Latest Entries
【CDレビュー/感想】TM NETWORK:BEST TRACKS~A MESSAGE TO THE NEXT GENERATION~
今回はTM NETWORKのベストアルバムを。
以前、シングル・ベストの「TIME CAPSULE」を入手して、ずっと聴いていたのですが
再始動前の音源をシングルからアルバムまで網羅して15曲選んだこのベストも
興味深いセレクションなので。
実はベストアルバムの感想・レビューって初めてなので
試行錯誤のつもりでやってみます。
BEST TRACKS 〜A message to the next generation〜という
入力に骨が折れる長いタイトル、まあ凝り性の彼ららしいっちゃらしい。
![]() | BEST TRACKS~A message to the next generation~ (2000/03/23) TM NETWORK:TMN、TM NETWORK 他 商品詳細を見る |
活動の一時期には「TMN」名義だったこともあり、ジャケットには「TMN」の三文字が
まず冠されている。
2000年、レコード会社移籍に伴い、旧レコード会社がメンバーの意向に関係なく
リリースしたものだが、このセレクションからかえって
メンバーの外側から見たTMが見えてくるかと考えた。
全曲感想・レビューをしながら、このユニットを概観してみたい。
1.LOVE TRAIN
一番売れたシングルが最初に入っているといういやらしい作り(笑)
活動休止前最後のアルバム「EXPO」の時期の曲。
90年代の音楽が青春という世代の私は、この曲がTMの曲のなかで最も好きで、
最も耳馴染みがある。幼少期、F1中継のCMで、カメリアダイアモンドのテーマソングに
なっていたこの曲をぼちぼち耳にした記憶があるのだ。
今聴いても古びない泣きのギターと、対照的に時代を感じる機械的なドラムビートの
イントロだけでもうロマンティックで、心をぐっと掴まれる。
そのまま切なく駆け抜けて、最後の転調がたまらなく盛り上がる!
夏が舞台なのに冬が妙に似合う気がするのはなぜだろう。
2.BE TOGETHER
2000年にTMを初めて聴く世代に向けて作られたとおぼしきこのアルバムらしく
前年にリリースされて大ヒットした鈴木あみ(現・鈴木亜美)のカヴァーの
原曲はここにござれとばかりに持って来た感じ。
アルバム「humansystem」収録曲で、シングルではないけれど
ファンの間では名曲と名高かった曲。
あみーゴのヴァージョンで初めてこの曲を知った世代なので、
最初はTMヴァージョンは違和感があったが、慣れるとこれっきゃなくなる。
ハッピー感、青春感が半端ない!
トキメキとエネルギーとスピード感に溢れている。
3.COME ON EVERYBODY
アルバム「CAROL」収録曲でシングル。
シャープなアレンジがキレキレ、特にリズムセクションがいい。
真新しい曲と言われてもわからない新鮮さ。
「CAROL」期の曲はどれもキャッチーで洗練されている。
サビの転調で一気に引き締まる。ダンサブルでクールでとても格好良い。
4.Kiss You
個人的にTMで一番の名盤だと思っているアルバム「humansystem」収録曲で
シングル。後にリミックスエディションもシングルリリースされている。
ブラスアレンジでちょっと大人に。
「洋楽志向」が前面に出て、ファンクで締まった格好良い曲。
この曲も古びない名曲。
流れるように繰り出させる言葉数の多いAメロ~Bメロもいい。
コムロさんの一癖あるコーラスが聴ける。
5.RHYTHM RED BEAT BLACK
TMNとしてリニューアルしたアルバム「RHYTHM RED」の
いわばタイトルチューンで、後にシングルカット。
ロックなアルバムのなかの渋い佳曲。
アーバンな曲に乗るのは、現在でも活躍する名脚本家の坂元裕二さんの
アーバンでドライな、トレンディドラマからそのまま飛び出してきたような詞。
TMといえば青春のイメージが強いが、成熟したオトナのミリョクもいいじゃない。
当人たちは当時30過ぎだったんだし、そうなるのが自然というもの。
6.金曜日のライオン
一転して若々しいデビュー曲。アレンジに時代を感じる。
YMOっぽさもありつつ、このユニットの音楽はデビューから一貫して
「ダンス」なんだなあと実感させられる。
疾走感がいい。
7.アクシデント
