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ざっくり映画ライフ:その12 何もないところから立ち上がれ!サバイバーたちの術(スラムドッグ$ミリオネア、プリティ・ウーマン、8 mile)

先日、話題になっていた洋画「スラムドッグ$ミリオネア」を録画で観ました。
詰めが甘いように感じる場面もあったけれど基本的には驚いたり考えさせられたり。
しかも舞台はインド。こういう世界もやっぱり本当にあるんだよな~と感慨しきりでした。
今回の久々のざっくり映画ライフは、このような「サバイバー」たちが主人公の映画を
特集します。


スラムドッグ$ミリオネア

スラムドッグ$ミリオネア [DVD]スラムドッグ$ミリオネア [DVD]
(2009/10/23)
デーブ・パテル、アニール・カプール 他

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原作でインド人外交官の方が書いた小説があって、それをイギリス製作で映画化。
その過程で「人物たちが唐突に英語を話せるようになってるのはなぜ?」などの疑問が
端折られてしまったり、映画の重要キャラである兄・サリームは映画オリジナルだったり
といった、小さくない相違点があるようだ。主人公の名前も全然違うらしいし。
この記事は、あくまで映画の内容をベースに進める。

舞台はインド。日本でいう「クイズ・ミリオネア」にあたる番組に挑戦者として出演する
スラム出身の若者・ジャマールは、奇跡的にも正解を積み重ね、遂に最終問題を残すのみ。
しかし「スラム出身で無学の青年に、学者でも解けないような難問が解けるはずがない」
と不正疑惑をかけられ、ジャマールは警察に連行されてしまう。
電気ショックも含む残虐な取り調べで、問題を解いていく過程を吐かされるジャマール。
そこには、彼がこれまで辿ってきた、悲しく因果な半生がリンクしていて・・・

貧困問題がテーマの一つとして重くのしかかりながら、兄弟が駆け回る様子など
インドのことばでのやりとりを訳した字幕を切り抜き風に「貼り込んだり」して
ポップな演出が楽しい。そういう時に何故か画面が意図的にブレるのは余計だけど・・・
「ハイブリッド×古きよき(?)時代」の試みそのものはなかなか面白い。
物語は、貧困問題や経済格差の痛みと、ジャマールをはじめとする人物の純粋さが柱。
貧しくて貧しくてどうしようもないといったスラムの街から、いまや大都会と化した
インドの経済発展のさまも鮮やかで、だからこそ余計に多くを考えさせられる。
ジャマールの永遠の「初恋の人」ラティカーへの一途な恋慕もまっすぐで良い。
興味深いのは音楽で、経済発展して先進国と肩を並べるようになった現状を反映するかの
ように欧米風がベースながら、インド音楽のエッセンスも誇らしげにちらほらと見せている。
ヒップホップがどことなくインド音楽に聞こえるなんて
なかなか耳にできるものじゃない(笑)
冒頭で「詰めが甘い」と述べたのはラストへ向かう収束で、ちょっと荒いというか
ご都合主義をぎゅう詰めにしちゃったという印象があって。
でも全体を通して、「考えさせられる映画」「イイハナシダナー」「面白演出」などと
観て良かったと思える映画だったのではないか。

純真な主人公が奇跡を起こす。その一方で、貧困の問題から目をそらしてはいけない。
痛快な奇跡と健気な愛の物語、そこに「このような国や社会が実在する」事実の楔。

社会派とエンターテインメントのバランスが良い物語。


プリティ・ウーマン

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(2006/04/19)
リチャード・ギア、ジュリア・ロバーツ 他

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現代版シンデレラ・ストーリーは「サバイバー」物語の女性版と呼んでよいのでは?
ということでここに提示した、誰もが知ってる不朽のラブコメディー。
私の好きなオードリー・ヘップバーン主演で映画化された1950年代のミュージカル
マイ・フェア・レディ」を下敷きにしていることでも有名。
最近ではこの映画を下敷きに、フジで月9ドラマ「リッチマン、プアウーマン」が
製作されて、それなりにヒットしていたらしい(観ていないので感想はわからない)。

リチャード・ギア演ずる実業家のエドワードと、ジュリア・ロバーツ演ずるコールガールの
ビビアンが出会い、次第に惹かれ合う。
期限つきの「契約」だったはずの関係だったふたりはいつしか未来を夢見るように・・・
しかし期限は残酷にもやってくる。12時を過ぎたシンデレラは、元通りになってしまうかと
思ったら、ビビアンはエドワードとの短いけれど本気の修行や恋愛で、その内面まで
深く感化され、変化していた。生まれ育ちに囚われず、いまや本物のレディとなったのだ。
そして奇跡が・・・

