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吾輩は主婦である「クドカンが昼ドラを手がけちゃった!漱石好きも、文学とかどうでもいい人も、笑って観られる全8巻」

以前のざっくりドラマライフ・クドカン特集で「見つからない」と嘆いていた
クドカンこと宮藤官九郎さんによる、まさかの昼ドラ
吾輩は主婦である」のDVDをTSUTAYAで発見!
そりゃもう、観ないはずがありません!早速感想~レビューをしちゃいます。

吾輩は主婦であるDVD-BOX 上巻「みどり」吾輩は主婦であるDVD-BOX 上巻「みどり」
(2006/10/25)
斉藤由貴、及川光博 他

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吾輩は主婦であるDVD-BOX 下巻「たかし」吾輩は主婦であるDVD-BOX 下巻「たかし」
(2006/11/22)
斉藤由貴、及川光博 他

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その前に。
つくづく、DVDをレンタルしてくると悩まされることが。
それはノイズ、そして動作ストップ、飛び飛び再生!!!
レンタルショップよ、DVDの盤面きちんと綺麗にしといてくれよ!
毎度毎度まともに再生できず、かなりのフラストレーションになりました。
全8巻をコンプリートするのに何が一番大変だったかっていうと、こ・れ。
DVD開いた段階で裏面が既に傷だらけってパターンもよくあるんですけどね。
今回はこのパターンにも近かった。あぁぁぁぁもう、疲れました!

さ、気を取り直していざ感想~レビューにかかりましょう。
大きく4つの論点にわけて書いてみます。

<ストーリー>

・これ本当に昼ドラ?!
全8巻観たが、どうみても普通のドラマにしか見えなかった。
観たことないのでイメージになるけれど、昼ドラってもっとドロドロ・ヌラヌラ
愛憎劇が渦巻いてるもんじゃないの?
クドカン作品のノリや小ネタが主婦層にわかるともいまいち思えず。
もしかして今の朝ドラの人みたく「今までなかったような昼ドラを作りたい」って
あえてクドカン流を貫いたのかも。
一応、ベタなホームコメディが基盤にあり、そこで主婦層に訴えたのかもしれないが。

・荒唐無稽な設定にもかかわらず、なぜか受け入れられてしまう不思議
何と!ある日、普通の主婦・矢名みどり斉藤由貴さん)に、旧千円札から出てきた
夏目漱石の魂が乗り移って、みどりの魂はお札の中に封じ込まれてしまうという話。
折しも本作が放映されていた時期は2006年春夏と、時事ネタではあったけれど、
いくらなんでもそんなわけ、家族や周囲の人が信じるわけ、視聴者が信じるわけ・・・
・・・って言ってるとなぜか普通に受け入れてしまっている登場人物や自分がいるわけ。
うーん、どうしたものか。これぞクドカンマジック?
自分の場合、クドカンものしょっちゅう観てるのでこの手の強引さにはすっかり慣れて
いるが、そうでない人の場合は、演劇をTVドラマで観てると思えばいいはず多分。
思い切りコミカル系劇団のノリだもの、突飛なストーリー、大仰な演技、強引な展開。

・ある種、タイムスリップものとして楽しむこともできるかもしれない
家族にとっては不可思議現象だけど、漱石(以下、劇中の通称「吾輩」)にとっては、
明治から平成へタイムスリップするし、容姿も性別も変わっちゃってるし、
というか全くの他人に転生してるし、もっととんでもない事態になっているはずで。
みどり転生時の吾輩は37歳、あの名作「吾輩は猫である」を書いたばかり。
書いてない未来の著作を目にするわ、自らの死期や死因までわかってしまうわ、
明治の面影は跡形もなく、未来の見知らぬ文明に囲まれているわ・・・
寧ろ吾輩は神経症にも陥らず、胃炎もそんなに起こさず、よく適応していると思う。
だってこれ、倫敦留学級のアウェイだもの。

・DVD全8巻という長さを端折らずに観られてしまう愉快な「途中経過」
みどりが吾輩に乗っ取られて、でも最後にはみどりに戻って終わるんでしょ。
ドラマや映画や小説を何作か観たり読んだりしたことがあるなら自明の話。
全4巻だと思いこんでレンタルしたら後日「あ、足りない!」で残りを急に補充、
でもこんなに観るのは面倒だから、2巻まで観た時点で「もう8巻を観ちゃおう、
そうすりゃ十分に感想書けるだろ」と、3~7巻を思い切り端折るつもりでいた。
それで惰性で3巻を観たら・・・あれ、おもしろい。
ドタバタした群像劇の一つ一つ、キャラの一人一人が際立って、こりゃ愉快愉快。
その群像劇も回を重ねるごとに繋がっていくから、見逃すと話がわからなくなる。
1巻でも端折っていたらラストは訳がわからなく、感慨も湧かなかっただろう。
キャラの魅力については後の項にて。

