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ざっくり映画ライフ:その8 真実と憎しみの行方~被害者遺族から見た殺人、加害者から見た殺人(ゼロの焦点、悪人、さまよう刃)

TVドラマ「相棒」を観るようになってから、観られる映画やドラマの幅が広がり、
今まで関心のなかったサスペンスもの、刑事ものも観る映画・ドラマのひとつに
なってきました。
そんななか、被害者遺族や加害者からの視点が気になって印象に残った
サスペンス映画が幾つかありまして、しかもどれも著名な小説の映画化。
難しいですが、ともかくとりあげてみましょう。


ゼロの焦点

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(2010/06/18)
広末涼子、中谷美紀 他

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観たくてたまらない大ヒット映画「のぼうの城」の監督でもある犬童一心氏の監督作品。
この人の作品はほかに「ジョゼと虎と魚たち」などなど、枚挙にいとまがない。
偉大なる松本清張先生の小説が原作で、これまで何度も映画やドラマにされている。
「広末VS中谷VS木村、女達の三つ巴のバトル!」みたいな宣伝が目立った気がするが
木村多江さんの役はそこまでバトルじゃないでしょ。
あとの二人を繋ぐ重要な役どころではあるけども。

<被害者遺族からみたあらすじ>
太平洋戦争直後。鵜原禎子(広末涼子さん)は、見合いで憲一(西島秀俊さん)と
結婚。新婚旅行ののち、憲一は「仕事の引き継ぎ」と言って金沢へひとり旅立ち、
行方不明になってしまう。心配した禎子が憲一の後を追って金沢に向かうと、
憲一の事故とともに、憲一の「裏の顔」が明らかになっていく・・・

<加害者からみたあらすじ>
敗戦後、米軍の占領下にあった時期では、米兵相手に売春行為をしていた女性たち、
通称「パンパン」が多く存在した。
ある日、室田佐知子(中谷美紀さん)とその友人・田沼久子(木村多江さん)は
逃亡し、「パンパン」であった過去を断ち切るように新しい地で新しい職に就く。
女性の社会的地位が低く、過去の汚点で、就職も結婚も簡単に失ってしまう時代。
忌まわしい過去が漏れそうになったとき、佐知子はそれを隠そうと奔走する・・・

大変見応えがあった映画。
だんだんと佐知子が追い詰められ、壊れていく過程が生々しい。
それまでずっと抑圧的だった禎子が、全てを知って、佐知子を思いきり平手打ちして
号泣するシーンも迫真。
憲一の金沢での顔、久子が受けた仕打ちと佐知子への純真な思い、佐知子の末路。
理不尽な社会情勢に対抗する術はないのか?やるせなくなると同時に
関係者が一人また一人と消されていく、じわじわ迫り来る不気味さが格別。



悪人

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(2011/03/18)
妻夫木 聡、深津絵里 他

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吉田修一氏の大ヒット小説を映画化。妻夫木聡さんの悪人役・金髪に驚き、
深津絵里さんのモントリオール世界映画祭最優秀女優賞受賞で更に話題に。
監督は「フラガール」「69 sixty nine」の李相日氏と、これまた話題作続きですね。
被害者と加害者がぐちゃぐちゃになっている節もあるけれど、ここはとりあえず
殺された女(満島ひかりさん)が被害者、殺した男(妻夫木聡さん)が加害者で。

<被害者・加害者 当事者からみた物語>
保険外交員の石橋佳乃(満島ひかりさん)は、大学生の増尾圭吾(岡田将生さん)と
関係をもつ一方、土木解体作業員として働き、祖母の房枝(樹木希林さん)と慎ましく暮らす
清水祐一(妻夫木聡さん)と出会い系サイトで交流をもつ。
ある日佳乃は圭吾から半殺しの暴行を受け、真夜中の山中に置き去りにされてしまう。
約束に現れない佳乃が圭吾の車に乗り込んでいくのを目撃し、二人をつけた祐一は、
深手を負った佳乃を助けようとするが、口汚く罵られ、自分が遊ばれていたことも知る。
純情な祐一のなかで何かが切れてしまい、祐一は佳乃を殺める。
そして紳士服店の販売員の馬込光代(深津絵里さん)を誘拐し、逃避行を始める・・・

