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阿川佐和子:聞く力「『聞く』を通じた人間賛歌、普段インタビューをしない私達が学べること」

先日観た、土曜朝に阿川佐和子さんとゲストがトークする番組「サワコの朝」にて、
吉川晃司さんのあの立派な肩は「肩パッド」ではなく、水球で鍛えた自前の肩だと
いうことが判明しました。朝ドラ、知っててわざと間違えてそう(笑)
質問をされて「うん、そうだよ」等も挟まず、質問の途中から遮って答える吉川さんに
サワコさん内心イラッとしているだろうな、いやこのくらい序の口か、などと
いち視聴者として若干イライラ(ヒヤヒヤ)しながら観ていました。

今書いた「サワコの朝」に、ビートたけしさんの番組「たけしのTVタックル」のアシスタント、
文藝春秋で長期連載となっているというインタビューにエッセイに小説(「聞く力」が社会現象に
なるまで、私はサワコさんをエッセイストか小説家だと思っていました)、その他、その他・・・と
引く手あまたのサワコさん。今年で還暦なのに、かわいらしくていつも活き活きしています。
そんななかなんとなく心ひかれて、珍しく流行りの本を読んでみた、それが「聞く力」でした。

聞く力 心をひらく35のヒント (文春新書)聞く力 心をひらく35のヒント (文春新書)
(2012/09/20)
阿川 佐和子

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山のようなCDレビューの合間に読んだのでかなり時間がかかってしまいましたが、やっと読了。
この頃は「70万人が泣いた!笑った!そして納得!」と帯に書いてありますが、現在じゃもっと
部数は伸びていることでしょう。最近じゃ書き下ろしの新しい小説が書店に並んでいたし、
いやはやすごいすごい。
関連番組なども観たので、そこで得た情報や感想も織り交ぜながら、感想を述べていきます。


・新書の体裁をとったエッセイ本?
新書の中身というものは大抵、もっと論説ベース。文章の全ては「推したい事物」の為にある。
しかし「聞く力」は違う。聞くコツや醍醐味と同じくらい、サワコさん自身も文章の主人公。
「インタビューをする」がテーマのエッセイ本といっても本当は差し支えない内容だと思う。
ノウハウ本や、論説本を期待していると、もれなく肩すかしを食らうはずだ。
時々サワコさんの一人喋りが長引き、そこらのオバちゃんの茶飲み話と化している部分もあり
イライラする向きもあるかもしれない。全ては喋るような調子での、サワコさんの体験談だ。
お喋りを聞くように読めるからすらすら読めて人気が出ているのかもしれない。
仕事に差をつける目的で書かれたノウハウ本は理論で読み手を説得し、新卒学生が社会人として
ホウレンソウを身につける目的で書かれたマニュアル本は教科書のように「暗記」させる。
では「エッセイ本」は?自身の実体験で、うまくいった事例・失敗した事例が本人の実感と共に
示されるから、その要点が「なぜ」必要なのか、重要なのか、浸透しやすくなっているといえる。

・「上手な聞き手」の定義が変わった
かつては、インタビューが苦手で、褒められたことなど一度もなかったサワコさん。
インタビューの連載を始めるとき、前任のデーブ・スペクターさんみたいに、「相手が答えに
窮するほどの鋭い質問をビシバシ投げかけて、あくまでも冷静に、みごとな切り返しができる
ような人」をイメージしていたが、そういうタイプは相手に敬遠されることもある。
サワコさんのように、相手の話にいっしょに笑って時には泣いて、話をどんどん引き出す、
同調タイプの聞き手もまた、いま新しく「すぐれた聞き手」として定義された。
デーブさんタイプ、サワコさんタイプ、それぞれのニーズは違うから、どちらが優れている
などではなくて、両方が共存し、ケースバイケースで使い分けるのがよいのだろう。
「サワコの朝」では、ゲストが思い入れのある曲を2曲紹介して、それをチラッと流しながら
その曲に関するエピソードを語るというコーナーがある。これもまた、ゲストからスムーズに
視聴者にも自然に、話を引き出すヒントになっていると思われる。

・サワコさんのキャラクターから生まれた「大事なこと」
サワコさんは、わからなければ素直に(ちょっとおっかなびっくりに)「あの件なんですけど・・・」
と、聞きづらい質問でも思い切って聞いてしまう。知ったかぶりをせず、知らないことは素直に
知らないので教えてほしいと言う。また、心から面白そうに聞いて、上っ面な受け答えはしない。
素直で、誠実で、感受性が豊かで、ユーモアをいつも携えているキャラクターのサワコさん。
それゆえに築き上げられたインタビューのテクは、仕事一般にも共通するテクでもある。
どの分野でもそうだが、自分の長所を伸ばすなかに、物事をうまく進める秘訣が隠れている・・・
そのようなメッセージでもあるような気がする。

