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Boom Boom Satellites:その4 FULL OF ELEVATING PLEASURES「メンバーも認める最高傑作!誇り高き覚醒」

今回の長期連載の前半戦ハイライトがやって参りました。
メンバー自らが「最高傑作」と言って憚らない、
Boom Boom Satellitesブンブンサテライツ)のベストワーク、
4thアルバム「FULL OF ELEVATING PLEASURES」のレビューです!

FULL OF ELEVATING PLEASURESFULL OF ELEVATING PLEASURES
(2005/03/24)
BOOM BOOM SATELLITES

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前作「PHOTON」から2年8ヶ月ぶりの、全米でもリリースされたアルバム。
この長い期間、ブンブンには従来の作風にドラスティックな変化をもたらすだけの
エポック・メーキングな出来事を経験したり、積極的にアクションを起こしていました。

「そろそろ、自らを変えていこう」と考えていた
ブンブンの二人、中野雅之さんと川島道行さんは、
まず、ロンドンのスタジオを引き払い、日本・東京に本拠地を戻して
地に足が付いた環境で制作に臨めるように。
海外を拠点にしたスリリングでハードな武者修行の体験は、結果的に二人の精神を強く鍛え、
同時に日本人というアイデンティティをはっきりさせるものでした。
次に、着実にライヴ・バンドとしての底力を海外で培っていた彼らは
曲目に、皆でハイになれるようなアッパーなナンバーを増やしていきました。
そこで得た、今までになかった好感触、観客との一体感が
自閉がちだった二人の、音楽に向かうスタンスを大きく揺さぶります。
そのなかで彼らは、あるプロジェクトを持ち掛けられます。
SFアニメ映画「アップルシード」の、メインテーマを含む音楽提供です。
この映画は、「フル3Dライブアニメ」という画期的かつ高度なテクノロジーを駆使して
制作されたアニメで、ブンブンは正にぴったり。
これまで後付けのタイアップは幾つか付いたことはありましたが、アニメスタッフと共に
物語の軸となるメインテーマを手がけるのは全く初めての経験。
今までの音楽性を保ちながらも、より多くの観客に届くような曲を作らないとなりません。
一年がかりで取り組んだ大プロジェクト。
そうして出来た主題歌「Dive For You」は、今に至るまでブンブンのアンセムの一つに。
初めは映画のサントラのみに収録されていた曲でしたが、大好評を博したため
痛快なビートとスピード感がやみつきになる名曲「Spine」と
ダブルA面扱いでシングルカット。両曲共に本作にも収録されました。
ライヴでお披露目してもやはり物凄い反応が観客から返ってきて、二人は心境を新たにします。
「音楽で自分を表現しながら、多くの人と繋がりたい」


冒頭からスケールの大きなアレンジ、扇情的な曲調、咆哮のような歌で始まるアルバム。
ブンブン本人達の心情だけでなく、楽曲、サウンド、そしてミキシング・マスタリングまでが
前のめりになっているかのようです。
今までが嘘みたいに、音にうっすらかかっていた歪みの霧が晴れ、
一つ一つの音像がはっきりくっきりと映ります。
1stで楽しめたような、リズムビートの快楽を取り戻しながら、
そこに明確な「主人公の意志」が加わって、ドラマティックな作品になりました。
描かれているのは主人公の覚醒の瞬間。歓び、開放感、驚き、躍動感、安堵。
聴いていると思わずハイになって、同時に心の中に熱く燃え上がるものを感じます。
聴き手も主人公と一緒になって覚醒していくというわけです。

テクノの枠は守りながら、限りなくロックに近い音とスピリッツが流れています。
力強い生ドラム、ゴリゴリと気持ち良く響き渡るベース、ギターのように暴れるシンセも
さることながら、本作を最もロックたらしめているのは川島さんのヴォーカル
これまでは、ラップしたり、囁いたり呻いたりといった「楽器のひとつ」下手したら
「ノイズのひとつ」のように登場していた「歌」が、本作ではセンターポジション。
歌ものという形態になったことが、より、テクノ→ロックへの変容を感じさせます。
その歌声はワイルドで男性としてはハイキー、激しいシャウトも頻出。
猛々しくも本質的に上品さを内包した声質は、打ち込みサウンドとの相性も良し。
本作以降、ブンブンの作品は歌ものがメインになり、川島さんのヴォーカルの役割は
どんどん比重を増していきます。
今までインスト的作品が多かったブンブンの、決定的なターニング・ポイントです。
川島さんのもうひとつの役割、リリックでも、中野さんのサウンドメイキングに
負けず劣らずの大仕事を果たしています。
中野さんが曲とサウンドで描くイメージを、川島さんがリリックと声で具現化します。
本作~次作頃が、川島さんの切れ味が最も鋭く冴え渡った時期だと思います。
そこを見抜いて、中野さんはあえて舵を大きく切って、川島さんを思い切り前へ
出していったのではないかと。
歌ものに持って行くことでキャッチーにするという狙いもあったのでしょうが。