・サブテーマ?のミュージカルが意外と楽しい
中盤以降はストーリーの展開に緊迫感とスピードが出るので大きく頻度が
落ちるけど、序盤はほぼ毎回のように何かにつけミュージカル場面が登場。
なにせ、みどりと夫のたかし及川光博さん・以下ミッチー)は
学生時代のミュージカル研究部で出会って恋に落ちて結婚に至ったのだから。
そして行きつけの喫茶店の店長・ゆきお川平慈英さん)は部の先輩で、
とても暑苦しいハイテンションでしょっちゅう店内にてミュージカルを繰り広げ。
歌の内容は相変わらずのクドカン節で馬鹿馬鹿しいことこの上ないけれど、
斉藤さんのシフォンケーキのような儚く美しい歌声にとろける至福のひととき。
たかし、ゆきお、他の人物による歌も楽しく、聴きごたえもある。
クドカンほんとはこっちメインにしたかった?って思ってしまいそうなくらい。

・執筆、編集~出版、CM撮影など、ギョーカイの真相がわかる?!
クドカンがリアルに関わっている領域なのでやはり描写が生々しい。
楽しいこともあるけれど、辛いこと、面倒なことのほうが多い業界。
そんな業界のなかで頑張る、吾輩、担当編集者の小松岡田義徳さん)、
CM制作会社のぼんやりスタッフ中島桐谷健太さん)、
人気作家でなぜか吾輩の書生になる朝野高橋一生さん)。
みんな頑張れ!
しかし朝野の風貌がクドカンまんまとはWikiで読んでいたけど、
あそこまでそっくりだとは予想の斜め上。初めに登場したときは本当びっくりした。


<キャラクター>

・破天荒で本当は臆病な女性キャラ、ヘタレで本当は芯が通った男性キャラ
たかしの母=みどりの姑のちよこ竹下景子さん)、たかしの幼なじみで
向かいに住んでるやすこ池津祥子さん)をはじめとするぶっとび女性キャラ。
一方、たかしや、やすこの旦那のひろしレッド吉田@TIM)をはじめとする
女性キャラたちの尻に敷かれたり、存在感が薄かったりする男性キャラ。
しかしいざというとき、オロオロ、メソメソと頼りなくなりがちな女性たちを
男性たちが理性的にしっかりとリードする展開が多くみられた。
クドカンの男性観・女性観がこのようなかたちで表現されているのかもしれない。
そういう点で、特にたかしを見ていると、何度も「11人もいる!」を思い出してしまった。
あの大家族のアホ父ちゃん(田辺誠一さん)を彷彿させるものがある。
ちょっとだけね。ミッチーと田辺さんって微妙に系統被るし。

・ウザカワイイ?脇を固める個性的すぎる人物たち
最初のうちは登場するたびにウザくてウザくてたまらない。見たくない。
しかし回を重ねるごとに妙な情が湧いてきてしまう。
そんな「ウザカワイイ」脇キャラが本作でもたくさん登場。
その筆頭が女性ではやすこ、男性ではゆきおなのだが、他のキャラも大分ウザい。
そしてなぜか憎めなくなってしまう。
小松や朝野のような、暑苦しさは少ないが、回を重ねるごとに薄味なりの個性が
だんだんクセになるキャラも合間を縫うようにぞろぞろ存在する。
こんな個性的な脇キャラが次々登場するのだから「途中経過」がやめられない。
一体全体クドカンの脳内(もしくは、周囲の友人知人)ってどうなってるの?
クドカンの一番の才能ってもしかするとこういう面白キャラ量産かも。


<中の人とか色々>

・オープニングテーマ「家庭内デート」の破壊力
DVDには1巻あたり5話が収録されていて、5話全てのオープニングテーマが
(クレジットを出す都合もあるだろうが)ご丁寧に収録されている。
このオープニングテーマで流れる曲「家庭内デート」がまたとんでもない。

家庭内デート(DVD付)家庭内デート(DVD付)
(2006/06/07)
やな家

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「ねえ聞いて お母さんね 好きな人がいるの~
それは それはね~ お父さん! 言っちゃった(はぁと)」

このあま~い斉藤さんの歌声を聞いてTVを壊したくなる女性がいるだろう。
「もしも~ みどりがはぁ~ 風邪をひいたら~
たかしは! みどりの! お粥になりたひぃ~~」

このミッチーの王子な歌い回しと振り付けでアレルギー反応が出る男性がいるだろう。
これを毎話ごとにやり過ごさねばならない。耐えられない人には、本作は向かない。
但し、本編のミッチー=たかしは至極まともだし、みどりこと吾輩の可愛げなさは
さっきまでのあま~い斉藤さんが幻に思えてくる。だからなるべく耐えてほしい。
ラストまで報われないたかしの、妄想の世界なのかもわからない。

・斉藤由貴さんってやっぱすごいんだなあ
みどり、吾輩、ある回で登場するみどりそっくりの女性。
発声から顔つきから所作から全然違う。
「漱石が主婦に乗り移る」なんて荒唐無稽なお話がドラマとして成立するのは
この人が演じているからに他ならない。思わずその演技に見入ってしまう。
ただ、吾輩はちょっとわめきすぎで、他のクドカンドラマヒロインの例に漏れず
やっぱりうるさい(苦笑)

・情けなくてかっこいい神戸君を観たい人におすすめ?
正直ミッチーはどの作品を観てもミッチーに見えてしまう私。
だけどその独特の雰囲気が何だか面白くて、つい出演作品が気になっている。
神戸君からイヤミを減らして、そのかわり場当たり的な正義ではなく
素直な自分の義侠心で動けるようにしたのがたかし、という印象。
ピークは過ぎたかもしれないが、「相棒」レギュラーも終わったことだし、
もう一作くらいミッチーをクドカン作品のメインで観てみたい気がする。
でも、その系統のポストは田辺誠一さんで埋まってしまったのかな?