これも昔の曲。3枚目のアルバム「CHILDHOOD'S END」収録曲でシングル。
昔のTMは少しベタというかバタ臭い、歌謡曲っぽい匂いがする。
哀愁があるというか。でもここにもいい味がある。
この曲は青春の爽やかさが香り立つ。
8.HUMAN SYSTEM
アルバム「humansystem」から3曲目は実質タイトルチューン、1文字空くけれど。
モーツァルトの「あの」お馴染みの曲のリフをいただいた大胆なイントロに、
小室みつ子さんによる、少年少女たちの甘酸っぱいすれ違いの物語。
フレッシュで切なくて、当時の若い子にTMが愛聴されたのもよくわかる。
9.FOOL ON THE PLANET
ブレイク前夜のアルバム「SELF CONTROL」収録曲。
ビートルズの「Fool On The Hill」を連想させるタイトル。
アルバム「SELF CONTROL」にはなぜかそういう曲がちらほら。
6/8拍子のゆったりした曲。キネさんらしい曲。
こういった癒しサイドがあるのもTMの大事な魅力。
10.SELF CONTROL
直球の青春ソング。アルバム「SELF CONTROL」収録曲でシングル。
駆け抜けていくような鮮やかさ、一気に希望が広がっていくような
「陽」のオーラいっぱいのメロディ、アレンジ。
挫折から立ち上がっていく瞬間を捕らえた歌詞と併せて、胸がアツくなる。
11.ALL-RIGHT ALL-NIGHT
#9から#11までアルバム「SELF CONTROL」から、色の全然ちがう曲が続く。
こちらは、華やかなブラスアレンジにのって、サクサクと進むナンバー。
スラップ混じりのファンキーなベースがいい感じの重さを出している。
TMはユニットながら、結構バンドっぽい音を出していることに気付く。
12.WE LOVE THE EARTH
一転してアルバム「EXPO」収録曲、「Love Train」との両A面シングル。
90年代になるとTMは打ち込みサウンドの楽曲が目立つようになる。
地球平和を訴える趣旨の歌詞、主張はやや「パワー・トゥ・ザ・ピープル」的だが
聴き心地はとても爽やかなダンスナンバー。
13.DIVE INTO YOUR BODY
快楽の渦にワーッとなだれ込むような、徹頭徹尾パーッとした曲。
夏の享楽的な刹那がよく出ている、痛快なダンスナンバー。
TMがTMNにリニューアルする前夜の時期にリリースされたシングル。
この辺の楽曲がオリジナルアルバム未収録なのは勿体ないな。
TMの楽曲のなかでもかなりお気に入りの曲。
14.WILD HEAVEN
「Love Train」と同年の1991年にリリースされたシングルだが、
アルバム「EXPO」には収録されていない。
#13の享楽的なムードを、テクノロジーの進化によって更に強化したような
ダンサブルで楽しい曲。
けれど何か「終わり」を感じるのは、もうすぐ活動終了だという
予備知識が先に頭にあるからなのか?
15.GET WILD
言わずと知れた代表曲で幕を閉じる。
実はオリジナルアルバムには収録されていないシングル。
若さゆえの衝動や焦燥をクリアに切り取ってみせたのが名曲たる所以。
当時のライヴでは、後にB'zを結成する松本孝弘さんのギターを楽しめる。
ダンス×青春=王道TM、その堂々ど真ん中をいく。
80年代から1994年のTMN活動終了のTMを、90年代後半~00年代の視点から
捉えてみるとこうなりました、といった感じか。
メンバーやリアルタイムでTMを追っていたファン(FANKS)の認識に
どこまで近いんだろう、このセレクション。
TM関連の文章をよく書いている藤井徹貫さんのイントロダクション文が
あるくらいだから、まあそんなに迷うこともないんだろう。
そうなるとTM NETWORKというユニットは「ダンサブルときどき歌心、
青春ときどきアダルトな世界」ということになる。
TMの作品を大体コンプリートした、後追いの自分からすると、
あれが入ってないこれはそんな必要か?などという声も出てくるとはいえ、
最大公約数はまあこんなところになるんだろうか、となるな、確かに。
多面性を持ったユニットの10年をアルバム1枚にまとめるという
難しい命題を持っている本作。
ほとんどの作品を揃えた後であえて出会ったこのベストアルバム、
無人島に1枚だけTMのアルバムを持って行くなら確かにアリかもしれません。
・・・・・・いや、やっぱりhumansystemかな?
