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The Mars Volta:その6 Noctourniquet「虚空+宇宙+デジタルビート、最後まで混沌を極めて暴れ尽くす」

Wikipediaなんかを見てもいよいよ「実質的に解散」「最終メンバー」なんて
書かれていて、淋しさがこみあげてしまうThe Mars Voltaマーズ・ヴォルタ)。
今年のセドリック脱退がなくても、このバンド(以下TMV)は多くの問題を抱えており
どちらにせよ今後身動きをとることはかなり難しい状況にあったようです。
メンバー達も、「これが(当分)最後」との覚悟をある程度していたのではないのかな、と
感じられるような、心なしか厳粛な色合いを持つアルバム。
早速、感想~レビューにいってみましょう。


ノクターニキットノクターニキット
(2012/03/28)
ザ・マーズ・ヴォルタ

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メンバーの削減~ミニマム化
一時期はホーンセクション担当のメンバーまで居る大所帯だったTMVだったが、
アルバム毎に徐々に規模縮小を図り、今作に参加しているのはこの5人。
オマー・ロドリゲス・ロペス(Gt,Syn)
セドリック・ビクスラー・ザヴァラ(Vo)
ホアン・アルデレッテ(Ba)
マルセル・ロドリゲス・ロペス(Perc,Key)※オマーの実弟
ディーントニ・パークス(Dr)
前作まで(4thと5th)ドラマーを務めていたトーマスが脱退(という名のクビ説をよく耳にするが)、
セオドア脱退~トーマス加入の間に一時期叩いていたディーントニが正式加入。
前作までどこかしらに顔を出していたオマーの親友、ジョン・フルシアンテも参加していない。
ジョンが今作に参加しなかったのは、彼の新たな方向性「プログレッシブ・シンセ・ポップ」に
専念するためであり、これがTMVの方向性とは明後日の向きなので袂を分かったのだろうと
当初は考えていたが、今作を聴いてみるとエレクトロ・ミュージックやヒップホップなどへの
接近といった、かなり近い共通点がみられ、「やっぱり友達じゃないか」と笑ってしまったが
このように、「えっこの人も離脱するの?」といった人事移動・削除が目立った。
それが如実に「シンプルな構造」というかたちで、作品に表れたのかもしれない。

装丁担当者の変更
よくオマーのソロアルバムの装丁を手がけている、昔からの盟友、サニー・ケイ氏が
今作の装丁をも担当。今までのこってりしたジャケが好きだった人には物足りないだろうが
この手のクールなデザインが大好きな私には思い切りツボ。
中の歌詞部分までクールでスペイシー。寂寞とした感じもよく出ていて、
親友は全てお見通しというところか。

基本構造は前作を踏襲しながら、「動」的な要素が加わった
「基本構造が歌もので、宇宙空間の静けさを思わせる淋しさがあって、シンプル」という
前作の構造を今作も踏襲しながら、ピンク・フロイドの「炎~あなたがここにいてほしい」
を想起させるような、淋しさにただただ浸ってさめざめしていた前作とはうってかわって、
今作では空虚を下地に大暴れしたり、暴風雨が吹き荒れたり、デジタルサウンドなどの
これまでになかった要素を新たに加えるなど、「動」の要素が加わった。

セドリックのキャッチーでストレートな歌メロVSオマーの相変わらず捻くれたアレンジ
「ヴォーカリストとギタリスト(ソングライター・プロデューサー)の性質の違い」と
言ってしまえばそれまでだが、今作ではとてもはっきりと二人の役割分担がなされている。
今作で鳴っている音や展開されている世界は、シンプルの仮面をつけた、壮絶なカオスである。
ヒップホップのバッキングを彷彿させるトラック、エレクトロニック・ミュージックへの接近。
4thにもみられた中近東を思わせるエキゾチックなムード、スペイシー~ノイジーな音色の活用。
展開もところどころ捻れている。
大抵のバンドマンがこのセッションに居たらただただ立ち尽くしてしまうであろう音楽の中に
セドリックは果敢に飛び込んでいって、メロをつけ、歌もの音楽として成立させてしまう。
今作でも鮮やかに飛翔するセドリックのヴォーカル、艶があって、憂いを含み、感情豊かで
時にはスピード感に満ちていて、変幻自在のバッキングと激しい火花を散らして競い合う。