中野さんは本作のもうひとつのテーマとして「母性」「包容感」を掲げました。
これまでの「武器みたいな音楽」をやめて。
ゴスペルの女性コーラスを複数の曲で導入したり、アコギを使ったり。
そしてゴールとして、#10で、神聖で厳粛なムード漂う、やわらかな楽曲を作り上げました。
そこに川島さんがリリックで、作品を貫徹する物語を描きます。
それは愛の物語。
#1「Rise and Fall」で「あがったりおちたりを繰り返しながら自分を保とうとしてきた、
いつでもそんなおれのためにそこにいてほしい」と愛を乞い、
終盤の#10「Anthem -reprise-」で「見つけたんだ やっと きみに」
「ぼくはいつでも きみの中にいるよ」と、愛の終着地への到達のカタルシスに包まれます。
この「愛」の相手は、主人公の恋人と捉えるのが一番わかりやすい理解の仕方ですが、
ブンブンの音楽を愛するファンや、見えざる神聖な存在に向けてともとれます。
「見えざる神聖な存在」としては#2「Let it All Come Down」が顕著で、
「さあ 来なさい すべてに身を任せて」と歌う女性ゴスペルコーラスが
「禁じられたやり方で解き放て 祝祭のあの日の熱を求めて」「むこう側へ突き抜けろ」
と自問自答する主人公を導いています。
また、終幕の#12「Stride」では、感涙にむせぶ主人公を天から祝福するように
「歩きつづけて 止まらないで」と、ここでも女性ゴスペルコーラスが呼びかけていたり。

全体的に前のめりで、覚醒や、抑制からの解放、愛を共有すること、
つまり現在を生きることへのエールや歓びが表現されている作品ですが、
単にハイでオープンマインドなアルバムにはなっていません。
それはブンブン二人の死生観から来るもの。
「死と生は隣り合わせで、だからこそ思い切り生きよう」という深い観念。
CMなどでお馴染みの#3「Moment I Count」はたまらなくスリリングな名曲ですが
そのスリルはどこから来るかというと「最後にむけての一瞬一瞬」。
そして、アンセムとなった#9「Dive For You」は、勿論映画の世界観や
SFアニメーション映画の主題歌という位置づけも影響しているのでしょうが
「きみのためにダイヴしよう」「さあ 愛しい人よ 来世で会おう」と高らかに歌われ
愛しい人のために主人公は命を落とす用意をしているわけです。
「おれでいさせてくれ おれがおれたる所以
今がおれの時 いちどきりの今 この時」

このフレーズに、ブンブンならではの「生きる意味」が集約されているように感じられます。
彼らが音楽を奏でつづける意味も。

#1で「おれがここにいる理由なんてないんだ」と、前作までの二人の姿のように
自らを凝視し、自信喪失に陥り、「自分探し」をしている途中の主人公。
曲が進むにつれて、いちどきりの今この時をおれらしく思い切り生きていこう、
きみのために思い切り生きていこう、おれはきみのためにここにいるんだ、と
少しずつ、はっきりと、答えが見つかっていきます。
物語を読む私たちは、その姿に共感を覚えたり、自分自身の姿に照らし合わせてみたり
勇気づけられたりといった感情移入を、無理なくすることができます。

言葉のチカラとサウンドのチカラが合わさって、身体だけでなく心までもが動く。
熱く燃えたぎる魂の奥に、誇り高き信念が宿っているのを目の当たりにする。
本気でつくられた作品に本気で向かい合う。
ブンブン二人のストイックな情熱が詰まった、非常にブンブンらしい作品であると同時に
リスナーも最も、音楽を通して、彼らと繋がれる作品になっているのではないでしょうか。

発売からもう10年弱が経過していますが、私が本作に今でも惹かれるのは
きっとそれ故。


本作で開拓した新機軸を、次作では更に推し進めて、
もっとキャッチーでダイレクトな作品が出来上がります。
そして新たなアンセムが!
「この曲聴いたことがある」がきっと最も多い、次作のレビューもお楽しみに!
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テーマ:CDレビュー - ジャンル:音楽

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