楽しい迷いです。
FC2 Blog Ranking参加中。クリックで応援お願いします!

【CDレビュー・感想】SPEEDWAY:ESTAR/BASEMENT
友人が唐突に貸してくれたのです。
貸してくれなかったら、一生聴けていなかったんじゃないかなぁ。
手に入るなんて発想がなかったから、探そうとも思っていなかったもの。
そんな一枚、正確には二枚の、感想/レビューをどうぞ。
THE ESTER & BASE AREA
商品をそのまま紹介しようと思うと、画像が出てこない。
さすが1990年リリースの、超レア音源である。
![]() | ゴールデン・ベスト (2003/03/19) SPEEDWAY 商品詳細を見る |
2003年にリリースされたベスト盤。ここに入っている楽曲の多くが
今回紹介する、SPEEDWAY(スピードウェイ)のTHE ESTER & BASE AREAから
来ていると思われる。
SPEEDWAYとは、あのTM NETWORKのメンバー、
宇都宮隆氏(以下ウツさん)・木根尚登氏(以下キネさん)・そして
一時的な参加ではあるが小室哲哉氏(以下コムロさん。てっちゃんとは流石に呼べない・・・・・・)が
在籍していた、実質的にTMの前身と言われることの多いバンドである。
2007年にTMがリリースしたアルバムのタイトルは、まぎれもなく、このバンドからである。
![]() | SPEEDWAY (2007/12/05) TM NETWORK 商品詳細を見る |
・これがTMの前身!?耳を疑う「エスター」
二枚組アルバムの一枚目である。
戦隊もののような「パパパパパ、パッパー」というイントロ、
「夜が明けるまで 飲もう~と オ~~イェイ」という歌い出し。
いま何が起こったのか?!私はTM NETWORKの前身のバンドの音源を
聴いているのではないのか?!
TMとは似ても似つかない曲調に、耳にしている音源を信じられなくなる。
まあ、そりゃそうだ。確かにTMのメンバーが三人在籍していた(時期もあった)が、
スピードウェイは、六人あまりもメンバーがいる大所帯のバンドで、
リーダーも中心人物もコムロさんじゃなくてキネさんで、全く違うバンドと思った方が良い。
カラッとした、脳天気な、しかし歌謡曲調にねっとりした、「アメリカン・ロック」のバンドの
作品なのだから。
そのカルチャーショックをより強く感じさせる作品が「エスター(THE ESTAR)」である。
・TMの序章的な色合いが強まる「ベースメント」
二枚組アルバムの二枚目である。
![]() | BASE AREA (2006/09/29) SPEEDWAY 商品詳細を見る |
この作品はAmazonで出てくるだけでなく、2006年に再リリースされている様子である。
一気に垢抜けた印象を受ける。
前作にあたる「エスター」が再リリースされず、こちらだけ再リリースされる理由も頷ける。
こちらにはコムロさんが参加していて、半分近くの曲を書いている。
前作にはなかった、エマーソン、レイク&パーマーやイエスを思わせる音色の
目立つシンセサイザーのサウンドが一曲目から見受けられる。
こんな具合に、僅かではあるが、確かにTMの影が見え隠れして、次の展開が
読めなくはない。
globeの「Sa Yo Na Ra」そっくりな曲もあるし・・・・・・
(しかも「スマイル・アゲイン」という曲で、歌詞もさよならがテーマだし、そのまま?)
