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The Mars Volta:その6 Noctourniquet「虚空+宇宙+デジタルビート、最後まで混沌を極めて暴れ尽くす」

Wikipediaなんかを見てもいよいよ「実質的に解散」「最終メンバー」なんて
書かれていて、淋しさがこみあげてしまうThe Mars Voltaマーズ・ヴォルタ)。
今年のセドリック脱退がなくても、このバンド(以下TMV)は多くの問題を抱えており
どちらにせよ今後身動きをとることはかなり難しい状況にあったようです。
メンバー達も、「これが(当分)最後」との覚悟をある程度していたのではないのかな、と
感じられるような、心なしか厳粛な色合いを持つアルバム。
早速、感想~レビューにいってみましょう。


ノクターニキットノクターニキット
(2012/03/28)
ザ・マーズ・ヴォルタ

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メンバーの削減~ミニマム化
一時期はホーンセクション担当のメンバーまで居る大所帯だったTMVだったが、
アルバム毎に徐々に規模縮小を図り、今作に参加しているのはこの5人。
オマー・ロドリゲス・ロペス(Gt,Syn)
セドリック・ビクスラー・ザヴァラ(Vo)
ホアン・アルデレッテ(Ba)
マルセル・ロドリゲス・ロペス(Perc,Key)※オマーの実弟
ディーントニ・パークス(Dr)
前作まで(4thと5th)ドラマーを務めていたトーマスが脱退(という名のクビ説をよく耳にするが)、
セオドア脱退~トーマス加入の間に一時期叩いていたディーントニが正式加入。
前作までどこかしらに顔を出していたオマーの親友、ジョン・フルシアンテも参加していない。
ジョンが今作に参加しなかったのは、彼の新たな方向性「プログレッシブ・シンセ・ポップ」に
専念するためであり、これがTMVの方向性とは明後日の向きなので袂を分かったのだろうと
当初は考えていたが、今作を聴いてみるとエレクトロ・ミュージックやヒップホップなどへの
接近といった、かなり近い共通点がみられ、「やっぱり友達じゃないか」と笑ってしまったが
このように、「えっこの人も離脱するの?」といった人事移動・削除が目立った。
それが如実に「シンプルな構造」というかたちで、作品に表れたのかもしれない。

装丁担当者の変更
よくオマーのソロアルバムの装丁を手がけている、昔からの盟友、サニー・ケイ氏が
今作の装丁をも担当。今までのこってりしたジャケが好きだった人には物足りないだろうが
この手のクールなデザインが大好きな私には思い切りツボ。
中の歌詞部分までクールでスペイシー。寂寞とした感じもよく出ていて、
親友は全てお見通しというところか。

基本構造は前作を踏襲しながら、「動」的な要素が加わった
「基本構造が歌もので、宇宙空間の静けさを思わせる淋しさがあって、シンプル」という
前作の構造を今作も踏襲しながら、ピンク・フロイドの「炎~あなたがここにいてほしい」
を想起させるような、淋しさにただただ浸ってさめざめしていた前作とはうってかわって、
今作では空虚を下地に大暴れしたり、暴風雨が吹き荒れたり、デジタルサウンドなどの
これまでになかった要素を新たに加えるなど、「動」の要素が加わった。

セドリックのキャッチーでストレートな歌メロVSオマーの相変わらず捻くれたアレンジ
「ヴォーカリストとギタリスト(ソングライター・プロデューサー)の性質の違い」と
言ってしまえばそれまでだが、今作ではとてもはっきりと二人の役割分担がなされている。
今作で鳴っている音や展開されている世界は、シンプルの仮面をつけた、壮絶なカオスである。
ヒップホップのバッキングを彷彿させるトラック、エレクトロニック・ミュージックへの接近。
4thにもみられた中近東を思わせるエキゾチックなムード、スペイシー~ノイジーな音色の活用。
展開もところどころ捻れている。
大抵のバンドマンがこのセッションに居たらただただ立ち尽くしてしまうであろう音楽の中に
セドリックは果敢に飛び込んでいって、メロをつけ、歌もの音楽として成立させてしまう。
今作でも鮮やかに飛翔するセドリックのヴォーカル、艶があって、憂いを含み、感情豊かで
時にはスピード感に満ちていて、変幻自在のバッキングと激しい火花を散らして競い合う。

孤独指数&スペイシー指数がアップ
前作は、とてもシンプルで、とても淋しいアルバムだった。
そこへきて今作は、音数はずっと多いし、流行の要素もちらほら織り込んで、一聴すれば賑やか。
しかし寧ろその奥にもっと深い、深淵の世界ともいえるような孤独が見え隠れする。
歌やギターやベースやドラムやキーボード、シンセサイザーの奥に、ひんやりとして出口のない
深淵、暗闇、孤独が常に存在し、彼らの音楽・・・一種の抵抗・・・を無言で見つめている。
ドラムの音の処理(後述)や、シンセによるスペイシーなサウンドで、「宇宙空間」感も増加。

ディーントニがとんでもないことになっている
ヴォーカルよりも、ギターよりも大きな音のドラム。編集の段階でディーントニの音をわざと
大きくしているのだろう。こんなバランスの音楽、なかなかお目にかかれないので、違和感が
半端ない。メッチャクチャ叩きまくっているから、なおのこと「出過ぎ!前に出過ぎ!!」と
焦ってしまう。セオドアやトーマスともまた違う、とんでもないテクニシャンなのはわかる。
オマーが彼をかなり気に入っているのもわかる。しかし、だからといってこのバランスは
どうなのだろう?このアンバランスさこそ、今作における一番のカオスのような気もしてくる。

幅広い曲調~ヒップホップやエレクトロ、ATDIへの回帰風味、アコースティック
今作でオマーがバッキングにヒップホップやエレクトロの要素を多く盛り込んだというのは
何度か触れてきた。ほかにも、「お前らはこういう曲を聴いてライヴで暴れたいんだろ、
ホレどうぞ」と言わんばかりの(ムカつくが、彼らはこういうしたたかさを隠せていない)#11は
心なしかATDI風味のハードなトラック。それから、アコースティック・ギターが深淵と対峙して
語りあっているような、前作以上に淋しさがきわだち、深まっている楽曲も数曲みられる。
静けさと激しさの配分が絶妙。初期のエモさも中期の哀愁も前作からの静寂も、全部楽しめる。

「前作の延長でつまらない」「駄作、凡作」という声もかなりきかれた今作。
なので長らくチェックを怠っていたのだが、恒星が赤色巨星になって爆発し、死んでしまった
かのように決定的な「TMVの死」をうけてようやく手に取り、却って淋しさ切なさを噛みしめた。
「これで、終わり」「死んでいく星の最期の輝き」そういうものを感じてしまった。
それが現実になってしまったのは予定通りだったのか、それとも事故か?・・・ともあれ最後まで、
彼らの創る音楽の圧倒的な情報量、高い演奏力、キャッチーさと実験精神との
ギリギリのせめぎ合い、旧いものと新しいものとのフリーキーな融合・・・といった、
いままでにありそうでなかった「異端」の魅力とクオリティは揺らがなかった。
彼らの10年を超える挑戦には、現代のロック音楽の世界において、
非常に大きな意義があっただろう。



オマーはディーントニを引き連れ「ボスニアン・レインボウズ」を結成して既に動きだしており、
(昨年のライヴのレポートですが、このバンドの姿がよく見える記事がこちら↓
オマー・ロドリゲス・ロペス・グループ @ LIQUIDROOM ebisu
一方のセドリックはホアンと共に新バンドを立ち上げるという噂で、
初期に在籍したジョン・セオドアも、今では様々なバンドに活躍の場を広げていて、
皆の「これから」が引き続き楽しみです。私も個人的に今後も追いかけていこうと考えています。
TMVを出た後のセオドアの仕事を未だ余りチェックしておらず(ONE DAY AS A LIONなど)、
まずはそのあたりか、ボスニアン・レインボウズか?
淋しさも楽しみも両方募る、10年経っても才気溢れるバンド、
彼らに会えてよかったというより、彼らが「シーンに居てくれてよかった」との思いを
ますます強くしています。