・あの人やこの人のこぼれ話をただただ楽しむだけでもおもしろい
聞くことに興味がなくても、この本を楽しむことができる。これまでインタビューしてきた実例が
豊富に収録されており、著名人の「らしい」話や意外な話をたっぷり楽しむことができるからだ。
これは凄い!と恐れ入ったのは、デーモン閣下による「へヴィメタルとハードロックとロックは
どう違う?論」。私も正直曖昧だったのだが、閣下は本当に頭の良い人なのだろう、サワコさんに
訊ねられるなり、音楽学校の講師のように懇切丁寧なレクチャーを披露してくれたという。
「HANA-BI」受賞後のビートたけしさんは実はまだバイク事故の後遺症が残っていて、後遺症や
事故(=死にかけたこと)を受けて考え、感じながらとるようになった行動が、「HANA-BI」に
かなり投影されているというくだりは、よくできたミステリーのようなスリルと読みごたえ。
笑福亭鶴瓶さんの下ネタもさすが鶴瓶師匠って感じだ。どこへ行っても変わらないな(笑)

・普段インタビューをしない我々は何を得られるか
サワコさんの実例には、お友達や、親戚の伯母さんも登場する。当然この人達は「インタビュー」の
対象ではなく、サワコさんの日常に登場して、やりとりを交わした人物である。
なぜこの人達とのやりとりが載っているかというと、ここにも教訓が込められているからである。
「人と喋る」という、どこにでもありそうな行為、それだって立派なコミュニケーションで、
注意深く聞いて、心を込めて話にノって、楽しくくつろいで話してもらおうと心がけることが大切。
そして話すときは、上辺だけの綺麗事でなく、具体的に、本音の話をするようにすることが
聞き手への誠意に繋がるし、聞き手との距離感を近づけ、聞き手に自分を印象づけられるのだと
サワコさんによる「聞き手側の本音」から、また「あとがきにかえて」から読み取れる。

・ひとって、おもしろい!~「聞く」を通じた人間賛歌
この本は、様々なジャンルの、とても沢山のひとの、おもしろい所が一杯詰まった本になっている。
(意識してか無意識かは不明だが、後述するように『ひと』にはサワコさん自身も含まれる)
ひとのおもしろさを引き出し、それを一緒におもしろがり、楽しい時間を過ごす。それをするには
聞き手自身がひとを好きで、ひとのことを心からおもしろいと感じられることが必要だ。
聞き上手になるには、本にも載っている様々なテクもいいが、まず第一に、ひとに興味をもつこと。
優しい人も怖い人も、饒舌な人も口下手な人も色々といるが、皆がそれぞれの「おもしろみ」を
持っていて、そこに貴賤はない。色んな人を知って、人の数だけの「おもしろみ」を知ること。
「ひとって、おもしろいよ」それこそが、サワコさんが様々な活動を通して伝えたいことなのかも。

・サワコさんのやらかし日記
エッセイストの性だろうが、そこかしこに「やらかしちゃったアタシ」の悲哀物語が登場する。
美輪明宏さんに「その格好、何もかも諦めちゃった体育の女教師みたいじゃよ。なんとかしなさい」
と冴えない格好を喝破されてしまった苦い想い出。憧れのミュージカル女優へのインタビューが
叶い、浮かれて「あの曲も歌えます、この曲も歌えます!」と終始歌いっぱなしで、その場の皆が
すっかり呆れてしまったという空回りの切ないエピソード。TVで密着取材されていたサワコさんは
お気遣いの人として紹介されていたけれど、本当はかなりの天然さん??でも、このような愛嬌が
サワコさんを幅広い層の人にとって身近に感じさせ、相手の緊張を解いて、話しやすくさせる。
あっ、相手の心を開くための計算!?


ソロモン流」では、「聞く力」の後のチャレンジが紹介されていました。
ひとつは新しい小説(前述)、そしてもうひとつは、被災地と東京とをつなぐプロジェクト。
「プロジェクトを取り仕切るのは初めての経験、だけど本気のプロジェクトだから成功させたい」
と、厳しい表情で奔走している姿が印象的でした。
インタビューするにも、小説やエッセイを書くにも、プロジェクトを立ち上げて取り仕切るにも、
全ての土台は、ひととのコミュニケーションと、ひとへの愛と観察眼。
「聞く」って、「ひと」って、たまに考えてみると結構深いものですよね。
「聞く」の真髄、「ひと」の真髄に、明るく楽しくそして深く潜って、迫ることができる本です。
ライトなようで、この海は案外深いのです。


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