・「泣き女」で終わらない貫禄
韓流スターのペ・ヤングンに夢中で、やすこと一緒に遊び回ってばかりいる
還暦未満にしたって元気いっぱい、感激屋の未亡人おばあちゃん、ちよこ。
落ち着きないほど若々しいけど、締める場面ではしっかり締める、それもまたちよこ。
ファンキーかつ深みのある竹下景子さんが観られてとても楽しい。
因みにこの「ヤン様」、本作のディレクターさんなのだとか。
いいの?いろんな意味で、いいの??

・時事ネタ・意外なあの人
何と仰天、今をときめく有吉が出ているではないか!!!
毒舌どころか、情けなくて存在感が薄い旦那さん役を演じている。
元ヤンで今は草食系パパ、ひろしを演じるレッド吉田、いいハマりっぷり。
更に妄想のなかの漱石を、安住アナが演じている!(放映がTBSなもので)
そして、「マンハッタン・ラブストーリー」に登場したクレイジーなキャラ・
イボリー=井堀をもじって、尾美としのりさんが飯堀として登場。
たかしの元いた会社の先輩なんだけど・・・またも軽薄なキャラで笑わせてくれます。
時事ネタとしては、前述のヤン様(ヨン様)、キャミソール(インストール)、
猫ひろしのチラ出、「郵政民営化を控えて云々」という台詞など。
そういえばたかしはフルネームを矢名たかし(やなたかし)という。
一文字加えたら、あの超有名な漫画家さんに・・・小ネタがいろいろ細かいよ!


<漱石ファンとして本作を観て>
このblogで何度となく書いているが、私はそれなりの漱石ファンである。
(フリーク、信者などと名乗れないのは、「ファン」の域を超えていないから)
そういった立場からも本作に非常に興味があった。
いざ観てみると・・・

・「聖☆おにいさん」的楽しみ方もできるはずなのだが・・・
ぶっちゃけ漱石とその作品やエピソードって、特に文学好きでもない普通の人に
どのくらい知られているのだろう?
以前紹介した漱石案内書にも書いてあったような作品やエピソードが、かなり丁寧に
網羅されている。ちよこと吾輩が漱石ゆかりの地めぐりをする回さえある。
やたらとあだ名をつけたり、「甚だ」「頗る」といった「くちぐせ」が頻出したり、
夜に見た夢を「こんな夢を見た」と述懐したり、胃潰瘍になったり。
ラストはほんのちょっと「こころ」の後編に擬えた作りにもなっている。
「クドカン!ありがとう!!」とさえ言いたくなるほど、漱石蘊蓄で一杯だ。
漱石好きとしては、とても嬉しいし、そういう小ネタでクスッと笑える。
しかし同じ思いをしている人は自分のほかにどのくらい居るのだろう・・・?
文学好きはおしなべてあまりドラマというかTVを見ない人が多いし、
逆にドラマ好き、TV好きは文学なんて読まない人が多いように感じる。
「マニアックネタが少し難しいけど、それすら知りたい」と思えるギャグ漫画
聖☆おにいさん」のブッダとイエスほどの知名度はないかもしれないが、
あれに準じた面白がり方もできるドラマだと思うのだけれど・・・甚だ残念。

・てか、ジョン・レノン浅ぇよ!
漱石よりも凸りたいのは寧ろここ。ラストで、作曲の仕事に詰まったたかしが
漱石に乗り移られたみどりよろしく、ジョン・レノンが転生したかのように
振る舞っている。みどりにも「ジョンとしての台詞が浅い」と突っ込まれて
いるが・・・浅いにもほどがあるよ!クドカン、ジョン・レノン興味ないだろ!
たかしの理解が浅いという設定にしたって頗る腹が立つ!
・・・あれ?漱石<ジョン・レノンだったっけ自分??
まぁどちらも好きだということで。


観終わるまでかなりかかりましたが、飽きずに楽しめました。
そして観てるとなぜか小説を書きたくなるんですよね、書けもしないのに。
これには困らされましたが、面白いコメディだったし
ハートウォーミングな家族のものがたりでした。

またも長々とした文章を書いてしまったのですが、これでも書ききれなかったほど
細かい笑いどころ・本当は重要であろうみどころが沢山、沢山あります。

さて、このクドカンが今度は朝ドラに挑戦するとのことで、一体全体どうなるのか?
今の朝ドラの脚本家は「家政婦のミタ」の人だけどなんだか頗る不評のようだし、
夜のドラマでヒットする人が朝ドラでも好評を博すとは限らない様子。
観る時間があるか微妙ですが・・・来春は、密かにその動向を気にしたいと思います。



