2017-04

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【映画】ラッシュ/プライドと友情【F1】

PG12ってんで、何かグロいのかとビビって、ヘタレて劇場に観にいかなかった
話題になったF1映画「ラッシュ/プライドと友情」をDVDでやっと観ました。
いやー、アメリカ風にいうと「Awesome」! とんでもない、素晴らしい作品でした。
DVDレンタルも地味にヒットしている、もっと知られてほしい、この映画について詳しくいきます。



ラッシュ/プライドと友情 [DVD]ラッシュ/プライドと友情 [DVD]
(2014/08/04)
クリス・ヘムズワース、ダニエル・ブリュール 他

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レンタルでなくセルで観ると、メイキングなどかなりの特典がついてくるらしい!
それかなり羨ましい。なんというセル商法。

・70年代のF1にタイムスリップ!?
とにかくリアルだ。マジで当時のF1中継を観ているようなのだ。
エンドロールにCGのスタッフさん、スタントのスタッフさんなんか沢山出るけれど
ちゃちだったり不自然だったりする場面が見当たらない。
ピットレーン、観客席、横断幕、もうそこここが仔細に再現されている。
なかでも個人的に感激したのは、日本GPで走ったティレルのジョディ・シェクターの車が
脇役なのにしっかり「たいれる」「しえくたあ」表記されていること、
本物のわけがないのだがエンツォ・フェラーリが出てくること!
細かいことがいちいちしっかりしている。
この頃にF1を観ていた人なら尚更たまらないだろう。

・対照的な二人
ジェームス・ハントニキ・ラウダ、70年代の二人のF1チャンピオン。
本作は、この二人が熾烈に火花を散らした、1976年の世界選手権にフォーカスする。
けれど二人はその前のF3時代からやり合っていたのだ。
絵に描いたように対照的なハントとラウダ。
ラウダは、アラン・プロストやミハエル・シューマッハの先祖といったスタイルで、
冷静で意志が強く、メカにも明るく、メカニックと一緒に夜通しマシンをいじって、
たくさんテストして、「コンピューター」と例えられるほど。
現代のF1ドライバーなら当たり前だろうが、70年代のドライバーとしては異端だった。
周りとつるまない、あんまり遊ばない、言葉も容赦ない、生真面目で頑固な男。
ワールドチャンピオンを三度獲った彼が唯一のライバルと認めるのがハントなのだが、
それが、まったくもって、漫画のキャラクターのような人物なのである。
いつもTシャツにベルボトムのジーンズ。大酒を飲んで、煙草吸って、クスリやって、
酒池肉林のパーティーが大好き、目の前に女がいればすぐ手を出す。
(PG12は恐らくハントとおねーちゃんがおっぱいやお尻を丸出しにしているせい)
ヘラヘラしているが、内心は繊細で、緊張して貧乏ゆすりやライターカチャカチャが
止まらなくなったり、車に乗り込む前に吐いてしまったり(本作で三回も。多いわ!)、
陰ながら事前にコースのイメージトレーニングをしていたり、二面性のある男。
こういうヤツが創作でないところがとんでもない。
そんなハントの行くところ、必ずラウダがやって来て、追い抜いていく。
いつしか、ハントは何かにつけラウダの行動を気にするようになる。
一方で、顔には出さないが、ラウダはハントの自由奔放さに嫉妬心をちらつかせる。
F3時代から1976年まで、互いをけなし合ってばかりの二人。
それぞれにステップアップして、それぞれにパートナーと出会ったり別れたりして、
1976年の世界選手権は彼らのバトルが中心軸になる。
しかし、ドイツ・ニュルブルクリンクでラウダが生死を彷徨う大事故に遭い、
チャンピオン争いも、二人の関係性も、大きく動いていく。

・演出の効用―音楽、視界、手元・足元
F1中継にはBGMなんか付かないし、カメラの視点も限られている。
それに何の不満もこれまで抱いたことがなかった。
けれど、本作は映画だから、レースシーンは心を煽るような音楽に彩られ、
オンボードカメラも映さない、正面からの手元や足元の挙動を捉え、
バイザー越しの視界、包帯越しの視界を再現してみせる。
この上なくスリリングだ。一方で恐怖心も煽られる。
雨の視界はあまりにも危うく、そりゃ棄権しようという気にもなるもんだ。
マシンの調子が悪いとき、モロにガタガタ変な音がするのも怖い。
一年に二人はドライバーが命を落とす時代の、スリルと危険が目の前に迫ってくる。

・創作のチカラ
ノンフィクション~伝記的側面の大きい本作だが、それでも映画だから、
ディテールは創作や脚色が加わることになる。
そこで創作のチカラが物を言うのである。
例えば、ラウダのドイツでの事故後、ラウダの奥さんは、サーキットに来なくなったと
Wikipediaや、ラウダを特集したF1雑誌には書いてある。
しかし、本作では事故後も奥さんがサーキットに顔を出し、
1976年の最終戦にしてチャンピオン決定戦、日本・富士でのレースまでも見守っている。
ラウダはこの場所で大きな決断をするが、その原因は「危険だから」に加えて、
「愛する妻のため」というふうに取れる。粋な脚色だ。
この最終戦、ハントの元奥さんや、以前いたチームの監督なども
TV中継を見守っている。そんなはずはないだろうと思っても、映画だとこれがいい。
そして、創作ってすごいととりわけしみじみしたのは、ラストシーン。
ラウダは将来「ラウダ・エア」という航空会社を旗揚げするのだが、それを暗示するように
最近はまっているジェット機の操縦をしようというところ。
そこに、ハントがひょいとやって来て、ラウダとしんみり深イイ話をしたところで、
おねーちゃんをはべらせながら、ジェット機に乗り込んでいく。
乗っていくハントと、運転するラウダ。
二人の対照的な性格、そしてその後の人生を象徴している、名シーンだ。

・事実は小説やドラマより奇なり
素晴らしい創作がある一方、創作なんじゃないかと思えるような事実も多い。
ハントとラウダの人物設計自体がもう創作の粋だが、それで終わらない。
ラウダが大事故に遭ったドイツGPも、最終戦の日本GPも、ひどい大雨。
どちらも審議の末、辛うじて開催、という運びは、できすぎた偶然。
チャンピオンの行方は、日本GPでのハントの順位が全てなのだが、
最後の方になると電光表示板の順位が錯綜、まるでじらすような展開。
おぞましいのは、皮膚移植をしたり、肺の吸入をしたりといった
当時のラウダ史上最も苦しい体験のさなか、TVでF1中継をつけて、
事故前に築いていた自身のリードをハントが奪っていくのを観ているシーン。
(特に肺の吸入のシーンは観ていてかなりキツい。ある意味PG12ものだ)
ラウダは存命で、本作はラウダに長い時間をかけて取材しているので
このエピソードは信じがたいけれど事実なのだろう。
そして、サーキットに戻ってきたラウダはハントに向かって
「生きる気力をもらった」「勇気づけられた」なんて言うのだ。
ラウダ、なんという男!

・日本語吹き替え版のありゃりゃ
本作をすみずみまで堪能するのならなるべく字幕で観ることをおすすめする。
なぜなら、二度目の再生を吹き替え版で試してみて、かなりガッカリしたから・・・。
ハントの声を堂本光一、ラウダの声を堂本剛、KinKi Kidsの二人が担当しているのだが
周りの声優が洋画畑の声優さんの中、二人の声、というか存在が浮いてしまうのだ。
ハントやラウダに光一君や剛君の姿が重なって、物語への集中をちょっと妨げられる。
二人がどう演じているかも気にしてしまう。
光一君はそれなりに合っているが(意外にも)、剛君は吹き替えに向いていないのでは?
機械的な感じを出そうとしているのかもしれないがどうも「棒」に聞こえてしまう。
ラウダを演じたダニエル・ブリュールが軒並み助演賞にノミネートされたり受賞したり
しているだけに、余計に「熱演が台無し」感が強くなってくる。
何とかならなかったのか、こりゃ。

・Wikipediaや雑誌の特集がもっとおもしろくなる
ハントとラウダの物語は、情報としてなら、Wikipediaを開けばすぐに目にできる。
F1レジェンドのラウダは、キャリアを総括した特集ムックなどが売られている。
本作を観なくても、ハントとラウダの間に起こった出来事や、
ハントのエキセントリックな人物像などを、「知る」ことは簡単にできる。
実際、映画を観てからWikipediaを覗いて大爆笑したり、感慨深くなった。
でも、逆に、Wikipediaなどの基本知識を頭に入れてから再び映画を観ると、
びっくりする。こんなに再現されているのかと、こんなに素敵に彩られているのかと。
本作で描かれているのはハントとラウダのほんの一部だ。
特にラウダのキャリアは、ここがハイかもしれないが、まだあと二回も
チャンピオンを獲るし、新たな、そしていずれプロストに継承される
堅実なレース・スタイルが確立するのもこれからだ。
ハントとラウダのその後は、本作でない場所のほうが詳しくわかる。
しかし、本作でもちらりと出てくるように、あまりに対照的だ。
太く短くの人生を地でいったハント、細くはないが長い人生で活躍を続けるラウダ。
最初から最後まで、「らしい」んだから。
本作を観たらWikipediaを覗いてみてほしい、そうしたらまた本作を観てみてほしい。
「へぇぇ・・・・・・」と、感嘆がなかなか止まらなくなるから。


カー・アクションの括りの映画ですが、人間ドラマとしても青春ものとしてもよくできています。
最初「ヒューマン・ドラマ」の棚で探していたくらいです。そりゃ見つからないわけだ。
他のドライバーの物語も映画になったら面白いのに、と想像が沸き立ちます。
ナイジェル・マンセルとリカルド・パトレーゼの映画があったら愉快そう、とか
王道でアイルトン・セナとプロストは、いやゲルハルト・ベルガーもいいな、とか
ダニエル・ブリュールはネルソン・ピケも出来そうだな、とか、あれやこれやと。
でも本作を超えるF1映画はなかなか出てこない気もします。
役者がそっくりで、技術も整って、実話を実話以上にドラマティックに魅せる作品なんてのは。

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フィギュアスケート見聞録 グランプリシリーズファイナル編(前)+映画「オペラ座の怪人」感想

12月12~14日にかけて放映された、フィギュアスケート
グランプリシリーズファイナル、略称GPF。
遅ればせながら、その感想を中心に、このところ
フィギュアスケートを地上波TVで観戦してきた見聞録をお届けします。
まずは、フィギュア中継そのものに対しての積もり積もった意見を。