一度でいいから、ライヴに行って直接彼らの「とんでもない」インプロヴィゼーションの嵐を
浴びてきたかったのですが、これはもう叶わなくなってしまって、ひたすら惜しまれます。


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ある朝、目覚めたらThe Mars Voltaからセドリックが居なくなっていた

あからさまにとある有名な小説の書き出しのパクりですが・・・
でもこのくらいの「青天の霹靂」感のあるニュースでした。

「活動休止って言ってたし、まぁ1~2年は音沙汰ないんだろう、
というかオマーのソロ作品が実質TMVみたいな所が時々あったから
そうやって何年かは、なし崩し的にやって、それからまた復活するんだろう」
ぐらいに思って最近チェックを少し怠っていたThe Mars Voltaマーズ・ヴォルタ)の面々。
かつて仲違いした片割れ・Spartaスパルタ)組と合流して
At The Drive-Inアット・ザ・ドライヴイン)を再結成したのだってついこの間だし、
確かに、バンマスでギタリストのOmar Rodriguez Lopez(オマー)の我が儘や気まぐれは
端から見ているこちらだってハラハラしたりゲンナリしたりさせられてきたけれど、
よりにもよってオマーとセドリックのアフロコンビがそう簡単に仲違いするはずは・・・
だって、そんなことでもあったらそれ即ち解散では・・・

しかし先月、そのまさかが起こってしまったようなのです。
ヴォーカリストにしてオマーの無二の相棒であるはずのセドリックが、脱退、
そしてバンドは解散へ・・・?!
http://amass.jp/16772
マーズ・ヴォルタからヴォーカルのセドリック・ビクスラー・ザヴァラが脱退、解散へ

セドリックの堪忍袋の緒が切れてしまったのは、彼がツイートしたところによると
オマーがマーズ・ヴォルタの活動を中断し、新プロジェクト・バンド、
「Bosnian Rainbow」(ボスニアン・レインボウズ)を始動させたことへの不満
が原因だと
このサイトでは伝えており、さらに記事は
「海外メディアでは「事実上の解散」として報じています」と続けて締めくくられています。
・・・ん?「事実上の解散」。ってことはまだバンド側は正式に「俺ら解散した」と
アナウンスしたわけではなくって、セドリックというヴォーカリストが脱退したに過ぎず
また誰か新しいヴォーカリストを入れれば続けられるんじゃないの?
それに上述サイトにもリンクが載っているけれど、セドリックだってサイドプロジェクトを
マイク・ワットらと始めている(Anywhereというバンド)じゃないですか。
今までだってオマーは色々な活動をしてきてたというのに、それにはとりたてて
腹を立てたという話は聞かなかったのに、なぜ・・・?

ひとつには、今回オマーが始めた「ボスニアン・レインボウズ」が、「TMVを休止させてまで」
始めたバンドで、これまでのソロ~サイド・プロジェクトの域を超えてしまったのでは
ないかということ。
もうひとつは、本当は昨年に6thをリリースした時点でツアーもセドリックはしたかったのに
創作活動をたくさん行いたい志向のオマーがそれを望まないためにツアーが叶わず、
更にはATDI再結成ライヴでのオマーの姿に「あからさまなやる気のなさ」が表れていて・・・
といった積み重ねで(お母さんが亡くなったショックのためだから仕方ないだろう、と当時
セドリックがフォローしていましたが、同時期の別名義での演奏ではノリノリだったという
残念な説も・・・)、ライヴをやりたいセドリックと作品造りに走りたいオマーとの溝が
もはや埋められなくなった
ということ。

ATDI再結成の企画をスパルタ組と話し出した時点で、セドリックとオマーとの間には、
既にだんだんと溝が出来始めていたのでは。
ATDI再結成に乗り気なセドリックと、嫌々だとインタビューの場でまで言ってしまうオマー。
ソロなどの課外活動にのめり込むオマーと、顧みられなくなったTMV~セドリック。
TMVが6thリリース後に活動休止を宣言したのは、ATDI再結成の為だけでなく、
この、ふたりの対立に「一旦、休戦しよう」といった意味もあったのではないでしょうか。
そこにきていま、オマーが越えてはならない一線を越えてしまった、と。

http://www.barks.jp/news/?id=1000086771
マーズ・ヴォルタ、セドリックが脱退、事実上解散か?
barksでもやっぱり「事実上解散」ですね。
そしてこちらではセドリックのツイート内容がより端的にまとめられています。

セドリックは水曜日(1月23日)、Twitterにファンへの感謝と謝罪の言葉と一緒に「俺はもうマーズ・ヴォルタのメンバーじゃない」とのメッセージを掲載。
彼自身は活動を続けようと全力を尽くしたものの、バンド・メイトのオマー・ロドリゲス・ロペス(G)が新プロジェクトをスタートしマーズ・ヴォルタに興味を無くしていると説明した。


オマーのソロ・ベスト・アルバムを聴いたり、その際、彼のソロ作品の圧倒的な量や
飽くなき好奇心に立ち会ったりした時、またその後でTMVの新作を聴くと余計に
「ああ、こりゃオマーTMV飽きてんな」とはうっすら感じたのですが、
自分たちで造ったものをこうまであっさりと、要らなくなったオモチャみたいに
投げ出してしまうとは・・・
バンドはアナタ一人の「モノ」ではないのだと言う気力も萎えるほどに、がっくり来ます。
TMVが世に出て10年弱。そうか、もう興味を無くしてしまったのか・・・

現在のこの光景は何かにとてもよく似ています。
それはあの日、セドリックとオマーが連れたってATDIを飛び出し、バンドは空中分解して
解散へ追い込まれた、光景に。
今、また同じようなことが繰り返されようとしているのでしょうか?
オマーは、ATDIの仲間たち、数々の歴代ドラマー、増やしたけど不要になったメンバー達、
かつて親友だったジョン・フルシアンテ(こちらはどっちかというと、フルシアンテの
ほうが「プログレッシヴ・シンセ・ポップ」を追求する為に袂を分かった印象だが)、
そしてATDI以来の相棒であるセドリックまでも、次々に失っていくのでしょうか。
失っても次々得ているみたいだから関係ないか?(苦笑)
「不器用で非情だと分かっていても、自分の拘りを曲げられない」
そんな苦悩と戦っているところなのでしょうか。


・・・初めてTMVを聴いたときは目の玉が飛び出す勢いで意表を突かれたものです。
次に、こんなものがチャートの上位にいるなんて聞いてもっと驚いたものです。
今度は何をしてくれるかが本当に楽しみなバンドでした。
セドリックのヴォーカルに引き込まれ、セオドアのドラムに息を呑みました。
ホアンのベースも好きになり、ゲスト参加のレッチリメンバー目当てだったのを
いつしかすっかり忘れて、無我夢中で何度も何度も聴きました。
そして何よりとんでもないと思ったものは、オマーのとてつもないセンスで、
古めの素材も慣れない国の風味の素材も彼にかかれば、先鋭的な切り口でもって
ほかの何よりもいびつで風変わりながら、不思議とひとつにまとまっていて・・・

解散するのかもしれないし、新しいヴォーカリストを入れてそのうちまた再開
するのかもしれないですが(でも、もう、やる価値はないのかもしれない)、
1st~3rdでドキドキさせられたあの衝撃をもう一度、
いやせめて4th以降でも、強烈コンビ「セドリック&オマー」がぶつかり合って創る
「ほかにはない体験」に立ち会うことは恐らくもう二度と叶わなくなりました。

残念です。

The Mars Volta
視覚的にも面白かった、アフロとアフロ、オシャレメガネと無精な正統派の
組み合わせ。淋しくなります。




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The Mars Volta:その5 八面体「荒涼とした世界で、漆黒の空を彩る星々のように儚く煌めく、哀しいほど綺麗なモニュメント」

これまでずっと、既存の枠にはまる音楽とはおよそ遠い作品を発表し続けてきた
The Mars Voltaマーズ・ヴォルタ)でしたが、
セドリックとオマー曰く、5thアルバムのテーマは「ポップ」「メロウ」そして「アコースティック」!
CD収録時間ギリギリいっぱいまで詰め込まれていた前作に比して、8曲50分と、
このバンドらしくないコンパクトな仕上がりになりました。まぁ、やっぱり一癖あるけどね。
そんなアルバム「Octahedron八面体)」の登場です。