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小説の漫画化:その1 夏目漱石×榎本ナリコ『こころ』 「突っ込み所も多々あれど、小説の本質を違う角度からあぶり出し、現代に問う」

コミックレンタルの棚を見て廻っていたら、これでもかと並んでいる
文豪の名作のコミック化、もしくは名作をモチーフにした漫画。
流行っているようですね。
小説のほうを全く読んでいないですがボードレールの「悪の華」にちらっと
なぞらえたブラックな漫画が大きく紹介されていて、絵柄もシュールで可愛くて
ちょっと読んでみたいけれど、ボードレールにノータッチでも良いものですかね。
まぁいいのか。
他にもいっぱいありましたが、多かったのは文豪の小説の舞台を現代の日本に移したもの。
ドストエフスキーの「罪と罰」のコミックとか気になるけれど、ページを開くと怖かった(笑)
太宰治の「人間失格」のコミックも大分ホラー風味かと。興味本位で読むかもしれないけど。

さて、そんななか、以前「文豪ナビ 夏目漱石」を紹介した、我らの(私の?)夏目漱石さん。
色々ありそうな気もするし、あんまり聞いたことない気もするし、と思っていたらありました。
あの「こゝろ」が現代版になってやってきた!
その名も「こころ」。

こころ (ビッグコミックススペシャル)こころ (ビッグコミックススペシャル)
(2005/05/14)
夏目 漱石、榎本 ナリコ 他

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大分絵柄が少女~女性漫画のそれで、男性読者にはどうなのかな?と懸念はありますが
ヒロインの胸やお尻のラインの強調や、全裸の性行為シーンがあるあたり、ターゲットは
とくに女性でもなさそう。サービスサービスぅを考えると寧ろ男性向けに描いたのかも。
女性向け雑誌から出ている漫画にもそうした描写はあるから、どちらとも取れるか。

榎本ナリコさんて誰?聞いたことあるようなないような感じだけど」と調べてみたら
少女~女性漫画を描いてて(画を見ればそれは分かるが)、プラス「野火ノビタ」という名前で
批評活動も行っており、新世紀エヴァンゲリオン幽遊白書等の漫画評論と「やおい」論による
批評集『大人は判ってくれない 野火ノビタ批評集成』が「センス・オブ・ジェンダー賞 特別賞」
という賞を受賞。エヴァがアニメ→映画化される際、あの庵野監督が直接この人に意見を聞きに
いったという話を知ったときは開いた口が塞がりませんでした。
そしてこの別名でべつの活動もしており、それが同人誌活動。つまりご自身も「やおい」な訳で。

そうするとすぐに思い出すものが。
「文豪ナビ」の寄稿で三浦しをんさんが「こゝろは先生と主人公との男色風味がする」と
仰っていたこと。しをんさんは「この作家、ちょっと変わってる」というニュアンスで
(女性との描写は超弩級のロマンティストでウブなのに、男性同士の描写は
非常にねっちりしている、といった)、女性慣れしていないのでは?変わり者では?
という風に話を進めていたのですが(それでも何かはしゃいでいる感じが気持ち悪くて、
「文豪ナビ」の感想ではそのあたりをぴしゃりをはねつけてしまったのですが)
この漫画化で嫌な予感が確信へ・・・

「『こゝろ』って、腐女子ホイホイなんですか?!?!」

うへぇ、ふざけるな!漱石先生を汚してんじゃないぞ!!!
ただコミックを全部通して読んだ感じでは、さすがに漱石先生が元ネタで、しかもこれは
同人誌ではないとちゃんと線引きされているようで、あまり「男色漫画」という印象は
受けませんでした。
とはいえ先生と主人公との関係は、主人公が頬を赤らめたりして、やっぱり怪しい。
でも先生自身が「あなたはとっくの昔に、恋で動いている」「私のところに来たじゃ
ありませんか」って小説で言っちゃっているし。しをんさんが仰っていたことが
何だかちょっと分かるような「先生と私」部分でした。

「先生と私」「両親と私」をあわせて全体の3/10で、メインは「先生と遺書」部分。
こちらは普通の三角関係ものの恋愛漫画かな。


さて、明治~大正時代の狭間に書かれた「こゝろ」と、現代に置き換えた新解釈
「こころ」では、どんな風に違って、なにが見えてくるのか?
そのあたりを辿ってみましょう。

『明治天皇の崩御、乃木希典の殉死を契機に、「明治の精神」への殉死』
(Wikipediaより)といった背景があるわけがない。

「こゝろ」ではこれが根底にあるから先生が自死するのですが、そんな要素は盛り込めないので
単に(?)Kへの裏切りからくる自責の念から、「死にたがり」として20年を過ごし
「死ぬ前にたったひとりでいいから、人を信用して死にたい」という願望が、主人公と
親交を深めたことで達成されたと感じて「死んだ気で生きていく」人生の幕をようやく閉じる
決心がついたという、気持ちの流れになる。
「ちょっと一人で考えすぎ」とも感じるけど小説の先生も似たようなものだからな。