・実況前後のナビゲーション
あれを私は「中継テロ」と呼んで忌み嫌っている。
別名「地上波の洗礼」。実況が始まるまでの辛抱ともいう。
何とかならないか。そもそもなぜ松岡修造氏なのか?
あの実況までのつなぎタイムって何のためにあるのか?
修造+織田信成君の高テンションで、フィギュア中継はすっかり暑苦しい。
アナの子が引いてるときがたまにあるほどで・・・・・・。
しかし、この二人は元アスリートで、信成君は他ならぬフィギュアの元選手で。
当事者の心境を代理するなら彼らのテンションは正しいってことだろうか。
でも、視聴者としては、もう少し静かに観たい・・・・・・。

・実況・解説
いざ試合が始まると、音声は一気に静まる。
フィギュアの実況は他のスポーツと比べてクールだ。
解説も、技の名前を読み上げて、うまいとか惜しいとかそのくらい。
日本人選手にある程度情は入りながらも、海外選手にも優しいのでは。
まあ、最近、実況や解説に「頑張れ」などの私情が多い気もしてきたが。
ショー的側面もあることに配慮して、他のスポーツに比べればおとなしい。
観ていて、なぜこれまで八木沼純子さんばかり起用されてきたのか、わかった気がした。
選手経験があって、かつあれだけ聴きやすく喋れる人は、滅多にいない。
以前、鈴木明子さんの解説がちょっとモゴモゴして気になって、そこで気がついた。
八木沼さんが解説を担当したNHK杯の聴きやすさ。
確かに技の名前しか読み上げていないけど、それでいい。
足りない分は実況が話すし。この競技、実況や解説が邪魔しちゃいけないのだ。
音楽が鳴り響き、選手が手足全体を使って語る、競技兼ショータイムなのだから。

・羽生選手の扱い
オープニング映像をはじめ、中継全体が羽生結弦選手中心すぎる。
羽生の演技だけ最後にリプレイしたり、特別編集の映像を延々流したり。
男子を観ていて、町田選手や無良選手の親御さんが泣くぞと言いたくなった。
羽生本人の意図やスケートと関係ないところで、アピールどころか
イメージダウンになっている。これじゃ羽生が嫌われる。
羽生をヒーローに演出したいんだろうが、演出が下手だと思う。
やればやるほど胡散臭くなっていることに気付いてほしい。
他のスポーツに倣っているのだろうが、この競技は、まして今の男子は、
誰か一人だけの物語を語る競技ではない。せめて群像劇で語ってほしい。
そういう中での、NHK杯の、村上大介選手の優勝はいっそ痛快だった。
ショートも放送されない、ノーマークの選手。羽生でも無良でもなく。
TVがつくりたい物語を、リアルが完全に舌を出して裏切ってみせた瞬間だった。
まあ、その後のGPFで、羽生自身が正しくTVが望む物語を演じきってみせたのだが。

・中継のタイミング
実況が始まる前に、ニュース速報などで、先に結果がわかってしまう。
がっかり感が半端ない。
その後で始まる中継では、どれだけ編集されまくっているかと、観る前からげんなりする。
編集されすぎに関しては今回のGPFは実に酷かった。
ショートプログラム、2時間の中継に合わせて前フリが1時間とか、
何を期待して中継を観ればいいのか、途方に暮れた。
地上波はとことん舐められている。

・えらべるテロップ
テレビ朝日でリアルタイム視聴中にだけ利用できる「えらべるテロップ」。
演技内容をテロップで表示し、「注目!」なんて表示もついてくる。
Dボタンで、表示しないようにもさせられる。
これは基本的にありがたい。テロップのないNHK杯でそう実感した。
しかし、少し邪魔かも。もうちょっと小さく、右下に寄せてはくれないだろうか。
注目技についてはNHK杯のほうが選手ごとの特性に配慮してくれたように思う。
テレビ朝日では4回転ジャンプやコンビネーションジャンプに機械的についていたが、
NHK杯では、スピンやステップの得意な選手は、きっちりそこにつけられていたから。

・画面右上の煽り文句
テレビ朝日、いつもいつもせわしない。
GPFのフリー、ボロノフ選手の演技中「無良現在1位」「羽生&町田 決戦間近」って、
たった4分間の間で必死すぎる。
なんというかもう少し「今」を大事に観させておくれよ。

・エキシビジョン
テレビ朝日で、競技を「氷上サバイバル」と呼ぶのに対し、
競技後のエキシビジョンは「氷上ミュージカル」と称されていた。
それまでのグランプリシリーズでのエキシビジョン放映時は、ダラダラと各選手の演技を
流すだけで、よほどコミカルな演技をする選手以外、面白みがまるでわからなかった。
しかし、NHK杯で、日本人選手を中心にインタビューをやっている様子だったり、
選手全員で登場するオープニングやエンディング、地上波では放映されないことも多い
ペアやアイスダンスも含め全ての選手に平等に時間が与えられたりすることで、
このひとときの素晴らしさ、競技の温かさがわかってとても良かった。
GPFでもそれに倣ったのか、全体が見える放映になったが、
こちらは編集が多すぎて、半分くらい羽生のドキュメンタリーになっていた。
まあ、でも、エキシビジョンの雰囲気は伝わる内容になっていて良かった。

Bonus Track:フィギュアスケート的映画見聞録「オペラ座の怪人」

オペラ座の怪人 通常版 [DVD]オペラ座の怪人 通常版 [DVD]
(2005/08/26)
ジェラルド・バトラー、エミー・ロッサム 他

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世界的に大ヒットしたミュージカルを映画化したというだけあって、歌の比率が高く、
映像のスケールは圧倒的なものの、ストーリーがどうにも薄い。
Wikipediaを見なければ話がわからなかった。映画としては説明不足すぎた。
現実と非現実が交錯する部分は、映像にするなら余白をもっと埋めないと
わけがわからない。
Wikipediaで「いろんな解釈があります。原作の小説とは違います。謎の多い話です」という
事実を知るまで、わからない部分についてかなり一生懸命考察してしまい損した。
冒頭で出た劇場の元オーナーがファントムの正体なんじゃないかと勘ぐってしまったり。
映画だけ観ていたら、そんな解釈ができるのではないか、下手したら。
だって何かあると思うだろう、あんな意味深にチラチラ登場されたら。
普通の映画だったら破綻作だ。「ミュージカルの映画化」と知っていないと観られない。
でもって、ファントムの人はブラピ風のイケメンで、皆が叫んで逃げるほど醜くなく
そこも映像としては説得力が足りない。
あれこれ、脳内で補完しないとならない映画か・・・・・・。

フィギュアスケート的に観た感想としては、リフを聴いて「ああ、これか」と納得。
映画のファントムに近いのは無良君だろう、体格がよく、右眉の痣が異形といえば異形で
ファントムっぽい。よく似合っている。
映画を観た限り羽生はちょっと違う気がする。佳菜子はクリスティーヌっていうかファントム?
でも劇団四季で市村正親さんのファントムを観たら「全員違う」ってなるんだろうか。



次回はGPFを中心に、一連のグランプリシリーズの感想を書いていきます。


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【映画】アクロス・ザ・ユニバース【DVD】

ビートルズの曲、33曲で綴られるミュージカル映画!
そんな楽しそうな触れ込みをDVDレンタルショップで見つけて、
すぐさま手にとって、借りてきました。
観たら期待通り、いや期待以上におもしろい!
オススメ度とっても高いこの映画、紹介せずにはいられません。
早速記事に!



アクロス・ザ・ユニバース(1枚組) [DVD]アクロス・ザ・ユニバース(1枚組) [DVD]
(2011/01/26)
エヴァン・レイチェル・ウッド、ジム・スタージェス 他

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小規模での公開から、口コミで人気が広まって、第80回アカデミー賞では衣装デザイン賞に、
第65回ゴールデングローブ賞では作品賞 (ミュージカル・コメディ部門)に、
第50回グラミー賞では最優秀サウンドトラック賞にノミネートされた、すごい作品。
レンタルショップでもオススメコメントが付いていたし、面白いに違いないと確信して観た。
具体的な内容はWikipediaにはあがっていないので、結構細かくああだこうだと
話の筋を打ち明けてしまう。
この作品は、歌や演出こそ本領で、話の展開はあらかじめ頭にあったほうが
見事な歌や凝りに凝った演出を楽しめるのではないかと思ったので。

・物語のうまさ
Wikipediaでは「コメディ映画」「ミュージカル映画」と区分されている。
私が区切るなら、コメディというより、恋愛映画、青春映画とつけたい。
60年代の若者たちの恋と青春をとてもよく描いていると思うから。
起承転結もはっきりしていて、わかりやすい。
<起>
イギリス・リヴァプールに暮らす労働者のジュードと、
アメリカ・ニュージャージーに住む高校生のルーシー。
二人には、それぞれ恋人がいる。
ある日、ジュードは、父親に会うために、アメリカへ旅立つ。
父親に会うには会ったが、そこからどうなるでもなく、
路頭に迷ったところで、ルーシーの兄、マックスと友だちになる。
マックスは大学をやめて、ニューヨークに旅立とうとしていた。
ジュードはルーシーといい雰囲気になるが、互いに相手がいるし、
マックスと一緒にニューヨークへ向かう。
<承>
ジュードとマックスは、セディのアパートメントの住人になる。
セディ、ジョジョ、プルーデンスといった個性的なルームメイトと共に
ニューヨークでの生活が始まる。
ルーシーは恋人を失い、マックスと一緒に過ごすために、
ニューヨークにやってきて、同じアパートメントに。
そして、ジュードとルーシーは恋人になる。
同じ時期、セディはジョジョを自らのバンドのギタリストとして
招き入れ、アパートメントにも招き入れ、恋に落ちる。
一方、マックスの元に徴兵の報せが来る。
<転>
兄や元恋人のことがあり、ルーシーは反戦運動にのめり込む。
イラストレーターの仕事に打ち込むノンポリのジュードとすれ違いが生まれ、
二人は喧嘩、そしてついに別れてしまう。
ジュードは傷心でリヴァプールに戻る。
セディとジョジョも、離れてしまう。マックスは負傷し、入院。
<結>
打ちひしがれているジュードに「ヘイ、ジュード」と呼びかけるマックス。
それを受け取って一念発起したジュードは再びニューヨークに向かう。
マックス、セディ、ジョジョ、プルーデンスと再会を果たしたジュードは
愛を歌い、ついにルーシーのもとに辿り着く。

