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イマドキのタバコのオマケ!?ミニ小説を読んで:狗飼恭子「すべてのものに降りそそぐ」&田口ランディ「ラーレの香り」

もう数週間前の話になってしまうのですが。
以前の記事で、「チョコレートを特集した番組について書いていたら、本当にチョコレートを
作ってしまった」というまさかのオチが登場しましたが、実はあれは実話でして、
バレンタインを前にして、丁度良い量のチョコレートをせっせと作り、完成してしまいました。
こんなことは初めてなので味に自信などありません。でも一人でおやつ代わりにするのも
少なくとも外側はそれなりに出来たから、惜しいような気がする・・・
そこで、6個できたチョコレートの内、付属のボックスに入る4個を当時のそういう相手に、
残る2個の内1個くらいはやはり自分で。さて、もう1個をどうしよう?
「そうだ!」普段何かと世話になっている女の子の友達に、初めて作ったので味は保証できないと
前置きして、ささやかにプレゼントしました。

そして3月14日頃・・・
初心者のチョコレートをもらってくれた彼女が、何やらこそこそと「これ、朝やけさんに!」と。
彼女らしいオンナノコモードの包みを開けると、掌に乗るような超ミニサイズの2冊の本が!
「ありがとう・・・何これ?どこで売ってたの??」興味津々でそう聞いても、彼女は口ごもったり
「えーと実は、、友達に貰ったんですっ!すみません!」何か煮え切らない様子。
ちょっと引っかかりつつも、こちらがあげたプレゼントこそ本当に些末なものだったので
まぁいっかと、貰った2冊の本を開けて読み始めたのでした。
小さな本なので、普通の小説の一章分を読むくらいの時間で読み終えてしまいました。

「どこの企画なんだろ?」巻末を見ても出版社の記載が2冊ともありません。「どういうことだ?」
ヴィレッジ・ヴァンガード辺りで、企画ものとして2冊3冊まとめて売っているとか?
Wikipediaの二人の作家の経歴を見ても作品の記載はなく、ひとつくらいはあってもよさそうな
Amazonのレビューもなく。それで、キーワードを変えてもっと調べてみたら・・・
何と、「ピアニッシモ」という銘柄のタバコのオマケのようなのです。
(商品について書いてあるのは個人のblogやTwitter等や、オークションの商品としての掲載しか
無いので、それらを載せたり引用したりすることは控えさせていただきます)
2冊の裏表紙にはこう書いてあって、これがこのオマケのコンセプトになっている模様。

2012年、夏。
読めばきっと、恋がしたくなる。
くつろぎのひとときを彩る
短編恋愛小説。

「・・・何かイージーだなぁ」貰ったものに失礼ながら、そういう感想を止められませんでした。
ピアニッシモというのは女性向けのタバコ。というわけで「女子といえば恋だろ」って発想の
企画なんでしょうね。「一体小説を何だと思っているんだろう?」大変偉そうですが、何かの
「オマケ」にされている事実に溜息が出そうになりました。それに、書く方も書く方だ、なんて。
決して悪い小説ではないのですが・・・


まず狗飼恭子さんの作品「すべてのものに降りそそぐ」。
Amazonでの取り扱いがあるはずもなく、画像は作品名で検索して見つけたもの。
すべてのものに降りそそぐ
原寸大よりほんのちょっと小さいくらい。

<あらすじ>夏子は5年同棲していた恋人から「どうも君とは死ぬ間際に一緒にいられる
気がしないんだ」と言われてしまい、彼と暮らしていた家を出て一人暮らしをすることに。
女友達からは「孤独な偏屈ばばあになって孤独死することになるよ」と大反対されながらも
引っ越しを決行。新居への荷物の搬入を手伝ってもらうために、三代前の彼氏の弟で
かなり風変わりな男の子、水戸くんに何となく連絡をとる。数年ぶりに再会した水戸くんの
偏屈だが本質を突いた、どこかあたたかい言葉の数々に、次第に失恋の痛みがほぐれ・・・

<感想など>
狗飼恭子さんの小説は読んだことがないが、彼女が脚本を手がけた映画なら観たことがある。

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(2007/04/25)
池脇千鶴、中越典子 他

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好きだった漫画家、魚喃キリコさんの漫画「strawberry shortcakes」の映画化なのだが
4人いる主人公のうち、一人を棺桶で寝起きさせるわ、摂食障害の主人公の場面をリアルなゲーで
何度も撮影するわ、いらんリアルとエキセントリックをつけられて不快極まりない作品に変身、
この恨みと違和感が未だに残っている。最近では江國香織さんの「スイートリトルライズ」が
映画化された際も脚本を手がけているという。一体どうなっているのやら・・・
そういうわけで、その場で捨てようとさえ思ったが、なにせ貰ったものだからと読んでみた。

ヘンテコリンな人物の巣窟。とりわけ元彼と水戸くんのヘンテコリン振りが際立っている。
女友達の言うこともなんだか変。本当に友達?夏子の不幸を願っているようにしか聞こえないし
主張が時代錯誤。まぁ、だから夏子は彼女達に引っ越しを手伝ってもらわないのだろう。
夏子は「三代前の彼氏の弟」なんてさらりとモノローグで言ってのける辺り、少し腰が軽い
水戸くんが言うところの「頭でっかち」、本人が言うところの「考えが足りない」30代女性。
夏子のややジメッとしたモノローグが彼女のどこまでも堂々巡りする思索と抑えている淋しさを
ねちっこく、鮮やかにあぶり出す。そして、水戸くんについても夏子の視点から細かく観察され
言動や佇まいなどを仔細に追いかけることで、彼のエキセントリックさがはっきり浮き上がる。
水戸くんというあまりにも強烈なキャラクターの存在、夏子の揺れる心情の巧みな描写が
突出している。人物、背景・・・観察眼が光り、情景が目の前に繰り広げられるよう。