そりゃジュリア・ロバーツなら社交界でもなんでも出来るさ!とさじを投げたくなるような
素晴らしすぎる豊満で締まったそのスタイル。
しかし最初の頃のビビアンは完全なはすっぱで、こりゃ手が付けられないや。
エドワードが手取り足取り一から百まで面倒を見て全部やってあげたのではなく、あくまで
ビビアンにチャンスと自信を与え、ビビアン自身の内面に宿っているレディを取り出す
作業を、手助けして励ましただけなのが重要なこと。
チャンスを与えられること自体が稀ではあるのだが、それを不意にする例は幾らでもある。
実際、ビビアンの友人の子を選んでいたらそれこそ労力がパァであろう。
彼女は最後に「あたいでも変われる??」とビビアンに訊ね、ビビアンが「もちろんよ!」
と答えると泣き出してしまい、そのシーンに一番感動して涙が浮かんでしまったのだが
ビビアンのような成功例がすぐそばにあったから自分も可能性を信じようと思えたのだろう。
無ければやはり当初のように「そんなの無理!」だっただろう。
エドワードの先見の明も素晴らしかったわけだ。

チャンスを生かすも殺すも自分次第。自分を信じ、愛し、磨き続けることがいつでも大事。
シンデレラの素養を描いているように見えるが、凡人だって輝きながら生きていくために
見習うところがたくさんある。諦めないっていいな、と思える映画。



8 mile

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(2012/04/13)
エミネム、キム・ベイシンガー 他

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今も昔も、ヒップホップのCDをCDプレイヤーに入れた経験はないように記憶している。
にもかかわらずこのDVDを借りて観てしまったのは、当時あまりにも話題だったのと、
「人気ヒップホップシンガーが自伝的映画に主演」という筋書きに「マジ?どんなん??」と
当時の私の「怖いモノ見たさ」という名の好奇心に火が点いてしまったからである。
しかし、いざ再生してみると、そこから受ける衝撃は予想を遙かに上回るものだった。

ミシガン州デトロイトには都市と郊外を隔てる境界線、「8マイル・ロード」がある。
この道は富裕層と貧困層、そして白人と黒人とを分けるラインになっている。
1995年。母と妹とトレーラーで暮らす白人青年B・ラビットこと、ジミー・スミスJr.
エミネム)はラップに夢中で、通勤中でもリリックを綴っている。
得意のラップで成功して8マイル・ロードを越えて、貧困や犯罪から抜け出すのが夢だ。
しかし「ラップは黒人のもの」という世間の先入観やプレッシャーから、
友人達の猛烈な後押しもむなしく、ジミーはシェルターで行われるMCバトルに
なかなか勝ち残ることができずに燻っていた。
バイト先のプレス工場で、モデルを夢見る少女・アレックスと恋に落ちたジミー。
だが成り上がりを焦る彼女は別の男と関係を持ち、ジミーは裏切られ、絶望する。
貧困を、差別を、裏切りを、越えることはできないのか?ジミーは千切れそうな気持ちや
諦められない夢のために、マイクを握る・・・

この本気にはやられた。
エミネムの真剣な眼差しに、刺さるようなラップ。
彼が演じるジミー(半自伝だから、エミネム自身の過去でもあるだろう)にもたれかかる
深刻で重すぎる社会の事情、家庭の事情(母親はアル中で、仕事もしていなかった)、
白人のラップなんて受け入れないという「逆差別」や偏見、そして自分自身の恐怖感、
そのすべてをジミーはぶち開けて、自身のラップで撃ち抜いてみせる。
外側の不条理には、怒りをぶちまければよいけれど、内側の不条理、つまり自分の弱さは
誰を責めることもできない。自分で越えていかなけらばならない。
例えそれが外側の不条理に傷つけられ続けてできてしまった傷であっても、
どれだけ巨大なものであっても。
知らなかったが、エミネムのトレードマークは染め上げた金髪だそうだ。
でも本作でジミーを演じきるために髪を本来のダークグレイにして
裸の姿、「武装解除」したスタイルで本作に臨んだのだという。
ささやかなことだが、こうした小さな「実行」の積み重ねが
大衆にエミネムの本気を伝え、大ヒット映画にまで持っていったのだろう。

嘆くのは案外簡単だ。辛い苦しいひどいと喚き続けていればいいだけだ。
しかし、その状況を本気で越えていくことはとても困難で、本気だけで全員が
越えていける保証はない。けれど越えるためには必須の条件なのだ。
本気を出せ。本当に困難な状況を越えていきたいと願っているのなら。
エミネムからの渾身のメッセージが、全身に重みをもって強く響いた。



シンデレラ・ボーイ、シンデレラ・ガール、そして成り上がり。
奇跡がもたらしたものも、汗水垂らして駆けずり回ってようやく得たものも
あるけれど、その全てをもたらしたり、チャンスをモノにすることができたのは
彼らのひたむきで純粋な、一日たりともたゆむ事のない生き様の結晶なのでは。
実際に社会で大きな成功を収めたり、ラッキーを手にする人ってどんなんだろ?って
下の方で毎日燻ってる自分などは時々想像しますが、信じていたいものです、
諦めない人間、本気な人間、心の綺麗な人間にこそそれらが降っているのだと。
そして、いつか自分だって・・・!
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