・名場面
話の筋はシンプル。それをどう伝えるかが、ミュージカルの見せ所。
いいシーンがたくさんあった。全曲がいいシーンといってもよい。
そのなかからいくつか述べてみる。
ぜひ実際に観て、体験してほしい。

・With A Little Help From My Friends
マックスが、ジュードを自分の仲間の一員に迎え入れる楽しいシーン。
ここでの「マイフレンズ」とは、友だちとクスリのことのようだ。
悪童ぶりを極めており、可笑しい。通りすがりの店の客も歌う。
・Let It Be
デトロイトで内乱が起こり、たくさんの命が犠牲になる。
そのなかには徴兵されたルーシーの恋人もいた。
嘆くように1番を歌う少年は、2番では亡くなっている。
2番からは聖歌隊の一員の女性が歌い上げる、悲痛なシーン。
・Why Don't You Do It In The Road
セディがステージ上で勇ましく歌い上げるロックナンバー。
しかも、ルーシーが母親に「ニューヨークには染まらないから大丈夫」と
説得したそばから、この歌い出しが彼女を迎えるという顛末。
・I Want You(She's So Heavy)
マックスが徴兵の検査に行くと、ベルトコンベアにのせられ、身ぐるみはがされ、
車でも造られるように検査が進んでいく。
まさか「I Want You」が兵隊たちの「おまえもこっちこいよ」として歌われるとは。
帰ってくると、同じ曲でセディとジョジョが愛し合っているというオチつき。
・Because
アパートメントの住人一同+αが不思議な世界に放り出され、夜空を見上げて
草むらに円を描くように横たわっていると、夜空が水中に変わって、
ジュードとルーシーが交わったり、ほかの住人達が泳いだりする、美しいシーン。
・Something
反戦運動に打ち込むあまり家を空けがちなルーシーが、上半身裸で眠っている。
その姿をスケッチしながら、ジュードが不安を吐露する、完全に不協和音フラグ。
部屋の壁はジュードによる、ルーシーや二人の姿のスケッチでいっぱい。
・Oh!Darling
ステージ上で、ソロ活動を始めるセディと、捨てられる格好のジョジョが大喧嘩。
セディの歌をジョジョが反論したり、ノイジーなギターで邪魔したりする。
セディは去り、ジョジョがセディに「去らないで」と懇願する様相でヴォーカルをとる。
・Strawberry Fields Forever
ジュードがピンでイチゴを壁にくくりつけると、血のような液体が流れ出す。
壁をびっしりイチゴで埋め尽くし、そのイチゴを壁に投げつけて荒れるジュード。
ルーシーがTVを観ると、その向こうには闘いに明け暮れるマックスの姿が。
戦火とイチゴが混じる。イチゴが爆弾になって飛び散る。
・Across The Universe/Helter Skelter
地下鉄の中、傷心のジュード。降りると激しいストライキに遭遇。
セディが髪を振り乱し、「ヘルター・スケルター」を歌っている。
ジュードは警察に連行されていくルーシーを見つけ、止めに入る。
カオスな状況、「アクロス~」と「ヘルター~」が混沌と流れる。
・Hey Jude
リヴァプール、昼間から飲んでいるジュードが鏡を見ると、
ニューヨークで同じように昼から飲んでいるマックスが映り、励まされる。
それに勇気づけられ、母に見送られ、ジュードはニューヨークへ。
入国審査に通り、マックスと再会を果たす。
・Don't Let Me Down
セディの事務所(かつてのアパートメント)の屋上で、
ビートルズのルーフトップ・コンサートを連想させるコンサート。
セディとジョジョが歌い、プルーデンスも演奏に参加。
そこにジュードとマックスが加わる。
・All You Need Is Love
セディたちが警察に追い出されかけて、独りになったジュードが、歌い始める。
アパートメントの仲間たちも加勢。ルーシーがジュードを見つける。
やがてジュードは、向かいのビルの屋上で、微笑むルーシーと目が合った。
「She Loves You Yeah~」と歌いかけるマックス。幸せな幕切れ。

・キャラ/キャストのナイス具合

・誰かに似ている
ポール・マッカートニーにちょっと似ている顔立ちのジュード。
破天荒な振る舞いとサングラス姿がジョン・レノンを彷彿させるマックス。
ジャニス・ジョプリン風のセディ、ジミ・ヘンドリックス風のジョジョ。
深読みするとプルーデンスはオノ・ヨーコかメイ・パンか?
あちらこちらでニヤリとする。
・どこかで聞いた名前
「ジュード」「ルーシー」「ジョジョ」「プルーデンス」「セディ」。
みんなビートルズの楽曲に出てくる。
劇中ではジュードとプルーデンス(エンディングではルーシー)が
名前の入った曲を与えられている。
くくく、となる。ファンならジョジョやセディもわかるだろう。
・それぞれの歌声の魅力
当然ながら、みんな歌がうまく、しかも吹き替えなしで歌っている。
透き通るような歌声のジュードとルーシー。
少しハスキーなマックス、しゃがれ声のセディ。
それぞれにいいけれど、特にセディのパンチのある歌声が気に入った。
ロック歌手という設定だから一段迫力があるのは当然だが。
もっと聞きたくなる。

2時間、ハッピーと満足でいっぱい!
とにかく楽しい映画。
楽しくて、一緒に心が揺れて、一緒に幸せになる。
繰り返して観ても苦にならない。
ビートルズ好きにはたまらないし、そうでなくても
誰もがきっと楽しめるであろう映画。



普段映画って一度観たらそれっきりで、繰り返して観ようと思わないのですが
本作は別次元でした。
記事を書くためもあったけれど、もう一度この感動を味わいたくてリピート、
そしてまた満足!
購入して持っていても損じゃないなと思う映画に久方ぶりに出会いました。
それから、うーん、やっぱりビートルズ最高!

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【映画】夏の終り【DVD】

秋も終わりに近づいた今「何を言っているんだ」って感じかもわからないですが
映画館に足を運ぼうと結構大真面目に考えていた作品を、なんだかんだで
映画館で観られず、結局、先日DVDで観ました。
意図せずに小林薫さんスペシャルウィークみたいになったのですが
ともかくも感想、いってみます。



夏の終り [DVD]夏の終り [DVD]
(2014/03/19)
満島ひかり、綾野剛 他

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「私の男」で大いに話題になった熊切和嘉監督の作品。
満島ひかり綾野剛小林薫と、役者もいいところが揃った。
さらに音楽は日本とも縁が深いミュージシャンのジム・オルーク
こんな顔ぶれを見るだけで、期待をせずにはいられないというもの。

夏の終り (新潮文庫)夏の終り (新潮文庫)
(1966/11/14)
瀬戸内 寂聴

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原作は瀬戸内寂聴が1962年に発表した自伝的短編小説で
この年、寂聴さん(当時の筆名は瀬戸内晴美)は女流文学賞を受賞している。
何度か映画化、TVドラマ化されているようだが
寂聴さんからは「もっとも生々しい」「肌に粟を生じて見た」との賛辞を贈られている。

文学的映画
音楽がほとんどなく、空間を台詞で埋めたりもしない。
小説の行間に画面を近づけようという試みか。
舞台となっている1950年代にタイムスリップしたかのような空気感もすばらしい。
衣装や町並み、家の中などのこだわりを引き立たせている。

説明不足
余白の多さは、そのまま、説明不足にも繋がっている。
あらすじを知らないと、何が何だかわけがわからない映画になっている
気がしてならない。
あらすじを知っていて観るのが前提みたいな作品である。
更に、時系列がしょっちゅう飛ぶので、あらすじを知っていて観た私ですら、
しばしば「話はどうなっているんだ?」と訳が分からなくなってしまった。
最近の説明過多なバラエティに慣れている人は見向きもしないだろうな。

空気映画?
決して大衆映画ではないだろう、この説明不足感からして。
アングラ寄りなんだろうが、居心地は決して悪くない。
精緻に再現された時代性、それに寄り添った映像美、
次第に漂う鬱々とした雰囲気や閉塞感。
さしずめ「空気映画」とでも名付けたいような印象だ。
それが最後、空が晴れるように一気に解放され、
物語はカタルシスを生む。

出演者総うつ状態
主人公の女、年上の男、年下の男。
この三人が主な登場人物だが、皆、もれなく病んでいる感じだ。
「どうしたらいいのかわからない」と家庭すら投げて恋に生きてしまう女。
普段は穏やかで狡猾なところもあるが、実は死にたがっている年上の男。
女への愛情、嫉妬、孤独に怯え、荒々しく愛を求める年下の男。
いつもというわけでもないが、要所要所でヒステリック、ノイローゼ的なのだ。
ちょっと「うわぁ・・・・・・」と引いてしまう場面もいくつかあった。
最後にはこの暗雲が一気に晴れるので、すごくすっきりするのだが。

愛のない愛
女はふたりの男の愛に引き裂かれてしまうのだが、その愛の内実が問題だ。
年上の男との関係は愛情というより、父と娘のような「愛着」、あるいは「習慣」。
年下の男との関係は愛情というより、女からすれば淋しさを紛らわせる「慰みもの」、
男からすれば孤独を埋めて、人の女ばかり欲しくなるという「依存」。
どちらにも本当の愛、女への愛がなく、結局は自己愛が勝る「愛」だった。
そのために女は袋小路に迷い込んでしまったのだろう。
そして、やがて、その事実に自分で気付き、自分を立て直していく、と。

逃げたがりの女が自立を手にするまで
「絵を描きたい」「好きな人ができた」と言って、夫と娘から逃げ出してしまう女。
年下の男とすってんてんで駆け落ちするけれど別れ、夜の女として暮らすも
行き詰まって「どうしたらいいのかわからない」と泣き崩れ、年上の男に救ってもらう。
それから、女は染色家として自立し、年上の男との中途半端な同棲生活を八年も
送るのだが、男には妻子があり、女の家と妻子の実家を往き来している。
年下の男の登場をきっかけに、その曖昧な関係が苦しくなってしまい、
再び「どうしたらいいのかわからない」と言って泣き、混乱することになる。
観ていてイライラしたり、「重たい」と感じたりする場面が続くが、
最後に女はリセットを図る。 夢見た染色家の仕事を選び、男たちからは距離を置く。
仕事を頑張り、男に頼らなくなることによって、女は本当の心の平安を得る。
そこまでの長い長い闘いの物語、自立の物語といえるだろう。