主人公と先生は海で出会わない。主人公がふと墓地に足を運んだときに
Kの墓の前でじっと立ちつくす先生を見かけたのがファーストコンタクト。
そして、主人公のアパートの向かいに先生の家があって、
空き家だと思っていたその家から先生が出てきて「そうだ。あの男だ」と気づく。

なんか、海なんて到底出かけられなさそうな、心身共に慢性的に病んでる感じの先生なのと
Kと海でやりとりしたのがトラウマになった描写か、海で出会うような陽気な展開はそりゃ
出てこない。主人公自身が無気力で「あーオレ、ウツなのかも。」って言うくらいだし。

主人公と出会う頃、先生はKの月命日を除いて20年間も引きこもり生活
単純な疑問として、毎日の食事はどうしてるの??ってどうしても聞きたいです。
近所の人が「引きこもり」と噂していたけれど、食事や食材を調達する人がいたら
それも噂されているだろうし。主人公もお手伝いさんなどに出くわした様子はないし。
「引きこもり」が一般的な問題となった世相を考えると、この設定を持ってきたのは
分からないでもないが、引きこもりは一人では出来ないのですよ。
お墓参りのついでに1ヶ月ぶんの食材を買い出し?主人公が同伴した際は、そんな
食材まみれの先生でもなかったし、夜中にご近所さんに知られぬよう買い出し?
どうにせよちょっと無理のある設定では。
小説での「働いておらず、世俗と離れた生活をしている」感じを出したかったのだろうが。

主人公が先生の長い長い手紙(遺書)を読んだ場所は、東京行きの電車の中ではなく
お父さんの入院している病院で、看病をお母さんと代わった合間に読んでいる

これは現実的だったような。小説のほうが、あんな長くて分厚い手紙をパラパラ読みだけで
「先生がどうもヤバいらしい」ってよく気づけるな、という印象があったから。
因みに、小説ではお父さんは以前から調子が優れなかったのが悪化して帰省だったが、
漫画では、倒れる→大事には至らず、主人公すぐ帰る→再び倒れ、危篤状態へ、以前倒れたのは
やはり発作だった→主人公、再び帰省してお母さんと共にお父さんに付く、になっている。

「先生と私」「両親と私」部分が現代なのに、その20年前であるはずの先生たちの
住んでいる世界がどう見たって20年前には見えない。現代になっている。

パラレルワールド?主人公の想像の世界??これはおかしい。
静の服装が今ふうなのが最たる象徴で、買い物に出かけた時の町並みもそう。
話がわかりにくくならないか?レトロな町並みや服装では読者がつかないって?
今ふうのほうが「先生とKと静の三角関係」に集中できるって?
うーん納得できません。

現代(20年前にしたって)で、お坊さんの生まれでもないのに(医者の一人息子)
数珠を常備、「精進」「道」を連呼するKさん

どう見ても新興宗教の人です。小説でも極端な人物だと感じていたが、このように
現代にぶち込まれると、完全に逝っちゃってる。格好良い男の姿で描いてあるけれど
先生の裏切り以前に、その逝っちゃった極端な思考ではどちらにせよ自死しそう。
これは小説でも感じること。Kの自死は先生のせいばかりではないのでは?
まぁ同じこと(その極端な思考じゃ生きられないわな)は、のちの先生にも言えるわけだが。

静がイマドキのエロい子
先生の奥さん「静」は、漫画では「静子=シズちゃん」と名前がつけられている。
「シズちゃん」って書いていたら、以前に記事を書いたせいもあって、どうしても南キャンの
「しずちゃん」を連想してしまって笑いそうになったけど、このシズちゃんは可愛い子。
明治~大正と現代との時代性の違いもあってシズちゃんが幼稚な言動。
身内でない男が二人もいるのに太もも丸出しのタイトなミニスカートはいて、我が儘言っては
しょっちゅうお母さん(=奥さん)に怒られている。
疑いを知らない無邪気な感じ、男二人を魅了しちゃう魔性の魅力は出ていると思う。

静(静子)は先生が好きだったから、先に告白した先生と出来たのか?
先に先生に言われたから先生と付き合ったのか?Kでも良かったのか?