孤独指数&スペイシー指数がアップ
前作は、とてもシンプルで、とても淋しいアルバムだった。
そこへきて今作は、音数はずっと多いし、流行の要素もちらほら織り込んで、一聴すれば賑やか。
しかし寧ろその奥にもっと深い、深淵の世界ともいえるような孤独が見え隠れする。
歌やギターやベースやドラムやキーボード、シンセサイザーの奥に、ひんやりとして出口のない
深淵、暗闇、孤独が常に存在し、彼らの音楽・・・一種の抵抗・・・を無言で見つめている。
ドラムの音の処理(後述)や、シンセによるスペイシーなサウンドで、「宇宙空間」感も増加。

ディーントニがとんでもないことになっている
ヴォーカルよりも、ギターよりも大きな音のドラム。編集の段階でディーントニの音をわざと
大きくしているのだろう。こんなバランスの音楽、なかなかお目にかかれないので、違和感が
半端ない。メッチャクチャ叩きまくっているから、なおのこと「出過ぎ!前に出過ぎ!!」と
焦ってしまう。セオドアやトーマスともまた違う、とんでもないテクニシャンなのはわかる。
オマーが彼をかなり気に入っているのもわかる。しかし、だからといってこのバランスは
どうなのだろう?このアンバランスさこそ、今作における一番のカオスのような気もしてくる。

幅広い曲調~ヒップホップやエレクトロ、ATDIへの回帰風味、アコースティック
今作でオマーがバッキングにヒップホップやエレクトロの要素を多く盛り込んだというのは
何度か触れてきた。ほかにも、「お前らはこういう曲を聴いてライヴで暴れたいんだろ、
ホレどうぞ」と言わんばかりの(ムカつくが、彼らはこういうしたたかさを隠せていない)#11は
心なしかATDI風味のハードなトラック。それから、アコースティック・ギターが深淵と対峙して
語りあっているような、前作以上に淋しさがきわだち、深まっている楽曲も数曲みられる。
静けさと激しさの配分が絶妙。初期のエモさも中期の哀愁も前作からの静寂も、全部楽しめる。

「前作の延長でつまらない」「駄作、凡作」という声もかなりきかれた今作。
なので長らくチェックを怠っていたのだが、恒星が赤色巨星になって爆発し、死んでしまった
かのように決定的な「TMVの死」をうけてようやく手に取り、却って淋しさ切なさを噛みしめた。
「これで、終わり」「死んでいく星の最期の輝き」そういうものを感じてしまった。
それが現実になってしまったのは予定通りだったのか、それとも事故か?・・・ともあれ最後まで、
彼らの創る音楽の圧倒的な情報量、高い演奏力、キャッチーさと実験精神との
ギリギリのせめぎ合い、旧いものと新しいものとのフリーキーな融合・・・といった、
いままでにありそうでなかった「異端」の魅力とクオリティは揺らがなかった。
彼らの10年を超える挑戦には、現代のロック音楽の世界において、
非常に大きな意義があっただろう。



オマーはディーントニを引き連れ「ボスニアン・レインボウズ」を結成して既に動きだしており、
(昨年のライヴのレポートですが、このバンドの姿がよく見える記事がこちら↓
オマー・ロドリゲス・ロペス・グループ @ LIQUIDROOM ebisu
一方のセドリックはホアンと共に新バンドを立ち上げるという噂で、
初期に在籍したジョン・セオドアも、今では様々なバンドに活躍の場を広げていて、
皆の「これから」が引き続き楽しみです。私も個人的に今後も追いかけていこうと考えています。
TMVを出た後のセオドアの仕事を未だ余りチェックしておらず(ONE DAY AS A LIONなど)、
まずはそのあたりか、ボスニアン・レインボウズか?
淋しさも楽しみも両方募る、10年経っても才気溢れるバンド、
彼らに会えてよかったというより、彼らが「シーンに居てくれてよかった」との思いを
ますます強くしています。

一度でいいから、ライヴに行って直接彼らの「とんでもない」インプロヴィゼーションの嵐を
浴びてきたかったのですが、これはもう叶わなくなってしまって、ひたすら惜しまれます。


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