「息苦しいのよ、この部屋」
せっかく描き上げた大作を、女自ら、こう叫びながら、朱で塗りつぶしてしまう
場面が出てくる。
物語の佳境といえる場面、ここでの満島ひかりは狂気に満ちていて、怖くなるほど。
結婚したのに夫と子を捨てて駆け落ち、その男とも別れて妻子ある男の愛人に、
でもそれもうまくいかない、という、かなり奔放というか不器用な、業の深い女を、
序盤はふんわり、中盤からずっしりと、最後には力強く、演じきっている。
神経衰弱に陥る綾野剛とか、「一緒に死のう」なんて言う小林薫とか、
普段のイメージからは信じがたい姿を、役者たちは次々と、剥き出しに晒していく。
演技の見応えにこちらも思わず見入り、気が引き締まる。

女の本当が詰まっている
本作の宣伝文句でこんなフレーズがあった。
この作品の女は、心細くて、満たされなくて、年上の男曰く「わがまま」で、
最後には強い芯を持っていることが明らかになる。
本当は弱くて、本当は強くて。いつも不安で、あれもこれもと欲しくなったり、
時に自分を見失ったり、だけど最後には自分を貫く力を持っていて。

そんなところだろうか。
女の私が自分と本作の女を付き合わせてみると、こんなにわがままになんか
なれないとも、こんなに強くは生きられないとも感じた。
当てはまるような当てはまらないような。でも、こういう女いるよね。
少なくとも寂聴さんの思い切った本当を垣間見られたのはいい体験だった。


「もっとわがままになれ。自分の本当の欲望に素直になれ。
そうじゃないと、本当の強さも育っていかないままだぞ」
本作に、そんなふうに言われたような気がしました。
常に自分をかばって生きている私には難しいように思うのですが、
一歩先に踏み出すためには、これこそ最上の処方箋かもしれません。
観た直後より、こうやって振り返っている今の方が、
多くを考えさせられ、多くを教えられているようです。
映画館で観てもよかったよなぁ。


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【映画】「戦場のメリークリスマス」感想【音楽好きにもおすすめ】

今年もまた終戦記念日が来ますね。
だいぶ前に観て、感想メモまで残しておきながら、かなり長いこと
お蔵入りになっていた映画の話をします。
タイムリーなのか季節外れなのか判断に悩みましたが、
大島渚監督の「戦場のメリークリスマス」を。

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ブルーレイはジャケットがちょっとかっこいい。

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豪華すぎるキャスト、しかもこれは「やむを得ない変更」
ボウイきたー教授きたーたけしさん(北野監督ともいう)きたー、という
キター祭りすぎる、今観るとびっくりするようなキャスト。
でも、このお三方の出演は、はじめから考えられていたのではないそうで。
実は、ビートたけし氏が演じた軍曹のハラは勝新太郎氏の予定で、
坂本龍一氏が演じたヨノイ大尉は沢田研二氏の予定だった。
さらには、デヴィッド・ボウイ氏が演じたイギリス軍少佐のセリアズにも、
俳優で映画監督のロバート・レッドフォード氏が来る予定だった。
そっちはそっちで豪華だが、スケジュールだったり、役柄への不満だったりで、
各人のOKが得られなかった結果、この三人が本決まりになった。
どっちにせよ、キャストだけで「やべえ観なきゃ」と思わせられるってある意味スゴい。

豪華だけど演技経験が浅いメインキャストを活かす秘策
デヴィッド・ボウイ、坂本龍一、ビートたけし(最後のクレジットでは「TAKESHI」)。
このお三方はいずれも別の世界から来た人たちで、当然、演技経験は浅い。
歌うことやコントをやることは、ある程度、「演じる」に繋がるが、役者ではないし、
ましてこれまでユニットでじっと鍵盤とにらめっこだった教授はどうするのか?
それを結果的に何とかしたのは、「軍人」「陸軍の偉い人」という設定。
棒であろうと無愛想であろうと、命令口調で喋っていれば、様にならないことはない。
もちろん、これは後からついてきた感想で、作っている側、演じている側は当然
そんなつもりではなく、教授とたけし氏は互いの演技を「ひどい」と言い合っていたとか。
英語がよくわからない自分には、ボウイの演技の巧拙が正直よくわからないが、
後の二人は、軍人設定と、脇を固める本物の役者たちによって、
まあ一応何とかなっているんじゃないかと思えた。
二人とも後に映画の世界に本格的に足を踏み入れるのも興味深い。
一方は映画音楽でアカデミー賞、もう一方はヴェネチア国際映画祭で金獅子賞受賞。
いやはや、とんでもない。

こんなのあり?異端な映画
第二次世界大戦を舞台としているのに戦闘シーンゼロ。出演者は男性のみ。
インドネシア・ジャワ島の日本軍捕虜収容所だけで話のほぼ全てが進んでいく。
戦争に反対も賛成もしないし、とりたてて何か主張があるわけでもない。
大きなストーリーの軸もなく、単体のエピソードを時系列で並べた集合体で、
印象的なシーンをいくつか見せて、インパクトを残していく、という感じ。
一本筋が通った骨太なメッセージだとか、二転三転の劇的なストーリーだとかを
期待していると間違いなくがっかりする。
最近の映画のトレンドとは価値観が全然違うので、観るには少し覚悟が必要。
(遠回しな)同性愛ものということもあり、万人受けは決してしない作品だろう。
豪華キャストを起用して、印象的(衝撃的)なシーンをチラチラ見せて、
さしずめ「偉大なるはったり」といったところか?
まあ、この監督について私はあまりに無知なので、作風を断定するのはよそう。
しかし「変わった映画」「変わった監督」という印象は消えない気がする。

有名なあの台詞、あの場面はこんなふうに登場するのか
私はこの映画が公開されたちょっと前に生まれたくらいの世代で、
勿論、リアルタイムで体験しているはずもない。
でも「Merry Christmas,Mr.Lawrence」という台詞だったり、
ボウイと教授がキスして教授が「ハッ!」となる場面だったり、そういうものを
かなり断片的にだけ知っていて、「どうなるんだろう」と楽しみにしていた。
前者の「メリークリスマス~」のくだりは、ボウイか教授が言うんだろうとばかり
思っていたから、たけし氏が言ったのでちょっと驚いた。
しかも、子どものように純真無垢な笑顔で、それを言うのだ。
これは持っていかれた。意外性とインパクトがずっと残る。
後者の場面は本編より、実は宣伝用のカットのほうが印象的な気がした。
本編ではほんの一瞬。「あれっ今何か起きた?」くらいのさりげなさなのだ。
そういうもんか、という感じ。

言いたいことをあえて考えるならば
ロレンスとハラ、セリアズとヨノイ大尉の不思議な絆(要は男色関係な感情)を
エピソードの積み重ねで淡々と描いていく本作。
先程「とりたてて何か主張があるわけでもない」と書いたが、あえて考えるなら
「国境も文化も超えた関係が生まれ得る」ということは言えるのではないか。
そして、詳細はネタバレなので控えるが、結局主人公で語り手のロレンス以外
主要登場人物は誰も幸せになれない。
(原作がロレンスの実体験をもとにした小説なので、そりゃロレンスは無事だが)
これを深読みするなら「戦争の無益さとむごさ」を表現した、なんだろうか。
後の北野監督の映画では、拳銃を持った人間は誰も幸せになれないと
監督自身が決めていて、銃や暴力団を賛美しないようにしているそうだ。
観終えたときの後味が、どことなく北野映画に似ているような気がした。
大島監督→北野監督と、この「やるせなさ」が受け継がれていったのだろうか。

音楽が一種の目玉?
Merry Christmas Mr.Lawrence」は、教授の代表作のひとつで、
世代によって違いはあるだろうが、最も多くの人に知られている曲といえるだろう。
本作のサウンドトラックを教授が手がけていて(これが初の映画サントラ)、
英国アカデミー賞の作曲賞を受賞している。
実はこの映画で一番面白かった、印象に残ったのは、教授の音楽だったりする。
映像が音楽によって神格化されている側面はないだろうか?
そんな感想すら抱いている。
映画がつまらなかったと言っているのではなくて、音楽が素晴らしすぎるのである。
たけし氏の「メリークリスマス~」が映画の半分を持っていったならば、
教授の音楽が残り半分を持っていったように感じたのだ。
果たして、この顛末の、どこまでが大島監督の狙い通りだったのだろうか?
音楽目当てで、この少し古い映画のDVDやブルーレイを手にとってみる価値は
少なからずあると思う。
それに勿論、ボウイが演じているというだけでセリアズに見入った部分もあった。
音楽好きにはたまらない映画のはず。


偉大なる監督の偉大なる映画をこんなかたちでぶった斬っていいのだろうかという
逡巡は一応あります。
けれど、広告代理店でもないんだし、正直な感想を書いてこそ
感想やレビューになり得るのではないかと考え、率直に綴ることにしました。
頻繁に音楽を取り上げているこのブログにもよく合う作品だし、
まあ、ひとまず、これはこれで。


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劇場版 SPEC ~結~ 漸ノ篇&爻ノ篇 鑑賞レポート(ネタバレほぼなし)

2010年に連ドラで始まった人気刑事ドラマ「SPEC」シリーズの完結編
劇場版SPEC~結~」の前後編(漸ノ篇、爻ノ篇)を観てきました!
漸ノ篇を先週に、そして29日に公開された爻ノ篇を・・・公開初日に!
10月初頭の夜中に一挙放送されていた連ドラを何となく録画で観て
すっかり高まってしまい、以降のスペシャルドラマや映画なんかも
いい頃合いで放送してくれちゃうものだから、普段この手の映画は
地上波放映を待つのに、わざわざ劇場まで足を運び金をつぎ込む決心が
たかま・・・じゃなかった、固まりました。

前後編ということで、後編を観るとき前編の記憶が途切れ途切れだったら
ちょっとな、と考え、前編を遅めに観て後編を早めに観にいきました。
実は今なら2本同日に観られるようになるとも知らず・・・orz

まあともかく、気合いを入れて鑑賞してきたので、鑑賞レポートでも。
ニュアンス的なものは少々あるかもですが、基本ネタバレありません!
とはいえ一応、内容は右下の「続きを読む」ぽちっとな以降に書きます。
それでは、張り切ってどうぞ!