<被害者遺族の物語、加害者の家族の物語>
頼みの孫・祐一が殺人犯として指名手配された房枝は、マスコミに付きまとわれたり
悪徳商法に引っかかったりして、あらゆるものを堪え忍ぶ生活を余儀なくされる。
一方、愛娘の佳乃を理不尽な殺人事件で失って、悲しみと怒りに襲われる佳乃の両親。
理容店を経営する父・佳男(柄本明さん)と母・里子(宮崎美子さん)は
佳乃が家族に隠れてしていた圭吾や祐一との乱れた関係、ひしゃげた性格を知らない。
一時は犯人として拘束された圭吾が、解放された後に仲間と談笑しながら
佳乃を愚弄する姿を目撃したことで、佳男の感情が爆発する・・・

みんな自分が可愛い。みんな自分の身内は例え何をしていたって守りたい、愛おしい。
エゴとエゴがぶつかり合って、ヘドロみたいに汚れて、複雑な様相を呈している。
祐一と光代の「愛の逃避行」だってただの二人の愛欲、性欲、互いの淋しさを
埋めるためだけのものなのかもしれない。
祐一と光代の物語が基本なのだけれど、その周りにある、佳男と里子や房枝の物語、
佳乃や圭吾の物語など、根底にあるもの、周辺にあるもののインパクトが強い。
本当の悪人は誰?
いっそのことみんな悪人に見えて、考え込んでしまう。



さまよう刃

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(2010/04/21)
寺尾聰、竹野内豊 他

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今をときめく大人気ミステリー作家・東野圭吾氏のベストセラーを映画化。
これまでは被害者遺族の悲しみや怒りは「行き場のない感情」として描かれてきたが
ここにきて遂に理性のトリガーが外れてしまった。
哀愁が漂いすぎる渋い主人公・寺尾聰さんもいいが、竹野内豊さんや伊東四朗さんの
刑事コンビも結構目立ち、刑事ものの一種として観ることもできるかもわからない。

<あらすじ>
長峰重樹(寺尾聰さん)はある日、一人娘・絵摩を亡くす。しかも死因は
「殴打、輪姦の末、薬物投与による急性心不全」という酷いものだった。
絶望する重樹のもとに、犯人の名と居場所を告げる密告電話がかかってくる。
電話で言われたアパートで、複数のビデオテープが見つかる。そこには絵摩が犯人2人に
陵辱されている映像が写っていた。重樹は怒り狂い、偶然帰宅した犯人の一人・伴崎敦也を
惨殺し、伴崎からもう一人の犯人・菅野快児の潜伏場所を聞き出し追う。
警視庁捜査一課の刑事コンビ・織部孝史(竹野内豊さん)と真野信一(伊東四朗さん)が
逃走した重樹を追い、事件の真相に迫る・・・

話としてはさきの2作よりはシンプルになる。
しかし主題「愛する娘を殺された。復讐で被害者遺族が殺人を犯しても
許されるのではないか、それともやはりしてはいけないことなのか」が
重くのしかかる。
「駄目に決まっているだろう」と答えきれなくなるのは、寺尾聰さんの佇まいのせい。
悲しくて、狂っていて、覚悟を決めていて、自分の全てを復讐に賭けようとしている。
愛した妻はとうに失った。そして更に娘まで、これ以上ない悲惨なかたちで失ったのだ。
愛娘を陵辱し殺した主犯格の犯人は同様の行為を繰り返しており、反省の様子もない。
行き場のない悲しみや怒りが突き抜けて、鏡の向こう側へ行ってしまった男。
失うものはもう何一つない。そんな彼を、宥められる道理はどれだけあるのだろうか。