八面体八面体
(2009/06/17)
マーズ・ヴォルタ

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何とAメロ→Bメロ→サビという、ポップ・ソングの基本枠で大半の曲が作られている!
あのマーズ・ヴォルタが?!
今までにはほぼ絶対にあり得なかったことで、これだけでもかなりの驚きです。
実際には他のアルバムの曲もある程度そういう枠にはめられるような気もしますが、
なにせ展開がめまぐるしくて鳴っている音も突飛で、メロがメインになるはずがなく(笑)
そして二人の意図通り、美しい歌メロが光り、他のパートは基本的に歌伴に徹し
セドリックの繊細なヴォーカルを引き立たせるという、ポップでメロウな作風に着地。
音数も今までなかったほど少なく、アコギも一応2曲でフィーチャーされるなど
確かに「マーズ・ヴォルタ流」アコースティック・アルバムと呼んでも
間違いはなさそうです。一般リスナーがどう解釈するかは置いておいて(苦笑)
音数だけでなくメンバー数も削減を始め、サックス担当のエイドリアンと
「Scabdates」から参加したギター・サウンドマニュピレーション担当で
かつてAt The Drive-In(アット・ザ・ドライヴイン)でベースを担当していた
ポールに、リストラを宣告するなど、なかなかに手厳しい人事も敢行しました。

本作から、レコード会社とマネージメント会社を移籍し、レッチリと同じ会社へ。
(アルバム日本版は以前の会社のままで、新作から移籍先ワーナーに)
そしてたまげたのが、日本版で参加アーティストのクレジットを見ると、
オマー、セドリック、そしてその次にジョン・フルシアンテが!
このダブルの流れで、「ええっ遂にあなた、レッチリのみならず、マーズ・ヴォルタまで
乗っ取っちゃったんですか」と驚くやら呆れるやら。
本作リリース年の年末に、あの「1年前から脱退してました」宣言があったので、
当時は「これは遂に、マーズ・ヴォルタに正式加入か」とぬか喜びしたものでした。
でもそれどころか、本作が最後の参加で、メジャー音楽シーン自体から隠遁しちゃうとは・・・
やけにメロディアスで泣きな作風になったものだから、この人の支配下に
いよいよ置かれちゃったアルバムなのか?と訝っていたので、
英文Wikiにて、アフロコンビの明確な意図が反映された方向性であることがわかって
かなりホッとしたのでした。
まぁオマーとジョンって、方向性が相互リンクしちゃう傾向がかなり強いので
(詳細は今後書くオマーのソロのレビュー記事にて)影響や貢献度が高かったために
名義をフィーチャーしたのかな、とも。

ポップ・ソングの枠を意識して作られただけあって、曲単位でのまとまりは完璧
アルバム単位でももちろん・・・と中盤まで思っていたら、
唐突に従来タイプの曲「Cotopaxi」(シングル曲)が#5にねじ込まれ、
次曲#6まで流れ回収に巻き込まれる為に、せっかくのまとまりが台無し。
#7からまた前半部に引き続く流れに戻るので、アルバム単位での統一感は
「Cotopaxiさえなければ・・・」の一言に尽きるというしかなく。
確かに格好良い曲だし、前半までを「どうしたの?物足りないよ~」と感じるライト層リスナーは
「オッ!やっとノリのいい曲が来た」と引っ張れるんでしょうが、
そうやって大衆を「釣ろう」という意図がまるわかりなのは
このバンドのCDを買ったり、ライヴに足を運んだりするコアなファンにとっては
かえってマイナスに働いたのでは。
大衆受けメジャーバンドならともかく、彼らのようなこだわり系のバンドだからこそ。
「マーズ・ヴォルタは大衆向け、ソロはコアなファン向け」という区別が
一層あからさまに出たかたちに。ここまで足元をモロに見られて、ファンはどう思うか?
それが昨今の、とりわけ本国の、人気低迷に繋がった小さくない一因だと思います。
逆に言うと、ちょっと世渡り下手なバンドなのかも。

マーズ・ヴォルタはよく、キング・クリムゾンピンク・フロイドを引き合いに出して
語られますが、本作はそういった「王道プログレバンド」が作りそうな曲の多い
いわば正統派プログレ。それまでが「プログレッシヴなプログレ」「個性派プログレ」
だったのに対し、プログレという音楽的な一つのルーツに回帰した格好でもあります。
ここで、ただオールド路線に回帰するだけでなく、オマーの持ち味、近未来テイスト
ギターやシンセサイザーなどによるアレンジで加えるのが、現代でも古臭くなく聴ける所以で
相変わらず解釈が素晴らしいなぁと感服する限りです。

今まで聴いたことがほとんどなかった、セドリックの儚く透明で情感豊かな歌声
真っ暗な夜の闇に包まれて、星空を見上げる情景が想起される曲調やタイトル(#4,#7)。
冷え切った質感、静寂の中でそっと紡がれる哀しい歌、虚空を見つめるような無力感は
マーズ・ヴォルタ流「Wish You Were Here炎~あなたがここにいてほしい~)」。
しかし、「Wish You Were Here」が具体的に葬る対象(シド・バレット)に向けて
歌われていたのに対し、彼らが葬ろうとしていたのは何だったのか?
英文Wikiを読んでいると、本作制作直後に、オマーは何とマーズ・ヴォルタを
これでお開きにしようと考えていたのだそうです。
そしてセドリックは本作の方向性をこのようなものにした理由を、「今まで自分たちが
作ってきた作品と、全く違うことをしたい」
と語っていました。

今までの自分たちと、さよなら。
それはセドリックの中では「新しい方向性へ」のためのものでしたが、オマーの中では
「マーズ・ヴォルタを畳んで、ソロへ」と、いつしか二人の考えが大きくズレて、
まさかの十数年ぶりの大喧嘩へと発展し、なぜかセドリックの方が「やめてやる!」と
言い出したり。

また、静かで哀しい曲調は、どうにも、バンドの衰退をイメージさせてしまいます。
日本ではある程度まだ人気がある彼らですが、向こうではいわゆる「オワコン」バンドだと
みなされているそうで、そんなこともあってのATDI再結成という見方を
する向きもあるようです。

それでも、美しいものはやっぱり掛け値なしに美しい。
普段乱暴で不器用な彼らが丁寧に丁寧に拵えた、哀しいほど綺麗なモニュメント。
色々難癖をつけてしまったとはいえ、なんだかんだでお気に入り度合いの高いアルバムです。
セドリックの素晴らしいヴォーカルに思わず胸を掴まれる一枚
メジャーな音楽をいつも聴いている人は、本作が一番馴染みやすいと思います。


さて、その後の彼らは?
ドラムのトーマスはクビ、そしてまたしてもドラマー・ジプシーを経た後に、
以前セオドア→トーマスに決まる合間にもサポート参加をした
ディーントニ・パークスが加入。キーボーディストもこれまでのアイキーから
ラーズ・スタルフォースに入れ替わり。
ホアンとマルセルは残留で、現在は6人編成に。
そして、最近こんな新譜が出ています。

ノクターニキットノクターニキット
(2012/03/28)
ザ・マーズ・ヴォルタ

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もんのすごく好みのジャケ!(笑)
ジャケット担当者も代わって、オマーのソロアルバムのジャケを
いつも手がけている、サニー・ケイに。
・・・と、何だかんだで新譜は作ったとはいえ、この作品をもって、マーズ・ヴォルタは
活動休止することに。セドリックとオマーは前述した通りATDI再結成へ、
残りのメンバーも各々のソロ活動等へと進むそうです。

The Mars Voltaの連載記事はひとまずこれにて一区切り。
次回かその次あたりに、オマーのワーカホリック過ぎるソロワークスをひとつにまとめた
日本限定発売ソロ・ベスト・アルバムのレビューをします。