続きを読む»

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ざっくり映画ライフ:その15 カンヌ受賞なるか?!是枝裕和監督作品SP(歩いても 歩いても、誰も知らない、大丈夫であるように)

TVをつけたら、カンヌ映画祭に新作映画をひっさげて主要キャスト陣と共に登場し、
映画終了後、10分ものスタンディングオベーションを受け、涙する是枝裕和監督の姿。
少し前にドラマがダダ滑りしていただけに、カンヌではうまくいってほしいものです。
結構久しぶりの映画ライフでは、つらい日常のなかにあるささやかな幸福を照らし出す
是枝作品を特集します!


歩いても 歩いても

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阿部寛、夏川結衣 他

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奇しくも、今年の日本アカデミー賞の大賞受賞者が二人もメインキャストにいる作品
(阿部寛さん、樹木希林さん)となった。
この映画は国内外の数々の映画賞を獲っており、樹木希林さん、夏川結衣さんが
助演女優賞をいくつか獲得している。

阿部寛さん演ずる主人公・良多が、夏川結衣さん演ずる、前夫と死別し子連れで再婚した妻と
子どもを連れて実家に帰省するが、良多は実家と、とりわけ原田芳雄さん演ずる父親と何かと
折り合いが悪い。妻が子連れのバツイチで年上ということで、樹木希林さん演ずる母親や
YOUさん演ずる姉に陰口や嫌味を何かにつけ言われ、穏やかに時間が流れているかに見えて
家の中は絶えずギスギスし、誰もが何かしらわだかまりを抱えて鬱屈している。
父は15年前に事故で亡くなった兄を溺愛し、良多には全く価値を見出そうとしない。
そして父と母の間にも長年のわだかまりがあった。昔、ある日のこと、母は目撃してしまった、
父と知らない女との浮気現場を。一触即発状態の家で、遂に良多は父と正面衝突する・・・

観ていて、何度も涙腺がバカになってしまった映画。
みんながそれぞれ、こらえ続け、ごまかし続けている姿が、リアルだから余計しんどくなる。
とりわけ辛かったのは夏川結衣さん演ずる妻。いわれのない嫌味を言われて何度も頭を下げる、
子どもが良多になつかない。良多も頼りなく、いまいち味方をしてくれず、孤軍奮闘に涙する。
でも芯が強くて、だんだん穏便ながら反論していくようになる。
また、遠い昔の父の浮気、父は「あんな昔のこと」「後までつけて、みっともない」と言うけれど
母は痛みをいつまでも忘れることができない。浮気現場で流れていた曲「ブルーライトヨコハマ」
を当てつけに口ずさんでみる。「やめろ!」と怒鳴る父、でも母はあえてやめない。
良多は少しずつ連れ子の息子と仲良くなって、抑えていた父への感情を言葉でしっかりぶつける。
ギリギリの空間の中で、みんなだんだん逞しくなって、自分を主張できるようになるのがいい。
そして時間が過ぎた。良多と妻の間に子どもが生まれて、四人家族になって、再び実家へ。
父は死んで、母は足が悪くなっていて、クルマの免許をとった良多が頼もしく家族を連れて
父と兄の墓参りに出かける。映画冒頭の場面と丁度対比しているのがミソだ。
自信がなくてぼんやりしていた良多、家の片隅で小さくなっていた妻などが
今は自信を持ってしゃんと生きている、一方で父母は死に近づいていく、
そういうあたりで胸がいっぱいになる。
じわじわと沁みて、それは今でも後を引いている気がする。



誰も知らない

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内容もさることながら、なにより柳楽優弥君が「天才子役」として一躍名を馳せた映画。
インタビューなどで見せる素顔は子どもそのものなのに、作中で見せる姿は
あまりにもナチュラルに役を生きており、やはり衝撃的だった。
今はなんか色々(奇行とか、結婚とか)あった後、微妙な俳優になったような・・・

実際にあった事件(1988年に発生した「巣鴨子供置き去り事件」)をもとに、多少の脚色
(柳楽君演ずる長男がきょうだい思いの優しく健気な子として描かれているなど)を加えた。
幼いきょうだいのために奔走し、母親の無茶な言いつけにも素直に従う「小学6年」の長男。
しかし長男はもちろん、他のきょうだいも、学校に行ったことがない、出生届すら出されていない。
父親がばらばらの4人きょうだい。なかなか言うことをきかず、長男が腹を立てることもある。
偶然出会った人々が、彼らの置かれた信じがたい状況に心を痛め、援助を申し出るも、
長男はそうした援助を断ってしまう。
コンビニの期限切れ弁当をもらうなど、心ある人たちから一部の援助は受けているものの、
長男の奔走虚しく、やがて限界が訪れる・・・

凄惨な状態にあるはずなのに不思議と穏やかな空気が流れているのは是枝監督ならでは。
そして、どうしようもないDQN親を演じたYOUさん。本来ならばどのような理由があっても
4人もの小さな子どもを放って出て行って男のもとへ走る、こんな母親は許されないのだが
YOUさん特有の愛嬌がちょっと憎めない可愛いママに見えてしまって何とも。
何だか本当に「ちょっと出かけてくるねー」ぐらいのノリに見える。
是枝監督はドキュメンタリー出身とのこと、史実+適度なアレンジ=映画としての見やすさに。
ただありのままを描いてグロくエグく現実をこれでもかと押しつけるのではなく
ナチュラルに事象を提示し、しっかり観せて、そのうえで観る人間に考えさせる。



大丈夫であるように-Cocco 終わらない旅-

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Cocco

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2011年、塚本晋也監督とのタッグ作「KOTOKO」に主演、大きな話題をさらった歌姫
Coccoのドキュメンタリー映画。
是枝監督とCoccoとな?何の縁?と思っていたら、何とCoccoオルタナ時代に
「水鏡」というシングル曲のPVを撮影していたのだ。それが2000年の出来事。
そして、Coccoがオルタナ路線を捨てて、活動停止から復帰した時期のシングル、2006年の
「陽の照りながら雨の降る」で再びPVを手がける。恐らくはこれがきっかけとなったのだろう。

2007年9月15日(沖縄限定版)~2007年11月21日(日本全国版)、Coccoは
「ジュゴンの見える丘」という曲をシングルリリース。
テレ朝の「人魚の棲む海~ジュゴンと生きる沖縄の人々~」という番組のテーマソングだった。
取材時期のCoccoは、こういった、自らのふるさと・沖縄の自然を守る活動に精力的に取り組み、
活動停止から復帰した後は、殊更に「沖縄」を強調した曲づくりをしていた。
本作では、Coccoの環境保護活動を追いかけると共に、沖縄のおじいさんや愛息についてなど、
これまで音楽番組にもあまり出ることがなかった彼女の素顔を、ライヴの本番やリハーサル、
本番後などの姿も交えて、優しい眼差しで明らかにしていく。

この時期のCoccoは、後に雑誌にも本人のインタビューで明かされたように、拒食症や自傷行為を
繰り返していた。冒頭、沖縄の菓子を何粒か口にして、「今日食べるものはこれだけ」と言う。
友達や恩人に会って、過剰なほどにはしゃいで喜ぶ。
ライヴの本番後に、Coccoの楽屋に、ひどくバタバタした様子でスタッフが集まり、
次の日以降、彼女は腕にがっつりと包帯を巻いた姿で表れるようになる。何をしたかは明らかだ。
現実は厳しく、沖縄での環境保護活動は長続きせず、落書きや中傷が書き込まれるようになり、
やむなく活動を断念、精神状態は悪化し、拒食症治療のためにイギリスの専門の施設で療養。
ここまでが本作で描かれる(エピローグ部分は文字のみ)Coccoの姿である。
客観的に捉えるとかなり異様な姿に違いない。でも、食べ物をろくに食べないことも、自分の腕を
傷つけることも、言動が少々不自然なことも、「そんな人がいてもいいじゃない、そんな彼女で
いいじゃない」とばかりに、温かく包み込む。どんなに人と違っていても、それを受け止める。
あまりに、真っ直ぐすぎる、純真すぎるために、
いつも世間からズレてしまい、苦しみを抱えるCocco。
その不器用さを「愛すべきもの」として、沖縄の美しい自然とともに描き出している。



現実はリアルで、少なくない痛みを伴いながら何でもない顔をして流れていきます。
ただ、辛かったり腹立たしかったりするいつもの日々の中にも、きらりと輝く瞬間があって
毎日はただの灰色じゃないということを感じさせてくれる、色をつけてくれる。
是枝作品にはそんな強みがあるように思います。
作品は他にもまだまだ沢山あって未見なので、それら未見作品の山を観てからもっと感想が
生まれてくるでしょうが、今のところはこんな感じで。

福山雅治さんが主演、尾野真千子さんや真木よう子さん、リリー・フランキーさんらが助演の
カンヌ映画祭に出品された新作は今年秋頃公開とのこと。今からとても待ち遠しいです!


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ざっくり映画ライフ:その14 夢を諦めないオヤジたちの挽歌(レスラー、アンヴィル!夢を諦めきれない男たち、ロッキー・ザ・ファイナル)

音楽レビューラッシュをしている間に映画ネタが溜まりに溜まってしまったので、
もうしばらく映画ライフのラッシュ、いきます。
今回は夢の終わりや現実の厳しさに直面する、諦められないオヤジたちのブルースを。


レスラー

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俳優としてのキャリアを積んだ後、90年代にはボクサーに転身、ボクサー引退後に
俳優業を復活させた異色の俳優、ミッキー・ロークが、レスラー役に体当たりで挑んだ。

ロングヘアの金髪がトレードマークのランディはレスラー。特に80年代はスター選手だった。
それから20年以上、レスラーを続けているが、今や収入は細々としたもので、スーパーで
アルバイトをしながら週末に試合をする程度。家賃を払えず車で寝泊まりする日もある。
ストリッパーのキャシディに想いを寄せ、クラブに通う日々。彼女ももう若くはない。
ある日、ランディは心臓発作を起こして倒れ、心臓バイパス手術を受ける。医師からは
「レスリングはもう無理」と宣告される。実際、僅かな運動にも耐えられなくなる。
レスラーを引退することにしたランディは、これまでないがしろにしてきた一人娘・
ステファニーとの関係を修復して新しい人生を始めようとしたり、
「ストリッパーと客」の関係を超えてキャシディと本格的な恋愛をしようと試みたり。
収入が減る分、スーパーで働く時間を増やし、客の前での仕事も引き受けてみる。
しかし、セックス&ドラッグのルーズな悪癖を改められなかったり、
キャシディの方では、子持ちであることを気にして、想いに素直になれなかったり。
スーパーの仕事もやめてしまう。不器用にしか生きられないランディ(とキャシディ)。
ステファニーから絶縁を告げられ、失うものはもう何もないと覚悟を決めたランディは
大きな賭けに出る。それは、往年のライバルとの20周年記念試合への出場だった・・・

