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ざっくり映画ライフ:その7 困難な状況のなかで生きる少女達(赤い文化住宅の初子、百万円と苦虫女、フラガール)裏テーマもあるよ!
今回紹介する映画の主人公は、みんな、地を這って、時に人に踏んづけられながら
それでもどっこい生きている、不器用だけどあきらめられない少女達。
時々甘く、時々切なく、時々目も当てられない、切実な3作をどうぞ。
①赤い文化住宅の初子
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中学3年生の女の子・初子は兄と二人暮らし。母は亡くなり、父は蒸発した。
兄は高校を中退し、仕事に就いたりやめたりを繰り返しながら、自らと初子を養うが
家計はギリギリで公共料金さえしばしば止められ、兄は初子に暴力的に振る舞う。
初子はラーメン屋でアルバイトをして家計を支え、高校進学を夢見るが
工場勤務の兄は初子の進学に反対。何もかも苦しい初子の毎日だったが、ひとつだけ
救いがあった。それは、同級生でボーイフレンドの三島くんの存在だった・・・
開始早々「生活保護を申請しろよー!」と突っ込みたくなってしまったが
(兄は仕事がないわけではなく、収入が少ないのと風俗などの浪費癖が酷い「だけ」で
保護を受給しているのにあのような困窮具合なのかもしれないが、後に述べる理由から
申請自体していないとみるのが自然かと思われる)
この兄妹がそれを申請しないのはほぼ間違いなく、父への意地だろう。
ホームレスになった父がある日突然兄妹のもとへやってきて、父が兄に「初子を高校にも
行かせられないなんて」と悪態をついて大喧嘩になるシーンがある。
貧困の再生産、それに虐待の再生産が起きていると思しき父兄。
世界のどこにも居場所がなくて、思うようにいくことは何一つなくて、真っ暗闇で生きる
初子をたったひとつ、しかしいつも確かに照らすのは三島くんの献身的な愛情だ。
やりきれない日常に、ダイヤモンドのかけらのような小さな恋がせつないほど映える。
ラストは、凄惨だが、初子と兄の行き詰まった暮らしに踏ん切りをつけ、前へ進むために
ある意味起こるべくして起こった事件。
これから兄妹や三島くんがどうなるかは分からないが、微かな希望が最後に生まれる。
ダメ兄に塩谷瞬さん、写真の中にいる亡きお母さんに鈴木砂羽さん、ホームレスまで
成り下がってひと悶着起こす父親に大杉漣さん、担任教師に坂井真紀さん、
意外なところでは桐谷美玲ちゃんが出演している。
初子や三島くんは無名俳優さんだが、それがかえって純粋無垢な感じになって良い感じ。
②百万円と苦虫女
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前作と同様、タナダユキさん監督の作品。
ドリーミーなロードムービー風に色づけしてあるがこの少女もなかなかの苦労人。
蒼井優ちゃん演ずる主人公・鈴子はフリーター。女友達とルームシェアしようとしたら
なぜかその彼氏も一緒で、しかも喧嘩して女友達が逃げてしまい鈴子は彼氏と二人きり。
この男がまたいろいろと嫌な奴で、鈴子はキレて彼氏の持ち物を窓から全て投げる!