誰しもに「ワケ」があって生きていて。
被害者やその家族も、加害者やその家族も。
ワケがあるから、その「ワケ」が重いからといって、人を痛めつけたり殺めたりするのが
肯定されるはずもないのですが、
TVのニュースでも出てくる、被害者遺族の「殺してやりたい」「死刑になってほしい」
これが突き抜けると復讐劇に繋がってしまうのではないか、このような言葉を口にした
時点で、ある種の復讐劇を遂行してしまったのではないかとも感じるのです。
また、いじめっ子の無反省ぶり、時として当時の記憶すら曖昧な人間、罪の意識さえ
希薄な人間と、いじめられっ子の深刻なトラウマとの温度差
を大人になってから目撃し、
「罪とは?苦悩とは?」と考え、理不尽さにのたうちながら、行き場のない感情の行方を
小説や映画などがどう考察し、説得力のある回答を出すのかと、興味をもっています。

私のなかにもある「行き場のない悲しみや怒り」「重たい荷物」「トリガー」。
それが壊れないように、溢れ出さないように、でも忘れないようにと、
痛みを時に忘却し、時に深く寄りそって想いを馳せて、
つかず離れずで最後までつきあって、生きていくのでしょう。

きっと誰もが。
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女の子ものがたり「幸せって何?不幸って何?辛辣な現実と、儚い青春の想い出と、一生消えない大切なもの」

甘い青春の郷愁ものがたりかと思っていたら、いきなり頬を平手打ちされるような
苦い現実をこれでもかと見せつけられ、本当に色々な事を考えてしまった
邦画「女の子ものがたり」。
西原理恵子さんの半自伝的漫画が原作です。
この映画で、西原さん&主題歌担当の持田香織さんの食わず嫌いが
かなり改善したかも?

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(2010/03/03)
深津絵里、大後寿々花 他

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えーっと、深津絵里さんが西原さん役ですと?!(厳密には「モデル」なだけだけど)
そこがなんとも(笑)
美しい深津さんが、ガサツ、毒舌、無精、酒飲み、仕事はスランプなダメ女を
いい塩梅で演じていて、なかなか面白いです。
しっかりしているけど気弱な担当編集者、通称「ぜんざい君」役、福士誠治君の
冴えない具合も見所。
いつの間にこんなもっさりに?朝ドラの頃はもっとシャキッとしてなかったっけ?
但し、この二人は想い出のストーリーテラーみたいな役割で、あんまり中心としては
出てきません。
深津さんは「女の子たちのものがたりの主人公」の現在の姿で、漫画のスランプをきっかけに
過去の「友だちとの想い出」を振り返り、次第に現在にも変化が現れてくる、という感じ。
話は西原さんの少女期ほぼそのままなので、あえてネタバレで話を進めます。

西原さんを投影した主人公、高原菜都美、通称「なっちゃん」は
7歳のとき、お母さんの再婚をきっかけに、見知らぬ田舎町に引っ越すことに。
引っ越したばかりの時、「外で遊んでて」とお母さんに言われたので外へ出たら、
広々とした、さびれた空き地で遊ぶ、同年代の女の子二人と出会います。
ひょんなことから、その日のうちに二人と打ち解けて、
それから長いこと、3人でいつも一緒に過ごす友だちになることに。

なっちゃんの義理のお父さんは優しいけれど、お金のトラブルが絶えず、
両親は毎晩のように喧嘩ばかり。
「私は幸せ、私は幸せ」・・・なっちゃんはひとり「おまじない」を唱え、
孤独や悲しみを紛らわせていました。
しかし、出会った二人の友だちは、なっちゃん以上に「ワケアリ」でした。
きいちゃん」こと、きみこは、母子家庭で貧困にあえぎ、いつも薄汚い格好で
「ビンボー」と皆から酷くいじめられていました。
みさちゃん」こと、みさは、子だくさんの一家で、お母さんは暴力的で
子育てに追われ余裕がなく、何かに付けみさちゃんを殴ります。
転校した小学校への登校時、いじめられるきいちゃんと、それをかばい続ける
みさちゃんを目にしたなっちゃんはショックを受けます。
他の女の子には「あの子達とは一緒にいないほうがいいよ」と言われてしまい、
困りつつも、二人と友だちでいることを決めたなっちゃん。
しかし、お母さんはなっちゃんに「友だちは慎重に選ばないといけない、
そうでないと私のような人生になってしまうから」
と言い聞かせます。
いい学校に進学して、いい会社に就職して、
自分のような、男に振り回される「失敗人生」を送らないためにと。
はじめは、「お母さんみたいになりたい。お母さんも辛かったらおまじない唱えたら」と
幼さゆえに意に介しないなっちゃんですが、
お母さんの言葉は、ものがたりが佳境に近づくにつれ、ジョブのように染みていきます。