但しバンドの世界観は相変わらずで、「ランチボックスはママの手作りパイ~」などとウツさんが
歌い上げているような曲が、ぼちぼち「ガクーーーッ」とさせてくれる。
しかしコムロさん一人の存在でこんなに変わるとは。
この後、コムロさんはTM NETWORK結成のために脱退し、後にウツさんとキネさんは
それに参加することを承諾、バンドは空中分解してしまうのだが、何だか納得できる。
他のメンバーには、たまったものではなかっただろうが。
・何かほっとする作風から、グッと引き締まる作風へ
「エスター」は、ほぼ全ての作曲をキネさんが行なっていて、キネさん色が強い。
アレンジを当時のメンバー全員で行なっている。
後にTM NETWORKでキネさんがアルバム用につくる、いわゆる「キネバラ」の片鱗が
かなりはっきりみられる。同じ人の作品だから当然といえば当然なのだが。
アメリカン・ロックを標榜しながら、湿り気のある歌謡曲やフォークソングっぽさをも漂わせる。
「癒し系」といえそうな雰囲気のある「エスター」に対し、「ベースメント」の方では
プログレっぽい試みに挑戦している楽曲まで登場するし、音も引き締まる。
「ベースメント」ではコムロさんとキネさんの作曲の割合が半々。
曲もやはりそれっぽくなる。曲とアレンジでバンドは変わるもんですな。
・歌詞はメンバーが書かない
歌詞はメンバーが書かない、外部のライターさんに発注する。
後のTM NETWORKの路線への繋がりを感じさせる拘りである。
実際のところ、拘りなのか、書けるメンバーがいなかったのかは分からないが。
・ウツさんがビブラートを!
ずっと、ウツさんはビブラートをかけ「られない」シンガーなのだと
TM NETWORKやソロを聴いて、思っていた。
だがそうではなく、TMのビートの為にそれをあえて捨てた、
元はかけられる、かけ「ない」でいるシンガーなのだという事実が、本作を聴くと判明する。
これはかなりびっくりした。
歌い方のアプローチが、楽曲と相まって、何かどことなく西城秀樹を思わせる。
・ブックレットに若きウツさんキネさんコムロさんいました
これもカルチャーショックであった。ベースメントの方にモノクロで載っていたのだ。
時代性か音楽性か、みな一様にグルグルパーマをかけて、みな一様に痩せている。
ウツさんは、もやしながらもさすが男前のハンサムである。
コムロさんは女性か女装なのかという長髪で、メイクもしている模様で、服装もアレだ。
で、キネさんである。TM NETWORKではずっと(今も)グラサンをかけて顔をガード、
目元は謎のヴェールに包まれている、あのキネさんである。
「Love Train」のジャケットで露わになっちゃった下がり眉が、見る者を
「あ、ヤバい」ともれなく思わせてくれてしまうキネさんである。
![]() | Love Train/We love the EARTH (1991/05/22) TMN 商品詳細を見る |
スピードウェイの作品では、素顔が、目元が、露わになっている!
THE ALFEEの坂崎さんにちょっと似ているような感じだ。
TMで目元が露わになるとタブー感凄まじかったが、ここでは至って自然だ。
ってか、そりゃそうだ。
TMでは三人目のメンバーとして端に佇んでいるというパブリックイメージがあるが
ここではリーダーで中心人物。佇まいも変わるというものだ。
ラスボス感すら漂わせていて、ちょっと偉そうなスネ夫って感じである。
皆さんも是非ググったり、現物を探してみたりして、その勇姿を確かめていただきたい。
・月光仮面のおじさんが
本作でなく、それとは別に友人から借りたベストに収録されていた
「Rockin' On the 月光仮面」というシングル曲がある。
これがまたショッキングだった。
TM NETWORKの前身が「月光仮面のおじさんが」とか言いながら
歌って、奏でているのである。
まあ言うまでもなく、「月光仮面」のために作った曲なのであるが
あの三人が「月光仮面はだれでしょう~」という曲を奏でているのが
信じかねる。いやはや、時代ってすげえや。
だいぶ失礼なことばかり書いた気がします。
特にキネさん、ご無礼をお詫びします・・・・・・
でも、まあ、これが率直な感想であります。
今でも自然に聴ける二枚一組の名盤。
古くて新しい魅力を放っています。
FC2 Blog Ranking参加中。クリックで応援お願いします!
