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【映画】ラッシュ/プライドと友情【F1】
話題になったF1映画「ラッシュ/プライドと友情」をDVDでやっと観ました。
いやー、アメリカ風にいうと「Awesome」! とんでもない、素晴らしい作品でした。
DVDレンタルも地味にヒットしている、もっと知られてほしい、この映画について詳しくいきます。
![]() | ラッシュ/プライドと友情 [DVD] (2014/08/04) クリス・ヘムズワース、ダニエル・ブリュール 他 商品詳細を見る |
レンタルでなくセルで観ると、メイキングなどかなりの特典がついてくるらしい!
それかなり羨ましい。なんというセル商法。
・70年代のF1にタイムスリップ!?
とにかくリアルだ。マジで当時のF1中継を観ているようなのだ。
エンドロールにCGのスタッフさん、スタントのスタッフさんなんか沢山出るけれど
ちゃちだったり不自然だったりする場面が見当たらない。
ピットレーン、観客席、横断幕、もうそこここが仔細に再現されている。
なかでも個人的に感激したのは、日本GPで走ったティレルのジョディ・シェクターの車が
脇役なのにしっかり「たいれる」「しえくたあ」表記されていること、
本物のわけがないのだがエンツォ・フェラーリが出てくること!
細かいことがいちいちしっかりしている。
この頃にF1を観ていた人なら尚更たまらないだろう。
・対照的な二人
ジェームス・ハントとニキ・ラウダ、70年代の二人のF1チャンピオン。
本作は、この二人が熾烈に火花を散らした、1976年の世界選手権にフォーカスする。
けれど二人はその前のF3時代からやり合っていたのだ。
絵に描いたように対照的なハントとラウダ。
ラウダは、アラン・プロストやミハエル・シューマッハの先祖といったスタイルで、
冷静で意志が強く、メカにも明るく、メカニックと一緒に夜通しマシンをいじって、
たくさんテストして、「コンピューター」と例えられるほど。
現代のF1ドライバーなら当たり前だろうが、70年代のドライバーとしては異端だった。
周りとつるまない、あんまり遊ばない、言葉も容赦ない、生真面目で頑固な男。
ワールドチャンピオンを三度獲った彼が唯一のライバルと認めるのがハントなのだが、
それが、まったくもって、漫画のキャラクターのような人物なのである。
いつもTシャツにベルボトムのジーンズ。大酒を飲んで、煙草吸って、クスリやって、
酒池肉林のパーティーが大好き、目の前に女がいればすぐ手を出す。
(PG12は恐らくハントとおねーちゃんがおっぱいやお尻を丸出しにしているせい)
ヘラヘラしているが、内心は繊細で、緊張して貧乏ゆすりやライターカチャカチャが
止まらなくなったり、車に乗り込む前に吐いてしまったり(本作で三回も。多いわ!)、
陰ながら事前にコースのイメージトレーニングをしていたり、二面性のある男。
こういうヤツが創作でないところがとんでもない。
そんなハントの行くところ、必ずラウダがやって来て、追い抜いていく。
いつしか、ハントは何かにつけラウダの行動を気にするようになる。
一方で、顔には出さないが、ラウダはハントの自由奔放さに嫉妬心をちらつかせる。
F3時代から1976年まで、互いをけなし合ってばかりの二人。
それぞれにステップアップして、それぞれにパートナーと出会ったり別れたりして、
1976年の世界選手権は彼らのバトルが中心軸になる。
しかし、ドイツ・ニュルブルクリンクでラウダが生死を彷徨う大事故に遭い、
チャンピオン争いも、二人の関係性も、大きく動いていく。
・演出の効用―音楽、視界、手元・足元
F1中継にはBGMなんか付かないし、カメラの視点も限られている。
それに何の不満もこれまで抱いたことがなかった。
けれど、本作は映画だから、レースシーンは心を煽るような音楽に彩られ、
オンボードカメラも映さない、正面からの手元や足元の挙動を捉え、
バイザー越しの視界、包帯越しの視界を再現してみせる。
この上なくスリリングだ。一方で恐怖心も煽られる。
雨の視界はあまりにも危うく、そりゃ棄権しようという気にもなるもんだ。
マシンの調子が悪いとき、モロにガタガタ変な音がするのも怖い。
一年に二人はドライバーが命を落とす時代の、スリルと危険が目の前に迫ってくる。
・創作のチカラ
ノンフィクション~伝記的側面の大きい本作だが、それでも映画だから、
ディテールは創作や脚色が加わることになる。
そこで創作のチカラが物を言うのである。
例えば、ラウダのドイツでの事故後、ラウダの奥さんは、サーキットに来なくなったと
Wikipediaや、ラウダを特集したF1雑誌には書いてある。
しかし、本作では事故後も奥さんがサーキットに顔を出し、
1976年の最終戦にしてチャンピオン決定戦、日本・富士でのレースまでも見守っている。
ラウダはこの場所で大きな決断をするが、その原因は「危険だから」に加えて、
「愛する妻のため」というふうに取れる。粋な脚色だ。