それぞれの孤独と痛みを、舐め合うように、寄り添う3人の女の子。
7歳の3人は、まるで童話の主人公たちのように、きらめきにあふれています。

だけど現代の菜都美は、友だちの「と」もない無頼な生活を送っていました。
ぜんざい君は実は、昔の菜都美の漫画のファン。しかし、「編集部の意向」で
描きたくもない無難な恋愛漫画を惰性で描き、いつまでも無気力にだらだらと
現実逃避を続ける菜都美に業を煮やし、
「恋人も、友だちもいないでしょ?そんな人に、人間の機微とか描けるわけがない」
「描かないんじゃない、描けないんですよ!」と、怒りをぶつけます。すると菜都美は
(友だちは)いるよ。・・・いるんだ。あたしにも」と答えます。
しかし返答には間があき、その表情には翳りが。
菜都美の中で「友だち」は、一種のトラウマ、触れるのが怖い記憶になっている様子。
キラキラ輝いていたはずの友だちとの日々は、月日を経るごとに、次第に苦々しい過去へと
形を変えていきます。


女の子たちは、高校生になりました。
高校生の3人は、それぞれ大きな苦境にぶつかります。

まず、悪い男にはまったきいちゃんは、何日も家に帰らず、
その男達が他人の車からの給油などの悪行に手を出したために、警察に追い回され、
きいちゃんの縁でドライブに誘われた3人は、山中に置き去りにされてしまいます。
何とか町にたどり着き、開館していない銭湯に服のままザブーンと飛び込んだ
やんちゃな悪戯が警察に通報され、3人は補導されてしまいます。
きいちゃんはお母さんに「こんなところばかり私に似て」と言われます。
どうやらお母さんも、悪い男に引っかかり、離婚してしまったようです。
だけど、そんな酷い仕打ちを受けてもなお、きいちゃんはその男から
離れることができません。生まれる前に居なくなった、お父さんはきっと
こんな風だったんだろうと感じ、面影を追いかけてしまうのです。
ちなみに、みさちゃんはやはりお母さんに殴られ、なっちゃんはお母さんに
「だから友だちは慎重に選ぶように言ったじゃない」と淡々と言い放たれます。

次に、ギャンブル好きで新しい事業を次々に始めては失敗を繰り返してきた、
なっちゃんの義理のお父さんが、ギャンブルで莫大な借金を作り、自殺します。
板尾創路さん演じる、この「お父さん」は、何かにつけなっちゃんに
お前は何か違うぞ。人と違う人生を送れるかもしれん」と言い続けていたのが印象的。
しかも結果的にはそれが現実のものとなるのだから、愛情の力は凄いです。
けれど、皮肉にもこれがなっちゃんへの最期の言葉。
西原さんの史実では、美大受験前日の出来事だったそうです。
更に、この映画にははっきりと出てきませんが、西原さんの経歴を見ると、
最初のお父さんは酷いアル中で、お母さんは西原さんを身籠もったまま実家に戻って
西原さんを産み、お父さんは西原さんが3歳の時に亡くなって、
西原さんは実のお父さんの顔も知らないのだとか。
つまり、お母さんは、同じような悲劇を二度も繰り返してしまったことになります。