ミッキー・ローク自身のキャリアの浮き沈みをそのまま反映させたかのような物語は
大ヒットと高い評価をほしいままにした。しかし、彼のキャリアについては
私は世代からいってまるで知る由もなく、ここに共感どうこうというのは難しい。
私が息をのんだのは、レスラーたちの裏側が容赦なく描かれているところ。
敵味方というより、レスラー全体が一種の運命共同体のように見える。八百長という
印象もあるが、互いが互いを思いやって根回しする「優しさ」は嫌いじゃない。
但しボクサーだったロークは当初「プロレスは振り付けでしかない」と考えていて
レスラーを尊敬できず、考えが変わるのは撮影が進んでいくうちだったそうだが。
ステファニーと約束をしていた肝心な日を前に、その場の勢いで薬とセックスに走り
そのまま眠りについて起きられなかったり、スーパーでの人前の仕事で正体がばれて
動揺し手を怪我して、大暴れして「こんな仕事やめてやる!」と息巻いたりする姿に
「ああぁ・・・」と思わず頭を抱えたくなる。
でも現実の芸能人やスポーツ選手もこんな風に、一般人が当たり前に出来る事や
知っている事が、出来なかったり知らなかったりするエピソード、よく聞くかも。

最後、試合に出て行くランディ。やっと気持ちが通じかけたキャシディに向かって
「俺の居場所はここしかないんだ」と言い放ち、飛び出していく。
心臓が悲鳴をあげるなか、必殺技「ラム・ジャム」を喰らわす所で話は途切れる。
何とも言えない余韻が残り、エンドロールのブルース・スプリングスティーンの
哀愁と年輪を感じさせる主題歌がいつまでも胸に鳴り響く。



アンヴィル!夢を諦めきれない男たち

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アンヴィル

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とにかく滅茶苦茶話題になっていて、「そんなに面白いなら、試しに見るか」と
何ともなしにレンタルしてみた作品。しかしこれが思った以上に面白いのだ!

80年代初頭に人気を誇ったカナダのへヴィメタル・バンド「アンヴィル」。
84年にはボン・ジョビ、ホワイトスネイク、スコーピオンズなどと並んで
日本の「スーパー・ロック・フェスティバル」に招待され、大観衆の前で演奏した。
しかし、人気は長く続かず、いつしか彼らは忘れ去られていった。
それから20年あまりが経ち、アンヴィルは一応ずっと活動を続けているのだが、
ヴォーカル兼リードギターでリーダーのスティーヴ・"リップス"・クドロー
ドラムでリップスの幼なじみのロブ・ライナーしかオリジナルメンバーはおらず
給食配給センターでの勤務や建設作業などで生計を立て、細々と活動するに留まる。
ヨーロッパツアーの話が舞い込み、再起を夢見るメンバーは各国を転々とするが
顔を忘れられていたり、ギャラをもらいそびれたり、電車に乗り遅れたり、もうハチャメチャ。
そこで、かつてのデビューアルバムのプロデューサーにニューアルバムの録音を頼む。
リップスは家族から借金までしてイギリスへ渡った。しかし、リップスの我が儘に
普段温厚なロブがキレてブースを出ていってしまうなど、喧嘩ばかりのレコーディング。
何とか音源が完成し、ラジオ局やレコード会社に売り込むも、どこも見向きもせず。
そんなとき、日本のプロモーターから連絡が入り、2万人収容の幕張メッセで開催される
「LOUD PARK 06」コンサートへの出演を依頼される。
といっても、3日間に及ぶフェスティバルの最初の演奏者で、しかも午前中の演奏。
またも失敗と挫折が増えるだけかと思いきや、遂に奇跡が起きる!!!

この映画はドキュメンタリー。アンヴィルのファンで付き人も経験している監督が
スティーブン・スピルバーグの『ターミナル』の脚本を書いたお金で、アンヴィルの
映画を作ろうと思い立ち、リップスとロブを中心に2年間もバンドに密着してできた。
まずここにひとつめの奇跡があった。
細々とした活動しかしていなかったアンヴィルにヨーロッパツアーの話が出たことも
結果はともかく、ふたつめの奇跡といってよいだろう。
デビューアルバムのプロデューサーが、インディーズ状態のアンヴィルのプロデュースを
引き受けてくれたのがみっつめの奇跡(頼んだのはアンヴィルの勇気)。
そしてよっつめの奇跡が「LOUD PARK 06」に呼んだ日本のプロモーターで、
最後の奇跡はなんといっても観客。まさか、あの日程のあの時間帯に、今や無名のバンドに
熱狂的なファンで会場がいっぱいになっているなんて!

「レスラー」のロックバンド版ともいえるような、シビアな現実の積み重ねが苦々しく
積み重なる映画でもあるが、こちらは最後に劇的なハッピーエンドで幕を閉じる。
結局のところ、皆がアンヴィルを忘れていなかった、ということなんだろう。
皆が心のどこかでアンヴィルを覚えていて、彼らの再起を密かに願っていたんだろう。
現実にアンヴィルの音楽はまた売れるようになり、音楽で生計が立つようにもなった。
彼らの努力や粘り強さがあってこそだが、ファンはそうそう忘れやしないのである。



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blogを始めたばかりの頃、ロッキーシリーズの一連の感想としてはとりあげているが、
単品では書いていないのと、他の5作とは若干、趣を異にしているため、
改めてこの機会に紹介してみる。

燻っていたのが一転、アポロとの試合でシンデレラボーイになったあの物語は
もうはるか昔。ロッキーも、周りの人間達も、皆それぞれに年老いた。
最愛の妻・エイドリアンは、3年前に癌で亡くなってしまった。
ロッキーは持ち前の軽妙なトークで現役時代の思い出話を振る舞いながら、
地元で小規模なレストランを経営し、一見平穏に楽しく暮らすも、
3年前のエイドリアンの死から立ち直れず、空虚さを抱え続けていた。
更に、息子のロバートは「偉大な父・ロッキー」の存在にプレッシャーを感じ、
ロッキーと疎遠になり、エイドリアンの葬儀にも顔を出さない。
普通のサラリーマンを選んだが、いつも父と比較され、からかわれてしまう。
エイドリアンもいない、ロバートも疎遠。孤独を抱えながら生きるロッキー。
そこに、ひょんなことから、現代の「強すぎてつまらない」ボクサー、
メイソン・ディクソンとの対戦が持ち上がり、ロッキーは再び闘いに挑むことに。
老いてなお闘争心を失わず、言葉通り諦めない父を見て、ロバートは心を動かされ、
居心地が悪いだけの今の仕事をやめ、ロッキーのサポート役にまわる。
いざ試合。おおかたの予想はディクソンの圧勝だが、ロッキーが粘り、
闘いは(いつものごとく)最終ラウンドまでもつれる。
ふたりとも満身創痍で、一歩も譲らない、諦めない。そして試合終了のゴングが鳴った。
2-1でディクソンの判定勝ち。二人は互いの健闘を讃え合う。
そして、ロッキーは「エイドリアーン!」の代わりに、墓前にそっと報告へ訪れる・・・

前ふたつに比べて、ロッキーは圧倒的な成功者なうえに絶望的に失った状態にないので
このように並べると、悲壮感や説得力に欠けるかもしれない(笑)
しかし、6作全部コンプリートした者としては、エイドリアンの死を引きずったままで
さめざめと泣き出してしまうロッキーの姿を見ているだけでこたえるものがある。
そしてジョブのようにきいてくるのが息子との不和。「自分が偉大だから」が
息子にはプレッシャーになってしまう。「あきらめないでしぶとく頑張れ」という信念は
何をしても「ロッキーの子」として以外見られない、評価されないロバートにとっては
無意味を通り越して、この上なく耳障りなものとなっている。
なんともやりきれないが、このような「親子でも、わかりあえない」関係はよくある、
「レスラー」なんかもっと顕著な例。あれは父親がダメパパなのだが・・・
因みに、「強すぎてつまらないボクサー」ディクソンって、00年代フェラーリにおける
F1ドライバー、ミハエル・シューマッハーがモデル?06年公開だし、ちょっとあり得る気も。

はっきり言って試合よりも、ロバートとの「冷戦」の方が解決困難なように感じられた。
けれどロバートは、現役時代のロッキーを全力で応援する「大ファン」な子どもだった。
だからこそ、ロバートの心にロッキーへの敬愛は残り、そして親子の絆が蘇ったのだろう。
ロッキーは、試合だけでなく、親子の絆の修復もあきらめないで辛抱強く臨んだ。
華麗な復活劇はもちろん、このような人間ドラマも、本作の大事なみどころだと思う。



結果がどちらに出るかはわからないし、いっそどうでもいい、
どうしても諦めたくない、諦められない、男たち。
現実はよく知っているけれど、これでもかこれでもかと、更に前に蹴り出す。
その先にもっと目を覆いたくなるような真実が待っていたとしても。
もう若くない、気合いでは乗り越えられない。でも、信念が彼らを突き動かす。
そして、その奮闘を誰かが見ていて、そっと手を差し伸べることだってある・・・
「諦め(られ)ない力」ってあるんじゃないかと感じる、3人の男たちの映画でした。



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ざっくり映画ライフ:その13 いつも音楽と共に!伊坂幸太郎作品の映画化(フィッシュストーリー、ゴールデンスランバー、死神の精度)

先週末、アカデミー賞発表もあったし、久しぶりに「ざっくり映画ライフ」の登場です。
一時期の派手なブームは一段落した印象ですが、先日TVの録画で「フィッシュストーリー」
を観て、伊坂幸太郎さんの小説の映画化ものをかなりの割合でコンプリートできました。
まだ「重力ピエロ」があるんだけど、それでも何だか気分すっきり。
いつの間に「ちょっと懐かしい人」モードになっていることに少しの驚きを感じながら、
軸となっている音楽と共に、振り返ってみましょう、伊坂作品の映画化。
斉藤和義さん(以下、公式のあだ名「せっちゃん」)のファンとしても何かとうれしかったり・・・。