小説でも謎が残らないでもない疑問で、漫画でも静子の言動が、Kと静子が近づくうちに
どちらに気があるのか、どちらにもないのか、どちらにもあるのかわからなくなっている。
先生が静子の家に下宿してきて、静子と二人で買い物に出かけ、その際に静子に服を
買ってあげた→その様子を先生の同級生に目撃され「彼女」とひやかされた、のを
きっかけに、何となく静子はポッと照れた表情をして、先生は静子に惚れたのだが、
先生がKを同居させ、静子がKのひざが出たジーンズを繕ってから、関係が変化し始める。
Kが静子に宿題を教える、Kと静子の二人きりで出かけ「どこへ行ってたかあててみて」
と先生に言うなど、静子の態度は無邪気なようにも、先生をじらしているようにも、
二人の男に淡い好意を寄せられてまんざらではないようにも、
二人を翻弄しているようにも見える。
そして、小説では先生が奥さんに「お嬢さん(=静)を私に下さい」と頼むが
漫画では二人きりになった先生が静子を抱きしめて告白、静子は
「・・・いいよ。Sさんなら、あたし・・・」と先生にしがみつき、二人は肉体関係を持つ。
小説では静の意志が奥さんに言い出した時点では分からないし、
漫画では静子は「好きだから」というより「セックスをしてみたい」という風にも取れる。
静(子)のほうでも先生が本命でKは仲の良い同居人に過ぎなかったのか。
静(子)には下心はなくとも、Kは自分に気があるのかと揺れるし先生は嫉妬する。
Cからはじまる恋愛、お見合いで双方が同意し恋愛結婚に近い結婚をすることもある。
謎が残るが、確かだと思われることは、
静(子)の態度が明確ならば、先生もKもあのような苦悩はしなかったし、
「精神的に向上心のない者は馬鹿だ」とやり合うこともなかった。

主人公と出会った時、静子は先生と連れ添っておらず、先生は一人暮らし。
Kの自殺の後に婚約するも、先生が静子に別れを告げる

本作の、時代以外で最も大きな、そして決定的な違い、新解釈。
「妻が己れの過去に対してもつ記憶を、なるべく純白に保存して置いて遣りたい」
ことが、小説で先生が静にKへの裏切りを打ち明けない理由。
「静が生きている以上は、あなた限りに打ち明けられた私の秘密として、
凡てを腹の中にしまって置いて下さい」と遺書は締めくくられる。
漫画では、Kの墓参りに二人で訪れた際、婚約し、静子が学校を卒業したら結婚すると
静子が墓前で報告し、「ね、Kさんも、祝福してくれるわよね」と先生へ振り返る所で
「自分が最も信愛しているたったひとりの人間すら、自分を理解していないのかと思うと、
理解させる勇気がないのだと思うと、悲しかった」と先生が落涙。
「私はどこからも切り離されて、世の中にたったひとりでいるような気がしました」
そうして突然の「静子。―別れよう」。
どちらも、「自分がKを汚いやり方で出し抜いて静(子)を手に入れた人間であり、
しかもそのせいでKは深く傷ついて死んだ」事実を静(子)に知られたくない心。
静(子)の心を守るようで実は自分を守りたいだけ、小説では一人置いていくことで
漫画では捨てることで、結局静(子)を深く傷つけている。
静(子)は愛する人に本音を打ち明けてもらえない痛みを、喪失感と共に抱えることに
なるのに、先生はそれよりも自分の罪悪感、自分の恥を打ち消すほうに執心する。
「自分を理解しておらず、理解させる勇気もない」愛する女との対峙の仕方の違いは、
時代性(簡単に婚約を破棄するわけにいかない)や状況(奥さんに直接願い出た)に
由来するものだろうと思われるが、印象としての相違は、
静を妻とし続けた末の自死とした小説では、「妻への愛が大事だが、気づかぬうちに
自分のエゴや罪悪感がそれを上回っていた」だが、
静子と別れ独りで生き続けた末の自死とした漫画では、「自分のエゴや罪悪感が
恋慕を上回って、人生を支配した」となり、Kとの一件がより大きな傷となって
えぐり出されているように見える。こちらの方が救いがない。ひたすら孤独だ。
小説では「それでも静がそばに居るなら、黙っていれば幸せで居られるだろうに」と
言う余地があるが、静子を捨てたのならその余地すらない。

そして漫画を読んで、ふと小説にも通じる疑問が沸きました。

主人公の青年は疑似静(子)なのか、疑似Kなのか、それとも
無邪気で単純で疑うことを知らない青年。先生をひたすら慕う青年。
それは静(子)の素直さとよく似ていたのかもしれない。
あるいは、Kとのあいだにかつてあった、健気な友情に似ていたのかもしれない。
男色ととるのもよいが、こういった「失われた関係」を補填する役割として
青年の存在が先生のなかで大きくなって、秘密を打ち明けるに至ったと捉えるのはどうか?
また青年としても、尊敬できて神秘的な同性に興味や憧れを持つのは自然な心の動きでは?
一概に男色(=恋心)と捉えるのは、こころを単純に分別しすぎではないか?
同時に、一概に「疑似」「補填」と捉えるのもまた、こころを単純化しすぎではないか?


現代の言葉遣いや話の展開に、ふぁさりと漱石のあの名文が被さる。
そこで少しぞくりとさせられます。
漱石の言葉の魔力や世界観と現代劇との攻防。
絵の荒さや、ここまでで指摘してきたちぐはぐな設定も一部みられますが
一気に読んで振り返ってもう一度読んで、記事を書きながら考証していくと
「こゝろ」が伝えていたのは何だったのか?先生はどうすればよかったのか?
もし先生と同じシチュエーションに置かれたら自分ならどうするのか?等々、
真摯に考えさせられ、もう一度小説「こゝろ」を読み返してみたくなります。