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The Mars Volta:その4 ゴリアテの混乱+B'z"MAGIC"「構築美志向を更に極めた計算ずくの大混乱+ホアンとチャドの貫禄の大暴れ」

セオドアが脱退してからというもの、The Mars Voltaマーズ・ヴォルタ)の
ドラマーの座はなかなか定着せず、しばしの時が経過していきました。
そして遂に決定した新ドラマーは、何とバークリー音楽大学出身、当時24歳の
トーマス・プリジェン。ジャズ畑出身で、とにかく叩くのが大好き!という趣で
叩いて叩いて叩きまくる、ドラム・バカ君です。さて、その華麗な学歴は通用するか?
ともかくも、4thアルバム「The Bedlam in Goliathゴリアテの混乱)」が完成。
しかし、それが世に出るまで、かなりのてんやわんやを経る羽目に。

ゴリアテの混乱~デラックス・エディション(DVD付)ゴリアテの混乱~デラックス・エディション(DVD付)
(2008/01/23)
マーズ・ヴォルタ

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ジャケが違う別エディションもあるぜ!怖いぜ!
ゴリアテの混乱~大混乱エディション(DVD付)ゴリアテの混乱~大混乱エディション(DVD付)
(2008/06/04)
マーズ・ヴォルタ

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新作が出来るまで、バンドには次々と厄介事が降りかかります。
どうやら、その元凶は、エルサレムに旅行に出かけたオマーが、骨董品店で買ってきた
セドリックへのお土産の品(と本人達は言っていますが、それオカルトじゃなくて?)。
オマーの自宅スタジオが浸水し、そこら中の電源が切れてしまったり、
担当エンジニアが神経衰弱で去り、今までの仕事を何も残してくれなかったり・・・
ことごとく「混乱」を極めるレコーディング過程を経て、これまでとは趣をガラッと変えて
今回の呪いをもたらした地、「中近東」を匂わせるテイストにチャレンジ。
現地でフィールド録音した音声も入っています(#11)。
この中近東テイストに馴染むことができるかが、本作を受け入れられるか否かを左右するはず。

前作でのセールス不振をリベンジすべく、そして、制作過程での散々な呪いに一矢報いるべく、
「コンチクショー!なら、デカイ音鳴らしとけば売れるだろ?」と言わんばかりの
ラウドなサウンドは、もはやHR/HM。
これが見事に功を奏して、USでチャート初登場3位と、バンド最高順位を獲得。
そしてアルバム4曲目「Wax Simulacra」が、何と
グラミー賞の「最優秀ハードロックパフォーマンス賞」を受賞!
このニュースを知った時は本当にびっくりしました。だってあのマーズ・ヴォルタがですよ?
本当に結果出しちゃうんですからねぇ・・・「やる時はやるバンド」振りが半端ない。
ただ、「売れ線を狙った」というファンの声も少なくなく、足元を見られている感じが
やっぱりねぇ。

さて、肝心の中身ですが、全体的に音は多い、激しい、ハイテンション。まぁ「混乱」ですからね。
一聴すると「ただただうるさい大騒ぎ」にも感じられますが、何度か聴いてみると
実は、混乱しているように見せかけて、かなり計算して暴れているのがわかります。
めっちゃくちゃなようで、本当はとても整然としている。だから案外聴きやすいんですね。
とっても長っがいですけどね!リピートするのは、ちょっと辛いかも。

トーマスのドラムは、まぁ激しい、手数が多い、音もデカい、つまりうるさい(笑)
これが好きか嫌いかは好みの問題ですが。
と、まず一つの「自己主張が強く、うるさい」パートが前面に出てきまくり。
但し、この調子で全員が同様にやり合っていたら、うるさすぎて聴くに堪えません。
そこでちょっとおとなしめの二つのパートが、調和役を果たしています。

前作から気になるのが、セドリックがファルセットで歌う場面が多いこと、
「低音域+高音域のファルセットのオーヴァーダブ」の処理が多いこと。
アプローチとして引いているのか、高音がかつてのように出なくなってしまったのか?
曲によっては(例えば#5,#11,#12)少々苦しそうながらもしっかり張って歌っているので
前作ではアプローチとして、本作ではバランスとして、一歩引いたと信じたいところ。
本作で常に1stや2ndのような強度の歌をぶちまけていたら、けたたましくて
1曲聴いただけで耳がおかしくなってしまいそうです。

そして相変わらず「スムーズ」「まったり」なジョン・フルシアンテのギター。
オマーと共にかなり激しいフレーズを奏でているのに、うるさく鳴りすぎず、
HR/HM寄りのアプローチが気に入って手に取ったリスナーが聴いたら、少々物足りなさを
覚えてしまうかも。というか、この人やたらHR/HMフリークの敵になりがち(苦笑)。
でも、この「流麗で、ちょっと引きで弾き」スタイルがあってこそ、本作は聴きやすい、いや
「聴くに堪えうる」作品にまとまっています。
オマーみたいなスタイルでギラギラ弾き倒したら、「うるさい」の二乗になって
聴けたものじゃありません。

インパクト勝負のオマー・スタイルは、この頃には大半がソロアルバムに譲られ、
本家マーズ・ヴォルタでは、それよりも、プログレらしいまとまりを重視した
アルバム作り
が、前作を皮切りに繰り広げられるようになりました。
ジョンの役割は、こうした「構築美志向」を補完・演出することに
やっぱりあるんじゃないかなぁと思います。
本稿を書くにあたって、このアルバムを改めて何度も聴き直していると、
思いの外、見事にまとまった作品であることに気づきました。
暴れまくりながら調和がとれているなんて、かなりの偉業です。
単にラウドで激しいから、といった目先の刺激だけでなく、こうした高い芸術点にも
しっかり耳をそばだてる必要があります。

ホアンですか?本領発揮とばかりに大暴れしていますが、何か?(笑)
HR/HM畑出身の血が疼かない訳がないでしょう!#2など、「このHR/HMバカめ!」と
大笑いしてしまうほど、踊るような軽やかさで低音をビリビリバリバリと響かせています。
もう、たまんねぇぇぇぇぇ!


さて、実際のリリース時期は次作に近いんですが、HR/HMテイストのアルバムという流れで
ホアン&チャド(レッチリ)の、あの有名な日本での課外活動に触れちゃいます。
これも驚きの話題だった、B'zのアルバム「MAGIC」への参加!

MAGIC(初回限定盤)(DVD付)MAGIC(初回限定盤)(DVD付)
(2009/11/18)
B'z

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ホアンとチャド、それはHR/HM出身者ながら、今はその敵のようなジャンルのバンドに所属し、
少しだけ肩身の狭い思いをしているコンビ・・・
但し、ホアンがある程度長い間HR/HMバンドで活躍してきたのに対し、チャドは売れなくて
食べていくために選択の余地なくレッチリのオーディションを受けた、などの違いはあって。
ホアンは別にチャドみたいな冷や飯は食わされてないしな・・・(詳細:チキンフットの記事

まぁともかくも、二人のこの話も相当びっくりしましたよ!
B'zのアルバムを借りる(買う、でなくてスミマセン)なんて90年代振りでした。
初めてお小遣いで買ったCDアルバムがB'zの「LOOSE」。以来小学生~中学生時代はファンで、
未だにカラオケではお世話になってます(笑)。ちょっと懐かしがりながら聴いてみたのでした。
噂によると、稲葉さんがマーズ・ヴォルタのファンだとか。
「へぇ、こういうジャンルも聴くんだなぁ」と少しびっくりでした。
ん?そしたらチャドは?
どこかで、ホアンがチャドを紹介したみたいな話も聞いたことあったんですが、
オマーとジョンみたいなマブダチとまではいかずとも、この二人もある程度仲良いのですかねぇ?
レッチリとマーズ・ヴォルタはしょっちゅう一緒にツアーしてるそうなので、親交が生まれた
可能性は高そうですね。しかも、同じルーツ、少々似た境遇ときているし(苦笑)。
個人的に気になるのは、HR/HMバリバリのギタリスト、松本さんが、
オマーやジョン(=ジャンル的には敵)のことをどう感じてるかなんですがね、まあいいか。

