最初はTMヴァージョンは違和感があったが、慣れるとこれっきゃなくなる。
ハッピー感、青春感が半端ない!
トキメキとエネルギーとスピード感に溢れている。

3.COME ON EVERYBODY
アルバム「CAROL」収録曲でシングル。
シャープなアレンジがキレキレ、特にリズムセクションがいい。
真新しい曲と言われてもわからない新鮮さ。
「CAROL」期の曲はどれもキャッチーで洗練されている。
サビの転調で一気に引き締まる。ダンサブルでクールでとても格好良い。

4.Kiss You
個人的にTMで一番の名盤だと思っているアルバム「humansystem」収録曲で
シングル。後にリミックスエディションもシングルリリースされている。
ブラスアレンジでちょっと大人に。
「洋楽志向」が前面に出て、ファンクで締まった格好良い曲。
この曲も古びない名曲。
流れるように繰り出させる言葉数の多いAメロ~Bメロもいい。
コムロさんの一癖あるコーラスが聴ける。

5.RHYTHM RED BEAT BLACK
TMNとしてリニューアルしたアルバム「RHYTHM RED」の
いわばタイトルチューンで、後にシングルカット。
ロックなアルバムのなかの渋い佳曲。
アーバンな曲に乗るのは、現在でも活躍する名脚本家の坂元裕二さんの
アーバンでドライな、トレンディドラマからそのまま飛び出してきたような詞。
TMといえば青春のイメージが強いが、成熟したオトナのミリョクもいいじゃない。
当人たちは当時30過ぎだったんだし、そうなるのが自然というもの。

6.金曜日のライオン
一転して若々しいデビュー曲。アレンジに時代を感じる。
YMOっぽさもありつつ、このユニットの音楽はデビューから一貫して
「ダンス」なんだなあと実感させられる。
疾走感がいい。

7.アクシデント
これも昔の曲。3枚目のアルバム「CHILDHOOD'S END」収録曲でシングル。
昔のTMは少しベタというかバタ臭い、歌謡曲っぽい匂いがする。
哀愁があるというか。でもここにもいい味がある。
この曲は青春の爽やかさが香り立つ。

8.HUMAN SYSTEM
アルバム「humansystem」から3曲目は実質タイトルチューン、1文字空くけれど。
モーツァルトの「あの」お馴染みの曲のリフをいただいた大胆なイントロに、
小室みつ子さんによる、少年少女たちの甘酸っぱいすれ違いの物語。
フレッシュで切なくて、当時の若い子にTMが愛聴されたのもよくわかる。

9.FOOL ON THE PLANET
ブレイク前夜のアルバム「SELF CONTROL」収録曲。
ビートルズの「Fool On The Hill」を連想させるタイトル。
アルバム「SELF CONTROL」にはなぜかそういう曲がちらほら。
6/8拍子のゆったりした曲。キネさんらしい曲。
こういった癒しサイドがあるのもTMの大事な魅力。

10.SELF CONTROL
直球の青春ソング。アルバム「SELF CONTROL」収録曲でシングル。
駆け抜けていくような鮮やかさ、一気に希望が広がっていくような
「陽」のオーラいっぱいのメロディ、アレンジ。
挫折から立ち上がっていく瞬間を捕らえた歌詞と併せて、胸がアツくなる。

11.ALL-RIGHT ALL-NIGHT
#9から#11までアルバム「SELF CONTROL」から、色の全然ちがう曲が続く。
こちらは、華やかなブラスアレンジにのって、サクサクと進むナンバー。
スラップ混じりのファンキーなベースがいい感じの重さを出している。
TMはユニットながら、結構バンドっぽい音を出していることに気付く。

12.WE LOVE THE EARTH
一転してアルバム「EXPO」収録曲、「Love Train」との両A面シングル。
90年代になるとTMは打ち込みサウンドの楽曲が目立つようになる。
地球平和を訴える趣旨の歌詞、主張はやや「パワー・トゥ・ザ・ピープル」的だが
聴き心地はとても爽やかなダンスナンバー。

13.DIVE INTO YOUR BODY
快楽の渦にワーッとなだれ込むような、徹頭徹尾パーッとした曲。
夏の享楽的な刹那がよく出ている、痛快なダンスナンバー。
TMがTMNにリニューアルする前夜の時期にリリースされたシングル。
この辺の楽曲がオリジナルアルバム未収録なのは勿体ないな。
TMの楽曲のなかでもかなりお気に入りの曲。

14.WILD HEAVEN
「Love Train」と同年の1991年にリリースされたシングルだが、
アルバム「EXPO」には収録されていない。
#13の享楽的なムードを、テクノロジーの進化によって更に強化したような
ダンサブルで楽しい曲。
けれど何か「終わり」を感じるのは、もうすぐ活動終了だという
予備知識が先に頭にあるからなのか?

15.GET WILD
言わずと知れた代表曲で幕を閉じる。
実はオリジナルアルバムには収録されていないシングル。
若さゆえの衝動や焦燥をクリアに切り取ってみせたのが名曲たる所以。
当時のライヴでは、後にB'zを結成する松本孝弘さんのギターを楽しめる。
ダンス×青春=王道TM、その堂々ど真ん中をいく。


80年代から1994年のTMN活動終了のTMを、90年代後半~00年代の視点から
捉えてみるとこうなりました、といった感じか。
メンバーやリアルタイムでTMを追っていたファン(FANKS)の認識に
どこまで近いんだろう、このセレクション。
TM関連の文章をよく書いている藤井徹貫さんのイントロダクション文が
あるくらいだから、まあそんなに迷うこともないんだろう。
そうなるとTM NETWORKというユニットは「ダンサブルときどき歌心、
青春ときどきアダルトな世界
」ということになる。
TMの作品を大体コンプリートした、後追いの自分からすると、
あれが入ってないこれはそんな必要か?などという声も出てくるとはいえ、
最大公約数はまあこんなところになるんだろうか、となるな、確かに。


多面性を持ったユニットの10年をアルバム1枚にまとめるという
難しい命題を持っている本作。
ほとんどの作品を揃えた後であえて出会ったこのベストアルバム、
無人島に1枚だけTMのアルバムを持って行くなら確かにアリかもしれません。
・・・・・・いや、やっぱりhumansystemかな?
楽しい迷いです。


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