まぁ、ただ、最初に書いたほかの文豪小説の漫画化などと同じく、
小説を漫画などの可視的な媒体に置き換えると、小説で描かれている内面の苦悩って
どうもおおげさに見えてしまう
きらいはありますね。
「ちょっと暗いよ」「病んでるよ」「考えすぎだよ」と。
逆にいえば、漫画をそのままノベライズするときっと軽薄になる。
それぞれの媒体のもつ特性、得手不得手についてもちょっぴり考えさせられました。



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文豪ナビ 夏目漱石:「簡単に手に取れるけど案外深い。漱石世界をすいすい渡り歩けそうな、わかりやすくて重宝するガイドブック」

出先で時間を持て余しているとき、私の専らの娯楽は、読書。
いつも鞄のポケット部分には、2冊くらいの文庫本を入れていて、
その時の気分次第で読み分けるのですが、この頃はもっぱら夏目漱石
というか、去年頃まで振り返ると、もう1年以上ずっとダラダラと
漱石片手に歩いていることになります。
もちろん合間合間に他の本も読みながら。
最近は「隙間時間」がなんだかなくなってきたり、疲れていてウトウトしたかったりして
読書の暇がないままということも多かったので、漱石を読むのはいつもゆっくりです。
集中したい本は家で一人じっくり対峙して読むんですが、漱石の本は私にとって
「ながら読み」「待ち時間潰し読み」にうってつけ。程よく面白く、程よく薄味で。
物語が大きく動いている時以外は、まったりとそのテンポや洒落を楽しみながら読めます。
つぶさに一字一句目を光らせながら読んでいる熱心な方には申し訳ないのですが。

さて、多作な作家の虜となったとき難しいのが、「何から読むのか、次は何を読めばいいか」。
好きなものから読めばいいのだと分かりつつ、子どもの時分に「吾輩は猫である」を読んだり
高校生で「こころ」を読んだりしても、その滋味が分かるはずもなくて。
連作(漱石でいえば、三四郎→それから→門、といった)のようなパターンもあるし。
文庫本巻末についている、題名と簡単なあらすじでは、どうも十分に分からないし、
かといっていま全ての漱石本を揃えるのも・・・
三四郎」→「それから」(今ここ)→「」までは買ったものの、その後を案じているとき
その本は颯爽と、私の前に現れたのです。


文豪ナビ 夏目漱石 (新潮文庫)文豪ナビ 夏目漱石 (新潮文庫)
(2004/10)
新潮文庫

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「文豪ナビ」シリーズ、他の文豪もとりあげて全7冊あります。
そのなかの一つが漱石先生。「先生ったら、超弩級のロマンティストなのね。」という
かなり印象的なフレーズの下にいる、模写しているんだけどゆるい漱石先生のイラスト。
「はじめて漱石を読むわけではないんだけどなぁ・・・」うっすらと抵抗感を覚えながら
それでも、藁にもすがりたい迷える羊(stray sheep)の私は、頑張ってレジまでこの本を
運んでいきました。

開いてみると、まずカラー写真を織り交ぜながらキャッチーに、
こころ」「三四郎」「夢十夜」のイントロダクション「こんなとき読みたい漱石」。
次にスマホの操作画面ボタンにありそうなマークを冠したポップな目次は例の似顔絵つき。
そうして、「超早わかり!漱石作品ナビ」の表紙にはルンルン歩く蛙さんと、
読書慣れしていない人でも親しみを持てそうな親切設計。
ディープな読書好きにはイラッとくるかもしれませんが、もう少し待って。

さてさて「次に何を読めばいいのか」に悩む私にとって最大の読みどころ「作品ナビ」、
漱石おすすめコース」なるものがまず提示され、それに準じた紹介文が続きます。
紹介文はそこそこネタバレで、読む前には良いけれどいま読んでいるとキツイ(笑)。
そして「どうしよう!この順序で読んでこなかったよう!」「40歳を過ぎた大人の読み物の
吾輩は猫である』は、40くらいまで読めないの?読み返そうと思ってたのに!」
「『三四郎』三連作の前に『こころ』や『草枕』を読んじゃった!」とちょっと動揺が!
困ったぞ!どうしよう?
・・・まぁ勿論あくまでひとつの例であって、本文最後にも「順を追って門をくぐるもよし。
興味深い門に真っ先に駆けていくのもよし
」とあるので、大丈夫大丈夫。
参考にしながら、気になる門はちょっと強引にくぐって、後でまた読み返せばよいでしょう。
ナビはあくまで、ナビなんだから。

続いては「10分で読む『要約』夏目漱石」。あらすじではなく、もののみごとに、10分程度
時間があれば読めそうなくらい、きちっと要約されていてこれは本当にびっくり。
吾輩は猫である」「坊っちゃん」「草枕」の3つが登場するんですが、読んだことがない人は
「要約」ということはつまるところ結論まで示されているということ=ネタバレなので注意を。
あのシーンもあの言い回しもきちんと入って10分で要約。
「漱石ナビ?バカにしてんのか?」とご立腹のフリークの方にも、せめてこの章だけは、
いやこの章こそ、ぜひ読んでいただきたいです。