二人の参加した曲を、レギュラーのサポートメンバーさん(リズム隊)の曲と聴き比べてみました。
この人たちも海外組で、勿論とっても上手なんですが、
ホアン&チャドが出てきた途端、「格の違い」みたいなものがまぁ凄まじい!
車のCM「ラララ、あけすけにDIVE!」でお馴染み、アルバム1曲目「DIVE」からズ迫力で、
long time no see」じゃ、松本さんより音デカイよチャド!コンセプトわかったげて(笑)
でも、ドラマの主題歌になった、「愛しぬけるポイントが ひとつありゃいいのに」という
相変わらずな名言が光るミディアムテンポの「イチブトゼンブ」では、
歌心を大切にしたちょっと優しい演奏になります。それでも十分アタック強いですが。
とにかくチャドのドラムがラウドで、そればかりに圧倒されそうになりますが、
ホアンの空気読みながら流麗にさりげなく自己主張するプレイも実に爽快。
レギュラーのメンバーさんの場合、ドラムが弱くて、ベースがちょっと「俺俺」気味。
最近の邦楽バンドに多めのリズム隊という感じで、サポートにはいいと思うけれど
チャドくらい強靱なドラムがバンドを引っ張ると、サウンド全体に勢いがついて、
ホアンも負けじと本気出してくることで、どっしり強烈なリズム隊が出来て、
同じヴォーカリスト、同じギタリストでも、凄みが何割も増して聞こえます。


国籍こそ違えど、HR/HMを愛する同好の士たちと思いっきりプレイできて、
なんだか二人とも、心なしか普段より楽しそうに演ってるようにも感じました。
ホアンとチャドで、一緒に何かやって欲しいなぁと思わずにいられません。
もしそんなバンドが出来たら、真っ先に飛びつきそうです!
二人にコロッと騙されて、手のひら返してHR/HMリスナーに転じても
不思議はなかったりして(笑)


マーズ・ヴォルタ史上1~2を争う「うるさい」「長い」作品に続くのは、
間違いなくバンド史上No.1の「静かな」「短い」アルバム。
次回は、そんな異端の作品、5thのレビューを。



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The Mars Volta:その3 Amputechture+OMAR RODRIGUEZ LOPEZ & JOHN FRUSCIANTE 「じっとり哀愁プログレに打って出た、はいいが・・・+夜明けのギターテイスティング」

これまで、刺激と奇抜さを身上としてきたThe Mars Voltaマーズ・ヴォルタ)。
3作目は少し意匠を変えて、しっとり、いやむしろ熱帯の夜のようにじっとりとして、
哀愁たっぷりで、かつ構築美を目指したどっぷりプログレ路線へとシフトしてみました。
バンドにとって色々な点でターニングポイントとなった問題作、
Amputechtureアンピュテクチャー)をリリース。

アンピュテクチャーアンピュテクチャー
(2006/08/30)
マーズ・ヴォルタ

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ファンの間では、前作と本作とでイチ押しが割れることが多い作品。
私も前作を聴きたい時期と本作を聴きたい時期とで随分割れます。
前作が、インパクトは物凄いけれど繰り返し聴くと頭がぐるぐるしてくるのに対し、
本作は、地味だけどリピートが苦にならなくて、じわじわハマる作品です。
何より、ホアンの鬼ソロが聴けるー!!!(#7のイントロ)それだけでもう胸がいっぱいだァァァ!

しかし大衆がこのバンドに求めていたのは、今までのような刺激、インパクト、激しさ。
ゆえにセールスが振るわず、アフロコンビのやる気メーターだだ下がり、
オマーは本当にやりたい音楽をつくる場を、(ますます)ソロ活動に求めるようになっていきます。

このアルバムは、ふたりの「ジョン」が最初で最後の全面的なシンクロを果たすのですが、
二人して本作に「何か足りない感」をもたらすことに・・・。

ひとりめのジョン、ジョン・セオドア(こちらのジョンはJon。綴りは違うのです)は
何と、本作を最後にバンドを脱退、という名の、まさかのクビ!!!どうして!?
オマー曰く、やる気が全然なくて、自分からこうしたいという提案もなく、
話しかけてもずーっとゲームやっていたりして、バンドに馴染もうとせず、
「上手でも、バンドに愛情を持てない奴はダメ」という理由で去ってもらったんだそう。
確かにそれはごもっとも。しかし、前作でオマーが行った絶対的俺様主義が、セオドアの
やる気やプライドを削いでしまったような気も、どうにもしてならないのです。

色々なバンドを見ていて感じるのですが、「キーマン」というか、「こいつが抜けたら
絶対ダメ」なメンバーっていますよね。いなくなった途端、勢いがガタ落ちするような。
セオドアって、正にそういうメンバーだったんじゃないかと。
他に沢山の要因が重なっているとはいえ、セオドアが抜けて以降、バンドの人気や勢いが
急降下してしまったような印象は拭えず

もちろん以後のドラマー「達」(←ここがミソ)も頑張っているんですが。
本作で、セオドアが手抜きしていると言う人もいるようです。
言われてみると確かに、今までならもっと緩急つけていたような。
本作は何だかその辺、平面的なんですよね。そこが「何か足りない感」の一因では。

で、ふたりめのジョンは、オマーのマブダチでお馴染み、ジョン・フルシアンテ
「なるべくプロデュースに専念したい」オマーに代わって、リズム・ギターを中心に
1stのフリー状態で全面参加(これは5thまで続く)なんですが、よりによってあの
2枚組大作Stadium Arcadium(以下SA)のレコーディングの「息抜き」にやっちゃった!
ったく、ワーカホリックの元にはワーカホリックが寄ってくるってか?!
でもフルシアンテにとってSAは、葛藤と妥協とプレッシャーの嵐で、結構辛い作品だったのでは。
SA以降、商業主義に猛ダッシュし続ける最近のレッチリは、私もちょっと思う所が多々・・・。
そんなわけで、本作での気心知れた親友たちとの仕事が、良い息抜きになったのはごもっとも。

しかしこれが第二の「何か足りない感」を招くとは。
(ギタリストとして)理論や調和や抑制が強みのフルシアンテが、それと真逆のタイプの
オマーのギターフレーズを「代奏」しちゃいけない
のですよ・・・
同じようなフレーズが鳴っているのに、何かキレやパンチが足りないのはそのせい。
そりゃ、とてもお上手ですよ?だけどそのスムーズさが、「まろやか」テイストという
隠し味になっちゃっている。聴きやすいのもそのおかげ、ともいえるのですが・・・

加えて、ATDI~オマーのソロ作まで全部を辿った上で言うなら、
本作は「オマーらしくない」気がしてしまいました。
オマーの強みは、インパクト、アイデア、引き出しの多さ、突飛さ、不調和、コラージュセンス。
そんなオマーが「構築美」を目指したのが、そもそもの「あれっ?」なような。
それこそ構築美が得意なフルシアンテ(例:The Empyrean)にでも任せておけば、と。
まぁ、チャレンジスピリットという意味では、確かにオマーらしいのですが。
そして、構築美を創るための演出として、自らの強みが「破壊美」だとわきまえたうえで
構築美スタイルのギタリスト、フルシアンテを呼んだのだとしたら、合点がいきます。
4th5thにも呼んでいるあたり、そういう意図は全然なさそうですが・・・

それでも、ファンの中で人気No.1を二分するような作品にしちゃうのはやはり流石。
2ndとは違った意味で、「目先の刺激的なものにばかり飛びつかず、本物を見抜けよ」という
メッセージ、期待を込めてリリースされたであろう本作。
その期待を大きく裏切られ、アフロコンビはさぞかし心折れたかと思いますが、
大丈夫、ファンはちゃんと見ています。というか今までがうまくいきすぎなんだよ!(笑)


さて、ふたりのギターの聴き分けの参考になるかどうか?
オマー&フルシアンテ(面倒なので、以下ジョン)の共作が、割と最近CD化されましたよね。
日本大好きのオマー、CDというパッケージでこの音源をリリースしているのは日本だけだとか。
CD(や、それを焼いたCD-R)を棚にどっさり集めて飾りたい私には、本当感謝感激。
タイトルはまんま直球、「OMAR RODRIGUEZ LOPEZ & JOHN FRUSCIANTE」。

