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【CDレビュー・感想】SPEEDWAY:ESTAR/BASEMENT
友人が唐突に貸してくれたのです。
貸してくれなかったら、一生聴けていなかったんじゃないかなぁ。
手に入るなんて発想がなかったから、探そうとも思っていなかったもの。
そんな一枚、正確には二枚の、感想/レビューをどうぞ。
THE ESTER & BASE AREA
商品をそのまま紹介しようと思うと、画像が出てこない。
さすが1990年リリースの、超レア音源である。
ゴールデン・ベスト (2003/03/19) SPEEDWAY 商品詳細を見る |
2003年にリリースされたベスト盤。ここに入っている楽曲の多くが
今回紹介する、SPEEDWAY(スピードウェイ)のTHE ESTER & BASE AREAから
来ていると思われる。
SPEEDWAYとは、あのTM NETWORKのメンバー、
宇都宮隆氏(以下ウツさん)・木根尚登氏(以下キネさん)・そして
一時的な参加ではあるが小室哲哉氏(以下コムロさん。てっちゃんとは流石に呼べない・・・・・・)が
在籍していた、実質的にTMの前身と言われることの多いバンドである。
2007年にTMがリリースしたアルバムのタイトルは、まぎれもなく、このバンドからである。
SPEEDWAY (2007/12/05) TM NETWORK 商品詳細を見る |
・これがTMの前身!?耳を疑う「エスター」
二枚組アルバムの一枚目である。
戦隊もののような「パパパパパ、パッパー」というイントロ、
「夜が明けるまで 飲もう~と オ~~イェイ」という歌い出し。
いま何が起こったのか?!私はTM NETWORKの前身のバンドの音源を
聴いているのではないのか?!
TMとは似ても似つかない曲調に、耳にしている音源を信じられなくなる。
まあ、そりゃそうだ。確かにTMのメンバーが三人在籍していた(時期もあった)が、
スピードウェイは、六人あまりもメンバーがいる大所帯のバンドで、
リーダーも中心人物もコムロさんじゃなくてキネさんで、全く違うバンドと思った方が良い。
カラッとした、脳天気な、しかし歌謡曲調にねっとりした、「アメリカン・ロック」のバンドの
作品なのだから。
そのカルチャーショックをより強く感じさせる作品が「エスター(THE ESTAR)」である。
・TMの序章的な色合いが強まる「ベースメント」
二枚組アルバムの二枚目である。
BASE AREA (2006/09/29) SPEEDWAY 商品詳細を見る |
この作品はAmazonで出てくるだけでなく、2006年に再リリースされている様子である。
一気に垢抜けた印象を受ける。
前作にあたる「エスター」が再リリースされず、こちらだけ再リリースされる理由も頷ける。
こちらにはコムロさんが参加していて、半分近くの曲を書いている。
前作にはなかった、エマーソン、レイク&パーマーやイエスを思わせる音色の
目立つシンセサイザーのサウンドが一曲目から見受けられる。
こんな具合に、僅かではあるが、確かにTMの影が見え隠れして、次の展開が
読めなくはない。
globeの「Sa Yo Na Ra」そっくりな曲もあるし・・・・・・
(しかも「スマイル・アゲイン」という曲で、歌詞もさよならがテーマだし、そのまま?)
但しバンドの世界観は相変わらずで、「ランチボックスはママの手作りパイ~」などとウツさんが
歌い上げているような曲が、ぼちぼち「ガクーーーッ」とさせてくれる。
しかしコムロさん一人の存在でこんなに変わるとは。
この後、コムロさんはTM NETWORK結成のために脱退し、後にウツさんとキネさんは
それに参加することを承諾、バンドは空中分解してしまうのだが、何だか納得できる。
他のメンバーには、たまったものではなかっただろうが。
・何かほっとする作風から、グッと引き締まる作風へ
「エスター」は、ほぼ全ての作曲をキネさんが行なっていて、キネさん色が強い。
アレンジを当時のメンバー全員で行なっている。
後にTM NETWORKでキネさんがアルバム用につくる、いわゆる「キネバラ」の片鱗が
かなりはっきりみられる。同じ人の作品だから当然といえば当然なのだが。
アメリカン・ロックを標榜しながら、湿り気のある歌謡曲やフォークソングっぽさをも漂わせる。
「癒し系」といえそうな雰囲気のある「エスター」に対し、「ベースメント」の方では
プログレっぽい試みに挑戦している楽曲まで登場するし、音も引き締まる。
「ベースメント」ではコムロさんとキネさんの作曲の割合が半々。
曲もやはりそれっぽくなる。曲とアレンジでバンドは変わるもんですな。
・歌詞はメンバーが書かない
歌詞はメンバーが書かない、外部のライターさんに発注する。
後のTM NETWORKの路線への繋がりを感じさせる拘りである。
実際のところ、拘りなのか、書けるメンバーがいなかったのかは分からないが。
・ウツさんがビブラートを!
ずっと、ウツさんはビブラートをかけ「られない」シンガーなのだと
TM NETWORKやソロを聴いて、思っていた。
だがそうではなく、TMのビートの為にそれをあえて捨てた、
元はかけられる、かけ「ない」でいるシンガーなのだという事実が、本作を聴くと判明する。
これはかなりびっくりした。
歌い方のアプローチが、楽曲と相まって、何かどことなく西城秀樹を思わせる。
・ブックレットに若きウツさんキネさんコムロさんいました
これもカルチャーショックであった。ベースメントの方にモノクロで載っていたのだ。
時代性か音楽性か、みな一様にグルグルパーマをかけて、みな一様に痩せている。
ウツさんは、もやしながらもさすが男前のハンサムである。
コムロさんは女性か女装なのかという長髪で、メイクもしている模様で、服装もアレだ。
で、キネさんである。TM NETWORKではずっと(今も)グラサンをかけて顔をガード、
目元は謎のヴェールに包まれている、あのキネさんである。
「Love Train」のジャケットで露わになっちゃった下がり眉が、見る者を
「あ、ヤバい」ともれなく思わせてくれてしまうキネさんである。
Love Train/We love the EARTH (1991/05/22) TMN 商品詳細を見る |
スピードウェイの作品では、素顔が、目元が、露わになっている!
THE ALFEEの坂崎さんにちょっと似ているような感じだ。
TMで目元が露わになるとタブー感凄まじかったが、ここでは至って自然だ。
ってか、そりゃそうだ。
TMでは三人目のメンバーとして端に佇んでいるというパブリックイメージがあるが
ここではリーダーで中心人物。佇まいも変わるというものだ。
ラスボス感すら漂わせていて、ちょっと偉そうなスネ夫って感じである。
皆さんも是非ググったり、現物を探してみたりして、その勇姿を確かめていただきたい。
・月光仮面のおじさんが
本作でなく、それとは別に友人から借りたベストに収録されていた
「Rockin' On the 月光仮面」というシングル曲がある。
これがまたショッキングだった。
TM NETWORKの前身が「月光仮面のおじさんが」とか言いながら
歌って、奏でているのである。
まあ言うまでもなく、「月光仮面」のために作った曲なのであるが
あの三人が「月光仮面はだれでしょう~」という曲を奏でているのが
信じかねる。いやはや、時代ってすげえや。
だいぶ失礼なことばかり書いた気がします。
特にキネさん、ご無礼をお詫びします・・・・・・
でも、まあ、これが率直な感想であります。
今でも自然に聴ける二枚一組の名盤。
古くて新しい魅力を放っています。
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