フィッシュストーリー

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(2009/09/25)
伊藤淳史、高良健吾 他

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<軸となっている音楽:逆鱗FISH STORY」>
1975年にセックス・ピストルズよりも早く登場した日本のパンクバンド「逆鱗」の
全く売れない、しがない顛末から、全てを賭けた最後のレコーディング曲へ。
1982年にナンパに出かけるも友人達から半ばいじめられている気弱な大学生が
事件に遭遇、車内でテープで聴いていた「逆鱗」の曲が彼に奇跡を・・・!?
1999年、先程の大学生の友人は今でも一緒におり、ノストラダムスの予言を信じて
全てを投げ出し教祖様についてきた。しかし世界は滅びない。そこで起こったのは。
2009年、一度眠るとテコでも起きられない、ある才能を秘めたついてない女子高生が
巻き込まれた「シージャック事件」。そこにあらわる、信じがたい「正義の味方」!
そして2012年(これが「現在」の位置づけ)、彗星が地球に大接近、いよいよもって
地球は滅びてしまうのか?レコード屋で「逆鱗」を聴く男達は、奇跡の目撃者となる・・・

ボーズで眉毛も落とした高良健吾君がパンクバンドのヴォーカリストとして絵になる。
歌もそこそこうまく(デモ音源を作ったであろう、せっちゃんの歌い方まんまでもあるがw)
シャウトもいい感じ。かわって普段の姿は、持ち味の繊細さが今度はいい味出している。
安定の伊藤淳史君がベーシスト。時代を考えるとそこはシドの立ち位置なんだがいいのか?
リーダーでしっかりしているが「FISH STORY」の意味を知らない(=ホラ話。大学受験まで
結構英語が得意だった自分だって知らないよ!寧ろ知ってる他のメンバーがすげぇって)面も。
ガツンとくる演奏が爽快。せっちゃんぽくもあるが、4人の連帯感もよく出ている。
冴えない4人を何とか売り込もうと奮闘する不器用なマネージャー・岡崎(大森南朋さん)に
何かじんときた。2012年のレコード屋は岡崎の息子さんかと思ったが、違うのか?
(Wikiを見ると単に大森さんの二役としか書いてない)
圧巻は森山未來君の見事な身体能力あってこその「正義の味方」、これは見ごたえがある!
多部未華子ちゃんのウエエエン振りもビクビク振りもなんともいえず可愛い。
最後にああいう形で才能が花開くとは、納得なようなちょっと強引なような。でも彼女も
結局究極の「正義の味方」になったわけだな。
そして本筋とどう絡むのかよくわからなかった1982年&1999年のパートが意外な形で繋がる。
最初の2012年のシーンからしてもう繋がっているし、2009年にも直接リンクしている。
関連が全く読めなかった安定の濱田学くんがまさかこう繋がるとは思いもしない!
「相棒」の芹沢役でお馴染みの山中崇さんがすごい粗暴な男で出ていて、後から出演者を
見ないとわからなかった。地味にこれもものすごい驚き。

映画で観ていると時系列が次々変わってちょっと慌ただしいかもわからないが、2時間が
こんなにあっという間に過ぎた映画は初めて。最後の雪崩の如き風呂敷畳みの嵐は
アクション映画のハイライトのバトルシーンさながらのスピード感とスリル!!

これまで観てきた伊坂映画では本作が今のところ一番好き。
深い音楽愛~バンド愛を感じられるのもたまらない。


フィッシュストーリーフィッシュストーリー
(2009/02/25)
逆鱗×斉藤和義、いっとくブラザース 他

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「逆鱗」の面子が本当にCDデビューしてしまったサントラ。
せっちゃんが楽曲プロデュースを務めている(劇伴音楽は手がけていない)。


ゴールデンスランバー

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(2010/08/06)
堺雅人、竹内結子 他

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<軸となっている音楽:The BeatlesGolden Slumbers」>
いつも笑っているように見える堺雅人さんだが今回ばかりはせいぜい泣き笑いで、あとは
かなりテンパっている。そりゃ無理もない、だって身に覚えのない陰謀に巻き込まれて
命を狙われちゃうのだから。
堺さん演じる宅配便ドライバー・青柳は、首相暗殺の濡れ衣を何者かに着せられて
指名手配犯になってしまい、かつての仲間達を頼って逃亡劇を繰り広げる。
大学時代の恋人、学生時代の友人やサークルの後輩、(原作では元)職場の同僚、
昔助けてあげた元アイドル、ひょんなことから出会った病院の患者など、
さまざまな人々と(再び)出会いながら、青柳はひたすら逃げつづける・・・

勝手知ったるはずの仲間達がもはやバラバラで、自らは孤立無援の状況を例えて
「ゴールデンスランバー」みたいだ、自分はビートルズのポールみたいだと青柳は思う。
更に自分は何とか皆をつなぎ止めようとしているのだという意識からも。
青柳は昔の仲間達に辛うじて救われながら逃走を続ける。
それは絆がまだあったとも言えるし、最終的な安住の地がどこにもない点からは
もうたいした有力な絆なんて存在しないのかもしれない。
「人間が生活する上で一番重要なのは、人との繋がりや、信頼なのではないかという
作者の考えが込められている」とWikiにはあったが、つまり青柳はそれに救われたり、
その脆さに打ちのめされたりしてきたわけか。
ありとあらゆる方法を使って、警察の網の目をくぐり、最後には全く別人になって
恐らくは安泰ながら一生孤独な人生が想像できるラストに辿り着く。

大丈夫?大丈夫?とヒヤヒヤしていたら気がつけば逃げおおせている、そんな繰り返しが
スリリング。次々と都合よく助けてくれる人が出てくるのもいっそ爽快だったりする。
だけどどこか孤独なのはどうしてなのか。

せっちゃんの昔の楽曲で映画テーマソングの「幸福な朝食 退屈な夕食」が、さめた口調で
そんなせわしなく皮肉な世界を俯瞰している。


ゴールデンスランバー~オリジナルサウンドトラック~ゴールデンスランバー~オリジナルサウンドトラック~
(2010/01/27)
斉藤和義、サントラ 他

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この映画ではせっちゃんが音楽監督を務めている。劇伴音楽もせっちゃんの手による。
流石多彩な人だけあって、ストリングス・アレンジなんかも共作ながら手がけているのは
今更ながら驚いてしまう。


Sweet Rain 死神の精度(原作では「死神の精度」)

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(2008/08/27)
金城武、小西真奈美 他

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<軸となっている音楽:特定したものはないが、音楽全般>
この作品だけ他と大分毛色が違う印象。本質は変わらないが、どこかロマンティックで
スケールもデカくなっている気がする。金城武さん主演のせい?他のキャストも殆ど
いつもの顔ぶれは出ていない。

金城武さん演じる死神の千葉は人間の音楽=「ミュージック」を溺愛し、彼が地上に
降り立つ日はいつも雨が降っているという、ちょっと風変わりな死神。
役割は死神の調査部員で、調査のために地上に降り立って7日間対象者を観察し、「可」か
「見送り」かを判定する。「可」と判定すると対象者は8日目に死亡する。「見送り」と
判定すると対象者は今回は死なずに天寿を全うする。大抵のケースでは、判定は「可」。
今回の対象者は小西真奈美さん演じる藤木一恵。苦情処理の部署でクレーマーに悩まされ、
他の社員に何かと面倒ごとを押しつけられても断れず、身内は殆ど死んでしまった、
あまりにもついてない女性。いや、ある意味で「持っている」女性ともいえる。
千葉は無意識のうちに彼女に惹かれてしまい、初めて「見送り」の判定をする。
その後も、実は一恵の息子である青年が対象者を兄貴分のように慕っていたりして、
千葉は何度となく、対象者やその身近な人物である一恵の関係者の調査をしてきた。
年月が経った。今度千葉が対象とする老女(富司純子さん)は実は歳を取った一恵で
千葉を一目見るなり「人間ではない」ことを言い当てた。
そして千葉にあるお願いをする・・・

千葉以外の死神たちも「ミュージック」が好きで、いつもレコード店には誰かしら
ほかの仲間がいるのがユーモラス。世間話なんかの舞台もレコード店。
コメディ映画や向こうの映画(レッドクリフなど)以外で金城さんを見ると、演技か日本語の
どちらかがどうにも「微妙」だとか「棒」といった印象を受けるのだが、今回の千葉は
人間と言語含め感覚がズレた浮世離れした特殊な存在だから、そんなに違和感なく見られた。
それにしても一恵の人生はあまりに波瀾万丈。身内をことごとく亡くす、クレーマーは実は
一恵の声に惚れていて歌手にスカウトされデビュー(リリースしたCDを千葉は聴いている)、
結婚、出産、しかし旦那との死別をきっかけに自らの運命から子を守るため息子をあえて
孤児にする、死神の調査によって周囲の人間を多く亡くす、晩年は高台でひとり美容院をする。
最初に千葉が一恵を助けた時期も一恵は「もう死んでしまいたい」と思っていたのだが、
千葉は結局最後まで一恵を運命から救えなかったということになる。なんとも切ない。
天然キャラの千葉だから自覚が怪しいが、彼は明らかに一恵に淡い恋心を抱き続けながら
見守ってきて、なのに当の一恵から「最後のお願い」(=「殺して」に相当するもの)をされる。
一恵の「お願い」が叶ったとおぼしき日、空はよく晴れて、虹が出る。千葉が初めて見る青空、
晴れ空だ。太陽によって高台が照らされて緑も美しい、けれど何か悲しいのはどうしてだろう。

普段の伊坂小説→映画の舞台が地中や市井だとしたら、本作はちょっと地上の「いい家」。
全体的に雰囲気が少しだけリッチで甘い。
金城さん、富司さんの存在感がとてもいい。小西さんの健気さも可愛らしい。
シニカルな笑い所も登場するが基本的にはストレートなラブ~ヒューマンストーリーで
わかりやすいので、他の伊坂作品に比べると、メジャーな映画が好きな人向け。

「フラガール」や朝ドラ「てっぱん」の鬼母~べっちゃんを観てきた自分としては、
本作の富司さんは幻想だと思っている(笑)


別の企画で使いたい&本数オーバーで「アヒルと鴨のコインロッカー」を入れられませんでした。
それが結構物足りないかも、でもうってつけの場所がどうしてもあって・・・
けだるい空気感、クドカン映画ともまた違う登場人物の強いキャラ立ち、やるせなさ、
そして多くの作品で貫かれている「音楽」への愛(「アヒルと~」ではボブ・ディランの
「風に吹かれて」が物語の重要な鍵となる)。ん~、なんともいえませんね。
伊坂さんの本は未だに読んでいないけれど、そろそろ安価になっていそうな頃(失礼)、
これを機会に手にとってみようかな?なんて。