次は、「声に出して読みたい日本語」ほか数え切れないほどの著書がある齋藤孝さんによる
声に出して読みたい夏目漱石」が登場。まんまじゃないですか!
ここで味わえるのは、私が漱石を常備する正にその理由、「テンポのよい文体の小気味よさ」。
私は文体で好きな小説家が決まるタイプで、その人の文体にハマったらどこまでも追いかけ、
逆に文体にピンとこなかったら話が魅力的でもどこか居心地が悪く、その作家とはサヨナラ。
ユーモア、くちぐせ(「頗る」「甚だ」など)、流暢さ、偏屈さ。
これが癖になってしまうと漱石先生から抜けられなくなるのです。とても良い気分になれる。
そして齋藤さんも文体だけピックアップだけではなく作品やエピソードにも言及しており、
漱石文学への愛情がよく伝わってきます。

「漱石文学への愛情」ということで、続いては漱石ファンの作家2名によるエッセイ。

ひとりめは表紙のインパクトあるフレーズ「先生ったら、超弩級のロマンティストなのね。」
が文中から抜粋されている三浦しをんさん。最近書店でその名をよく見るようになりました。
「漱石作品って何か変だぞ」という話から始まって、件の「超弩級のロマンティスト」、
そして「そんな先生は実生活では、女性とどんな会話を交わしていたのか?」という流れで
随想と短編の「硝子戸の中」「文鳥・夢十夜」でその謎を紐解くのですが、
うーん何だか良くも悪くも女臭いというか、「『こころ』は男同士の恋愛では?」と騒ぐ
そのノリがどうにも、最近言うところの「腐女子」みたいでちょっと(苦笑)。
でも、「硝子戸の中」や「文鳥」は一般的にはややマニアックな作品なので、
「漱石の素の姿が垣間見られる本」として、チェックリストに入れたくなります。

ふたりめは「スキップ」「ターン」「リセット」シリーズなどで有名な北村薫さん。
こちらは硬派に、「こころ」一冊で展開。漱石というか読書ライト層を一喝するタッチです。
古書店で見かけた女子高生と店員のやりとりをモチーフに、「愛書家にとっての本とは、
新しい衣服に優先するのは勿論、食事代も切り詰め、デートの数を減らしても買うべきもの」
という「愛書家」と、その極端な主張に納得できない我々「普通の人」との溝をあぶり出し、
そこから展開して「『こころ』とは、どのように読ませるべきか、どのように学ばせるべきか」
という論に入っていきます。「文豪ナビ」という書籍の趣旨が分かっていないようにも
とれますが、「こころ」ひいては漱石文学の奥深さを伝えると共に、この「文豪ナビ」という本を
単にビギナー向けのライトな読み捨て型の読み物に留まらず、玄人層の読書にも耐えうる重みを
与える役割を果たしているように感じられます。

東京に住んでいたならこの章片手に一度は街歩きをしてみたくなる、地図イラスト付きの
漱石文学散歩」がそれに続きます。
早稲田から神楽坂までのエリアに、漱石文学のあの場面もこの場面も、漱石が人生を送った
あの場所もこの場所も集約されているようです。
硝子戸の中」「道草」「それから」「坊っちゃん」、とりわけ「硝子戸の中」から
引用や紹介があって、作品・人物、両面から漱石に興味が沸いてきます。

そして最後に「評伝 夏目漱石」。
産まれて死ぬまでの漱石の一生を辿り、そこから生まれた作品群を辿っていきます。
孤独な生い立ち、若い頃よりの多彩な才能、挫折、神経衰弱や胃炎との闘い、不器用さ、
気晴らしに楽しく書いていたはずの小説がいつの間にか自分を追い詰める苦しみ・・・
どの作家でもそうですが、漱石もまた、その生きざまが作品やそれを制作する過程に
よく反映される作家。漱石という人を知ることによって、漱石の作品も、一層良く
心に沁みて、どんな心情で作品群を産みだしていったかと、思い入れも深まります。
同時代を生きたのにタイプはまるで正反対の文豪、森鴎外との比較も印象的。
二人の人生は対照的で、なのに不思議とある部分ではリンクしていて、興味深いです。
どちらのタイプの生き方が好きか、ちょっと考えてみてもいいかも。


あっさりと始まるけれどやがて深い読み物と化していく。
簡単に手に取れる割に、色々な読み方・使い方が出来る。

軽い気持ちで買った本だけど、案外重宝して、長く手元に置いておきそうな気がします。
おぬし、なかなかやるなぁと。


それを振り返りつつ明日も隙間時間に「それから」。威風堂々とニートをしている代助は
ムカつくけれど清々しくもあり。そろそろ例の三角関係のライトが、黄色信号に変わってきた
頃合いです。ワクワクしながら、時間をじょうずに潰そうという日々はしばらく続きそうです。
続編「門」もスタンバイしているし。
というか、他の本だってまだ10冊近く置きっぱなしだし!
「本を読む」と「音楽を聴く」と「映画などのTVを観る」と「ブログを書く」と「交際」と
「一人暮らしの家のことをする」と「デイタイム」と、華麗に全部両立する方法は
どこかに落ちてないものですかねえ。

テーマ:読書 - ジャンル:小説・文学

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