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月とキャベツ「あたかもMaking of "One more time,One more chance"-ひとつの曲ができあがる過程と、物語に奇しくもぴたりと寄り添う歌詞-」
最近また多くなってきました。ユニクロのダウンコートのCM、ビールのCMなど。
まさやんと言えば、ブルース色の強い楽曲を独特の歌声で弾き語りするシンガーソングライター、
そしてギター(とりわけアコギ)の名手と名高いプレイヤー(マルチプレイヤーでもある)。
と同時に俳優としての活動もぼちぼち行っていて、
10年ほど前にはドラマで主演級をしていた記憶が。
そんな才能豊かなまさやんの、俳優デビュー作にして、音楽のブレイクのきっかけになったのが
「月とキャベツ」と、そのテーマソングの「One more time,One more chance」。
「観てみたいな」と思いつつ、ずっと未見のままだったのですが、ある日の深夜にTVで放映。
満を持しての拝見となったのでした。
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ストーリーはシンプルかつテンプレ的で、バンドを解散して行き詰まっている無精な男が
不思議な女の子と出会い、彼女とのひと夏の奇妙な共同生活を経て恋に落ちていくけれど
実は彼女には哀しい秘密があって、そのための別れを経て、一歩前に進むというもの。
ざっくり書き出すと本当に呆気ないし、物語の巧みさに唸ったり、メッセージに心を打たれたり
といった感動はなく、雰囲気映画と片付けそうになるかもわかりません。
音楽に興味がない人には。
しかし、音楽好きには、とても興味深い映画として観られるはず。
その要因は二つ。まず第一の見所は、ひとつの旋律が一曲の歌へと育つ過程が、
映画一作をかけて、とても丹念に、そして彩り豊かに描かれていることです。
主人公・花火がピアノで作曲をはじめます。
(まさやん=ギター弾き語り+ハーモニカというイメージが強いので
ピアノをここまで弾けるのに驚いたのですが、調べてみたらそれどころか、何でも屋だった!)
まずは基本のモチーフ(イントロ部分)から。
次にAメロ、Bメロ、サビ部分と出来上がり、次第にメロディも付いていきます。
転調部分(「夏の想い出はまわる~」の部分)に詰まり、「ここの転調がうまくいかないんだ」と
様々なコードを弾いて試行錯誤する花火。色々試して、ふいにピンとくる展開を見つけるシーンは
よくミュージシャンが曲作りに関して「降ってくる」と表現しますが、
まさにその「降ってくる」瞬間のミュージシャンに立ち会っているかのよう。
花火は曲先で歌を作るタイプで、歌詞は後述する出来事をきっかけに一気に出来ます。
そうして、最後の花火というかまさやんのピアノ弾き語りによって、歌は完成形を見ます。
また、不思議な女の子・ヒバナは花火のファンで、ダンスを学んでいて、
いつも言っているわがままの調子で「花火の曲で踊りたいの」と言い出し、
花火が弾くピアノの「One more~」に合わせて、柔らかな動きをつけます。
曲が形になっていくほど、ヒバナのダンスも躍動感や精緻な動きが増していく様子は
音楽が出来ていくプロセスをダンスで表現しているかのよう。
そして、もう一つの見所。
「One more~」という歌は、この映画をつくるより前に、そして全く別に出来たものです。
当時のまさやんの失恋体験がベースとなっていて、だから「桜木町」という、映画の流れに
全くそぐわない言葉がサビに出てきたりします(まさやんは一時、横浜の桜木町に住んでいた)。
そして映画の原案は、「さっぽろ映像セミナー」の受講シナリオから誕生した
『眠れない夜の終わり』という作品で、それを監督の篠原哲雄氏と、真柴あずき氏が
脚本に起こしたそうで。
だけど、映画を観ていると、「この映画の脚本を元にまさやんが曲を書いた」と言われても
間違いなく信じるだろう、と言い切れるほど、歌詞と物語がぴったり寄り添っています。
歌詞の引用もあるので、「続きを読む」に続きます。クリックすると画面が開きます。