OMAR RODRIGUEZ LOPEZ & JOHN FRUSCIANTE (オマー・ロドリゲス・ロペス &ジョン・フルシアンテ)OMAR RODRIGUEZ LOPEZ & JOHN FRUSCIANTE (オマー・ロドリゲス・ロペス &ジョン・フルシアンテ)
(2010/12/15)
OMAR RODRIGUEZ LOPEZ & JOHN FRUSCIANTE (オマー・ロドリゲス・ロペス &ジョン・フルシアンテ)

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ジャケ買いしたと言っても過言ではないこのアルバム(笑)
「何だこりゃ?」と呆気にとられる不思議なジャケ、90度時計回りに回転すると正体が判明。
ジョンがギターを弾いている姿を、オマーが撮影したものなんだとか。なるほどね。
この作品、実は03年の春に、オマーの部屋でなんとな~く二人でセッションしたのを録音して
後にオマーがオーヴァーダブを施し、当初はオマーのサイトでチャリティ目的で発表され、
価格は買い手が自由に決めて、ダウンロード可能だったもの。

「4:17am」で始まって「5:45am」で終わる、7曲入りのミニアルバム。
曲目も「0」「0=2」とか、「LOE」「ZIM」「VTA」とか、記号めいていて正体不明。
きっと夜明けのセッションだったのでしょう。憶測しかできませんが。

「二人Scabdates featuring John、オーヴァーダブ:たっぷり。」という趣。
オーヴァーダブの仕方などはいかにもオマーの仕事ですが、
曲の流れはかなりジョン寄り。というか、あの「単音つまびき」などを奏でた途端に
曲世界がジョンの方へと吸い寄せられていくようで。
その音は、03年前後にジョンがしていた仕事、かなりまんまです。
この頃のジョン~レッチリが好きな人なら気に入って、ダメな人ならイマイチという
感想になるのでは。私は、この頃がどストライクゾーンなので、当たり。
オマー寄りの世界の曲もあって、こういった曲は「格好いい」という印象に。
ところで最後の「5:45am」で、「グーグー、スースー・・・ウーン・・・」という
寝息とおぼしきSEが入ってるんですが、これまさかジョンの寝息じゃないよね?!
いかにも鼻が悪そうな人のそれなんですが・・・(ジョンは昔、鼻を骨折し、以来鼻曲がりに)
オマー!友だちで遊ぶな!!!(笑)

競演を聴いていて、改めてわかる二人の違い。
ジョンのギターは、ギターを借りた「歌」。常に歌と共にあり、自分やアンソニーなどの歌を
引き立たせてきたものです。歌心溢れるメロディを、はっきりと感じ取ることができます。
一方、オマーのギターは、ギターを借りた「SE」または「武器」。ギターをギターらしくなく
扱う面は、レディオヘッドのジョニー・グリーンウッドにも通じるものがあります。
そういや、ジョンはレディオヘッドの熱狂的なファン(機材を一式揃えちゃうほど!)でもあり、
ジョンってそのあたり、結構徹頭徹尾しているのかも。

繊細でどこか淋しげなジョンの旋律に、ユラユラ、フワフワしたオマーのオーヴァーダブが
相まって、さりげないながら妙に心地良くなる一枚
です。
夜更けや夜明けに、「あぁ夜更かししちまった」なんて思いながら、だらだらゆったりと
眠る支度をしながらこれを流していると格別でした。
こんな気楽な楽しみ方が、よく合っていると思います。


セオドアが脱退して、アフロコンビが初めての「思い切り心が折れた」を経験して、
どうなる新ドラマー?どうなるこれからのマーズ・ヴォルタ?
てんやわんやの状況で生み出されたてんやわんやの4thアルバムが、次回のメインです。




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The Mars Volta:その2 Frances The Mute&Scabdates「わかりやすいだけが音楽じゃない!オマーが教えてくれた、音楽を"読み解く"ことの面白さ」

2005年吉日、比較的まったりとしていた音楽世界に、とてつもない化け物が
放たれました。
その化け物を創り出したのは、オマー・ロドリゲス・ロペス率いる一団、
The Mars Voltaマーズ・ヴォルタ)。
そして、化け物の名前は「Frances The Muteフランシス・ザ・ミュート)」!

フランシス・ザ・ミュート~スペシャル・エディション(初回限定生産盤)(DVD付)フランシス・ザ・ミュート~スペシャル・エディション(初回限定生産盤)(DVD付)
(2005/02/07)
マーズ・ヴォルタ

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1stで衝撃のデビューを飾った彼らでしたが、リック・ルービンとの共同プロデュースで
ちょっぴりキャッチーでエモな仕上がりになったこともあって、オマーは不満げ。
そこで2ndからは、自分でぜーんぶやっちゃおう!と、完全俺様主義を開始します。
セルフプロデュースは当たり前(本作以降、全ての作品はオマープロデュース)。
今作に至っては、各パートをそれぞれバラバラに録音して、そのつぎはぎのパートを
オマーがコラージュして一つの作品にしており、他のメンバーは全体像がわからないまま
とにかく弾かされる、叩かされる
、というとんでもないもの。
こういった「オマー絶対政権」が、後に「他のメンバー」のなかでも重要なメンバーの
離脱へと繋がって・・・いったか、詳細な本当の原因は定かではないですが、
オマー、才能ありまくりなのは良いんだけど、人としてどうかという言動が多いのがなぁ。

しかしながら、最初に書いたように、とてつもない化け物ミュージックが
野に放たれたことは確かで、
そのうえ、チャートアクションも良く、USでは初登場4位、一気に話題をかっさらいます。
改めて聴き直してみて「こんなのがメジャーで売れちゃうとは・・・」と驚愕しますが
それだけ、音楽ファンも刺激的で聴き応えのある音楽を求めていたということ。
ただポップな、あるいはただハードな音楽が巷に溢れるなか、
本作は、ハードコア、プログレ、ラテン音楽、サルサ、ダブなど、新旧や国籍を問わず
実に多種多様なジャンルやサウンドが、ごった煮になって同居しているのです。
難解さがないとは言いませんが、「一度聴いただけではわからない、でも何か気になる、
わかりたい・・・!」そんな、60~70年代の音楽にあった「読み解きたくなる深い魅力」
オマーは誰よりもよく知っていて、それを現代の実験的な音楽と混ぜ合わせて
巨大な青黒いマグマのような音楽の塊を、ドスンとメジャーシーンに投入しちゃったんですね。
オマーの問題提起と、多くのリスナーが抱えてきた「飢え」とが、ピタリと一致した結果です。

5曲を分断してCDでは12曲に。
というか、5曲目が長すぎるので、パートごとに分断したという感じか。
それにしても1~5曲目は全て10分超え。めまぐるしい展開。変拍子の嵐。
前作に少し近いようなハードコア風味の1曲目から、哀愁ナンバーの2曲目、
セドリックのスペイン語の歌唱まで出てくる3曲目、静寂がベースにある4~5曲目以降と
音楽の幅も随分広がり、いまやATDIの影は完全に消えたといっていいでしょう。
前作に続いてフリージョンのレッチリ組も参加。フリーは2曲でトランペット、
ジョンは1曲で2回のギターソロ。このソロはとっても「Stadiun Arcadium」でのプレイを
彷彿させます。本作が「SA制作時の片手間にちょっと参加してみた」作品でも
不思議じゃないです。というか、次作の参加のしすぎ振りがおかしい!あんた働き過ぎや!