そうしたら塀の中に入る羽目に。受刑を終えて実家に戻ってきても家に居場所がなく、
息苦しくなった鈴子はひとり家を出て、日本各地を転々として暮らすようになる・・・
海辺の町、山あいの村、ある地方都市、どこでも鈴子を求める人や落ち着ける居場所は
ちゃんといる・あるのだけれど、人間関係が苦手な鈴子はいつも躊躇ってしまい、
そこに「前科持ち」という消せない経歴がとどめを刺す。
とりわけ、「ある地方都市」のホームセンターで出会った、森山未來くん演ずる大学生・
中島とは最後までうまくいくのではないかと誰もが思うはず。
鈴子は中島には前科のことも、百万円貯めたら次の街へ引っ越すつもりだとも、
全てを話したうえで、中島は鈴子を受け入れ、慎ましくも穏やかな同棲生活を送った。
しかし「百万円貯めたら鈴子が去ってしまう、それなら・・・」と考えた中島の作戦が
かえって誤解を生んでしまう。
山あいの村で鈴子に優しくしていたお人好しの農家の長男(ピエール瀧さん)もそうだが
鈴子を想う男性達はみんな気弱で不器用、肝心な時にうまくやれない。
彼らの不器用さ・気弱さと鈴子の不器用さ・かたくなさによるすれ違いがもどかしい。
泣けるのは、鈴子の小学生の弟との、手紙でのやりとり。いじめられっ子の弟だったが
地元の仲間に前科持ちと言われてやり返す鈴子を思い出し、勇気づけられ、強くなっていく。
だけど当の鈴子はなかなか人を受け入れられず、「また逃げてしまった」と涙する。
鈴子は人には不思議と恵まれているのだから、心の壁を乗り越えれば安息まですぐだろう。
どうかその厚い壁を越えてほしいと切に願わずにいられない。
③フラガール
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町をあげた「困難な状況を這い上がる物語」。大ヒット、数々の受賞などがあったので
ご存じの方も多いのでは。
しかも本作は実在する町の、実在する施設の、実在する先生の(、実在する生徒がモデルの)
本当にあって今でもつづいている物語だというのだから一層胸が熱くなる。
福島県いわき市の常磐炭鉱は大幅な規模縮小に追い込まれ、町は危機的状況に陥り、
町おこし事業として常磐ハワイアンセンター(現:スパリゾートハワイアンズ)を立ち上げる。
フラダンスの講師として、本場仕込みの高飛車な女・まどか(松雪泰子さん)が呼ばれ
「やってみたい」と集まったのは、早苗(徳永えりちゃん)、早苗に強引に誘われた紀美子
(蒼井優ちゃん)、泣き虫の大女・小百合(南海キャンディーズしずちゃん)などごく僅か。
当初は早苗の付き合いだった紀美子は、まどかの優美で力強い踊りを覗き見て、
フラダンスに本格的に魅せられる。
しかし町には反対派の声が根強くあり、その中でも紀美子の母・千代(富司純子さん)は
強硬な反対派で、紀美子は勘当され、家出してフラダンスに打ち込むことになった。
年が離れた兄・洋二朗(豊川悦司さん)は紀美子を心配する一方で、まどかに出会い、
借金取り(寺島進さん)に追われて苦しむまどかを助けたりと、心が通じ合っていく。
フラダンスの踊り子たちはその後、飛躍的に増加、日本各地を行脚するうちに
次第に踊りの実力もメンバー間の絆も出来上がっていくのだが、困難は次から次へと・・・
あきらめない少女達、あきらめない大人達が奇蹟を起こす。
田舎町に赴任させられて腐っていたまどか、紀美子と千代の母娘対立、
ハワイアンセンター事業反対派たちなど、いがみ合い、硬い表情をしている人々が
フラダンスを通じてだんだん氷解し、南の島さながらに暖かい人情が生まれる。
物事は単純にはいかず、その行き場のない苦い怒りすら燃料に変わる。
時代性(昭和40年代前半)もあってやや暴力的な描写にちょっと引く場面もあるが、
大きな感動がすべてを帳消しにして、観る側に希望を与える。
「現在のフラガールがどうしているか」以前放映していたドキュメント、
見逃していましたが、DVDになってます。
因みに昨年の震災によせて、松雪さん、富司さん、蒼井ちゃん、しずちゃんなど出演者が
1000万円の義援金をいわき市に送ったそうで。
![]() | がんばっぺ フラガール! ―フクシマに生きる。彼女たちのいま―【DVD】 (2012/07/21) スパリゾートハワイアンズ・ダンシングチーム 商品詳細を見る |
これは観たいですね。いや、いまこそ観なくては。
いやぁ、女の子って強い生き物ですわ、ホントに。
世の男性の皆さん、あんまり強くないという女性の皆さん、ぜひ彼女達にあやかりましょう!
最後に、今回のざっくり映画ライフには、ひっそりと裏テーマが。

ベリーショートになった蒼井ちゃん、可ー愛ーい!
周囲は誰も同意してくれませんが(苦笑)それでも良いんです!
なんでも、「生まれたとき以来」のこんなに短い髪型だとか。
イメージががらりと変わって、これまでとはまた全然違う役どころが観られそう。
そんな日が今からとっても楽しみです。
※おまけのおまけ
先日のFC2ランキングのリザルトが過去最高を更新!
日記 1483位 (昨日:4019位) / 438961人中
その他 490位 (昨日:1236位) / 69919人中
更新日時:2012/10/22 09:17
皆様のおかげです。心よりお礼を申し上げます。これからも頑張ります!