この最終戦、ハントの元奥さんや、以前いたチームの監督なども
TV中継を見守っている。そんなはずはないだろうと思っても、映画だとこれがいい。
そして、創作ってすごいととりわけしみじみしたのは、ラストシーン。
ラウダは将来「ラウダ・エア」という航空会社を旗揚げするのだが、それを暗示するように
最近はまっているジェット機の操縦をしようというところ。
そこに、ハントがひょいとやって来て、ラウダとしんみり深イイ話をしたところで、
おねーちゃんをはべらせながら、ジェット機に乗り込んでいく。
乗っていくハントと、運転するラウダ。
二人の対照的な性格、そしてその後の人生を象徴している、名シーンだ。
・事実は小説やドラマより奇なり
素晴らしい創作がある一方、創作なんじゃないかと思えるような事実も多い。
ハントとラウダの人物設計自体がもう創作の粋だが、それで終わらない。
ラウダが大事故に遭ったドイツGPも、最終戦の日本GPも、ひどい大雨。
どちらも審議の末、辛うじて開催、という運びは、できすぎた偶然。
チャンピオンの行方は、日本GPでのハントの順位が全てなのだが、
最後の方になると電光表示板の順位が錯綜、まるでじらすような展開。
おぞましいのは、皮膚移植をしたり、肺の吸入をしたりといった
当時のラウダ史上最も苦しい体験のさなか、TVでF1中継をつけて、
事故前に築いていた自身のリードをハントが奪っていくのを観ているシーン。
(特に肺の吸入のシーンは観ていてかなりキツい。ある意味PG12ものだ)
ラウダは存命で、本作はラウダに長い時間をかけて取材しているので
このエピソードは信じがたいけれど事実なのだろう。
そして、サーキットに戻ってきたラウダはハントに向かって
「生きる気力をもらった」「勇気づけられた」なんて言うのだ。
ラウダ、なんという男!
・日本語吹き替え版のありゃりゃ
本作をすみずみまで堪能するのならなるべく字幕で観ることをおすすめする。
なぜなら、二度目の再生を吹き替え版で試してみて、かなりガッカリしたから・・・。
ハントの声を堂本光一、ラウダの声を堂本剛、KinKi Kidsの二人が担当しているのだが
周りの声優が洋画畑の声優さんの中、二人の声、というか存在が浮いてしまうのだ。
ハントやラウダに光一君や剛君の姿が重なって、物語への集中をちょっと妨げられる。
二人がどう演じているかも気にしてしまう。
光一君はそれなりに合っているが(意外にも)、剛君は吹き替えに向いていないのでは?
機械的な感じを出そうとしているのかもしれないがどうも「棒」に聞こえてしまう。
ラウダを演じたダニエル・ブリュールが軒並み助演賞にノミネートされたり受賞したり
しているだけに、余計に「熱演が台無し」感が強くなってくる。
何とかならなかったのか、こりゃ。
・Wikipediaや雑誌の特集がもっとおもしろくなる
ハントとラウダの物語は、情報としてなら、Wikipediaを開けばすぐに目にできる。
F1レジェンドのラウダは、キャリアを総括した特集ムックなどが売られている。
本作を観なくても、ハントとラウダの間に起こった出来事や、
ハントのエキセントリックな人物像などを、「知る」ことは簡単にできる。
実際、映画を観てからWikipediaを覗いて大爆笑したり、感慨深くなった。
でも、逆に、Wikipediaなどの基本知識を頭に入れてから再び映画を観ると、
びっくりする。こんなに再現されているのかと、こんなに素敵に彩られているのかと。
本作で描かれているのはハントとラウダのほんの一部だ。
特にラウダのキャリアは、ここがハイかもしれないが、まだあと二回も
チャンピオンを獲るし、新たな、そしていずれプロストに継承される
堅実なレース・スタイルが確立するのもこれからだ。
ハントとラウダのその後は、本作でない場所のほうが詳しくわかる。
しかし、本作でもちらりと出てくるように、あまりに対照的だ。
太く短くの人生を地でいったハント、細くはないが長い人生で活躍を続けるラウダ。
最初から最後まで、「らしい」んだから。
本作を観たらWikipediaを覗いてみてほしい、そうしたらまた本作を観てみてほしい。
「へぇぇ・・・・・・」と、感嘆がなかなか止まらなくなるから。
カー・アクションの括りの映画ですが、人間ドラマとしても青春ものとしてもよくできています。
最初「ヒューマン・ドラマ」の棚で探していたくらいです。そりゃ見つからないわけだ。
他のドライバーの物語も映画になったら面白いのに、と想像が沸き立ちます。
ナイジェル・マンセルとリカルド・パトレーゼの映画があったら愉快そう、とか
王道でアイルトン・セナとプロストは、いやゲルハルト・ベルガーもいいな、とか
ダニエル・ブリュールはネルソン・ピケも出来そうだな、とか、あれやこれやと。
でも本作を超えるF1映画はなかなか出てこない気もします。
役者がそっくりで、技術も整って、実話を実話以上にドラマティックに魅せる作品なんてのは。
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