前作のリリース直前に亡くなったメンバー、ジェレミー・ワードの日記から
幾分インスパイアを受けています。前作に続き本作も、死者からのインスパイアということに・・・。
長い長~い静寂と混沌のSE部分にヤキモキさせられる人が少なくないかもしれませんが
このSEが意味するところは、ジェレミーという死者への餞か、あるいは彼の世界の再現か。
「SE長げぇ!いらね!」とイライラして投げ出す前に、そこに込められた想いを想像してみては?
・・・な~んて、私も「そろそろいい加減にしなさいよ」と感じたクチなのですが。

オマーが本作において、ギターも含めトータルで物凄い仕事を成し遂げた一方、
セドリックも全くひけをとりません。1曲目から軽くG、他の曲でもE以上のハイキーを
(少なくとも聴いている分には)難なくするりと出しちゃっているのです!!!
一体どうなってんだよオマエ!煽るように歌い、しっとりと歌い、呟くように歌い、
更にはライヴでは奇行まがいのハードなパフォーマンスと、もう信じられない!
前作の記事で「千手観音」なんておかしなキャッチコピーをつけて激賞してしまった
セオドアも相変わらず見事な仕事するし、バンドの絶頂期といっていいでしょう。

さて、前作でフリーがレコーディングに全曲参加した後、ベーシストの座は誰が埋めたか・・・?
その大役を任じられたのは、ホアン・アルデレッテ
ポール・ギルバートなどと「レーサーX」というテクニシャン揃いのヘビメタバンドに在籍し、
その活動も80年代からと、経歴も腕前も申し分なし。
フリーの我の強いベースも凄い迫力でしたが、
ドラマーを引き立たせながら自分もイイ仕事をきっちりして、ギタリストと張り合うような
過剰なエゴは出さないという、このバンドにうってつけの人材、そしてプレイ
です。
同時期にはオマーの実弟マルセル・ロドリゲス・ロペスが加入し、
パーカッションやシンセサイザーを担当。この二人は現在でも在籍しています。
他にも、サックス、フルート、クラリネット、チューバ、トロンボーン、
果てはチェロ、バイオリンまで、ジャズかクラシックかというような音が詰め込まれ、
そのために参加メンバーがごっそり増えてます(笑)


ところで、マーズ・ヴォルタといえば、ライヴの評価がとっても高いバンド。
昨年のサマー・ソニックでも、彼らに全然興味がなかった層までもがっつり取り込んで
Twitterなどには「マーズ・ヴォルタすげえ!」の書き込みが連発だったとか。
そんな彼らの、今のところ1枚だけのライヴ・アルバムがあります。
1st~2ndの間の時期に行われたライヴを録音した、「Scabdatesスキャブデイツ)」。
メンバーは2ndと大体同じで、楽曲は1stからのものがメインです。

スキャブデイツスキャブデイツ
(2005/11/02)
マーズ・ヴォルタ

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リスナーにはそこそこ好評だったとはいえ、批評家などからは「これはライヴアルバムじゃない、
オーヴァーダブしまくってるじゃないか!」と手厳しい声も。
そう言われたオマー、「オーヴァーダブなんてしてないぜ。クリエイティヴなミックスを
しただけだ」
と強気。確かにとっても、「クリエイティヴ」ではありますが・・・
赤子の泣き声やら、駅での喧噪やらアナウンスやら、メンバーの談笑やら、
リフレインするセドリックの歌声やら、オーヴァーダブ、してないほうがおかしい(笑)
しかし思い出すと、フランク・ザッパもアルバムをこうした手法(ライヴを録音して
それをオーヴァーダブ、歌詞カードに「オーヴァーダブ:たっぷり。」とまで書いてある)を
駆使して制作しているんですよねぇ。もしかして、そんなアルバムを目指した?

2ndを聴いて「ベースが足りない!」と嘆いたベースフリーク(私の事ですが、何か?)は
これを聴いてベース=ホアン成分を補充しましょう。
とはいってもオマーのギターがテラ爆音で、かき消されがちですが・・・(涙)
でもスタジオ盤よりはよくベースが聞こえ、ホアンとセオドアが抜群のチームワークで
グルーヴをどっしり支えているのがよくわかります。
噂によると、セオドア(+ホアン)のグルーヴにオマーはすっかり酔っちゃって、
グルーヴに乗っかって、ギター演奏を放棄し、ふらふらと踊っていることさえあったそうで(笑)。
それはそれで、なかなか強烈なパフォーマンスではありますが・・・。
個人的な感想ですが、この頃の彼ら(のライヴ)って、かなりZepぽいと思います。
いつセドリックが「Push!Push!」って言い出しても驚かない(笑)。
圧倒的なハイトーンヴォイスのセドリック、あの手この手の俺様バンマス、オマー、
叩いて叩いて叩きまくるセオドア、彼に同期してどっしりしたグルーヴをかますホアン。
近未来型「How The West Was Won」(しかもインプロだらけの部分ばっかり)か!
ホアン&セオドアのいいところは、どれだけ激しく弾いて叩いても、主張が過ぎないこと。
「俺が俺が」でなく、心地良く聴けるんです。だからセドリックやオマーも引き立つ。
Zep好きと、ベース好き(+ドラム好き)は、まず間違いなく聴いてみて損はないはず!
ええ、全部私の事ですとも!

Gt,Ba,Dr(+Key)が一丸となって繰り出す、印象的なフレーズが強いインパクトを放ち、
それを繰り返すことによって呪術的な求心力が生まれます。
オマーは、こういう「インパクトのある強烈なフレーズ」を作るのがとっても巧い!
それまでどれだけダレているように感じても、フレーズ一つでハッとして、
耳を惹きつけられてしまうだけの力があります。

そして、一人一人の演奏の熱量がとっても高く、特に後半から最後にかけてどんどん
ヒートアップ
。それにつれて、楽曲も、会場の観客達もヒートアップしていきます。
みんなで一丸となって楽曲を盛り上げ、グルーヴの塊をどんどんでっかくしていって
最後にドカーンと大っきいグルーヴの大爆発を炸裂させる
様が目に浮かぶようです。

ライヴに行きたくなること請け合いの一枚!
アルバムの最後に、セドリックが挨拶していて、なぜか
「ありがとう。家帰って、風呂入れよ」って言ってる(笑)
なぜに風呂?観客も自分も汗いっぱいかいたから?
まぁセドリックだからなんでもいいか(笑)



さてさて、ここまで、飛ぶ鳥を落とす勢いで順風満帆にきたマーズ・ヴォルタですが
次作で危機が・・・そして遂にあの人物の離脱・・・!
次回取り組むのは、そんな波乱の3rdです。



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The Mars Volta:その1 de-loused in the comatorium「とんがってぶっ飛んだ音世界に、今回限りのあまりにも豪華すぎるリズム隊!」

祝・新作リリース!
言葉にするのが大変だと分かりつつ、ここまで来たらもう戻れない。
前回At The Drive-Inを書いたのだから、The Mars Voltaマーズ・ヴォルタ
いかなきゃ嘘でしょ!
連日、死にもの狂いでCDを聴き続けて、ようやく編み出した言葉の断片たちをどうぞ。


これからを期待されたポスト・ハードコア・バンド、At The Drive-Inをツアー中に抜け出して
バンドは解散、セドリックオマーのアフロ・ヘア・コンビはカリフォルニアへ逃亡。
そこで、何かとお世話になっていた、ジェレミー・ワード(ATDIのジムの実の兄弟)と共に
デ・ファクトというダブ・バンドを組み(セドリックがドラム担当のインストバンド)、
二人で一緒に住んで、沢山の映画を毎日のように観る日々を過ごしつつも、策を練るのは忘れず
遂に生み出した壮大なプロジェクト、それがマーズ・ヴォルタ!