たまに、こだわりすぎの心情比喩フレーズなどが出てくるが、見なかったことにしよう(苦笑)。
夏に恋をしたくなってもらいたくなるための小説なので、ラストでの水戸くんと夏子の決断が
あまりに性急すぎるのは仕方ないのだろうか。再会したその日にプロポーズもどきときている。
しかも夏子は何となくそれに応えてしまう。いいのだろうか、まあいいんじゃないの?
・・・読まずに捨てそうになって、ごめんなさい。小説家としてはそんなに嫌いじゃないと思った。


次に田口ランディさんの「ラーレの香り」。
ラーレの香り
<あらすじ>
チエは、会社の先輩の松岡さんに3年間片想いをしていたが、彼の結婚の噂を聞いてしまう。
ダメモトで告白すると「妹のように思っていた」「少し時間を置きましょう」と言われ、
傷ついたチエは、ストレスから味覚や嗅覚を失い、会社にいるのもつらくなって退職。
家に届いていた松岡さんからの手紙も、読まぬまま郵便受けに放置し、塞ぎ込む。
憂鬱な気持ちで散歩をしていると、見慣れない花屋「ラーレ」を見つける。店員の青年に
勧められて一輪買ったチューリップが、チエの生活に再び彩りを与えていき・・・

<感想など>
「ラーレ」とは中近東の言葉で「チューリップ」の意味。
田口さんの小説は、確か高校生の時に実家の町の図書館で、彼女のデビュー作「コンセント」を
借りて読んだのが唯一の経験だったように思う。
内容にも文体にも当時はどうも親しみを感じられず、最後のほうまで読むも、結局読了しないまま
ギブアップしてしまった記憶がある。「この人が恋愛小説?」寧ろそういう意外性を感じつつ
当時読了できなかった経験からの不安もチラリと頭をかすめた。でも構わず読んでみた。

良くも悪くもよしもとばななの後追いという印象。主人公の心の病みとそこからの癒しの過程、
意図的に稚拙さを狙った言葉選び。初めて読んだ時と作風が随分変わっていたので驚いた。
「すべてのものに~」が、ややはすっぱな30代女子向けだとしたら、この作品はもう少し
うぶな女性向け。チエの幼さから考えると、20代女子向けか?こういううぶな女性がタバコを
吸うものなのかなあという、偏見めいた疑問が浮かぶのだが。例えばチエがタバコをふかす姿は
とても想像できない。一人で一方的な「恋愛ごっこ」を繰り広げて疲れてしまうくらいなのだ。
しかし、チエが具体的にどんな雰囲気の女性なのか、イメージできそうでうまくできない。
「かわいいキャラも苦手」な「つまらない女」で、特に好きなものもなく、頭がよさそうとは
お世辞にもいえず、モノローグでは「~かしら」「~わね!」と言ったり「~だよ」と言ったり。
無機質で没個性ななかに、中途半端に女性らしさらしきものを覗かせるので違和感を覚える。
店員の青年の設定が面白い。誰もが、趣旨(=恋をしたくなってもらう)からして、
この青年とチエが新たな恋に落ちてハッピーエンド、という展開を予想するのではないか。
しかし彼はそうはいかない。

青年は、花に恋をしているという。報われないが、ずっとしているという。
チエの側でも青年に恋愛感情をもつことはない。なかなか肩透かしを喰らう展開だ。
出だしの時点で語られ、その後も比喩で何度も顔を出すが、放置していた松岡さんからの手紙を
やっと開くと、実はそれなりに両思いだということが判明する。しかしこの手紙、彼自身も
言っている通り、遠回りだわ古風だわ、色々とついていけない。手紙を放置してからそれなりに
時間が経っているはずなのだが、これってハッピーエンドなのだろうか・・・???



「恋をしたく」なったかはともかく、「くつろぎのひととき」より「突っ込みのひととき」に
なったような気がするのはともかく、
「鞄に常備している漱石の文庫本を病院などの待ち時間に偶にのぞくぐらい」だった
停滞していた読書ライフに、ちょっとした風穴をあけてくれたのは確かでしょう。
この二人の現在の小説を(ショートショートですが)ちゃんと読んだのは初めてだし。
読書への恋慕という意味なら、確かに「恋がしたく」なるきっかけをもらった本になりました。
ベッドの上には小説やら新書やらはたまたマナーブックやら、色々な本が読み切れないまま
雑多に積み上がっていますが、また、本の虫だった昔のように、時間を忘れてずーっと
これらの本の読破にのめり込んでしまうのも、ちょっといいよなと思いました。
子どもの頃から、本を読むのが大好きで、フリーペーパーでもいいから常に手元に
読むものがないと落ち着かない活字中毒。
今は書くのも定期的に楽しんでいるけれど、よりよく書くにはもっともっと読まなければ。
たまには書くのをしばらく放り出して、読みまくる期間が欲しいなんてちらっと考えながら、
結局また新しい記事の構想を思いついて下書きを始めてしまう、そんな今日この頃です。



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