そしてみさちゃんには、最も過酷な運命が。
みさちゃんのお兄さんが轢き逃げ事故を起こし、お父さんと一緒に、死んだ相手を
山中に埋める、という、一家ぐるみでの犯罪を犯してしまったのです。
みさちゃんは高校生にして、たったひとりで幼いきょうだいを背負って
生きていかなくてはならなくなってしまいました。
スーパーで売り子のアルバイトをしたりと、もう、純真な女の子の生活を
楽しむ暇はなくなり、生活に追われていきます。
子育てに追われていた、あのお母さんのように。
後には水商売とおぼしき仕事に身を投じ、あっちへフラフラこっちへフラフラ。
へらへら笑って、都合が悪くなると逃げる、いわば「コトナ」になってしまいます。

痛々しいリアル。
しかし、同じように痛みを抱えて寄り添い合ってきた3人の仲に、
次第に隙間風が吹きはじめます。


昔から絵を描くのが大好きななっちゃんは、3人の「基地」ともいえるいつもの空き地に
ぼさっと建っている建物に、長い時間をかけて、大きな、迷える女の子たちの絵を描きます。
「変な絵」とみさちゃんは揶揄し、「上手やなあ」と、きいちゃんは褒めてくれました。
更に、なっちゃんには天賦の才能がありました。
小さい頃から既に、空には水色だけでなく多くの色が含まれていることを理解しており、
迷える女の子たちの絵にも、なっちゃんならではの独自の価値観、意図が込められていました。
義理のお父さんが予見した通り、なっちゃんは明らかに、平凡な女の子ではありませんでした。

高校生は、女の子というさなぎが、女という蝶になって羽ばたく季節。
悪い男とわかっていても件の彼氏と離れられないきいちゃんは言うまでもなく、
なっちゃんにも初めての彼氏ができて、みさちゃんはほとんど「ヤリ逃げ」ともいえるような
初体験を済ませ、またお母さんにぶたれていました。

3人+なっちゃん・きいちゃんの彼氏で、海へ遊びに行ったある日、
なっちゃんはファーストキスを経験します。
しかし同時に、いつか見た光景を、もう一度目にしてしまいます。
きいちゃんを容赦なく殴る彼氏。きいちゃんをかばい続けるみさちゃん。
なっちゃんの胸中に、不穏なものが去来します。


なっちゃんがお母さんに、将来何をしたいか尋ねられ、昔とは違って
「したいことをする」ように後押しされ、進むべき道を模索している頃、
きいちゃんは、あの悪い男と遂に結婚。
更に、久しぶりに3人で再会した時には、みさちゃんも何度目かの結婚をしており、
きいちゃんと幸せ自慢を繰り広げる一方で、きいちゃんが席を外した隙に
なっちゃんに僅かながらお金の無心をします。
きいちゃんも、みさちゃんも、男に殴られながらの結婚生活。
「うちら殴られてばっかりやなー」と、道化のように笑うみさちゃん。
幸せとは名ばかりの、不幸そのものの人生に首までどっぷり浸かってしまった2人。
なっちゃんは怖くなって、その場を逃げ出してしまいます。
「きいちゃんは幸せ、みさちゃんは幸せ」
震えながら、子どもの頃呟いていた、あのおまじないを繰り返して・・・。

ここで、なっちゃんと他の2人との関係に、遂に決定的な亀裂が入ります。
逃げ出したなっちゃんを追ってきた2人、辿り着いたのはいつもの空き地。
「何でうちらは、幸せになられへんのや」
「みさちゃんもきいちゃんも大好き。だから幸せになってほしい」

悲痛な願いを口にするなっちゃんに、きいちゃんはこう話します。
「不幸なんかなぁ?うちは不幸やなんて思てへんよ」
「幸せって何?不幸って何?夢があったら幸せで、なかったら不幸?
ええやんそんな、どーでも!」