デ・ファクト時代、どういう縁か定かではありませんが、ひょいとライヴに姿を見せたのが
レッド・ホット・チリ・ペッパーズジョン・フルシアンテ
側で驚嘆するセドリックをよそに、後に親友となるオマーは、はじめその男がジョンだと
全然気づかなかったのだとか・・・
オマーが影響を受けたアルバムに「Blood Sugar Sex Magik」あるのに(苦笑)
これがきっかけか、レッチリは、マーズ・ヴォルタをライヴのオープニング・アクトに指名、
アンソニーやフリーもそのサウンドを絶賛することに。

しかし、デビュー盤をリリースするにあたり、大問題が発生します。
当時のベーシストが脱退してしまい、ベースが居ない・・・!
そこにあらわる救世主、フットワークの軽い凄腕プレイヤー、フリーさん。
何と、アルバム全曲のベースを、さらっと担当してしまったのです!
更に、フリーと仲良し(当時はBy The Wayの乱の最中だったから、微妙か?)のジョンも
7曲目でギターソロを披露。
レッチリとマーズ・ヴォルタでツアーする日々、オマーとジョンは互いのホテルの部屋を
毎日のように訪れ、二人でセッションを繰り広げ、親交を一気に深めていったんだそうです。
(こういったやりとりで出来たのが、あの「Omar Rodriguez-Lopez & John Frusciante」)


「元ATDI」「レッチリの二人が参加」と、話題のとっかかりが豊富な彼らですが、
いざアルバムがリリースされてみると、それ以上にリスナーの度肝を抜いたのは
彼らの音楽!
ATDI時代のハードコア風味をある程度継承しながら、もっと情報量が多く、
もっと個性的で奇天烈な作品を、彼らは世にぶち込んできたのです。
それが「De-Loused in the Comatoriumディラウズド・イン・ザ・コーマトリアム)」。

ディラウズド・イン・ザ・コーマトリアムディラウズド・イン・ザ・コーマトリアム
(2003/06/18)
マーズ・ヴォルタ

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奇怪きわまりないジャケもさることながら、バンドのコンセプトもユニーク。
他に何人もメンバーがいるのに、アーティスト写真にはセドリックとオマーしか写らず、
音楽的実権も、取材を受けるのも常にこの二人。実質、二人のユニットみたいな形です。
アーティスト写真も、例えばこんな感じ。
The Mars Volta
距離近けぇ!アブナいよ!
しかしWアフロのインパクトが強烈だったので、あえてこれを選びました。
目つきがギラギラして、服装にはあまり構わず、黒Tシャツ黒パンツの格好が多いセドリックと、
でっかい黒縁眼鏡がトレードマークで、ピタピタファッションがお似合いのオシャレさんなオマー。
ほとんど喧嘩もしないらしいです(笑)


さて、いざCDを再生してみましょう。
まず耳を惹くのは、ATDIでは想像もつかないほど、艶やかで、「うた」に特化したセドリック
ATDIでの仕事は「叫ぶ」「ラップする」が半分を占めていたから、当然ちゃ当然なのですが
「えぇ?いつの間にこんなに上手くなったの?!」と驚かずにはいられないほど。
ATDIでの鋭さや伸びのよさはそのままに、
より表現方法が多彩になり、高音から低音まで縦横無尽に、美しく正確に歌う
ように。
決して逆の順に聴いてはいけませんよ(苦笑)
1st~2ndが、セドリックの声のピークかも。素晴らしいヴォーカルです。
00年代で間違いなく、一番好きなヴォーカリスト!
ちなみに、ジム・モリソンを彷彿とさせる、奇行すれすれのパフォーマンスは相変わらずです。

ATDIでは「5人全員が一丸になって」音楽を作っている節があり、見えづらかったのですが
オマーというギタリスト、サウンドメイカーの個性が本作ではっきりと見えて来ます。
すごくとんがって、不意打ちのようにとんでもないところから飛び出してくる、
美メロ、調和なんてかなぐり捨てたような、乱暴で感情的な、デジデジした型破りなギター。
ピポラピポラと音をたてる、エフェクトかけまくりの変態的な音色。

ぐるんぐるん頭にサウスポーに有色人種と、少しだけジミヘンぽい演奏姿もイカしてます。
「デジデジ」はギターのみならず、アレンジ全般、とりわけSE音にも多用されており
オマーはこういうテイストが好きなんだなぁとすぐにわかります。
本作(と次作)は、浮遊音系のSEの多用が顕著です。イライラする人もいるかな?(笑)
アレンジもこれでもかというほど多彩で、無音になったかと思いきや突然に爆音が飛び出し、
静寂なSEで終わるかと思ったらまた振り出しに戻る#7など、実に個性的。
マーズ・ヴォルタはよく「プログレバンド」と括られますが、オマーにとってはそれはほんの
いち要素でしかなく、持っている手札の一枚をひょいと出したら、たまたまそれが目立っただけ。
他にも山ほどの手札を惜しみなく出していることもあり、あまり「プログレバンド」と括られるのは
好きじゃないみたいです。

ドラマーにこだわる男、オマー。ATDIでも不満があったのだとか。
しかし、そんな「違いがわかる男」の前に、千手観音の如き凄腕ドラマーが現れます。
00年代を代表するドラマーとも呼びたい、その男の名はジョン・セオドア
ボンゾのように激しくて、ビル・ブラッフォードのように緻密です。
激しい曲ほど、その叩きぶりに痺れます。#2、#3など。
このような凄腕ドラマーに、言わずと知れた凄腕ベーシスト、フリーが加われば、
泣く子も黙る世界最強グルーヴが出来上がり!
チャドとの「最強」とはひと味違い、しなやかで深みのある、剛胆さと繊細さを兼ねたグルーヴ
フリーの仕事は、レッチリでこれまで披露してきたような「俺様スラップ」とはちょっと違い
彼の憧れるベーシストの一人、ジョーンジーのような、
天才ドラマーに徹底的に同調して、リズム隊の爆発力を増し、セオドアの腕前を引き立たせる趣。
しかし「俺様はフリー様だ!」と言わんばかりの存在感満点のプレイもやっぱり健在で
#5などは「やっぱ、フリーさんパネェっす」と呟かずにはいられないブインブインっぷり。
でもアルバム途中から、そんな大先輩フリーをさしおき
「フリーさん<<<俺」の音量にしちょうオマーって、やっぱり色々と半端ない(笑)

このアルバムは、他の作品と比べ、「動物的」とか「肉食系」みたいな表現をしたくなります。
そう感じるのはやはり、フリー+セオドアの豪華すぎるリズム隊の所以でしょう。
フリーはAtoms For peaceでもトム・ヨークの音楽に肉感性を与えていると評されているし
蚤さん恐るべし。
00年代のレッチリでは、世代交代の波に揉まれ、ジョン・フルシアンテに役割を取られたためか
このような課外活動でのほうが、活き活きとその底力、幅広さを発揮しているように感じます。

そして、件のフルシアンテのソロが#7にあるのですが、ぱっと聴くと、どこからどこまでが
彼のソロで、どこからがSEやオマーのギターか、聴き紛ってしまいます。
よく聴くと「あぁ、あのギターだ」と分かるのですが。
#7以外の曲で感じたことなんですが、オマーが似せているのか、実は二人は似ているのか?
ソロ中盤の、ドリーミーな音色でつまびくプレイが顕著ですが、フルシアンテの繊細さと
オマーの豪快さが、心地良いコントラストを成しています。
後半の「またくりかえし」部分のソロでは、音楽理論に乗っ取って弾きこむフルシアンテと
理論無視で感情優先に弾きまくるオマーとの対比がよく見えて、これまた興味深いです。


フリーやジョンがいる繋がりか、レッチリなどのプロデューサーとして名高い
リック・ルービンとの共同プロデュース。
オマーは、彼に不満なのか、自分が仕切れないのが不満なのか
このアルバムの出来をクソミソにけなしてます(苦笑)。
「次作からがほんとの俺だかんね!」という訳なんでしょうか。
しかし、ATDIから移行してきた人、
レッチリの二人が参加しているのでちょっと聴いてみようと手に取った人には
スムーズに移行しやすいアルバム
だと思います。


本作のリリース1ヶ月前に、デ・ファクトでも活動を共にし、サウンド・テクニシャン等を務めた
ジェレミー・ワードが薬物のオーバードーズで急逝してしまい、
更に本作の制作前に、セドリックは友人をこれまたオーバードーズで亡くすという
(セドリックは本作で、その人を主人公に据え、彼の人生を歌詞にしようと試みた)
波乱含みの幕開け。
次作から新ベーシスト、ホアン・アルデレッテが加入して、豪華すぎるリズム隊は
お開きとなるものの、ホアンはバンドに長く定着する大事な存在となります。
そうして次作からは、オマーのセルフ・プロデュースも開始。
いよいよヤバイことになる、2ndを次回、頑張って追いかけてみます。




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