せっちゃん、いや最後くらいはちゃんと呼んで斉藤和義さんと伊坂さんとのタッグも
印象的でした。

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斉藤和義

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コンセプト・アルバム「紅盤」にも入っている楽曲で、伊坂さんが作詞に挑戦。
斉藤和義ワールドとの相性はもちろんばっちりで、かつ伊坂作品らしさもある詞。ナイスです。



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ざっくり映画ライフ:その12 何もないところから立ち上がれ!サバイバーたちの術(スラムドッグ$ミリオネア、プリティ・ウーマン、8 mile)

先日、話題になっていた洋画「スラムドッグ$ミリオネア」を録画で観ました。
詰めが甘いように感じる場面もあったけれど基本的には驚いたり考えさせられたり。
しかも舞台はインド。こういう世界もやっぱり本当にあるんだよな~と感慨しきりでした。
今回の久々のざっくり映画ライフは、このような「サバイバー」たちが主人公の映画を
特集します。


スラムドッグ$ミリオネア

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(2009/10/23)
デーブ・パテル、アニール・カプール 他

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原作でインド人外交官の方が書いた小説があって、それをイギリス製作で映画化。
その過程で「人物たちが唐突に英語を話せるようになってるのはなぜ?」などの疑問が
端折られてしまったり、映画の重要キャラである兄・サリームは映画オリジナルだったり
といった、小さくない相違点があるようだ。主人公の名前も全然違うらしいし。
この記事は、あくまで映画の内容をベースに進める。

舞台はインド。日本でいう「クイズ・ミリオネア」にあたる番組に挑戦者として出演する
スラム出身の若者・ジャマールは、奇跡的にも正解を積み重ね、遂に最終問題を残すのみ。
しかし「スラム出身で無学の青年に、学者でも解けないような難問が解けるはずがない」
と不正疑惑をかけられ、ジャマールは警察に連行されてしまう。
電気ショックも含む残虐な取り調べで、問題を解いていく過程を吐かされるジャマール。
そこには、彼がこれまで辿ってきた、悲しく因果な半生がリンクしていて・・・

貧困問題がテーマの一つとして重くのしかかりながら、兄弟が駆け回る様子など
インドのことばでのやりとりを訳した字幕を切り抜き風に「貼り込んだり」して
ポップな演出が楽しい。そういう時に何故か画面が意図的にブレるのは余計だけど・・・
「ハイブリッド×古きよき(?)時代」の試みそのものはなかなか面白い。
物語は、貧困問題や経済格差の痛みと、ジャマールをはじめとする人物の純粋さが柱。
貧しくて貧しくてどうしようもないといったスラムの街から、いまや大都会と化した
インドの経済発展のさまも鮮やかで、だからこそ余計に多くを考えさせられる。
ジャマールの永遠の「初恋の人」ラティカーへの一途な恋慕もまっすぐで良い。
興味深いのは音楽で、経済発展して先進国と肩を並べるようになった現状を反映するかの
ように欧米風がベースながら、インド音楽のエッセンスも誇らしげにちらほらと見せている。
ヒップホップがどことなくインド音楽に聞こえるなんて
なかなか耳にできるものじゃない(笑)
冒頭で「詰めが甘い」と述べたのはラストへ向かう収束で、ちょっと荒いというか
ご都合主義をぎゅう詰めにしちゃったという印象があって。
でも全体を通して、「考えさせられる映画」「イイハナシダナー」「面白演出」などと
観て良かったと思える映画だったのではないか。

純真な主人公が奇跡を起こす。その一方で、貧困の問題から目をそらしてはいけない。
痛快な奇跡と健気な愛の物語、そこに「このような国や社会が実在する」事実の楔。

社会派とエンターテインメントのバランスが良い物語。


プリティ・ウーマン

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(2006/04/19)
リチャード・ギア、ジュリア・ロバーツ 他

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現代版シンデレラ・ストーリーは「サバイバー」物語の女性版と呼んでよいのでは?
ということでここに提示した、誰もが知ってる不朽のラブコメディー。
私の好きなオードリー・ヘップバーン主演で映画化された1950年代のミュージカル
マイ・フェア・レディ」を下敷きにしていることでも有名。
最近ではこの映画を下敷きに、フジで月9ドラマ「リッチマン、プアウーマン」が
製作されて、それなりにヒットしていたらしい(観ていないので感想はわからない)。

リチャード・ギア演ずる実業家のエドワードと、ジュリア・ロバーツ演ずるコールガールの
ビビアンが出会い、次第に惹かれ合う。
期限つきの「契約」だったはずの関係だったふたりはいつしか未来を夢見るように・・・
しかし期限は残酷にもやってくる。12時を過ぎたシンデレラは、元通りになってしまうかと
思ったら、ビビアンはエドワードとの短いけれど本気の修行や恋愛で、その内面まで
深く感化され、変化していた。生まれ育ちに囚われず、いまや本物のレディとなったのだ。
そして奇跡が・・・

そりゃジュリア・ロバーツなら社交界でもなんでも出来るさ!とさじを投げたくなるような
素晴らしすぎる豊満で締まったそのスタイル。
しかし最初の頃のビビアンは完全なはすっぱで、こりゃ手が付けられないや。
エドワードが手取り足取り一から百まで面倒を見て全部やってあげたのではなく、あくまで
ビビアンにチャンスと自信を与え、ビビアン自身の内面に宿っているレディを取り出す
作業を、手助けして励ましただけなのが重要なこと。
チャンスを与えられること自体が稀ではあるのだが、それを不意にする例は幾らでもある。
実際、ビビアンの友人の子を選んでいたらそれこそ労力がパァであろう。
彼女は最後に「あたいでも変われる??」とビビアンに訊ね、ビビアンが「もちろんよ!」
と答えると泣き出してしまい、そのシーンに一番感動して涙が浮かんでしまったのだが
ビビアンのような成功例がすぐそばにあったから自分も可能性を信じようと思えたのだろう。
無ければやはり当初のように「そんなの無理!」だっただろう。
エドワードの先見の明も素晴らしかったわけだ。

チャンスを生かすも殺すも自分次第。自分を信じ、愛し、磨き続けることがいつでも大事。
シンデレラの素養を描いているように見えるが、凡人だって輝きながら生きていくために
見習うところがたくさんある。諦めないっていいな、と思える映画。



8 mile

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(2012/04/13)
エミネム、キム・ベイシンガー 他

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今も昔も、ヒップホップのCDをCDプレイヤーに入れた経験はないように記憶している。
にもかかわらずこのDVDを借りて観てしまったのは、当時あまりにも話題だったのと、
「人気ヒップホップシンガーが自伝的映画に主演」という筋書きに「マジ?どんなん??」と
当時の私の「怖いモノ見たさ」という名の好奇心に火が点いてしまったからである。
しかし、いざ再生してみると、そこから受ける衝撃は予想を遙かに上回るものだった。

ミシガン州デトロイトには都市と郊外を隔てる境界線、「8マイル・ロード」がある。
この道は富裕層と貧困層、そして白人と黒人とを分けるラインになっている。
1995年。母と妹とトレーラーで暮らす白人青年B・ラビットこと、ジミー・スミスJr.
エミネム)はラップに夢中で、通勤中でもリリックを綴っている。
得意のラップで成功して8マイル・ロードを越えて、貧困や犯罪から抜け出すのが夢だ。
しかし「ラップは黒人のもの」という世間の先入観やプレッシャーから、
友人達の猛烈な後押しもむなしく、ジミーはシェルターで行われるMCバトルに
なかなか勝ち残ることができずに燻っていた。
バイト先のプレス工場で、モデルを夢見る少女・アレックスと恋に落ちたジミー。
だが成り上がりを焦る彼女は別の男と関係を持ち、ジミーは裏切られ、絶望する。
貧困を、差別を、裏切りを、越えることはできないのか?ジミーは千切れそうな気持ちや
諦められない夢のために、マイクを握る・・・

この本気にはやられた。
エミネムの真剣な眼差しに、刺さるようなラップ。
彼が演じるジミー(半自伝だから、エミネム自身の過去でもあるだろう)にもたれかかる
深刻で重すぎる社会の事情、家庭の事情(母親はアル中で、仕事もしていなかった)、
白人のラップなんて受け入れないという「逆差別」や偏見、そして自分自身の恐怖感、
そのすべてをジミーはぶち開けて、自身のラップで撃ち抜いてみせる。
外側の不条理には、怒りをぶちまければよいけれど、内側の不条理、つまり自分の弱さは
誰を責めることもできない。自分で越えていかなけらばならない。
例えそれが外側の不条理に傷つけられ続けてできてしまった傷であっても、
どれだけ巨大なものであっても。
知らなかったが、エミネムのトレードマークは染め上げた金髪だそうだ。
でも本作でジミーを演じきるために髪を本来のダークグレイにして
裸の姿、「武装解除」したスタイルで本作に臨んだのだという。
ささやかなことだが、こうした小さな「実行」の積み重ねが
大衆にエミネムの本気を伝え、大ヒット映画にまで持っていったのだろう。

嘆くのは案外簡単だ。辛い苦しいひどいと喚き続けていればいいだけだ。
しかし、その状況を本気で越えていくことはとても困難で、本気だけで全員が
越えていける保証はない。けれど越えるためには必須の条件なのだ。
本気を出せ。本当に困難な状況を越えていきたいと願っているのなら。
エミネムからの渾身のメッセージが、全身に重みをもって強く響いた。



シンデレラ・ボーイ、シンデレラ・ガール、そして成り上がり。
奇跡がもたらしたものも、汗水垂らして駆けずり回ってようやく得たものも
あるけれど、その全てをもたらしたり、チャンスをモノにすることができたのは
彼らのひたむきで純粋な、一日たりともたゆむ事のない生き様の結晶なのでは。
実際に社会で大きな成功を収めたり、ラッキーを手にする人ってどんなんだろ?って
下の方で毎日燻ってる自分などは時々想像しますが、信じていたいものです、
諦めない人間、本気な人間、心の綺麗な人間にこそそれらが降っているのだと。
そして、いつか自分だって・・・!

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プロフィール

燃える朝やけ

Author:燃える朝やけ
・音楽、映画、漫画・・・雑多な題材をとりあげ、レビューのような感想のような、「好きなものの話」をしています。音楽寄りの題材が多めかも。
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