そして突如、きいちゃんの感情が爆発します。
「"私はあんたらと違う"と思うてるんやろ!」
怒り狂い、なっちゃんを突き飛ばすきいちゃん。
「ああ思うてるよ、思ってる思ってる思ってる!!!
私はあんたらみたいな人生、送りたくない!」

体裁を取り繕うことがもはやできず、激しく応酬するなっちゃん。
みさちゃんが止めに入りますが、その喧嘩のあまりの激しさに止めきれず、
旦那に殴られて頭蓋骨に怪我を負った頭を打つように、倒れてしまいます。
そして、双方泥まみれになるまで喧嘩した挙げ句、最後の捨て台詞に、
きいちゃんは静かに、こう吐き捨てます。
「この町から出て行け。そんで、もう、帰ってくるな」

泣きながら、ボロボロに汚れた服で、ひとり立ち去って歩いていくなっちゃん。
なっちゃんは、絵の道を選び、きいちゃんに言われた言葉どおり、
町を出ていき、そして二度と2人に会うことはありませんでした。


現代の菜都美は、ぜんざい君を連れて、思い切って故郷の町に足を運びました。
漫画のスランプを抜け出すきっかけを作るため、友だちとの記憶と向き合うため。
すると、きいちゃんは、既に病気で他界していました。
みさちゃんはあちこちで借金をこさえた挙げ句、町を逃げ、消息不明とのこと。

きいちゃんのお母さんが、菜都美にきいちゃんの生前の言葉を伝えてくれました。
「なっちゃんは才能がある。うちらとは違うんや」
「なっちゃんは東京で忙しくしてるんやもん、邪魔しちゃあかん」
「なっちゃんの道はどんどん、伸びてゆくんやから」
そう言って、菜都美をずっと応援し、あえて会うことも、自らの病気を知らせることもせず、
病院のベッドではいつも菜都美の漫画を読んでいたきいちゃん。
きいちゃんは、あの日、あえて菜都美を自分たちから遠ざけ、
自分たちには行けない、遙かな夢を追う広い世界へと、背中を押してくれた
のでした。
まるでサバンナで暮らす動物のメスが、子どもを冷たくあしらって巣立たせるかのように。
なっちゃんが2人のもとを去った時、きいちゃんはなっちゃんの絵を見つめながら
静かな微笑みを浮かべていました。あまりにも、不器用な愛情でした。

短い旅の終わりに、菜都美たちがあの空き地に行くと、女の子が1人。
彼女の名前は「なつこ」で、あだ名は「なっちゃん」。
きいちゃんの娘さんです。
きいちゃんは、この絵は私の友だちが描いたんだよ、と言って、
「なっちゃん」を連れてよくこの空き地に来ていました。
心を通わせる、ふたりの「なっちゃん」。
小さななっちゃんは、菜都美があの大きな絵を描いた「なっちゃん」だと知って
大喜びし、「上手やなあ」と菜都美を褒めます。
その口調は、あの頃のきいちゃんと瓜二つ。

帰りの列車。車窓から流れ込む風に吹かれながら、
「私、友だちの漫画、描いてもいいかな?」と言う菜都美。
ぜんざい君は、いち読者として、そして大切な理解者として、心から喜んでくれました。
車窓を眺める菜都美の向こうに、「なっちゃーーん!」と叫び、走りながら手を振る少女が2人。
それは、高校生の姿の、きいちゃんとみさちゃんでした。
もう二度と会えない2人。だけど、想い出を辿れば、またいつでも逢える。
やさしい涙がそっと頬を伝いながら、菜都美はモノローグでこう語り、物語が終わります。
「もう、こんな友だちは、一生できないと思う」


とてもキラキラしていて、かなり辛くて、哀しくて、ちょっぴり優しいものがたりです。
綺麗ごとが一切ないのが、リアリティに繋がっています。
過酷な現実の中にある、一筋の光。やさぐれた心の中に埋もれている、一握りの温もり。
「幸せって何?不幸って何?」きいちゃんの問いかけも胸に刺さります。
TVでこの映画を観てから、既に2週間余りが経っていますが、
その答えは、未だに出せないままです。



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